忍者ブログ

ちょっとだけ、不思議な昆虫の世界

さりげなく撮った昆虫のデジカメ写真が、整理がつかないほど沢山あります。 その中から、ちょっとだけ不思議だなぁ~と思ったものを、順不同で紹介していきます。     従来のブログのように、毎日の日記風にはなっていませんので、お好きなカテゴリーから選んでご覧ください。 写真はクリックすると大きくなります。   

擬態??④/④ サイズの違い


これまで、蛾の模様が野鳥類が怖がる天敵に似ており、
しかも、それを効果的に見せるような行動が伴っている例を、
このブログで紹介してきた。
↓   ↓   ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20141204/1/
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20141207/1/


しかし、ひとつだけ、避けて通れない大きな疑問点が残っている。

それは、小さな虫たちの持つ宿命なのだが、
モデルとなった種とのサイズの違いだ。

野鳥類の天敵であるヘビや犬、フクロウなどとは、
大きさが、あまりにも違いすぎるのだ。


ただ、サイズの違いが実際の防御効果に対して、
一体どれだけのマイナス要因になっているのかは、
個々の現場で、詳細な検討が必要であるだろう。

 


まずは、もう一度小さいヘビを見てみよう。

 

ベニスズメ幼虫(スズメが科)

2010年10月12日 白岩森林公園・青森

この姿だけ見ると、普通のイモムシで、
我々人間は、それほどヘビ似てるとは思わない。

ただ、反り返るように、頭部を空中において、
ゆっくり振ると、背中の目玉模様と、
爬虫類によくある不気味な色が、
サイズは小さいのだが、十分すぎるほど、
ヘビを連想させる。

 

 

アケビコノハ幼虫(ヤガ科)

2010年10月8日 弘前市・青森

このヘビの姿は、多少漫画チックであるが、
ヘビの恐ろしさが、極端に強調されている。

もちろん、我々人間も、いきなりこんな虫が目に入ったら、
多少は、ビックリするのかもしれない。

もちろん、背中を丸める(?)という、
ヘビの姿を効果的に見せる行動も伴っている。

 

 

 

カシワマイマイ幼虫(ドクガ科)

2014年7月1日 早来・北海道

アケビコノハ幼虫よりも、より怖さを強調した例もある。

この写真は、普段は見せないが、私が撮影のために近づいたときに、
上半身を持ち上げて、威嚇してきたときのものだ。

こんな風に、実在しないような、ドラゴンのような姿も、
野鳥類にとっては、リアルなヘビより恐ろしい存在なのかもしれない。

それにしても、このサイズは小さすぎる。

 

獲物を探している野鳥類が、このような
「自分よりも明らかに小さいヘビの姿を見て、驚いて逃げる」
ということが本当にあるのだろうか?

 

 


・・・いよいよ、本題・・・・

 

 

普段、野鳥類の写真を撮ろうとして、
かなり慎重に近づいても、あっという間に、
逃げられてしまったという経験は、良くあることだ。

小鳥たちは、常に自分の敵が近くにいないか、
ビクビクしながら、餌を探しているのだろう。
 
そして、少しでも怪しいと感じたら、
あっという間に、その場から飛び去ってしまうのだ。

 

 


シマヘビ(ナミヘビ科)

2011年9月26日 小泉潟公園・秋田

また、小鳥たちが、自分の卵やヒナがいる巣に向かって、
恐ろしいヘビが近づいてくるのを経験すると、
ちょっと小さいけれど、蛇のような姿や色を見て、
どんなに恐怖心を掻き立てられるのか、十分想像できる。


多くの小鳥たちは、ヘビのような外敵に対して、
おそらく、必要以上に敏感に反応してしまうのだ。

私が想像するに、
「野鳥類は、ヘビの姿をハッキリと認識するが、
 それがどの辺にいるのかまでは、
 なかなか把握しにくい」
のではないかと思う。

 

 

 

ジョウビタキ(ツグミ科)

2010年3月27日 石廊崎・静岡

多くの野鳥類は、視野はかなり広いが、
サイズや遠近感を認識するのは、苦手なのかもしれないのだ。


野鳥類の目は、顔の左右に分かれたところにある。

例外がフクロウの仲間でで、人間と同様、
正面に2個ならんで付いている。

いわゆる立体視(遠近感が分かる)ができるのは、
フクロウや人間の眼のような顔の全面に、二つある場合だけだ。

もしかしたら、野鳥類は、左右の目の位置から、
大きさの把握が出来にくいのかもしれない。

だから、鳥が、餌だと思った蛾の姿を見て、
ちょっとでもヘビの姿を連想すれば、
大きさなどに、多少の不自然な点があったとしても、
少なくとも一瞬は躊躇し、その場から、
飛び去ることは、十分考えられることだと思う。

 

 

という訳で、今回の結論としては、
 ① 野鳥類は、必要以上に怖がりである。
 ② 野鳥類は、遠近感とサイズ認識が苦手である。
というふたつの理由が重なって、
虫たちの「野鳥類の天敵」に擬態するという防御法は、
予想外に有効であることが分かったのである。

  
何を隠そう、・・・別に隠してるわけではないが、
私が一番言いたかったことは、
「小鳥たちにとって、遠くのヘビよりも、
 近くのベニスズメの幼虫の方が、はるかに怖い」
ということなのだ。


追記(2015年9月13日)

チョウや蛾の翅にある動物の不思議な模様について、
最近日本でも紹介された「サティロス型擬態」という概念で、
統一的に解釈できるようになった。

以下の記事をご覧ください。

【古くて新しい擬態 サティロス型擬態】
 ↓   ↓   ↓
 http://kamemusi.no-mania.com/Date/20150913/1/




 

     

拍手[26回]

PR