サティロス型擬態?④ 最初から見えてる目玉模様
前報③で、蛾の後翅にある突然見せる目玉模様が、
サティロス擬態の範疇であることを紹介した。
一方、チョウや蛾の翅の周辺部分にある、
比較的小さな目玉模様を、最初から見せている種もいる。
【目玉模様にも色々な機能がある??】
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http://kamemusi.no-mania.com/Date/20150214/1/
サティロス型擬態の概念では、
翅の周辺部分にある小さな目玉模様が、
野鳥類の攻撃のターゲットになる
という、全く逆の反応を起こすことを、
どう説明するのだろうか?
まず、下の写真をご覧下さい。
4種のチョウの目玉模様
左上: アオタテハモドキ 石垣島・沖縄(19990621)
左下: タテハモドキ 多摩動物園・東京(20110109)
右上: ヒメウラナミジャノメ 田沢湖・秋田(20100811)
右下: クロヒカゲ 白岩森林公園・青森(20110826)
これらの目玉模様は、鳥類を驚かせると言うより、
やはり、攻撃をその部分に向けさせる効果の方が高そうだ。
クジャクチョウ(タテハチョウ科)
2010年7月15日 だんぶり池・青森
クジャクチョウは、日光浴や花の蜜を吸うときに、
他のタテハチョウの仲間と同じように、
ゆっくりと、翅を開閉するする習性がある。
もし、勇敢な小鳥たちの中には、
クジャクチョウを、食べようとするかもしれない。
その場合は、おそらく目玉模様を最初に攻撃するだろう。
野鳥類が、小動物を餌とする場合、
最初に急所である眼を攻撃するからだ。
クジャクチョウ(タテハチョウ科)
2013年9月11日 酸ヶ湯温泉・青森
その一方で、少なくともクジャクチョウの場合は、
このよう逆さに見ると、最初からフクロウの雰囲気はある。
おそらく、このような目玉模様を持った天敵に、
一度ひどい目にあった鳥類は、それ以来、
目玉模様を学習して、避けるようになるだろう。
この場合は、明らかにサティロス型擬態の範疇に入る。
つまり、クジャクチョウの場合には、
微妙なサイズの目玉模様が、それを見る方の解釈によって、
「攻撃の対象」になったり、逆に「攻撃を躊躇」させるという
全く違った機能を持っていることになるのだ。
この他にも、多くのチョウや蛾の仲間に、
翅の周辺部分に目玉模様を持っている種がいる。
・・・もう一度、ハウス氏の著書を確認してみよう。
小さな目玉模様の効果については、
「サティロス型擬態」の理論枠の中で、
以下のように、説明されている。
ハウス氏は、最後の章で、
第11章 小さな目玉模様を持つスズメガ
第12章 大きな目玉模様を持つヤママユガ
について、詳細に検討を加えている。
⇒興味深いことに、一般的に考察されているような、
大きな目玉模様は、野鳥の攻撃を躊躇させ、
小さな目玉模様は、野鳥類の攻撃をそこに向けさせる、
という考え方とは微妙に異なる解説を、
著者のハウス氏はしていると思う。
つまり、翅に小さな目玉模様があるスズメガ類は、
全体の姿も含めて色々な動物の顔に見えるので、
サティロス型擬態の例としている。
また、ヤママユガの仲間の翅には、
スズメガと同じような小さな目玉模様もあるが、
後翅にある大きな目玉模様がより特徴的とされ、
突然目玉模様を見せることだけを紹介している。
だから、サティロス型擬態の提唱者ハウス氏は、
野鳥類の攻撃を、身体の中心部から外れた場所に向けさせる、
小さな目玉模様の機能については、触れていないのだ。
日本では、ジャノメチョウの仲間によく見られるビークマークは、
比較的普通に見られるのに・・・
【ちょっとだけ不思議な虫たち ビークマーク】
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http://kamemusi.no-mania.com/Date/20120930/1/
という訳で、翅の周辺にある小さな目玉模様は、
本来の定義された機能とは異なるので、
現時点では、サティロス型擬態ではないとしておこう。
追記(2015年10月26日)
以下の記事が確定しました。
【サティロス型擬態⑤ イモムシの目玉模様】
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http://kamemusi.no-mania.com/Date/20151026/1/