オオトリノフンダマシ 君は糞に擬態してるの?
トリノフンダマシの仲間は、もともと熱帯系のクモの仲間であり、
日本では、Cyrtarachne属が4種が生息する。
①トリノフンダマシ Cyrtarachne bufo
②オオトリノフンダマシ Cyrtarachne inaequialis
③シロオビトリノフンダマシ Cyrtarachne nagasakiensis
④アカイロトリノフンダマシ Cyrtarachne yunoharuensis
いずれも、特異な姿かたち(基本形は同じ?)であり、
その名が示すように、鳥の糞に擬態しているとされているが、
どうも、そうとは言えない気がするのだ。
このことについては、文末に個人的な考えを書いてみた。
最も普通に見られるのは、以前紹介した①のトリノフンダマシである。
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http://kamemusi.no-mania.com/Date/20120821/1/
トリノフンダマシ(コガネグモ科)
2012年8月6日 金山町・秋田
腹部は白と褐色のまだら模様で、まさに鳥の糞の色合いだ。
左右に目玉のような膨れがあるが、あまり目立つ存在ではない。
頭胸部と脚は薄い褐色なので、足を折り曲げて、
頭胸部に添えると、より鳥の糞に見えやすくなる。
ところが・・・
今回初めて、②のオオトリノフンダマシに出会ったのだが、
これ、本当に鳥の糞に擬態しているのか????
オオトリノフンダマシ(コガネグモ科)
2014年8月9日 だんぶり池・青森
確かに、形態はトリノフンダマシに良く似ている。
トリノフンダマシは白っぽいのに対し、
本種は、全体的に黄色っぽい感じであるが・・・
腹部左右には、トリノフンダマシと同じように、
大きな目玉のような模様がある。
でも、何かおかしいぞ!??
目玉模様が強調されすぎて、鳥の糞には見えない?
オオトリノフンダマシ(コガネグモ科)
2014年8月9日 だんぶり池・青森
これは、鳥の糞というより、目玉のオバケ(?)だ。
目玉模様の周りに、暗褐色の輪があるだけで、
目玉模様が強調されて、鳥の糞に見えなくなっているのだ。
これは、どう見ても・・・・
・・・・・カマキリの顔???
オオトリノフンダマシ(コガネグモ科)
2014年8月9日 だんぶり池・青森
普通に遠目に見ても、おそらく、意に反して(??)、
鳥の糞ではなく、目玉の大きな顔である。
オオトリノフンダマシは、名前とは裏腹に、
大きな目玉模様によって、外敵の攻撃を躊躇させる効果の方が、
むしろ大きいのかもしれないのだ。
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http://kamemusi.no-mania.com/Date/20130223/1/
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20110311/1/
オオトリノフンダマシ(コガネグモ科)
2014年8月9日 だんぶり池・青森
系統分類学の知識は、ほとんどないのだが、
トリノフンダマシの仲間の進化を考えると、ちょっとだけ不思議だ。
少なくとも日本産4種の共通祖先で、
いわゆるトリノフンダマシの形態が完成(?)していた。
その後、何らかの生殖隔離が起こって、4種類に分岐したのだろうが、
基本形態はそのままで、色彩・模様が個々の種で大きく変化したのだ。
日本産のもう1種、③のシロオビトリノフンダマシというクモは、
横長の腹部の真ん中を横切るように白い帯があり、
その前後は黒く、腹部後端近くは淡い褐色になっているので、
ネット上の写真では、鳥の糞に似ているようだ。
最後の④のアカイロトリノフンダマシは、真っ赤な体に、
黄色の水玉模様があり、鳥の糞には見えないようだ。
むしろ正統派の警戒色である。
体液が不味いとか、有毒であるとかの情報はないので、
テントウムシにベイツ型擬態してるのかもしれない。
一度は、出会ってみたいクモである。
それぞれの種の特徴をまとめると、以下のようになる。
⇒鳥の糞に擬態: トリノフンダマシ、シロオビトリノフンダマシ
⇒目玉模様強調: オオトリノフンダマシ
⇒ベイツ型擬態: アカイロトリノフンダマシ
もちろん、何故、別々の道を歩んだのかは、謎である。
しかし、ある程度の想像はできる!!
という訳で、
・・・仮説(妄想?)・・・
目玉模様が強調されたのオオトリノフンダマシの写真は、
水辺にあるススキなどのイネ科植物の葉っぱで撮った。
一方の、鳥の糞に擬態したトリノフンダマシの写真は、
林縁部の広葉の葉っぱで撮ったものである。
当然、肉食性の彼らが、植物の種類に大きく依存することはないが、
もし、このような傾向があるとすれば、話は簡単である。
林縁部で良く見かける、地面にほぼ平行に広がっている葉っぱには、
上から落下する鳥の糞が、かなりの頻度で付着している。
こんな場所では、鳥の糞に擬態している方が生き残る可能性が高い。
だから、トリノフンダマシのような、より精巧な糞擬態が完成していったのだろう。
一方の地面に垂直に伸びているイネ科植物の葉っぱには、
どう考えても、鳥の糞は付着しにくいのだ。
だから、せっかく鳥の糞の形状に進化したオオトリノフンダマシであるが、
静止場所がイネ科植物の葉っぱであることが多いため、
鳥の糞に見える模様があまり機能せず、むしろ、
目玉模様を強調するようになった個体(グループ?)が、
生き残る可能性が高くなったのだろう。
・・・仮説(妄想?)・・・おわり
この仮説を検証するのは、簡単だ。
実験は、しなくても大丈夫だ。
それぞれのクモたちが、実際に静止している場所(状況)を、
出来るだけ沢山、観察すれば良い。
後は、統計処理をして、有意差があるかどうかを確認すれば・・・
それにしても、恐るべし、トリノフンダマシの適応力、
というか、変わり身の速さ?