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ちょっとだけ、不思議な昆虫の世界

さりげなく撮った昆虫のデジカメ写真が、整理がつかないほど沢山あります。 その中から、ちょっとだけ不思議だなぁ~と思ったものを、順不同で紹介していきます。     従来のブログのように、毎日の日記風にはなっていませんので、お好きなカテゴリーから選んでご覧ください。 写真はクリックすると大きくなります。   

最も危険な昆虫?? イラガ類の幼虫


昆虫が怖いという人のほとんどが、
前ページで紹介したスズメバチを例に挙げる。

ただ、実際には、近くに飛んできても、
だまって立っていれば、全然問題ない。


 ⇒たまに、例外もあるようなので、要注意だが・・・

 

また、潜在的な被害の多いドクガ類の幼虫も、
ほとんどが派手な色なので、葉っぱの上にいれば、
普通に見つけることが出来る。


 ⇒だから、好んで(?)触らなければ、何の被害もない。

 

と言うように、こちらから仕掛けない限り、
虫たちが問答無用に、人間を攻撃してくることはない。

 

 

・・・しかし!!

 


有毒の虫たちが、あまり目立たない場合には、
気付かずに触ってしまうことがあるのだ。


これは、全くの個人的な感想なのだが、
実は、虫たちの中で一番恐ろしいのは、
あまり目立たないイラガ類の幼虫だと思う。


知らずに触ってしまったときの痛さは、
半端ではなく、本当に飛び上がるほどだ。


 ⇒ドクガ類の触ったときの痒い皮膚炎とは、
  比較にならない程の痛さである。

 

 

今回は、私がスズメバチよりも恐れる虫で、
身近な庭木にもいる蛾の幼虫を紹介したい。

 

 

 

ムラサキイラガ幼虫(イラガ科)

2010年9月2日 だんぶり池・青森

こんな感じで、一見やや扁平のイモムシのようだ。

体色は淡緑色~緑色で、背面と側面に短い刺毛がある。


ただ、棘が細く目立たないので、
数年前、思わず触ってしまったことがある。


チクッとした鋭い痛みを指先に感じたが、
時すでに遅く、それから数時間ほど、
強烈な痛みが消えなかった。


 ⇒痒いとか、皮膚が膨れるとかではない。

  ・・・・とにかく痛かったのだ。

 

 

 


ヒロヘリアオイラガ幼虫(イラガ科)

2008年7月13日 徳島市・徳島

先端部近くに、オレンジ色の棘が1対見えるので、
この子は、ヒロヘリアオイラガで間違いないだろう。

ネット情報では、ヒロヘリアオイラガは、
インドまたは中国からの侵入害虫のようである。


秋以降になると、ときどき枯れ枝で見かける繭にも毒がある。


 ⇒徳島に住んでいた頃、自宅の庭のヤマモモに大発生し、
  妻が触って、全身が真っ赤に腫れ上がったことがある。

 

 

 


アカイラガ幼虫(イラガ科)

2011年10月9日 酸ヶ湯温泉・青森

この子も普通に緑色なので、緑の葉っぱの上にいると、
あまり目立たないので、知らずに触ってしまうかも?

近寄って良く見れば、怪しい棘が見えるのだが・・・


 ⇒イラガ類の刺毛は、中空になっていて、
  触れると、一斉に毒液を放出する。

 

 

 

ナシイラガ幼虫(イラガ科)

2015年9月23日 芝谷地湿原・秋田

見るからに恐ろしげな刺毛がある。

上の3種と比較しても、明らかに獰猛そうで、
普通のドクガ幼虫に近い警戒色の雰囲気で、
知らずに触ってしまいそうなのだが・・・


 ⇒しかし、この写真のように、
  枯れかかったような葉っぱにいると、
  黄褐色の棘も含めて、典型的な保護色になって、
  予想外に目立たないのだ。

  この状態では、偶然触ってしまうこともありそうだ。

 

 

・・・という訳で、


今回紹介した有毒のイラガ類4種の幼虫の体色は、
いわゆる警戒色にはなっていない【注】

だから、いずれも人間が思わず触れてしまうこともあり、
警戒色のドクガの幼虫とは、明らかに異なる防御戦略なのだ。


もしかしたら人間にとっては、ちょっとだけヤバイ存在かも??

 

 

以上、私が最も恐れる昆虫でした!!!

