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ちょっとだけ、不思議な昆虫の世界

さりげなく撮った昆虫のデジカメ写真が、整理がつかないほど沢山あります。 その中から、ちょっとだけ不思議だなぁ~と思ったものを、順不同で紹介していきます。     従来のブログのように、毎日の日記風にはなっていませんので、お好きなカテゴリーから選んでご覧ください。 写真はクリックすると大きくなります。   

虫たちの親子-45 ツノアオカメムシ

カメムシマニア以外でも、知る人ぞ知る・・・多分(?)、
ツノアオカメムシの学名は Pentatoma japonica である。

だから、カメムシ科(Pentatomidae)を代表する、
日本産のカメムシであるような印象を与える【注】

しかし、ネット情報では、日本の固有種ではなく、
朝鮮半島や中国にも、普通に分布するようだ。


・・・とは言え、カッコイイ虫であることは間違いない。

 


そんなツノアオカメムシの幼虫は、一体どんな姿なのか、
昔から、さりげなく気になる存在であった。


でも、図鑑やネット写真で見る限り、
成虫とは似ても似つかないほどの姿かたちなので、
見つけても、なかなか写真に撮って、
その姿を確認する機会がなかった。


そんな中で、今から3年ほど前に、
信州の安曇野の林道で撮った幼虫が、
ツノアオカメムシの幼虫らしいことが判明した。


同定が難しいカメムシ類の幼虫とは言え、
残念なことに、ツノアオカメムシの場合には、
何故かネット上で、誤同定写真をたまに目にするが、
下の子は、間違いないだろう。

 

 

 


とりあえず、噂の幼虫から・・・

 

 

 

ツノアオカメムシ終齢幼虫(カメムシ科)

2013年6月12日 安曇野・長野

確かに、同じような雰囲気の幼虫が多く、
写真だけでは、同定が難しそうである。


 ⇒ただ、触角の先端付近の白色部分の位置や、
  前胸背板の側角がやや尖っていることなどで、
  他種との識別が、かろうじて出来そうである。


それにしても、成虫からは想像しにくい姿である。

 

 

 


ツノアオカメムシ終齢幼虫(カメムシ科)

2013年6月12日 安曇野・長野

この写真では、成虫の和名の由来となった、
前胸背板の側角の形状が尖って見えるので、
明らかに他種とは違うことが分かる。


 ⇒成虫が互いに良く似ていることで有名な、
  アオクチブトカメムシの幼虫とは、
  かなり異なった雰囲気であることが、
  ちょっとだけ不思議である。


  【虫たちの親子-37 アオクチブトカメムシ】
   ↓   ↓   ↓
   http://kamemusi.no-mania.com/Date/20151223/1/

 

 

 

 

・・・成虫(親)は?

 

 

 

ツノアオカメムシ成虫(カメムシ科)

2013年8月21日 白岩森林公園・青森

日本のカメムシの名のとおり、
最もカメムシらしいカメムシで、
金属光沢の緑色が微妙に綺麗だ。

この子も、徳島に住んでいた頃は、
採集する機会がほとんどなく、
西日本では珍品扱いだったと思う。


 ⇒ただ、弘前市周辺では、
  夜間、灯火にも飛来するし、
  晩秋のダムサイトでも、
  しばしば見かけるので、
  個体数は結構多い気がする。

 

私が、カメムシが好きになったキッカケのひとつが、
小学生のとき、林間学校で行った軽井沢で、
初めてこのカメムシと出会ったときだ。

そのときの状況や、出会いの場所の照月湖が、
いつの間にか埋め立てられていたことなどを、
かなり前に、このブログに書いたことがある。

【私のカメムシコレクションの原点 ツノアオカメムシ】
 ↓   ↓   ↓
 http://kamemusi.no-mania.com/Date/20101021/1/

 

 

【注】有名なのは、やはりギフチョウだろうか?

   以下、種小名が japonica と付く昆虫を、
   さりげなく探してみると、意外に多いことが分かる。

   
   チョウ目 ギフチョウ: Luehdorfia japonica

   チョウ目 ヒメヤママユ: Caligu japonica

   チョウ目 ムラサキシジミ: Narathura japonica

   カブトムシ目 ナミハンミョウ: Cicindela japonica
  
   カメムシ目 マルミズムシ: Paraplea japonica

   カメムシ目 ベッコウハゴロモ: Ricania japonica

   バッタ目 クダマキモドキ: Holochlora japonica

   カマキリ目 ヒメカマキリ: Acromantis japonica

   カゲロウ目 フタスジモンカゲロウ: Ephemera japonica

   トンボ目 アオハダトンボ: Calopteryx japonica

   トビケラ目 ニンギョウトビケラ: Goera japonica


   ⇒鳥類だが、超有名なミラクル学名がある。

    トキ: Nipponia nippon
 

  

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虫たちの親子-44 クサギカメムシ


今回のクサギカメムシは、日本のほぼ全土に分布し、
果樹や豆類の害虫としても、古くから知られている。

さらに、成虫が越冬の際に、人家に入り込むことがあり、
悪臭を出す性質もあって、衛生害虫としても有名だ。


だから、虫マニアでない人も、
クサギカメムシのことを知っていて、
多分「臭いカメムシの代名詞」になっている・・・?


