サティロス型擬態③ 突然見える目玉模様
鳥類の視覚認知システムの特殊性に裏付けられて、
蛾の前翅にある意味不明な模様の防御効果が、
最近になって再認識された例を【前報①と②】で紹介した。
【サティロス型擬態① ヨナグニサンとヘビ】
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http://kamemusi.no-mania.com/Date/20151001/1/
【サティロス型擬態② 動物の顔のような蛾】
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http://kamemusi.no-mania.com/Date/20151004/1/
今回は、特別な鳥類の視覚認知システムを持ち出さなくても、
十分説明が可能である「突然見せ付ける目玉模様」について、
サティロス型擬態との関連を含めて、もう一度紹介したい。
野鳥類が、餌だと思って近づいた瞬間、
獲物の蛾が突然(!)前翅を動かして、
後翅の目玉模様が見えたときの恐怖感は、
人間とは比較にならないほど大きいはずだ。
多くの目玉模様は、野鳥類の天敵である、
ヘビやフクロウの目を連想するからだ。
これらの目玉模様の実際の防御効果は、
古くから実験的にも確かめられている。
⇒例えば、半世紀も前に行われた、
ブレスト博士の有名な実験では、
被食者のそばに、目玉模様を写し出す装置で、
捕食者(鳥類)の攻撃を避ける頻度を数値化した。
この場合は、サティロス型擬態と言えるのだろうか?
アサマキシタバ(ヤガ科)
2014年5月25日 津山市・岡山
よくある同心円状の目玉模様ではないが、
その位置と色の具合は、まさに動物の顔だ。
⇒私には、サルに見えるのだが・・・
・・・いずれにしても、この顔が、
近づいたときに、目の前に突然現れるのだ。
ビックリしないはずがない!!!
クスサン(ヤママユガ科)
2008年9月22日 碇ヶ関・青森
この蛾のこんな写真は、誰でも撮ることが出来る。
クスサンは、晩夏から初秋にかけて、
夜間、街灯で普通に見かける大型の蛾だ。
⇒典型的な同心円状の目玉模様があると、
私には、この蛾はフクロウの顔に見える。
おそらく、前翅を最初から開いていることもあるようだ。
それでも、野鳥類は、天敵のフクロウに見えるのだろう。
ヤママユ(ヤママユガ科)
2011年9月3日 酸ヶ湯温泉・青森
多少漫画チックだが、この子もやはり、
翅を開けば、フクロウの顔だろう。
不思議と、目玉そのものが怖い!!!
⇒本物の動物の目だけをトリミングした写真が、
以下の記事の中にあります。
【目玉模様のモデル??】
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http://kamemusi.no-mania.com/Date/20150226/1/
前述のように、この「突然見せる目玉模様」は、
サティロス型擬態の範疇に入るのかどうかは、
意見の分かれるところだろう。
ただ、提唱者のハウス氏はその著書の中で、
ヤママユやクスサンの写真を使って、
ビックリさせる効果を例示しているので、
少なくとも、大きな目玉模様は、
サティロス型擬態として見ているのだろう。
【古くて新しい擬態 サティロス型擬態】
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http://kamemusi.no-mania.com/Date/20150913/1/
しかも、ハウス氏は著書の別の箇所で、
食物連鎖における捕食・被食関係を、
連続したスペクトルにたとえるとすれば、
その全ての帯域に対応する擬態を考える上で、
サティロス型擬態と言う概念は役立ちます
と、前記とはやや異なる雰囲気で述べている。
⇒野球で言う「守備範囲が広すぎ」でエラーを呼びそう??