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  • 2017.07
ちょっとだけ不思議な虫たち ツマグロヒョウモン

筑波山の山麓で、あまり見慣れないチョウを見つけた。

飛び方はゆっくりで、近づいても遠くへ逃げない。

昔、徳島市内でも、見かけたことがある南方系のチョウ、
ツマグロヒョウモンの雌のようだ。

 

しかし、何で、筑波山にいるのか?!!!!!

 


ツマグロヒョウモン(タテハチョウ科)

2010年7月11日 筑波山・茨城

地球温暖化の影響で、北上を続けているのだろう。

もちろん、生息範囲が広がっている原因は、温暖化だけでなく、
食草の一つであるパンジーやビオラなどの園芸スミレが
冬にも広く植えられるようになったのもあるだろう。

だから、現在では関東でも越冬できるようだ。


⇒ネットで最新情報を調べると、現時点では、
 茨城県まで、定着しているとのことだったので、
 今回の撮影できた個体は、北限のツマグロヒョウモン、
 ということになるのだろうか?

 

 

ツマグロヒョウモン(タテハチョウ科)

2010年7月11日 筑波山・茨城

このチョウの不思議なところは、それだけではない。

ツマグロヒョウモンは、雄と雌の体色がまるで違うのだ。

雄は普通のヒョウモンチョウ(豹柄)であるが、
雌は写真のように、濃い紫色と白とオレンジ色の、
非常に良く目立つ体色なのだ。

 

 

ツマグロヒョウモン(タテハチョウ科)

2010年7月11日 筑波山・茨城

実は、雌のこの体色は、南方系の毒チョウのカバマダラに、
良く似ていて、ベイツ型擬態していると言われている。

最初に、飛び方はあまり速くないと書いたが、
ヒラヒラと飛ぶ感じは、カバマダラ類に似ているのだ。

 


そこで・・・・

カバマダラの写真があったはずで、苦労して(?)、
パソコンに保存してある古いファイルを探した。

ようやく、石垣島と与那国島で撮ったスジグロカバマダラの写真が出てきた。


スジグロカバマダラ(タテハチョウ科)

1999年6月18日 石垣島・沖縄

ただのカバマダラは、沖縄でも個体数は多くないようで、
見かけるのはほとんど、スジグロカバマダラのようである。

デジカメがようやく入手できたころの、
ずいぶん昔の写真・・・・・・

 

 

スジグロカバマダラ(タテハチョウ科)

1999年6月18日 与那国島・沖縄

そして、さらに不思議なのは、ここからだ。


いくら温暖化とはいえ、モデルとなったカバマダラ類は、
九州以北には、ほとんど生息していない。

たまに九州南部で見つかることがあるらしいが、
完全に、迷蝶扱いされているようだ。

決して、温暖化にともなって、ツマグロヒョウモンと一緒に、
北上を続けている訳ではない。

 

だから、少なくとも本州では、カバマダラ(擬態のモデル種)と、
ツマグロヒョウモン(擬態種)が、一緒に生息している地域はなく、
擬態として機能していない可能性が指摘されている。

 

????????????????????????????


つまり、ツマグロヒョウモンの雌は、沖縄では、
モデルが存在するので、擬態種とみなされるが、
日本本土では、モデル種がいないにもかかわらず、
良く目立つ色彩のまま、普通に生存しているのだ。


この現象について、研究者は次のような状況を考えている(注)


①近年の人為的な(?)地球温暖化によって、
 ツマグロヒョウモンの分布拡大(北上!)が急速で、
 モデル種(カバマダラ類)の分布拡大が、それに追い付いていない。

⇒モデルがいない環境に比較的長い間生息し続けることは、
 ほとんどの鳥が「この色彩は不味い」という経験をできないことになる。
 だから、目立つツマグロヒョウモン雌は、野鳥に食べられやすく、
 個体数は、減少傾向になるはずである。
 しかし、本州のツマグロヒョウモンは、
 各地で増加傾向にあることがわかっており、
 この仮説は棄却されるだろう。


②通常の場合、警戒色を持つモデル種と、それに擬態する種は、
 いずれも、比較的ゆっくり飛ぶ傾向が認められる。
 しかし、モデルのいない地域に進出したツマグロヒョウモンは、
 速く飛ぶようになって、良く目立つが、捕食を逃れている。
 だから、モデルがいなくても、生息できる。

⇒モデルのいる地域に住むツマグロヒョウモンも、
 一度鳥に追いかけられると、素早く飛ぶことが知られている。
 だから、もともとは、姿かたちの擬態+行動擬態で、
 外敵の目を欺いていることになるのだが、
 最初から素早く飛んでいるのでは、折角の擬態の効果が弱まる可能性がある。
 この色彩変異が、交尾行動に関係しているのなら別であるが・・・


③ツマグロヒョウモンは、実は毒チョウで、味が悪い可能性がある。
 だから、沖縄では、カバマダラ類とミュラー型擬態として振る舞っている。
 北上して、カバマダラ類のいない地域に進出しても、
 単独で、警戒色を持つチョウとして振る舞うことできる。

⇒過去に、ベイツ型擬態と思われてた種が、詳細に調べると、
 同じように味が悪く、ミュラー型擬態であったという例は、
 近年いくつも出てきてるようだ。
 ただ、他種のヒョウモンチョウの多くは、
 同じくスミレを食草としているので、
 ツマグロヒョウモンだけが、食草起源の有毒物質を、
 体内にため込んでいるとは、少し考えにくい。


④そもそも、ツマグロヒョウモンの雌がカバマダラ類に似ているのは、
たまたまそうなっただけであり、擬態とは無関係である。

⇒以前紹介したが、同じヒョウモンチョウの仲間に、
 もう一種だけ、メスが黒っぽくなる種がいる。
 日本各地で見られるメスグロヒョウモンだ。
 このチョウの雌は、イチモンジチョウにそっくりであるが、
 その理由は、まだはっきりわかってはいない。
 ↓  ↓  ↓
 http://kamemusi.no-mania.com/Entry/5/ 


⑤南方から本土に移動してきた渡り鳥には、
 沖縄で苦い経験をしたモデルの記憶が残っているので、
 ツマグロヒョウモンを攻撃しない。

⇒この説明は、昔から良く目にするが、一つ難点がある。
 モデルと擬態者が同じ地域にいる場合でさえも、
 モデルの数が相対的に減ってくれば、
 擬態種が、最初に食べられる可能性も高くなるからだ。
 このような擬態種とモデル種の数のバランスに関しては、
 ベイツ型擬態の宿命のようなものなので、
 この仮説には、ちょっと無理があるような気がする。




 

(注)もちろん、これらの仮説は、以前このブログでも紹介したことのある
   ジャコウアゲハに擬態するアゲハモドキの例にも当てはまる。
   当然、仮説の検証結果は、種(組み合わせ!)によって異なるだろうが・・・

 

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【2013/03/19 06:53 】 | ちょっと不思議 | 有り難いご意見(0)
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