忍者ブログ

ちょっとだけ、不思議な昆虫の世界

さりげなく撮った昆虫のデジカメ写真が、整理がつかないほど沢山あります。 その中から、ちょっとだけ不思議だなぁ~と思ったものを、順不同で紹介していきます。     従来のブログのように、毎日の日記風にはなっていませんので、お好きなカテゴリーから選んでご覧ください。 写真はクリックすると大きくなります。   

翅の下は何色? 

本来は夜行性の蛾の仲間は、
昼間は適切な背景を選び、(多分)ほとんど動かない。

いわゆる保護色の効果で、外敵に見つかりにくくなっているからだ。

もし、運悪く捕食者(鳥)に見つかってしまった場合には、
さっと翅を広げて、一目散に現場から飛び去ろうとするだろう。

このとき、翅の下(正確には後翅表面)にある鮮やかな模様が表れる。
その模様は、通常状態では見えないものであり、
捕食者も、それまで見たことがないものだろう。

だから捕食者は、ちょっとビックリして、攻撃を一瞬躊躇するだろう。

このわずかなタイムラグをうまく利用すれば、
蛾はその場から、飛び立って逃げられるかもしれないのだ。

 

今回は、そんな蛾たちの後翅表面の色と模様を、
偶然にも(?)、写真に撮ることができたので、
カトカラ【Catocala】類を中心に、紹介していきたい。

以下の写真で、右下に小さく添付したものは、
それぞれの種の通常の静止状態であるが、
撮影年月日は、本体のものとは異なっている場合がある。

 

 

ゴマシオキシタバ(ヤガ科)

2012年10月11日 城ヶ倉・青森

普通に静止しているときの前翅表面は、典型的な保護色(右下写真)である。

普段見えない後翅表面は、鮮やかなオレンジ色と黒色の模様があり、
そのような蛾の代表格は、マニアからカトカラと呼ばれている種類だろう。

日本には、数十種類のCatocala属の蛾がいるようだが、
多くは、このタイプの色彩だと思う。

 


アケビコノハ(ヤガ科)

2010年11月27日 三春PA・福島

やや漫画チックな目玉模様があるアケビコノハ幼虫が有名であるが、
アケビコノハの成虫の姿かたちは、まるで枯れ葉そのものである。
↓   ↓  ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20101224/1/

この枯れ葉擬態だけでも、十分な保護効果はありそうだが、
彼らは、万が一のことを考えているのだ。

飛んで逃げなければならないような状況が発生した場合には、
後翅表面にあるカトカラと同じような模様が表れる。

 

 


ウンモンスズメ(スズメガ科)

2012年7月21日 白岩森林公園・青森

さらに、緑色の美しいスズメガであるウンモンスズメも、
前翅に隠された部分に、赤い模様を持っている。

こんな色の組み合わせでも、鳥のような捕食者の攻撃を、
一瞬でも遅らせる効果はあるのだろう。

写真を撮った私自身も、ちょっとびっくりしたのだから・・・

 

 

ところが・・・・

 


ムラサキシタバ(ヤガ科)

2011年9月29日 城ヶ倉・青森

カトカラの仲間には、後翅表面がこんな色の蛾もいる。

紫と白の組み合わせも、周辺にはない色なので、
捕食者をビックリさせる効果は、おそらくあるのだろう。

 

 

 

フクラスズメ(ヤガ科)

2010年11月27日 城ヶ倉・青森

こちらは、ムラサキシタバと同じ雰囲気を持っている蛾である。

この子は、名前がややこしいが、スズメガの仲間ではない。

ビックリ効果というより、この紫色は、美しいと思う色である。

 

 

しかし・・・・

 

 

シロシタバ(ヤガ科)

2012年10月10日 城ヶ倉・青森

カトカラの仲間には、こんな色の蛾もいる。

黒と白の組み合わせも、周辺にはない色ではある。

しかし、捕食者をビックリさせる効果は、どうだろうか?

現在でも、立派に生き残っているということは、
早朝や夕方の薄暗いとき、目が慣れていない捕食者は、
やはり、ちょっとビックリするのだろう。

 

 

さらに・・・・

 


シロオビドクガ(ドクガ科)

2012年8月22日 十国峠・長野

ドクガの仲間ではあるが、食草が不明なので、
成虫の体液に不味成分が含まれているかどうかは、
現時点では確認できないらしい。

ただ、オスは背中に白線が一本しかないので、
有毒種のホタルガにベイツ型擬態している可能性はある。

一方、やや複雑に白線が交差するメスの場合には、
以前検討したように、分断色のような効果があるかも知れない。

少なくとも、メスの後翅表面は、写真のように、
鮮やかなオレンジ色で、捕食者をビックリさせる効果はありそうである。

 

 

そして・・・・・

 


トラガ(トラガ科)

2010年6月19日 だんぶり池・青森

右下の写真でも、わずかにオレンジ色が見えるが、
普通に静止しているときでも、半分翅を開いていることが多い。

この子は、完全な昼行性で、花にも蜜を吸いに来るが、
このときには、最初からオレンジ色が良く目立っている。

白と黒のよく目立つ模様と、後翅のオレンジ色との組み合わせは、
おそらく、警戒色の範疇に入るだろう。

だから、捕食者は、最初から食べようとしないのでは?

 

 


ついに・・・・・

 

 

ヒトリガ(ヒトリガ科)

2011年8月31日 酸ケ湯温泉・青森

上のシロオビドクガと雰囲気は良く似ているが、
この子は、警戒色を持った有毒種とされており、
おそらく鳥に食べられることはないのだろう。

良く見ると、前翅表面の地色は赤味がかった茶色で、
コントラストのはっきりした白線があり、
それだけで警戒色の範疇に入るだろう。


では、突然見せる後翅表面の鮮やかなオレンジ色の役割は?

 

 


というわけで、ちょっとだけ不思議な蛾の世界でした。

 

 

拍手[18回]

PR