忍者ブログ

ちょっとだけ、不思議な昆虫の世界

さりげなく撮った昆虫のデジカメ写真が、整理がつかないほど沢山あります。 その中から、ちょっとだけ不思議だなぁ~と思ったものを、順不同で紹介していきます。     従来のブログのように、毎日の日記風にはなっていませんので、お好きなカテゴリーから選んでご覧ください。 写真はクリックすると大きくなります。   

春の珍事?! ⑥ イチモンジカメノコハムシ


このシリーズも、6回目となって、
そろそろ「ネタ切れ」か?
と、言うような雰囲気が漂っている。


しかし、春の珍事は、さりげなく続く・・・


今回は、以前に、幼虫を紹介したことのある、
ちょっとだけ不思議なイチモンジカメノコハムシだ。
↓  ↓  ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20130803/1/

自分の糞を背中に、半分隠れる状態で背負って、
まあ、笑えるくらい中途半端に隠れていた子である。

 


実は、成虫も、やっぱり、さりげなく・・・

 

 

イチモンジカメノコハムシ(ハムシ科)

2014年4月25日 ひたちなか市・茨城

体全体を、すっぽりと丸いカバーで覆っているのだが、
これが、また中途半端に半透明である。

どうして、わざわざ、こんな手の込んだ(?)ことをするのか?

 

 


イチモンジカメノコハムシ(ハムシ科)

2014年4月25日 ひたちなか市・茨城

普通に歩いているときは、このように、
触角も、脚も、カバーからはみ出している。

 


ところで・・・

多くのハムシの仲間は、捕食者(人も含めて?)が、
近づいてくるのを察知すると、ポロッと下に落ちてしまうが、
この子には、そんな行動は、全く見られない。

逆に、人が近づくと、本物のカメのように、
全く動かなくなってしまうのだ。

 

 

 

イチモンジカメノコハムシ(ハムシ科)

2014年4月25日 ひたちなか市・茨城

こうなると、葉っぱを軽くゆすっても、動こうとしない。

すぐに擬態とか言い出すという人もいるかもしれないが、
何かに擬態しているとしたら、やっぱり鳥の糞だ。

 

 

 

イチモンジカメノコハムシ(ハムシ科)

2014年4月25日 ひたちなか市・茨城

おそらく野鳥類は、こんな姿を見たら、
餌にしようとは、思わないだろう。


もちろん、獲物が動いた瞬間に捕獲するタイプの捕食者、
カマキリやハエトリグモとも、我慢くらべが続くのだろう。



 


そして、この半透明カバーには、
信じられないほどの重要な役割があるのだ

 

 

イチモンジカメノコハムシ(ハムシ科)

2014年4月25日 ひたちなか市・茨城

名前どおりに、触角と全ての脚を、
半透明カバーの部分に隠して、カメのようになってしまうと、
葉っぱとの間に、全く隙間がなくなり、
ピッタリと張り付いたようになるのだ。


もし仮に万が一、この「鳥の糞」を捕獲しようとしても、
ツルッと滑ってしまう感じで、
全く、物理的にも、捕まえることはできないだろう


・・・と言う、掴みどころのない春の珍事でしたemojiemojiemoji

     

拍手[18回]

PR

君はミノムシ? クサカゲロウ幼虫??


いきなりですが・・・

 


枯れ葉?

2013年9月7日 白岩森林公園・青森

緑色の葉っぱの上に、小さな枯れ葉の塊(=塵)がある。

 

 


枯れ葉??

2013年9月7日 白岩森林公園・青森

でも、よく見ていると、かすかに動く。

 

 

クサカゲロウ幼虫(クサカゲロウ科)

2013年9月7日 白岩森林公園・青森

もっと、よく見ると、下に足や腹部が確認できる!!

クサカゲロウ(種名不詳)の幼虫が、
自分の体に、【その辺に落ちている】枯れ葉などの塵を、
さりげなく付着させているのだ。

 

 

さらに・・・

 

 

枯れ葉?

2013年10月7日 弘前市・青森

緑色の葉っぱの上に、小さな枯れ葉の塊(=塵)がある。

 

 


枯れ葉??

