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ちょっとだけ、不思議な昆虫の世界

さりげなく撮った昆虫のデジカメ写真が、整理がつかないほど沢山あります。 その中から、ちょっとだけ不思議だなぁ~と思ったものを、順不同で紹介していきます。     従来のブログのように、毎日の日記風にはなっていませんので、お好きなカテゴリーから選んでご覧ください。 写真はクリックすると大きくなります。   

警戒色の虫たちと有毒植物② 虫たちにも好き嫌い?

人間の特権だと思われていた「食べ物の好き嫌い」・・・

実は、葉っぱを食べる虫たちにも、
(当然、その虫たちを食べる捕食者にも、)
どうやら「好き嫌い」があるようなのだ。

少なくとも、虫たちの場合には、
栄養源(餌!)とする植物は、
ある程度、限定されていることが多い。

だから、一部の(!)人間のように、
食べようと思えば食べられるものを、
単に、「嫌いだからという理由で食べない」
ということは、有り得ないと思っていた。

しかし、虫たちは、それしかなければ、
普段は絶対に食べないものでも、
さりげなく食べることがあるのだ。
まさか、虫たちにも「好き嫌い」があるなんて!?






メキシカン・ファイア・レッグ・タランチュラ

2016年3月17日 多摩動物園・東京

 ⇒(前報①と同様に、写真と本文とは無関係です)


その中で、個人的に一番ショックを受けたのは、
アメリカのブラウワー博士が、半世紀も前に行った、
ベイツ型擬態に関する実験の内容である。

【擬態の不思議【2】 標識的擬態(Mimicry)】
 ↓   ↓   ↓
 http://kamemusi.no-mania.com/Date/20110116/1/



詳細は、上記ページで紹介したが、
オオカバマダラ幼虫は、それしかない場合、
キャベツだけを餌として食べ続けても、
普通(!)に、成虫になるのだ。

よく知られているように、オオカバマダラ幼虫の食草は、
有毒植物のトウワタ(ガガイモ科)である。

幼虫が毒成分(カルデノライド)を食べ、
それを、体内に蓄積して羽化するため、
鳥は、オオカバマダラ成虫を食べない。

ところが、かなり不思議なことに、
オオカバマダラ幼虫をキャベツで飼育すると、
実験的に、毒のないオオカバマダラ成虫が得られるのだ。

この成虫を、研究室で雛から育てられて、
一度もオオカバマダラを経験していない鳥は、
何の抵抗もなく、喜んで(?)食べる。

 ⇒もちろん、自然界では、
  こんなことは、起こらないのだろう。
  その一方で、間違いなく、
  オオカバマダラ幼虫には、
  好き嫌いがあることが分かったのだ。



サキシマカナヘビ(カナヘビ科)

2016年3月17日 多摩動物園・東京


もう一つ例を示そう!!!


これも、かなりショックを受けたのだが・・・


【クズの葉に集まるカメムシたち】
 ↓   ↓   ↓
 http://kamemusi.no-mania.com/Date/20140614/1/



市街地の小さな雑草地のクズに、ナガメがいたのだ。
偶然にクズの葉に、成虫が飛来したのではない。

その場所で、同時に幼虫集団も発見したからである。

早春に、菜の花畑で見られる警戒色のナガメは、
アブラナ科植物の害虫として、よく知られている。

私も、学生時代に実験材料として、
大量に飼育してきた経験があるのだが、
当時は、どんなにエサが枯渇してきても、
アブラナ科植物以外で飼育しようとは思わなかった。

だから、上記ページで述べたように、
自然状態で、ナガメの成虫と幼虫を、
同時にクズの葉っぱで発見したときは、
かなりのショックを受けた。

最初は、何かの間違いではないかと、
付近のアブラナ科植物を探したのだ。

 ⇒これは、前述のオオカバマダラのように、
  実験的に食べさせたものではない。

  まったくの自然状態で、ナガメ幼虫が、
  マメ科のクズから、吸汁しているのだ。

  これも、好き嫌いの範疇なのだろうか???






さらに・・・


もう、半世紀以上前の話なのだが、
カイコは、何故クワの葉っぱしか食べないのか、
沢山の人たちが研究していた。

当然のこととして、様々な実験を繰り返して、
クワの葉に含まれる特有の物質を見つけ出そうとしたが、
実験は、ことごとく失敗に終わった。

そして当時の最終結論は、
「クワの葉には、カイコガ嫌う成分が含まれていない!」
というものだった・・・最新の研究結果は知りません(?)。

 ⇒カイコがクワの葉っぱしか食べないのは、
  クワにしか含まれていない物質を頼りに、
  食物選択をするとしか思えなかったのに・・・

  忌避成分が含まれていないのが、
  クワの葉っぱだけだったとは!!!

このことを、無理矢理に拡大解釈すると、
クサギカメムシなどの広食性(何でも食べる?)虫たちは、
植物側の防御物質(2次代謝物)を巧みに避けて、
エサとなる植物を探し出している可能性もあるはずだ。

やはり、これも好き嫌いの範疇になるのかも・・・





・・・というわけで、

予想外の「虫たちの好き嫌い」現象!!!

その根拠の一つになりそうな条件が、
微妙に弱い毒性を示す植物成分の存在だ。




(次回に続きます)




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