 


 
【注】通常は、武器を持つ種や、体内に不味成分を持つ虫たちは、
   警戒色であることが多く、一度ひどい目にあった捕食者は、
   警戒色と結び付けて学習し、2度とその虫を攻撃しない。

   しかし、防御物質の効力は、捕食者の種類によって、
   全く異なっているので、話はややこしい。

    ⇒例えばカメムシの匂いは、アリ以外には無効だし、
     カマキリは、イラガ幼虫を平気で食う。


   このように、防御物質を放出する虫たちを、
   ある捕食者は避けるが、別の捕食者は、
   全く気にしないで捕食することは普通にある。

   これがちょっとだけ不思議な昆虫の世界???

 


   
   

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良く似てるのに? アマガエルとオサムシ


類縁関係にない生物が、擬態ではないのに、
お互いに良く似ている場合が、少なからず見られる。

例えば、アリとシロアリとか、イルカとサメとか、
イモリとヤモリとか、ヘビと巨大ミミズとか・・・・


この現象を、学術的な専門用語では「偶然の一致」と言うemoji

 


今回から、3回に分けて、そんな例を紹介したい。

 

 

下の左側の写真・・・・・

遠くで、最初に見つけたときは、
何で、オサムシが木の隙間にいるの(?)、
と思いながら、近づいて行った。

 

 


左: ニホンアマガエル 長者原SA・宮城(20140417) 
右: エサキオサムシ 東海村・茨城(20110811)

まさか、カエルだったとは・・・・?

年齢とともに、かなり、視力が落ちてきたんだ。

 

 

 


多分ニホンアマガエル(アマガエル科)

2014年4月17日 長者原SA・宮城

軽く触れてみると、ノロノロとこちらを向いた。

やっぱりカエルで、こんな真っ黒な色でも、
多分、これはアマガエルだろう。


まさか樹木の隙間で、越冬したのだろうか?

 

 

 


ニホンアマガエル(アマガエル科)

2012年5月23日 長者原SA・宮城

実は、2年前にも、ほぼ同じ場所で・・・・

こっちは、マツの樹皮に合わせた模様もある。

 

 

 


ニホンアマガエル(アマガエル科)

2010年7月15日 だんぶり池・青森

これが、緑の葉っぱにいるときの一般的な色彩。


アマガエルは、何回もこのブログで見てきた虫たちのように、
自分の体色に合わせた背景を、選択するのではない。

逆に、背景に合わせて、自由自在(?)に、
自分の色や模様を、変化させることができるのだ。


 ⇒アマガエルは、もともと黄・黒・青の三種類の色素細胞を持っていて、
  簡単に言えば、それぞれの色素胞が皮膚に分散したり拡散したりして、
  絵の具を混ぜるように、様々な色に見せるという仕組みのようだ。
   

アマガエルが、多分大変なコストをかけて、
体色変化の仕組みを進化させてきたということは、
昆虫の場合でも、保護色が有効な防御手段であることの、
重要な証拠にもなっているのだと思う。

 


やっぱり、虫よりカエルの方が・・・・?

    

 

 


 

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擬態??④/④ サイズの違い


これまで、蛾の模様が野鳥類が怖がる天敵に似ており、
しかも、それを効果的に見せるような行動が伴っている例を、
このブログで紹介してきた。
↓   ↓   ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20141204/1/
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20141207/1/


しかし、ひとつだけ、避けて通れない大きな疑問点が残っている。

それは、小さな虫たちの持つ宿命なのだが、
モデルとなった種とのサイズの違いだ。

野鳥類の天敵であるヘビや犬、フクロウなどとは、
大きさが、あまりにも違いすぎるのだ。


ただ、サイズの違いが実際の防御効果に対して、
一体どれだけのマイナス要因になっているのかは、
個々の現場で、詳細な検討が必要であるだろう。

 


まずは、もう一度小さいヘビを見てみよう。

 

ベニスズメ幼虫(スズメが科)

2010年10月12日 白岩森林公園・青森

この姿だけ見ると、普通のイモムシで、
我々人間は、それほどヘビ似てるとは思わない。

ただ、反り返るように、頭部を空中において、
ゆっくり振ると、背中の目玉模様と、
爬虫類によくある不気味な色が、
サイズは小さいのだが、十分すぎるほど、
ヘビを連想させる。

 

 

アケビコノハ幼虫(ヤガ科)

2010年10月8日 弘前市・青森

このヘビの姿は、多少漫画チックであるが、
ヘビの恐ろしさが、極端に強調されている。

もちろん、我々人間も、いきなりこんな虫が目に入ったら、
多少は、ビックリするのかもしれない。

もちろん、背中を丸める(?)という、
ヘビの姿を効果的に見せる行動も伴っている。

 

 

 

カシワマイマイ幼虫(ドクガ科)

2014年7月1日 早来・北海道

アケビコノハ幼虫よりも、より怖さを強調した例もある。

この写真は、普段は見せないが、私が撮影のために近づいたときに、
上半身を持ち上げて、威嚇してきたときのものだ。

こんな風に、実在しないような、ドラゴンのような姿も、
野鳥類にとっては、リアルなヘビより恐ろしい存在なのかもしれない。

それにしても、このサイズは小さすぎる。

 

獲物を探している野鳥類が、このような
「自分よりも明らかに小さいヘビの姿を見て、驚いて逃げる」
ということが本当にあるのだろうか?