2013年10月7日 弘前市・青森

でも、よく見ていると、かすかに動く。

 

 


ニトベミノガ幼虫(ミノガ科)

2013年10月24日 弘前市・青森

もっと、よく見ると、前方に小さな頭部がある。

これは、ニトベミノガの幼虫が、
多分【自分で切り取った?】枯れ葉や枯れ枝などで、
さりげなくミノを作って隠れているのだ。

 


このように、本物の枯葉や枯れ枝を、
うまい具合に、身に付けていれば、
このブログで今まで紹介してきた「擬態する虫たち」のように、
苦労して自分の体そのものを、変化させる必要はないのだ。

 

 


ここで、ミノムシとクサカゲロウの違いについて、
もう一度、詳しく見てみよう。

 

クサカゲロウ幼虫(クサカゲロウ科)

2013年9月9日 だんぶり池・青森

これは、どうみても、葉っぱの上のゴミだ!!

 

 


クサカゲロウ幼虫(クサカゲロウ科)

2013年9月13日 だんぶり池・青森

だんぶり池では、時間が沢山ある場合が多いので、
結構熱心に(?)虫を探すのだが、
枯れ葉(?)が動かなければ、多分私も見逃していただろう。

 

 

今度は、ミノムシ・・・

 

 

ニトベミノガ幼虫(ミノガ科)

2013年10月21日 弘前市・青森

ミノムシの方は、クサカゲロウより、多少探しやすい。


理由はお分かりだろうか?


ミノムシには、必ず葉っぱに食痕が残るのだ。

捕食者であるクサカゲロウ幼虫には、
当然、葉っぱに食痕は見当たらない。

 


というわけで、以下も元記事もご覧ください。


擬態よりすぐれているのか? フタモンクサカゲロウ
↓  ↓  ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20110107/1/


擬態より完璧??? ニトベミノガ
↓  ↓  ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20131029/1/

 

         

拍手[17回]


擬態より完璧??? ニトベミノガ幼虫

このブログで何度か紹介したように、
自分自身の姿かたちを、枯れ葉や枯れ枝に似せて、
外敵から身を守っている虫たちは、少なくない。


マエグロツヅリガ 保護色から隠蔽的擬態へ
↓   ↓   ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20120729/1/


 
隠蔽的擬態? 非食物擬態?? ムラサキシャチホコ
↓   ↓   ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20130818/1/



しかし、これから紹介する子の考え方は、
ミラクル擬態するムラサキシャチホコの斜め上を行くのだ。

苦労して、自分自身の体を、
枯れ葉や塵に似せるなら、
最初から本物を体に付着させれば、
それに勝る隠れ蓑はないし、
より現実的で良いじゃないか?

その代表が、クサカゲロウの幼虫である。

擬態よりすぐれているか? クサカゲロウ幼虫
↓   ↓   ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20110107/1/


 

そして・・・・・もっと有名な虫がいる。

 

 

ん!!! 枯れ葉? 枯れ枝??

2013年10月7日 弘前市・青森

シロシキブの葉っぱの上に、枯れ葉が落ちている。
よく見ると、枯れ葉だけでなく、枯れ枝もある。

でも、葉っぱの表面に、何かにかじられたような痕跡が・・・

 

 


ニトベミノガ幼虫(ミノガ科)

2013年10月7日 弘前市・青森

別のとこにも、枯れ葉の固まりがあるが、
同じように、葉っぱの表面がかじられている。


この枯れ葉は、ミノムシのようだ(注)


ただ、良く知られているオオミノガは、
弘前にはいないので、どうやら、この子は、
ニトベミノガという別種の幼虫のようである。

 

 


ニトベミノガ幼虫(ミノガ科)

2013年10月7日 弘前市・青森

となりのハマナスの葉っぱにも、2匹発見。

こちらは、あちこちに食痕があって、
庭木が害虫に食害されている状況である。

このように、ミノムシは、
樹木の葉や果実の表面を食べて、
外観を損なわせるため、
昔から植木や果樹の害虫として良く知られている。

 

 


ニトベミノガ幼虫(ミノガ科)

