ハイイロセダカモクメ幼虫 衝撃の瞬間
ハイイロセダカモクメは、蛹で越冬する。
蛹で越冬する昆虫類の多くは、春に成虫になって、
幼虫が新緑の柔らかい葉っぱを食べて育つ。
ところが、ハイイロセダカモクメは、
そのような食べ物が豊富な時期も、蛹のままで過ごして、
何故か、夏の終わりに成虫になるのである。
もちろん、この時期には、新鮮な葉っぱはない。
幼虫は、周囲に沢山ある柔らかいヨモギの花穂を餌とするのだ。
しかし、ひとつ大きな問題が出てくる。
ヨモギの花穂は、葉っぱと違って、隠れるところが少ない。
しかも、花穂を食べてしまうと、ますます、隠れるところがなくなってしまう。
そんな中で、彼らは鳥に捕食されないように、
あっと驚くミラクル擬態を完成させたのだ。
何と、彼らは、食べてなくなったもの(花穂)そっくりなのである。
その擬態の完成度たるや、少なくとも我々人間が、
必死になってヨモギの花穂を探さなければ、
決して見つけることができないほどの「ミラクル擬態」と言える。
そして、これだけの努力をしたのだから、
鳥類の餌となる機会は、かなり減ったに違いない。
これで、一件落着である・・・・・・
しかし、自然界の掟は、ときには、かなり残酷である。
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前回予告したように、衝撃の瞬間を紹介しよう。
以下の7枚の連続写真をご覧ください。
衝撃の8分前【14:18】
2011年10月4日 だんぶり池・青森
背後から、そっと近づく恐怖のクチブトカメムシ。
ちょっと見た感じでは、クサギカメムシのような
普通の植物の汁を吸うカメムシである。
ところが・・・
ピンと伸ばした口吻の先端からの距離は、多分1cmもない。
もちろん、この位置と距離では、
ハイイロセダカモクメ幼虫のミラクル擬態は、機能していない。
おそらく、捕食者の眼には、犠牲者の全体像は見えず、
普通のイモムシのお尻にしか見えていないだろう。
衝撃の5分前【14:21】
2011年10月4日 だんぶり池・青森
約3分かかって、ゆっくりゆっくりと至近距離まで近づいた。
触角が、幼虫のお尻に軽く触れているのが分かる。
衝撃の3分前【14:23】
2011年10月4日 だんぶり池・青森
まだカメムシの口吻は、幼虫の体に突き刺さってはいない。
ここが、カマキリやハエトリグモの捕獲行動とは全く違うのだ。
衝撃の瞬間【14:26】
2011年10月4日 だんぶり池・青森
この写真は、突き刺した瞬間ではないかもしれない。
もしかしたら、数秒あるいは数十秒経過しているかもしれない。
突然、幼虫が体を上に曲げ、いやいやをするように数回振った。
2011年10月4日 だんぶり池・青森
その後、すぐにその動作は鈍くなり、止まった。
おそらく、カメムシが麻酔薬を注入したのだろう。
なんとも、恐ろしい光景である。
衝撃の11分後【14:37】
2011年10月4日 だんぶり池・青森
そして10分程度で、幼虫の体は、植物から離れ、
宙に浮いた状態になっていた。
衝撃の12分後【14:38】
2011年10月4日 だんぶり池・青森
その後、カメムシが体を軽くゆすったとき、
幼虫の体は下に垂れさがった。
体液を吸われ続けているのだろう。
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どんなに完璧な防御手段であっても、
全ての捕食者の攻撃を避けることは出来ないのだ。