 ⇒だんぶり池の林道で、出会った人たちに、
  「何で、あんな臭い虫が好きなの?」
  と声を掛けられることが、たまにある。

  多分、その人たちの頭の中は、
  【カメムシ=クサギカメムシ】
  である可能性が高いようだ。

 

 

 


まずは、見かけることが少ない幼虫から・・・

 

 

 


クサギカメムシ終齢幼虫(カメムシ科)

2010年8月6日 座頭石・青森

同じような雰囲気の幼虫が続くが、
この子は、間違いなくクサギカメ幼虫である。

 ⇒触角の先端付近の模様や、
  前胸背板の側角付近の白色部に、
  鋭いドケがあるので識別可能である。

 

 

 


クサギカメムシ4齢幼虫(カメムシ科)

2010年8月12日 だんぶり池・青森

こちらは、4齢幼虫だと思う。

やはり、周辺部分の鋭い突起が、特徴である。


だんぶり池では、成虫を頻繁に見かけるのだが、
幼虫に出会うことは、少ないような気がする。


 ⇒本州中部では、年一化性なので、
  幼虫が見られる時期が、初夏の頃だけなのも、
  大きな理由かもしれない。

 

 

 


クサギカメムシ3齢幼虫(カメムシ科)

2015年7月27日 だんぶり池・青森

こちらは、多分3齢幼虫だと思う。

クサギカメムシは、50種類以上の植物から、
成虫と幼虫が見いだされている。

ただ、1種類の植物だけを餌として飼育しても、
孵化幼虫から新成虫にまで発育し、
交尾・産卵するとは限らない【注】


 ⇒果樹害虫とされる多くのカメムシは、
  その時点での最適な餌を選んで、
  次々に寄主植物を変えていくのだ。

 

 

 


・・・成虫(親)は?

 

 

 

クサギカメムシ成虫(カメムシ科)

2015年7月27日 だんぶり池・青森

絶対的な普通種(害虫!!)なので、
いつでも、どこにでもいる。

特に、晩秋のダムサイトでは、もの凄いことになる。

【ダムサイト② クサギカメムシばっかり】
 ↓   ↓   ↓
 http://kamemusi.no-mania.com/Date/20121105/1/

 

 

 

【注】クサギカメムシの成虫と幼虫の存在が報告された植物は、
   これまでに、27 科51 種類以上に及ぶ。

   ただ、定義上の寄主植物(産卵と幼虫の正常な発育)は、
   ずっとキリだけが知られていたのだが、最近になって、
   秋田県でウワミズザクラが追加された。

 

 

    

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虫たちの親子-43 トゲカメムシ


カメムシ類の幼虫を同定する重要なヒントとなるのは、
発見場所付近で、その成虫を見かける頻度である。


例えば、今回のトゲカメムシの場合は、
時期を多少ずらして、成虫と幼虫が、
同じ場所で見られる典型例である。

ただ、寄生植物は沢山あるようだが・・・

 

 

 

・・・まずは、幼虫から!!

 

 


トゲカメムシ幼虫(カメムシ科)

2010年6月18日 だんぶり池・青森

見た目の印象は、前回、前々回の、
ヨツボシカメムシ、ブチヒゲカメムシ幼虫に似ている。

西日本では、山地でしか見られなかったが、
青森県内では、弘前市内の公園でも発見されるので、
この点でも、前記2種と似ていることになる。

 

 

 


トゲカメムシ幼虫(カメムシ科)

2010年6月19日 だんぶり池・青

真上から見ると、ややズングリした雰囲気がある。


おそらく、この子も終齢幼虫なのだと思うが、
和名の由来となったトゲは、まだ認められない。

前胸背板の前縁付近が白くなるのが特徴か?

 

 

 

 

・・・そして、成虫は?

 

 

 


トゲカメムシ成虫(カメムシ科)

2010年8月3日 だんぶり池・青森

前述のように、だんぶり池周辺では、
幼虫が見つかった同じ場所には、
しばらく経つと、成虫がいることが多い。


良く似た同属のタイワントゲカメムシがいるが、
和名のとおり、青森で見つかることはない。


和名の由来となった前胸背の側角が、
トゲのように尖っている。


 ⇒カメムシ類には良くあることだが、
  小楯板の先端部が白色になるのが、
  ちょっとだけ不思議だ。
 
  もちろん、白くならない種もいるが・・・

 

   

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虫たちの親子-42 ヨツボシカメムシ

    
全国に分布するヨツボシカメムシだが、
関東以西では、むしろ珍品扱いで、
昔住んでいた四国では、見かけた記憶がない。


ただ、何故か、弘前周辺では普通に見られる【注】


非常によく似た名前のヨツモンカメムシと、
全く同じ状況であることが、ちょっとだけ不思議だ。


【昔は珍品だった?? ヨツモンカメムシ】
 ↓   ↓   ↓
 http://kamemusi.no-mania.com/Date/20131117/1/

 

 

 

・・・まずは、幼虫から!!

