不思議な緑色の蛾 アオスジアオリンガ
以前、このブログで、紹介したことがあるが、
バッタやカメムシの仲間を除くと、
身体全体が緑色の昆虫は、意外に少ないような気がする。
美麗種が予想以上に多い蛾の中でも、
私の中では、ベスト10に入るほどの緑色の蛾がいる。
白色の2本の線が入った、前翅全体が緑色の蛾なのだが、
名前はシロスジ~~ではなく、アオスジアオリンガという。
まずは、写真を見ていただこう
アオスジアオリンガ春型♀(コブガ科)
2015年6月11日 酸ヶ湯温泉・青森
・・・・・・どこにいるのか、分からない???
普通は、夜間常夜灯のもとでしか見ることはないのだが、
この緑色は、やはり保護色として十分機能していた。
酸ヶ湯温泉付近の遊歩道のダケカンバには、
比較的多くの種類のカメムシがいるので、
葉っぱの表裏や果実などを、結構まじめに探すのだが、
至近距離で、これだけのサイズの虫を、見逃す寸前だった。
まさに「・・・ん!?、何だ!!!」と言う感じだった。
居場所がすぐに分かった方は、相当のマニアである。
この時期のダケカンバの新葉と、まさに同じ色あいの蛾なのだ。
⇒幼虫は、ブナやミズナラ以外に、
カバノキ科植物の葉も食べるようで、
多分ダケカンバにも産卵するのかもしれない。
アオスジアオリンガ春型♀(コブガ科)
2015年6月11日 酸ヶ湯温泉・青森
近づいて良く見れば、まさに蛾なのだが・・・
こんな感じで、常夜灯以外で見つかるのは、
滅多にないことなので、ちょっとだけ嬉しくなる。
いずれにしても、典型的な保護色だと思う。
上の写真タイトルに「春型♀」と表示した理由は、
翅に赤い帯がある警戒色のような「春型♂」がいるからである。
アオスジアオリンガ春型♂(コブガ科)
2014年6月5日 矢立峠・秋田
この子は、道の駅の常夜灯付近にいたが、
良くあることなのだが、森の中に帰りそびれたのだろう。
もし仮に万が一、この子が、ダケカンバの葉っぱにいたら、
やっぱり、良く目立つことだろう。
むしろ、以前このブログで紹介した「人面」のようにも見える??
【擬態??②/④ 動物の顔】
↓ ↓ ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20141204/1/
アオスジアオリンガ春型♂(コブガ科)
2014年6月5日 矢立峠・秋田
このように、雌雄で体色が正反対(保護色と警戒色)になるのは、
動物の世界では、決して珍しいことではないと思う。
そんな体色は、多くは交尾行動に関係しているようだ。
ネット情報では、本種には、春型と夏型があって、
一部の春型の♂が、翅の横線に沿って赤色の帯が出る。
と言うことは、全ての春型の♂が赤い訳ではなく、
もちろん、夏型には見られない現象でもある。
だから、この赤色が、特に生存に有利に働くことはないのだろう。
このように、生存に有利でも不利でもない形質が、
一世代を飛ばしても(春型のみに出現!)、
子孫に伝えられていくということは、
やっぱり、ちょっとだけ不思議なことだと思う。
・・・・不思議で片づけてはいけない。
翅に赤色帯のある個体の出現(突然変異?)と、
その形質の生存価値の可能性(自然淘汰?)については、
交尾行動を含めた、より詳細な生態観察が必要だと思う。
そうすれば、「一部の雄だけに一世代おきに」出現するような、
不思議な赤色帯の存在理由が、少しずつ明らかになってくるだろう。