ベイツ型擬態を見破る疑似体験① アブ? ハチ??
前回、一部の人たちに好評だった(?)
「保護色を見破る疑似体験」シリーズに続いて、
今回からは、「偽物を見破る疑似体験」シリーズです。
⇒でも、前回、前々回の疑似体験に比べると、
あまり実用的ではありません!!!
よほどの「虫マニア」か「変わり者」でもない限り、
本物と偽物を区別する必要は、全くないからです。
アブとハチは、姿かたちが良く似ている。
だから、実際に虫を探しながら歩いていると、
「あれ! これはどっち??」
という場合も、たまに(?)ある。
何故似ているのかは、ほとんどの人が知っている。
⇒一般的に、ベイツ型擬態と呼ばれている現象で、
実際の防御手段を持たないアブの方が、
針や大あごで武装したハチに似せて、
捕食者を騙しているように見える【注】。
ただ、ハチにも色々な種類があって、
姿かたちのベースが、多少とも異なっている。
例えば、黄色を主体としたスズメバチやアシナガバチの仲間、
黒色をベースにしたクロスズメバチの仲間、
体型が丸っこいハナバチの仲間、さらには、
胸と腹の間が細くならないハバチの仲間などがいる。
面白いのが、それぞれのタイプに良く似たアブがいるのだ。
だから、何となくハチに似せているのではなく、
別々のモデルとなるハチの種類がいて、
アブの方も、それぞれに擬態しているのだ。
最初は、普通のスズメバチタイプ・・・
あなたは、以下の写真の中で、
どの子を手で掴みますか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・回答です。
まずは、モデルとなったハチは、左下と右上です。
左下: キイロスズメバチ(スズメバチ科)
2010年8月25日 だんぶり池・青森
昨年、このブログで紹介した民家の軒下に、
大きな巣を作っっていたスズメバチです。
【軒下のキイロスズメバチの巣】
↓ ↓ ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20151007/1/
もちろん、こんな目立つところに巣を作って、
その周囲をブンブン飛び回っていても、
野鳥類などの捕食者は、攻撃することはありません。
右上: 多分キボシアシナガバチ(スズメバチ科)
6100
2012年10月14日 浅瀬石ダム・青森
こちらは、アシナガバチの仲間です。
特に、キイロスズメバチとアシナガバチの仲間は、
かなり似ていて、慣れないと区別できません。
上の写真では分かりにくいですが、スズメバチは、
胸部と腹部のくびれがハッキリしています。
一方、アシナガバチでは、腹部がなだらかに太くなって、
全体的にやや細っそりした印象があります。
⇒ただ、飛翔中は比較的識別しやすく、
アシナガバチは後脚をダラッ~と下げて、
比較的ゆっくりと飛びます。
逆に、スズメバチの方は、
直線的に素早く飛ぶことが多いようです。
ちなみに、モデルとなったスズメバチやアシナガバチが、
素人には同定できないほど互いに良く似ているのは、
典型的なミュラー型擬態の範疇に入ります。
【ミュラー型擬態??? スズメバチの仲間】
↓ ↓ ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20150202/1/
・・・ということは、左上と右下の2種がアブです。
左上: ジョウザンナガハナアブ(ハナアブ科)
2011年7月3日 白岩森林公園・青森
これだけ似ていれば、視覚的に獲物を探す捕食者は、
怖い怖いハチだと思って、攻撃することはありません。
⇒我々人間が、興味本位にじっくり観察すれば、
胸と腹の間に「くびれ」がないことで識別可能です。
もちろん、勇気を出して、手に取ってみれば、
翅の数は2枚であることが確認できますが・・・
右下: ヨコシマナガハナアブ(ハナアブ科)
2013年7月14日 酸ヶ湯温泉・青森
この子もアブなので、胸と腹の間の「くびれ」がありません。
当然のことですが、ベイツ型擬態する虫たちにとって、
モデルとなった種に、中途半端に似せることはありません。
獲物を探す捕食者の目を、完全に欺かなければ、
逆によく目立つ色彩のために、簡単に見つかってしまうからです。
【注】警戒色と呼ばれる目立つ色彩の虫は、
有毒であったり、武器を持っていたりするので、
一度ひどい目にあった捕食者は、その色彩を覚えていて、
多くの場合、次からは食べようとしない。
捕食者から攻撃を受けることはない姿かたちを、
真似することによって、防御手段を持たない虫たちも、
捕食者から攻撃を受けないことが知られている。
このような擬態を、発見者の名前をとって、ベイツ型擬態と呼ぶ。
【虫たちの防御戦略⑥ Ⅱ(5). ベイツ型擬態】
↓ ↓ ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20130211/1/