 

 


ヨツボシカメムシ幼虫(カメムシ科)

2010年8月19日 梵珠山・青森

淡褐色を基調にしたカメムシ科の幼虫は、
みんな雰囲気が似ており、同定が難しい。

しかも、出会いが初夏の頃に集中する。

 

前回のブチヒゲカメムシ幼虫と、
見た目はかなり似ているのだがが、
以下の3点の特徴で、さりげなく同定できた。


 ① 前胸側角の形状が成虫と同じ。
  ⇒下の写真が分かりやすい!

 ② 触角先端部付近の黄色の部分。
  ⇒これは、成虫と全く同じ!

 ③ 脚の色が白っぽい。
  ⇒前回のブチヒゲカメムシとは、明らかに違う!

 

 

 

 

ヨツボシカメムシ幼虫(カメムシ科)

2010年8月1日 だんぶり池・青森

腹部背面に、目立つ黄色の紋が4個あるが、
このホシ(?)が、和名の由来ではない。

 ⇒カメムシ類の幼虫の腹部背面には、
  悪臭成分の放出孔(臭腺の開口部)があって、
  この雰囲気の模様が見られることが多い。


この子は、マメ科植物上で発見されることが多いので、
ギリギリ同定のヒントにもなっている。

 

 

 

・・・そして、成虫!!

 

 

 

ヨツボシカメムシ成虫(カメムシ科)
 
2015年7月12日 だんぶり池・青森

偶然見つけた交尾中のカップルで、
マメ科植物上で発見することが多い。

ちょっとだけ分かりにくいが、成虫の胸部には、
4個の紋(ホシ?)が一列に並んでおり、
こちらの方が、和名の由来だと思う。

ただ、分かりにくい和名であることは間違いない。

 

 

 

 

【注】ヨツボシカメムシ Homalogonia 属には、
   2004年に、新たに2種が確認されて、
   日本産の種類は、3種に増加したようだ。

   ただ、新たな2種は、産地が限られ、
   発見個体数も、かなり少ないようなので、
   なかなか、手持ちの標本や写真を、
   再検討する気にはならない??

 


   

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虫たちの親子-41 ブチヒゲカメムシ


虫たちの親子シリーズ、さりげなく再開します。


カメムシ類の幼虫の場合は、
成虫ほど目立った特徴がないので、
同定が難しいことが多いのだが、
たまたま幼虫と成虫を同時に見つけたときには、
とりあえず、簡単に同定ができそうだ。

 ⇒今回のブチヒゲカメムシ幼虫は、
  その場面に遭遇した幸運な例である。


おそらく、単独で見つけた場合には、
同定できなかった可能性が高いかも?

 

 

 

まずは、幼虫から・・・

 

 


ブチヒゲカメムシ幼虫(カメムシ科)

2014年5月27日 大垣市・岐阜

市街地の畑のあぜ道で見つけた。

幼虫集団がクズの葉っぱにいるということで、
ある程度、種を絞り込むことが出来るのだが、
幸か不幸か、すぐ近くに成虫がいた。

 ⇒だから、この写真の齢期の異なる集団は、
  ブチヒゲカメムシの幼虫で間違いないだろう。

  

 

 

 


ブチヒゲカメムシ幼虫(カメムシ科)

2014年5月27日 大垣市・岐阜

こちらは、別の集団の幼虫で、
明らかに黒褐色と赤褐色の2種類がいる。

この色彩変異は、もし別々に発見した場合には、
とりあえず、別種だと思ってしまうほどだ。

 

 

 

 

・・・成虫(親)は?

 

 

 


ブチヒゲカメムシ成虫(カメムシ科)

2014年5月27日 大垣市・岐阜

幼虫からは、想像できにくい姿ではある。


この子は、珍品ではないが、
見かけることは少ない種だ。


 ⇒もしかしたら、私の探索範囲が、
  微妙に違うのかもしれない。

  草原にいることが多いから?

 

体色の変異は、幼虫時代よりも顕著のようで、
黄褐色と赤褐色の個体では、別種のように見える。

このような体色変化に惑わされると、成虫でさえ、
クサギカメムシやムラサキカメムシと間違える【注】


 ⇒和名の由来となった触角のブチ模様は、
  他のカメムシ類にも、普通に見られるので、
  同定の根拠には、多分なりにくいと思う。

  触角の白黒のブチ模様と同じように、
  翅からはみ出した腹部(正式には結合板と言う)も、
  よく目立つ縞模様であるが・・・

 


 

 

【注】クサギカメムシとは、小楯板の先端が広く白色であること、
   ムラサキカメムシとは、前胸背側角が黒く突出することで、
   成虫の場合には、十分識別可能である。

   機会があれば、色彩変異のある3種の個体を、
   同時に比較してみたい。

   

 

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