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ちょっとだけ、不思議な昆虫の世界

さりげなく撮った昆虫のデジカメ写真が、整理がつかないほど沢山あります。 その中から、ちょっとだけ不思議だなぁ~と思ったものを、順不同で紹介していきます。     従来のブログのように、毎日の日記風にはなっていませんので、お好きなカテゴリーから選んでご覧ください。 写真はクリックすると大きくなります。   

病死した虫たち② ミカドフキバッタ

前回紹介した何種類かの病死虫に関しては、
自然状態で、特に頻繁に見られるわけではない。

しかし、今回紹介するミカドフキバッタは、例外だ。

北国の短い夏が終わる頃になると、
良く目立つ場所で死んでいるバッタの姿が、
普通に(!!)見つかるのだ。

一目で、数匹も見つかるような状態は、
ちょっとだけ不思議な光景だ。

 

 


ミカドフキバッタ(バッタ科)

2014年9月8日 白神・青森

腹部が、かなり垂れ下がっているが、
まるで生きているように見える。

この時期になると、何故か、
植物の茎を抱きかかえるように死亡しているのが、
かなりの頻度で見られるのだ。

 

 


ミカドフキバッタ(バッタ科)

2014年9月8日 白神・青森

すぐ近くで見つけたこの子も、一見すると、
ススキの穂に止まっているだけに見えるが、
やはり、病死している。

このようにバッタを病死させるる原因は、
学名を Entomophaga grylli という、
バッタのみに寄生する昆虫病原性糸状菌である。

 

 


ミカドフキバッタ(バッタ科)

2014年9月8日 白神・青森

ただ、なかには、こんな感じで、
明らかに死骸であることが分かる場合もある。

この糸状菌に感染したバッタは、
植物の上方に登って、茎にしがみ付くようにして、
落下することなく、死亡する傾向があるようだ。

 

 


ミカドフキバッタ(バッタ科)

2014年9月8日 座頭石・青森

それにしても、何故、感染したバッタが、
葉っぱの先に登ろうとするのだろうか?

この現象だけから判断すると、
糸状菌の方が、何らかの手段で、
宿主であるバッタの行動を制御し、
胞子を風に乗せて、遠くまで飛ばすために、
なるべく上方で、死亡させているように見える。

 

 

 

多分ミカドフキバッタ(バッタ科)

2014年6月30日 豊浦森林公園・北海道


これは、白い胞子(の塊?)のようなものが、
かすかに肉眼で見える死骸である。

 ⇒宿主も糸状菌の種類も、異なっているのかもしれない。
  宿主は、北海道にのみ分布するサッポロフキバッタかも?


この胞子が、風に乗って飛んでいけば、
かなりの範囲で病死虫が出る可能性がある【注】


 

 


次回予告!!


病死虫が、人目に付きやすい場所で発見されることは、
昔から良く知られており、その原因や機能も考察されていた。

今年になってから、アメリカの研究者たちによって、
ウィルス病で死んだマイマイガの幼虫を実験材料にして、
その仕組みが、解明されたようだ。

次回、その研究結果を、簡単に紹介したい。


 


【注】学生時代、昆虫病理学という必修科目があった。

   あまり好きな分野ではなかったと記憶しているが、
   当時は、毒性の高い合成殺虫剤が悪者にされて、
   ホルモンやフェロモンを利用した害虫防除法や、
   病原性微生物を使用した防除法が、かなり注目を浴びていた。

   ①天敵に対する悪影響がない、②人畜に対する安全性が高い、
   ③抵抗性が発達しにくい、④ターゲット害虫が限定される等の
   すぐれた特徴があったからだ。


   しかし、・・・・・・

 

 

    

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