病死した虫たち①
過去に様々な理由(?)で、虫を飼育したことがあるが、
容器の中に病気が蔓延して、死なせてしまったことは少なくない。
特に、幼虫を大量に飼育したときには、
糞や古い餌の除去、そして飼育密度など、
かなり注意深く取り扱わないと、
ウィルスや細菌による伝染病が容器内で発生し、
飼育虫は、簡単に全滅してしまう。
しかし、実際の野外では、少なくとも私が虫を探しながら、
林道を歩いているときには、飼育容器内で見たような、
体液がドロドロに溶けた幼虫の死体に、出会ったことがない。
おそらく、自然状態で見ることのできる病死虫は、
ウィルスや細菌に犯されたものではなく、
カビ(糸状菌)による病気が原因であることが多い。
昆虫病原性糸状菌に感染した個体は、体内の水分がなくなり、
原型をとどめたまま、干からびたように死んでいるからだ。
今回は、そんな病死した虫たちの写真を紹介したい。
(以下閲覧注意!)
病死したハマキの仲間
2010年7月30日 だんぶり池・青森
かろうじて、ハマキガ類の成虫であることが分かる。
白きょう病菌に犯されて死亡した虫の体表には、
カビ状の菌糸が見られることが多いが、
このように全身に広がるのは、多分珍しいと思う。
病死した多分ツヤケシハナカミキリ
2013年6月21日 芝谷地湿原・秋田
脚や触角の状態が、まるで生きているようだ。
この場所まで歩いてきて、突然、
動けなくなってしまうのだろうか?
一般的に、昆虫病原糸状菌の感染によって死亡した個体は、
植物体にしがみついた状態で発見されることが多い。
⇒この写真は、当初「多分アカハナカミキリ」としていたが、
nabita氏より、ツヤケシハナカミキリではないかとのご指摘があり、
さりげなく修正しました。
この子は、ほぼ垂直の葉っぱに静止しているのに、
風が吹いても、落下することはない。
おそらく、脚の先端の爪が食い込んでいるのだろう。
糸状菌は、養蚕業等に被害を与えてきた一方、
それを逆手にとって、生物農薬としての研究も進められている。
もちろん、ウィルスや細菌病についても、沢山の研究が行われて、
一部は、すでに商品化されているのだが・・・
病死したヒメバチの仲間
2014年6月22日 だんぶり池・青森
空中を華麗に飛び回るハチの仲間も、例外ではない。
この子は、チョウ目の幼虫(アゲハ類?)に寄生するハチであるが、
一体、どの時期に感染したのだろうか?
最近、ミツバチが突然姿を消してしまうという、
ニュースを目にする機会が多くなった。
この原因はよく分かっていないようだが、
温暖化等の気候変動説、栄養バランス説、遅効性殺虫剤説、
遺伝子組み換え生物の影響説、ストレス説等と並んで、
病原菌による伝染病も有力な説の一つに挙げられている。
病死した多分アオハムシダマシ
2014年8月4日 萱野高原・青森
美麗種も、こうなってしまっては、台無しである。
ウィルスや最近など、他の病原性微生物とは異なり、
多くの病原性糸状菌の感染は、経皮的に起こるようだ。
感染単位は、普通は胞子であり、寄生昆虫の体表に付着すると、
発芽管を伸ばし、クチクラ層を貫通して体液に入り込むのだ。
・・・・
すでにお気づきのように、今回の5種類の病死虫は、
全て非常に目につきやすい場所にいた。
その理由は、いろいろ考えられそうだが、
ひとつだけ言えることは、どうも「カビに侵された虫たち」は、
地面に落下して死ぬのではなく、葉っぱの上の良く目立つ場所で、
息絶えている可能性があるのではないかと思う。
だから、特に意識して探さなくても、このような写真が撮れるのだ。
⇒次回は、死んだバッタの写真しかありません。