2013年10月24日 弘前市・青森

この写真は、半月ほど経過してから撮ったのだが、
やっぱり、枯れ葉が落ちているようにしか見えない。

そして・・・・、
ハマナスにいるミノムシは、
枯れ枝を使用していないことに、
写真を見て、初めて気が付いた。

シロシキブにいるときには、
扱いやすい小枝も利用するようだ。


 


ニトベミノガ幼虫(ミノガ科)

2013年10月24日 弘前市・青森

ミノムシ(ミノガ幼虫)は、
落ち葉や枯れ枝のごみの中に、
隠れるのではなくて、自らの体に、
それをくっつけてしまうのである。

こうすれば、自由にどこでも歩き回ることができるし、
もし・仮に・万が一、捕食者に見つかってしまっても、
蓑の中に隠れていれば、蓑ごと食われてしまうことはない。

これは、2重に防御効果を持つことになるので、
枯れ葉に擬態するよりも、ほぼ完璧に、
捕食者から、自分の身を守ることができるだろう。

ちなみに、ニトベミノガは、若齢幼虫で越冬するので、
この写真のミノムシは、春に成虫が脱出した後の蓑である。


(注)ミノムシ(蓑虫)は、
   ミノガ科のガの幼虫の総称であるが、
   一般には、その中でもオオミノガの幼虫を指す。

   オオミノガの分布北限は、
   山形県(日本海側)と岩手県(太平洋側)とされており、
   仮に植木などについて運ばれたとしても、
   弘前での越冬は難しいと思われる。

   オオミノガを含めて、昔から日本では、
   ミノムシの存在は、広く知られていて、
   その蓑を加工した和風の財布やしおりが、
   民芸品として売られていた。

   ところが、1990年代後半からオオミノガは激減した。

   原因は、オオミノガにだけ寄生する外来種のオオミノガヤドリバエである。

   その寄生率は、5割~9割に達すると言われており、
   ミノムシは、各地で絶滅危惧種になってしたったのである。

   

     

 

拍手[17回]


虫たちの防御戦略⑮/⑮ 防御行動の進化

この地球上に存在する捕食者と被食者が、
それぞれ生き残っていくために、様々な工夫をしていることは、
数枚の写真を見るだけで、何となく想像できる。

いや、たった1枚だけの写真でも、
生き物たちが、食べるものと、食べられるものに、
分かれてしまう宿命のようなものを感じるし、
その関係の中で、一体どんなことが起こっているのかを、
さりげなく考えさせてくれるのだ。


虫たちは、これまで連続で紹介してきたように、
捕食者に対する様々な防御手段を進化させてきた。

しかし、そのどれをとってみても、個体が行なう防御行動は、
絶対的な効果のあるものではなかった。


これは、捕食者の側からみても、全く当然のことであり、
彼らも生きるために、あるいは子孫を残していくために、
他の生物を、食物源(餌)としなければならない。

だから、被食者の行う様々な防御行動に打ち勝つために、
捕食者も、それそれの対抗手段を、進化させてきたのだ。

 

私が、個人的に非常に興味を持っているのは、
自分の姿かたちを、他のものに似せることによって、
外敵を騙して身を守る「擬態」という戦略である。

小さな虫たちが、何か別のものに似せるというやり方は、
「捕食者に食べられないようにするための手段」としては、
手っ取り早く行える最も簡単な方法なのかもしれない。


でも、この方法にも、その完成度(?)は、
ピンからキリまであり、程度の差があるにもかかわらず、
みんな生き残っているのだ。

その中で、最も興味深いのが、ミラクル擬態である。
捕食者側の視覚による識別能力が、よりシビアになればなるほど、
やり過ぎとも思えるミラクル擬態出現の可能性が出てくる。

ハイイロセダカモクメやアケビコノハの擬態を見ると、
そのような虫たちには、中途半端な妥協を許さない、
視覚に優れた捕食者の存在が、見え隠れするのだ。

 

では、何故、みんながミラクル擬態にならなくても、
生き残ることができたのだろうか?

一見、中途半端に見える擬態者は、これからも、
本当にそのままで良いのだろうか?

