・・・・ 寿 命 ・・・・
ここ半年程の間に、生物の寿命について、
あれこれと想いを巡らすことがあった。
その直接的な原因は、昨年11月に愛犬アイン君と、
今年3月に母を、相次いで亡くしたことだ。
いずれも死因は、事故や病気でなく、老衰であった。
自分の力で、食べ物を摂取することが出来なくなって、
本当に枯れるように、逝ったのだ。
これって、ちょっとだけ不思議な話だ。
普通の、と言うか、地球上のほとんどの生き物は、
基本的に、寿命(老衰)で死ぬことはないからだ。
単細胞生物は、2分裂で全く同じ個体ができるので、
基本的に寿命という概念はない。
一方の多細胞生物は、ある特定の期間が経過すると、
子孫となる個体を新たに産みだすという方式で、
自らの生命を繋いでいく。
だから、多細胞の動物は、自分の子を産めば、必然的に老化し、
個体が死に至るという「寿命」が存在してしまう。
逆に言うと、子を産んだ親が永遠に生きていては、
むしろ邪魔になってしまうからだ。
当然、普通の生物は、老化が進むと、
決して元に戻ることはできない。
ただ、以前もこのブログで紹介したように、
ベニクラゲという海の中の小さな多細胞動物は、
ときどき「若返り」を行うことで、不老不死と言われている。
ベニクラゲは、ある程度の期間生存すると、
組織や器官を退化させ、肉の塊のようになる。
その後、その肉の塊は、若いポリプに戻り、若返りを起こすのだ。
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http://kamemusi.no-mania.com/Date/20120221/1/
当然のことながら、ベニクラゲは、例外中の例外であり、
今のところ、これができる生物は、他に発見されていないようだ。
ようやく、ここからが「虫たちの寿命」の話・・・・?
当然のこととして、虫たちの生理的な寿命の長さには、
それぞれの種によって、かなり異なっており、
数ヶ月~1年という長さが一般的である。
虫たちは、老衰で死ぬことはあるのだろうか?
実際に自然状態では、どんな死に方をしてるのか?
手元の資料に、アメリカシロヒトリの生命表データがある。
実験方法の詳細は省略するが、例えば、9528個の卵のうちで、
羽化して成虫にまでなったのは、わずか10個体であった。
アメシロ幼虫の場合には、いわゆる生理死はごく少なく、
ほとんどの個体の死亡要因は、クモ、カマキリ、アシナガバチと
野鳥類による捕食であった。
このブログのテーマの一つでもあるように、
虫たちは、様々な工夫で捕食者から逃れようとするが、
残念ながら、彼らの死亡原因は、
ほぼ全てが、事故死(他の動物の餌)なのだ。
もっと言えば、産卵数の多い虫たちは、
ほとんどの個体が、幼虫時代に、
他の生物に食われてしまう運命にあるのだ。
虫たちの世界では、特別野例外を除いて、
ごく一部の個体だけが、成虫になるのだ。
しかし、話はこれでは終わらない。
無事に成虫になっても、それから雌雄が出会って、
交尾・産卵を行わなければならない。
それが無事に済んでからでないと、老衰による死とは言えない。
虫たちの老衰死の極端な例を挙げれば・・・
単為生殖を繰り返して増殖するアブラムシ類は、
約10日ほどで成熟し、無翅胎生雌虫を産む。
また、同じカメムシ目に属する、アメリカの17年ゼミは、
土の中で17年間も幼虫として過ごし、羽化すると、
交尾・産卵後はすぐに死亡する。
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http://kamemusi.no-mania.com/Date/20130215/1/
おそらく、上記の二つの例では、アブラムシも、17年ゼミも、
定義上は、例外的に「老衰」で死ぬことになるのだろう。
アイン君(18才)
2012年9月22日 ひたちなか市・茨城
通常の虫たちの場合、無事に(?)成虫になって、
交尾・産卵を終えた個体だけが、老衰で死ぬ権利を得るのだが、
その確率はかなり低いことは、間違いないことだろう。
アイン君が死んで、初めて2週間のMMT【注】に出かけた。
途中で立ち寄った鳥海山、八幡平、霧ケ峰、安曇野では、
アイン君と一緒に、虫の写真を撮りながら歩いたことを、
ふと思い出してしまう「ペットロスのおっさん」がいた。
【注】懐かしの1960年代、ビートルズが歌っていた、
Magical Mystery Tour というヒット曲があった。
学生時代の昆虫サークルでは、
採集予定をスケジュール表に書き込んでいたが、
厳密な予定を組まないでどこかへ出かける場合に、
Magical Musitory Tour(MMT) と呼んでいた。