 

 


・・・いよいよ、本題・・・・

 

 

普段、野鳥類の写真を撮ろうとして、
かなり慎重に近づいても、あっという間に、
逃げられてしまったという経験は、良くあることだ。

小鳥たちは、常に自分の敵が近くにいないか、
ビクビクしながら、餌を探しているのだろう。
 
そして、少しでも怪しいと感じたら、
あっという間に、その場から飛び去ってしまうのだ。

 

 


シマヘビ(ナミヘビ科)

2011年9月26日 小泉潟公園・秋田

また、小鳥たちが、自分の卵やヒナがいる巣に向かって、
恐ろしいヘビが近づいてくるのを経験すると、
ちょっと小さいけれど、蛇のような姿や色を見て、
どんなに恐怖心を掻き立てられるのか、十分想像できる。


多くの小鳥たちは、ヘビのような外敵に対して、
おそらく、必要以上に敏感に反応してしまうのだ。

私が想像するに、
「野鳥類は、ヘビの姿をハッキリと認識するが、
 それがどの辺にいるのかまでは、
 なかなか把握しにくい」
のではないかと思う。

 

 

 

ジョウビタキ(ツグミ科)

2010年3月27日 石廊崎・静岡

多くの野鳥類は、視野はかなり広いが、
サイズや遠近感を認識するのは、苦手なのかもしれないのだ。


野鳥類の目は、顔の左右に分かれたところにある。

例外がフクロウの仲間でで、人間と同様、
正面に2個ならんで付いている。

いわゆる立体視(遠近感が分かる)ができるのは、
フクロウや人間の眼のような顔の全面に、二つある場合だけだ。

もしかしたら、野鳥類は、左右の目の位置から、
大きさの把握が出来にくいのかもしれない。

だから、鳥が、餌だと思った蛾の姿を見て、
ちょっとでもヘビの姿を連想すれば、
大きさなどに、多少の不自然な点があったとしても、
少なくとも一瞬は躊躇し、その場から、
飛び去ることは、十分考えられることだと思う。

 

 

という訳で、今回の結論としては、
 ① 野鳥類は、必要以上に怖がりである。
 ② 野鳥類は、遠近感とサイズ認識が苦手である。
というふたつの理由が重なって、
虫たちの「野鳥類の天敵」に擬態するという防御法は、
予想外に有効であることが分かったのである。

  
何を隠そう、・・・別に隠してるわけではないが、
私が一番言いたかったことは、
「小鳥たちにとって、遠くのヘビよりも、
 近くのベニスズメの幼虫の方が、はるかに怖い」
ということなのだ。


追記(2015年9月13日)

チョウや蛾の翅にある動物の不思議な模様について、
最近日本でも紹介された「サティロス型擬態」という概念で、
統一的に解釈できるようになった。

以下の記事をご覧ください。

【古くて新しい擬態 サティロス型擬態】
 ↓   ↓   ↓
 http://kamemusi.no-mania.com/Date/20150913/1/




 

     

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擬態??③/④ リアル動物


(前回の【②/④】を、先にお読みください)


今回の5枚の写真は、結構リアルな動物の顔である。

しかも、前回の逆さに静止するだけの蛾とは違って、
より効果的に、外敵を驚かすような行動が伴っているのだ。

形態に連動した行動をすれば、鬼に金棒である。

 

今回は、そんな例である・・・

 


信じるか、信じないかは、あなた次第です。
(どこかで聞いたことがあるセリフ・・・?)

 



    


怒ってる犬??? ウンモンスズメ

2012年7月21日 白岩森林公園・青森

実は、この子は、美麗種ウンモンスズメの成虫である【注1】

彼らは、自分をどう見られてるのか分かっているように、
意図的に(?)翅を少しだけ立てているのだ。

しかも、ときどき耳の部分(実際は後翅?)を、
それらしく動かしたりもする。

ただ、偶然似ているのではなくて、明らかに、
それらしく見せるような動き方をするのだ。


このように、外敵に似せたような姿かたちと、
それに連動した特定の行動が認められる場合には、
何らかの適応的意味がある可能性を示唆する。

 

 


 

恐怖のドラゴン??? マダラツマキリヨトウ

2013年6月21日 矢立峠・秋田

これは、明らかに普通のヘビよりも、恐ろしげだ!!
ヘビと言うより、竜(ドラゴン)なのか?