 

今回は、虫たちの防御戦略⑮として、蛇足ではあるが、
そんなことを考えてみたいと思う。


目立たなくする隠蔽的擬態【Mimesis】の場合には、
あまり葉っぱや枯れ枝に似てなくても、
基本的には、目立たなくする方に向かっているので、
中途半端(未完成?)なものでも、
捕食の機会を、少しは減らすことができるのだろう。


この場合には、何となく理解できるような気がする。

枯れ葉に見せかけた蛾を例に、その擬態の完成度を比較してみよう。


クロズウスキエダシャク(シャクガ科)

2010年9月8日 白岩森林公園・青森

色彩と模様が、やや枯れ葉を思わせる程度で、
輪郭は、葉っぱというより、蛾である。

 

オビカギガ(カギバガ科)

2012年6月26日 道の駅万葉の里・群馬

もう少し枯れ葉の色彩に近づき、しかも、
翅の両端がとんがって、葉っぱの葉柄を思わせる。

 

クロホシフタオ(ツバメガ科)

2010年9月8日 白岩森林公園・青森

翅に深い切れ込みが入って、より枯れ葉に似てくる。

 

マエグロツヅリガ(メイガ科)

2012年7月21日 白岩森林公園・青森

さらに、翅が内側に巻き込み、頭部が葉柄にみえる。
ここまでくると、どう見ても枯れ葉である。

ミラクル擬態と呼んでよいレベルであると思う。

 

アカエグリバ(ヤガ科)

2007年10月5日 徳島市・徳島

これは、どうみても枯れ葉である。

多分、本物の落ち葉の中にいれば、
誰も見つけ出すことはできないだろう。

 

このように、枯れ葉に擬態する虫たちにも
様々な程度のものが混在している。


そして、あまり完成度が高くない場合でも、
全く問題なく生き残っているのだろう。

 

 

しかし、目立たせる標識的擬態【Mimicry】の場合には、
あまりモデルに似ていないと、中途半端に目立つようになって、
捕食者に発見されやすくなり、その目立つだけの姿かたちは、
むしろ逆効果になってしまう可能性がある。

 

今度は、ハチに似せた蛾を例に、その擬態の完成度を比較してみよう。


トンボエダシャク(シャクガ科)

2010年8月1日 だんぶり池・青森

ごく初期の段階のハチ擬態である。
まあ、このようなハチもいることはいるが・・・

 

コスカシバ(スカシバガ科)

2010年7月27日 だんぶり池・青森

翅が透明になり、胴体の感じも、ハチに近づいた。

 

ホシホウジャク(スズメガ科)

2010年11月10日 新木場公園・東京

飛んでいる格好は、ハチであるが、
静止状態では、蛾である。

 

クロスキバホウジャク(スズメガ科)

2011年7月3日 白岩森林公園・青森

こちらは、止まっていてもハチを思わせる。

より、ハチの姿に似てきている。

 

セスジスカシバ(スカシバガ科)

2011年9月8日 白岩森林公園・青森

これで、ハチ擬態の完成だ。

初めて見た人は、これが蛾であるとは思わないだろう。

 

何故、このような良く目立つ標識的擬態者の場合にも、
ほぼ完全なハチ擬態者がいる一方で、
不完全に目立つ擬態者が、生き残っているのだろうか?


考えられる一つの理由は、捕食者にとってみれば、
人間が毒キノコを、見分けるのと同じように(?)、
それを食べるか食べないかは、命がけの選択なので、
ちょっとでも怪しいと思えば、手を出さないのかもしれない。

多分、Ⅲ(2).で少し考えたように、カトカラ類が飛び立つ直前に、
突然見せる後翅の模様が、赤系統の目立つ色以外にも、
青や白、黒色まで、様々なタイプがあり、みんなそれぞれが、
立派に生き残っていることと関係するのかもしれないのだが・・・・


もう一つの理由として、最もありがちな回答であるが、
擬態者の数と、モデルの数のバランスなのかもしれない。

モデル種の数の方が圧倒的に多い場合には、
過去のモデル種での嫌な経験を覚えていて、
擬態者があまり似ていなくても(不完全でも?)、
捕食者は擬態者を避ける傾向が強まるだろう。

