虫たちの親子-24 スジモンヒトリ
親子シリーズ、再開します。
一般的に、ケムシ(毛虫)と呼ばれるのは、
チョウやガの幼虫のうち、身体に長い毛が生えているものを言う。
⇒長い毛の生えていない幼虫をイモムシと言うが、
長い棘(トゲ)を持った、例えばサカハチチョウの幼虫は、
ケムシともイモムシとも言わない・・・??
とりあえず、ケムシの仲間は、毒針毛を持っているので、
毛嫌い(!?)されることが多いが、実際に有毒なのは、
ドクガ科、カレハガ科、ヒトリガ科、イラガ科、
マダラガ科の一部の幼虫に限られるようだ。
だから、触っても大丈夫なケムシも多いのだ。
今回のケムシは、どっちだろうか?
スジモンヒトリ幼虫(ヒトリガ科)
2011年8月3日 だんぶり池・青森
ちょっと見ると、かなりヤバそうな姿だが、
この子は、イラガやチャドクガのように、
毒針毛を持っていないので、
触っても「痛い!」とか「痒い!」とかはない。
ただし、間違っても食べてはいけない!!!!
⇒そんな人は、滅多にいないが?!
スジモンヒトリ幼虫(ヒトリガ科)
2011年8月2日 芝谷地湿原・秋田
このように赤みがった毛の色は、
よく目立つので、捕食者に対して、
何らかの防御効果があることが推定される。
もちろん、後で出てくる成虫も、
警戒色っぽい雰囲気を持っている。
だから、体内に、植物起源の不味成分を、
蓄積している可能性があるのだ。
スジモンヒトリ幼虫(ヒトリガ科)
2011年8月2日 芝谷地湿原・秋田
という訳で、早速、スジモンヒトリ幼虫の食草を、
ネットで調べてみると、オオハンゴンソウ、
ムラサキシキブ、クワなどの微妙な植物が出てくる。
実は、キク科、シソ科、クワ科 ニレ科、アブラナ科などの植物は、
全部ではないが、微妙な有毒植物なのである。
だから、そのような植物を食草とする幼虫は、
ちょっとだけ派手な姿かたちであることが多い【注】。
カメムシの例でいうと、明らかな警戒色を持つ、
セリ科植物を吸汁するアカスジカメムシや、
アブラナ科植物を吸汁するナガメは、
基本的には野鳥類に捕食されないはずだ。
スジモンヒトリ成虫(ヒトリガ科)
2011年7月16日 遠軽・北海道
ヒトリガ科の蛾は、このように多くの種類で、
腹部が派手な赤色をしていることが知られている。
普段は、前翅の下に隠されているが、
ちょっと触ってやると、翅を開いて、
この写真のように、腹の色を見せる。
ただ、少なくともこの子は、近づいただけでは、
お腹の赤い部分を見せつけることはないようだ。
【注】有毒成分を体内に持つ虫たちには、
大きく分けて2種類ある。
つまり、有名なカバマダラのように、
捕食者が食った瞬間に吐き出すような、
強力な毒性を持つ虫たちのグループと、
例えばモンシロチョウ幼虫のように、
捕食者が食い終わって、しばらくたってから
「やっぱりマズイ!、出来れば、
次からは食べるのは止めよう」
という弱い毒性を示す虫たちのグループだ。
これは、別に大した違いでもなさそうだが、
虫たちの警戒色や標識的擬態の進化を考える上で、
重要なヒントが隠されているのだ。
⇒このことについては、別の機会に取り上げてみたい。