この写真を見ると、前・中脚のフサフサの毛は、
体を大きく見せる効果とともに、
明らかに、胴体の模様に連動している。

しかも、その脚の位置が絶妙で、
通常の中脚は、後方を向くことが多いのだが、
この子の場合は、前方に向いて大きく開いて、
体全体で、ドラゴンの姿を演出しているのだ。

明らかに、分かってやっているのだろう【注2】

 

 


 

さりげない猿??? アサマキシタバ

2014年5月25日 津山市・岡山

この子の場合、普段は動物の顔(後翅!)は見えない。
何らかの刺激で、突然翅を開くのだ。

この動物は、私には、猿の顔のように見えるのだが・・・・

 

キシタバの仲間は、その名のとおり、
普段は、前翅に隠れて見えないのだが、
驚いたときや、飛び立つ直前には、
この写真のように、鮮やかな色の後翅表面の模様が見える。

普段見せていない模様を突然見せる方が、
いつでも見せているよりも、捕食者に襲われる確率が、
ほんのわずかだけ低かったので、
長い年月の間に、突然見せる個体の方が、
少しずつ増加していったのだろう【注3】

 




 

 


獲物を狙うフクロウ??? ヤママユ

2011年9月3日 酸ヶ湯温泉・青森

この子は、子供向けの本にも良く出てくる有名な蛾だ。

ただ、普段静止しているときは、このように、
目玉模様が見えないことが多い。


上のキシタバと同じように、突然翅を開いて、
この目玉模様を見せるのだ。

ヤママユの仲間は、比較的体が大きいので、
全体がフクロウのように見える。

 




 

 

やさしい犬?? コマバシロコブガ

2014年6月5日 矢立峠・秋田

以前、別個体の写真を紹介したことがあるが、
今回も全く同じイメージで、どう見ても犬の顔である。


ただ、この写真では、最初の写真の怒っている犬と違って、
やさしい顔なので、全く怖くない。

むしろ、我々人間には、愛想の良い犬に見えるが、
小鳥にとっては、やんちゃな天敵になるのだろうか?

 

 

とは言っても、今回紹介した写真の最大の問題点は、
実際の外敵とのサイズが違い過ぎることだ。

次回、野鳥類が今回のような「小さな虫の擬態者」を、
実際に、どのように見ているのかについて考えてみたい。

 

 


【注1】普通の静止状態では、おそらく、
    翅を持ち上げて静止することはないのだろう。

    その場合は、なかなか犬のようには見えないので、
    もしかしたら、上の写真のような状態のときは、
    危険を察知したときのポーズなのかもしれない。

 

   
【注2】このような書き方をすると、また友人から怒られそうであるが、
    正確に表現すると、
    「前・中脚に、胴体と同じ模様のフサフサの毛があり、
     普通は後方を向く中脚を、前方にして静止する方が、
     捕食者に襲われる確率が、ほんのわずかだけ低かった」
    ので、少しずつ増加していったのだろう。

 


【注3】もちろん、その防御効果は、
    捕食者を一瞬、躊躇させるだけである。

    だから「カメムシの匂い成分のようなビックリ効果」しかないのだ。
    ↓  ↓  ↓
    カメムシの匂いの不思議【03】ビックリ効果
    http://kamemusi.no-mania.com/Entry/30/ 

    虫たちの防御戦略⑬ 化学的防御手段
    http://kamemusi.no-mania.com/Date/20130304/1/

  


 

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擬態??②/④ 動物の顔


虫たちの中には、体の一部の模様ではなく、
全体(輪郭!)が、人や動物の顔に見える種類がいる。

当然、サイズもある程度大きくなるので、
前回紹介したような心霊写真のイメージは全くない。


中型以上の多くの蛾の仲間は、
前翅の先端が、多少とも離れて静止するので、
動物の耳のようなイメージになる。

さらに、前翅に左右対称の丸い目のような斑紋があると、
逆さに静止している場合に限って(!!)、
犬や猫の顔に見えてしまうことがあるのだ。
↓   ↓   ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20130711/1/
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20130714/1/


この逆さに静止するという行動(!)と、
左右対称の眼のような斑紋の存在が、
シンクロして起こることがしばしば認められるので、
これは、虫たちの生存戦略のように、私には思える【注】

 

今回は、とりあえず、一部は既出写真であるが、
左右対称の眼のような斑紋を持ち、しかも、
逆さに静止する蛾の写真を、まとめてみた。


予想以上に多くの例があることに、驚かされる・・・


 

 

動物の顔?