だから、一般的なハチの仲間に似せているエダシャクやホウジャク類は、
モデル種の数の方が、擬態者の数より(多分)かなり多いので、
あまり似ていなくても良かったのかもしれない。

一方で、特定のハチの種がモデルになっているセスジスカシバの場合には、
どうしても、数のバランスが微妙である。

セスジスカシバ(擬態者)とキイロスズメバチ(モデル)を比較した場合、
実際に野外で見かける個体数は、どちらが多いのだろうか?

そんなことはありえないだろうが、
もし、モデルの数より擬態者の数の方が多ければ、
捕食者は、危険なモデルよりも、無害な擬態者に遭遇する頻度が高くなって、
擬態者の発する信号は、あまり意味がなくなり、
逆に捕食されやすくなる可能性さえあるのだ。

⇒隠蔽的擬態のように、枯れ葉がモデルの場合には、
 どう考えたって、枯れ葉の方が多いに決まっている。
 だから、枯れ葉にあまり似てなくても、大丈夫なのかもしれない。

 

全ての擬態者が、ミラクル擬態を目指す必要がない、
3番目に考えられる理由がある。

姿かたちが有毒あるいは危険なモデルによく似ること以外にも、
擬態者の行動(動き方)が、重要な意味を持っているのだ。

例えば、ハチに擬態するトラカミキリ成虫は、
細かく触角を振りながら、ハチのような歩き方をするし、
有毒のベニモンアゲハに擬態するシロオビアゲハのメスは、
モデルと同じようにふわふわと飛ぶ。

この動き方まで似せることは、特に遠くから獲物を見つける捕食者には、
有効な手段であり、姿かたちの類似性が不十分であることを、
かなりカバーすることができるのだ。

逆に言うと、モデルが動く場合には、当然その行動まで似せなければ、
形状がどれだけ似ていても、その効果が薄くなってしまうことも意味している。

 

もちろん、この3つの理由以外に、重要なことががあるのかもしれない。

もっと言えば、完成度の違う擬態者がいることは、別に何の意味もなし、
不思議でもなんでもないのかもしれない・・・・・

 


最後に、ちょっとだけ遠目に撮った3枚の写真を、ご覧ください。

このような写真は、普段あまり目にすることはないと思うが、
実際に獲物を探す野鳥類が見ると思われる景色(?)を想定したものである。

⇒いつもより大きい画像です。
 写真をクリックして、ミラクル擬態を実感してください。

 


マエグロツヅリガ(メイガ科)

2012年7月21日 白岩森林公園・青森

ちょっとした風でも、今にも落ちてしまいそうな枯れ葉。
(蛾に見えるが、やっぱり枯れ葉だろうな・・・)

 

セスジスカシバ(スカシバガ科)

2011年9月8日 白岩森林公園・青森

遠くに、怖い怖いスズメバチ。
(危ないから近づくのはよそう・・)


ヒトツメカギバ(カギバガ科)

2012年9月13日 芝谷地湿原・秋田

落下してきた直後の鳥の糞。
(あんなもの食べ物ものではないよ・・・)

 

拍手[21回]


虫たちの防御戦略⑭/⑮ 物理的防御手段

カマキリの前肢、コロギスやスズメパチの大顎など、
自分の獲物を捕らえる攻撃的な手段となるものが、
外敵に対する防御手段にもなる可能性は高い。

 

一例だけ写真を示そう。



2011年10月18日 東海村・茨城

花にいたキイロスズメバチの写真を撮っていたら、
急に自分に向って飛んで来た瞬間!!

