ベイツ型擬態を見破る疑似体験④ アブ? ハチ??
一般的に、よく目立つ標識的擬態の虫たちは、
目立たない保護色や隠蔽的擬態する種に比較して、
その完成度は、かなり高くなければならないはずです。
⇒もともと警戒色の虫がモデルなので、
捕食者の目に付きやすい色彩であり、
不完全な擬態だと、捕食者に、
簡単に見破られてしまうからです。
だから、ハチに擬態するアブの場合も、
前回①・②・③で見たように、その完成度は高く、
よく見ないとハチと間違えるほどだったのです。
ただ、今回④は、どちらかというと、
簡単に、擬態を見破ることが出来ると思います。
その理由のひとつは、モデルとなるハバチ類が、
スズメバチやクマバチほど危険な種類ではなく、
際立って目立ちやすい姿かたちでもないからです。
もしかすると、ハバチの仲間に擬態したアブ(ハエも!)は、
ベイツ型擬態ではなく、偶然似ているだけかもしれません。
・・・という訳で、
今回の疑似体験では、かなり分かりやすいと思います。
あなたは、以下の写真の中で、
どの子を手で掴みますか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・回答です。
まずは、モデルとなったハチは、右下と左上です。
左上:モンキハバチ(ハバチ科)
2012年6月27日 白馬岳山麓・長野
オレンジ色に近い黄色と黒色が目立ちます。
薄黄色の翅にも、同じような黒い紋があるので、
葉っぱの上にいると、すぐに発見できます。
近縁種はいないようで、同定は間違いと思います。
右下:ツマグロハバチの仲間(ハバチ科)
2011年7月16日 温根湯・北海道
この子は、翅端まで2cmほどの大きいハバチです。
翅の先が黒いので、ツマグロハバチと名付けられたのでしょう。
⇒いずれにしても、今回の2種のハチは、
ベイツ型擬態のモデルになるのか、
非常にまぎらわしいところですが・・・
・・・右上と左下の2種が、アブ・ハエです。
右上:クロバネツリアブ(ツリアブ科)
2012年6月27日 ひたちなか市・茨城
襟元に茶色いスカーフを巻いて、
裾が真っ白のラインのあるミニスカート・・・???
ネット情報ですが、他のツリアブ科の幼虫と同じように、
ハチ類の幼虫に、寄生するようです。
ただ、具体的なハチの種類や、
どのように寄生するのかについては、
詳しくはわかっていないようです。
左下:ヒゲナガヒロクチバエ(ヒロクチバエ科)
2015年7月27日 だんぶり池・青森
この写真だけを見れば、ほとんどの人がハチと言いそうです。
ただ、ハチ擬態にしては、金属光沢が強すぎて、
モデル種のハチがすぐには思いつかないのですが・・・
⇒気になる点を挙げれば、複眼にある縞模様で、
これはアブの仲間に多く見られます。
・・・という訳で、4回続いた「アブ・ハチ」問題でした。
(蛇足)
このブログを見ていただいた方の多くは、
自他共に許す「虫マニア」だと思います。
そして、多くの「虫マニア」の人たちは、
アブ・ハチを見つけて、毒ビンに入れるのは、
どちらか一方の種だけのような気がします。
独断と偏見ですが、私の予想では、
「ハチが好きな人は、アブが嫌い」で、逆に、
「アブが好きな人は、ハチが嫌い」だと思います。
両方とも、同じように好きな人は、
多分、そんなに多くないと感じています。
⇒その理由は、お互いに良く似ているので、
瞬間的に、間違えやすいから・・・・??