左上: マガリキンウワバ 矢立峠・秋田(20130831)
右上: ウチキシャチホコ 酸ヶ湯温泉・青森(20110831)
左下: タマナギンウワバ 酸ヶ湯温泉・青森(20130911)
右下: ゴマシオキシタバ 酸ヶ湯温泉・青森(20130911)

常夜灯の光に誘引されてくる蛾が、建物の壁などの垂直面に、
逆さ(頭を下に向けて)に静止していると、動物の顔に見えると、
私の娘も含めて、複数の人たちから別々に聞いたことがある。


確かに、実際の撮影現場で見たときには、
多分夢中で、あまりそんなことは考えなかったのだが、
改めてパソコンの画面で見ると、多少イメージが違って見えて、
もっともっと、動物の顔に見えてくるのだ。




 

 

動物の顔?

左上: クロスジコブガ 矢立峠・秋田(20130621)
右上: オスグロトモエ 乗鞍高原・長野(20110815)
左下: セダカシャチホコ 矢立峠・秋田(20130616)
右下: ベニモントラガ 志賀坊森林公園・青森(20130722)

このように、飛んできた蛾が、垂直面に止まるときには、
6本の脚の構造上、体重を支えるため、
横向きに静止することは、少ないようだ。

だから、上向きに止まるか、下向きに止まるかの、二者択一である。

この写真右上のオスグロトモエは、
今シリーズの例外で、上向きに静止しているが・・・
 
  

 

動物の顔?

左上: マルモンシロガ 矢立峠・秋田(20130802)
右上: ワモンキシタバ 木賊峠・山梨(20170819)
左下: アトジロシラホシヨトウ 矢立峠・秋田(20130616)
右下: オオアヤシャク 矢立峠・秋田(20130831)

多分、次に飛び立つ(逃げる)ことを前提とすると、
上向きに止まる方が、有利のような気がするのだが・・・

にもかかわらず、写真の被写体となった彼らは、
 多少の例外はあるが、垂直面に下向きに静止していたのだ。




 

 

動物の顔?

左上: ウスヅマアツバ 乗鞍高原・長野(20110815)
右上: オスグロトモエ 阿武隈高原・福島(20130812)
左下: ベニシタバ 酸ヶ湯温泉・青森(20130911)
右下: ヒメモクメヨトウ 木賊峠・山梨(20140819)

このように、下向きに静止することによって、
近づいてくる捕食者に、一瞬の間でも、
動物の顔を連想させることができるならば、
逃げる時の多少のハンデを上回る利益があるはずだ。

  
おそらく、視覚的に獲物を探す捕食者からの淘汰圧が、
上向きに静止するよりも、下向き静止の方が低ければ、
このような動物の顔擬態(仮称)は、そのまま進化し続けるだろう。




 

 

動物の顔?

左上: モンクロシャチホコ 矢立峠・秋田(20140621)
右上: アカシャチホコ 田沢湖・秋田(20100811)
左下: ニワトコドクガ 安曇野・長野(20130612)
右下: フクラスズメ 酸ヶ湯温泉・青森(20130612)

この写真左上のモンクロシャチホコは、
今シリーズの例外で、上向きに静止している。

下向き静止では、逆に動物の顔に見えないのだ。

この子が、上向きに静止する傾向があるのなら、
逆に自分の体がどう見られているかを、
知っている可能性だって、十分有り得るのだ。


 

という訳で、このような傾向(可能性?)があるというだけで、
実際にどの程度、外敵に対するの防御効果があるのかは、
現時点では、不明であると言うしかない。

詳細な観察結果や、数値データがないからである(多分?)。


とは、言うものの、実験的に確かめる術(すべ)はあるのだろうか?

 


次回は、もっともっとリアルな動物の顔をした蛾が、
さらに外敵を驚かす行動を伴っている例を紹介したい。

おいしいものを、後出ししているようではあるが・・・

 

 


【注】翅に左右対称の目立つ斑紋がある蛾は、
   逆さに静止して入れば、普通に、
   動物の顔に見えてしまうのかもしれない。


   気になるのは、左右対称の斑紋を持ちながら、
   逆さに静止しない蛾がどのくらいいるのだろうか?

   逆に、左右対称の斑紋を持たない蛾で、
   逆さに静止する蛾は、どのくらいいるのか?


   もちろん、今回紹介したように、
   モンクロシャチホコの場合には、
   上向きに静止しなければ、
   動物の顔に見えないという例外もある。

   

   

     

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