君はスズメバチか? ベイツ型擬態
ことわざに、「虻蜂(アブハチ)取らず」というのがある。
手持ちの数種の辞書で確認すると、
意味は、「二兎を追うものは一兎をも得ず」と同じで、
『両方得ようとして欲を出すと、両方とも得られなくなる』
ことだそうで、どうやら擬態とは全く関係ないようだ。
でも、良く考えてみると、何故(人間が)、
わざわざアブかハチを、迷って捕まえるのだろうか?
全く同じ兎2匹を捕まえるのとは違って、
アブ・ハチの方は、やっぱり、擬態と関係していて、
『高価な本物と、安価な偽物があって、
どっちにするか、あまりに迷っていると、
両方とも、入手できなくなってしまう』
というように、微妙に違った解釈もできると思う。
しかし、これでも何か物足りない!!
ことわざの意味も、時代とともに変化することもありそうで、
個人的には、より深く擬態と関係していて、
こんなことはまだ誰も言ってないが、
『危険なハチと危険でないアブを見て、
どっちか迷うより、きっぱりと、両方諦めなさい』
という解釈の方が、良さそうだが・・・・・
とりあえず、非常に良く似た「ハチ・アブ」の写真を見てみよう。
キイロスズメバチ(スズメバチ科)
2010年8月25日 だんぶり池・青森
多分、最も普通に見られるスズメバチだろう。
典型的な警戒色の、怖いハチの姿である。
モンスズメバチ(スズメバチ科)
2011年6月5日 だんぶり池・青森
上のキイロスズメバチとよく似ているが、
単眼の周辺が黒色(右上)で、小楯板が黒色なので、
モンスズメバチである。
モデルとなった(?)スズメバチ類は、
他の種も含めて、お互いに非常によく似ていて、
特殊な同定ポイントを確認しないと、区別できない。
そして、典型的なベイツ型擬態種のアブである。
ヨコジマナガハナアブ(ハナアブ科)
2013年7月14日 酸ヶ湯温泉・青森
この角度から見ると、まるでハチなのだが、
よく見ると、翅の数と、お腹のくびれがハチとは違う。
でも、即座に判断はできない(?)。
ジョウザンナガハナアブ(ハナアブ科)
2011年7月3日 白岩森林公園・青森
このアブも、まるでスズメバチで、
実は、写真を撮る直前まで、アブとは思わなかった。
このように、擬態種であるアブの方も、
他の種も含めて、お互いに非常によく似ていて、
特殊な同定ポイントを確認しないと、区別できない。
でも、スズメバチにも、ちょっと違った色彩の種もいるぞ!!!
クロスズメバチ(スズメバチ科)
2011年10月11日 白神山地・青森
このように、黒色を基調としているが、
黄色い線が入り、スズメバチの仲間である。
この色彩パターンも、警戒色に分類されるだろう。
シダクロスズメバチ(スズメバチ科)
2013年8月16日 だんぶり池・青森
非常に良く似ているが、別種のクロスズメバチである。
多分、脱皮中のバッタを肉団子にしているのだろう。
モデルとなった(?)クロスズメバチ類は、
他の種も含めて、お互いに非常によく似ていて、
特殊な同定ポイントを確認しないと、区別できない。
この黒っぽいタイプのスズメバチにも、
アブは、さりげなく擬態しているのだ。
ニトベナガハナアブ(ハナアブ科)
2011年7月3日 白岩森林公園・青森
黄色の横線の数が全く違うが、
これも、普通に見て、黒いスズメバチである。
スズメバチ類は、黄・黒色タイプと、黒・白色タイプの2種類がいるので、
擬態するアブの方も、それぞれ別々のタイプに似せてきたのである。
もともと、ハチとアブは、目が違うとはいえ、
よく似た姿かたちをしているが、
2種類のタイプそれぞれに擬態者がいるのは、
ちょっとだけ不思議なことなのかもしれない。
そして、多分ハチが好きな人は、アブが嫌いで、
逆に、アブが好きな人は、(多分)ハチが嫌いである。
私のように、両方好きだと、「アブハチ撮らず」になるからである。