秋になると、スズメバチの仲間が人を襲うというニュースが流れる。
もちろん、彼らの外敵(人間)に対する防御行動である。

スズメバチの強靭な大あごは、かなり怖い。
何か、肉をそぎ取られてしまうような恐怖もある。

 


しかし、獲物を襲うことのない虫たちも、
物理的な防御手段を、独自に発達させている。

最も分かりやすいのが、全身に毛やトゲを持つ虫たちだ。

多くはチョウ目の幼虫で、中には、
こんなやり過ぎとも思えるトゲトゲを持っているものもいる。

 



2011年8月16日 乗鞍高原・長野

多分アカヒゲドクガ幼虫。

なんか、形状の異なる数種の毛が、体中に生えている。
見た目だけで、関わり合いになりたくないイメージである。

良く見ると、両サイドの短い毛は、アリの攻撃を防げそうである。
上に伸びる長い毛は、ムシヒキアブやサシガメの攻撃を、
邪魔することが出来そうである。
 
ただ、鳥に対する防御効果は、全くなさそうだが・・・・

 



2012年9月26日 ひたちなか市・茨城

リンゴドクガ幼虫。

これだけ見事に毛があると、思わず笑ってしまいそうになる。

多分アリ対策用の毛だろうが、寄生蜂にも効果がありそうだ。

 

 


2012年8月3日 白布温泉・山形

あまり良い写真ではないが、サカハチチョウの幼虫。

こちらは、物理的防御法というより、
視覚的防御法(?!)なのかもしれないが・・・・

 



2011年1月15日 渡良瀬遊水地・埼玉

これは、越冬中のトホシテントウ幼虫。

明らかに「やりすぎ感満載」のトゲトゲがある。

テントウムシの場合は、有毒成分も体内に持っているので、
野鳥類は、食べないようであるが・・・・

 



2012年4月10日 透過村・茨城

樹皮の下にいたウスアカフサヤスデ。

トホシテントウと比べるのもかわいそうだが、
この子は、ちょっとインパクトが少ない。

こんな毛でも、アリのような小さな捕食者には、
おそらく、十分有効なのだろう。

 

いずれにしても、このような毛束やトゲトゲは、
野鳥類やトカゲ・カエルなどの大型の捕食者に対しては、
見た目ほど効果的ではないのかもしれないが・・・・

 


次は、物理的防御法として、最もふさわしい(?)タイプである。



2012年8月22日 十石峠・長野

ホシナカグロモクメシャチホコ幼虫。

シッポに痛そうな棘がある2本のムチをもっていて、
アリなどの攻撃を受けると、それをふりまわして追い払う。

人が近づいても、結構な勢いで威嚇するので、
大型捕食者も、攻撃をためらうかもしれない。

 



2011年7月25日 酸ケ湯温泉・青森

こちらはモクメシャチホコ幼虫。

この子も、同じようなイメージであるが、
もしかしたら、Ⅲ(4).で取り上げたような、
体の前後を逆に見せかける効果もあるかもしれない。

 


また、写真はないのだが、学生時代、実験材料として、
マツノキハバチ幼虫の採集のお手伝いをしたことがあるが、
人が近づくと、幼虫が体を急激にU字型にそらせたり、
ブルブル震わせたりして、威嚇してくる。

実際に、鳥をおどかしたり、寄生者をふりおとしたりするらしい。


また、ある種のカツオブシムシの幼虫は、
腹部に顕著な毛のフサを持っていて、外敵におそわれたときに、
それを相手の体に付着させて動けなくする。

これはとくに小さなアリなどの外敵に対しては、
効果的な防御手段となるようだ。

 

最後に、有名な物理的防御法を紹介しよう。

ニホンミツバチが、オオスズメバチに対して行う蜂球だ。

オオスズメバチはミツバチの巣を襲い、成虫を殺した後で、
幼虫や蛹を自らの巣に運び仔の餌として利用する。

ニホンミツバチは、このようなオオスズメバチの襲撃に対して、
集団でボールのような感じで取り囲み、翅を震わせて熱を発生させ、
中にいるオオスズメバチを蒸し殺すという、
非常にユニークな戦略を進化させてきたのだ。

ちなみに、日本でも良く見かけるセイヨウミツバチは、
そのような行動はとらず、むやみに挑みかかり、
皆殺しの憂き目に会うことが多い。

ヨーロッパには、ミツバチを襲う大型のスズメバチがいないので、
そんな行動は進化してくるはずもないのだ。

 

拍手[20回]