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ちょっとだけ、不思議な昆虫の世界

さりげなく撮った昆虫のデジカメ写真が、整理がつかないほど沢山あります。 その中から、ちょっとだけ不思議だなぁ~と思ったものを、順不同で紹介していきます。     従来のブログのように、毎日の日記風にはなっていませんので、お好きなカテゴリーから選んでご覧ください。 写真はクリックすると大きくなります。   

変わり者の特権 これも自然淘汰なの??


我々が目にすることのできる虫たちの中には、
奇妙で、目立ちやすい姿かたちをしているのに、
体内に不味成分を持っているとは考えにくいし、
もちろん、何かに擬態してるとは思えない種がいる。


有名なのは、熱帯のツノゼミの仲間で、
とても虫とは思えない、変てこりんな、
怪獣映画に出てくる宇宙人のような風貌をしている。


日本国内には、そんな雰囲気の虫たちはいないので、
自分で写真を撮ったことは、もちろんないのだが・・・


 ⇒写真を見たことのない方は、
  多分、「熱帯のツノゼミ」でネット検索すれば、
  すぐに見つかると思います。

 


では、日本で見られる虫たちの中で、
非常に奇妙で、目立ちやすい風貌とは、
どんな雰囲気なのだろうか?


実は、過去に、このブログでも紹介したことがある。

ODDITY???
↓   ↓   ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20130123/1/

 

防御手段を他に待たない虫たちが、
捕食者に見つかりやすい目立つ格好をしながら、
子孫を残し続けられる理由は、何なんだろうか???

 


鳥類のような視覚的に獲物を探す捕食者の多くは、
獲物に対して、サーチングイメージができるので、
直前に食べた虫たちを狙う習性があるようだ。

だから、過去に出会ったことがないような、
奇妙な格好をしている虫たちを見つけても、
一瞬、攻撃を躊躇する可能性があるのだ。

 

当然、どのくらい奇妙な姿かたちならば、
捕食者の攻撃を躊躇させるのかは、
様々な条件で変わってくるはずだ。

 

 


・・・写真がなければ、話にならない?

 

 


タイトルを、異端児としたのは、幼虫だからである。
成虫は、まあ、普通の虫たちなのに・・・・

 

異端児の特権(!!)

左: モモイロツマキリコヤガ幼虫 ベンセ沼・青森(20130715)
右: アケビコノハ幼虫 弘前市・青森(20101017)


この2種の蛾の幼虫は、姿かたちも奇妙なのだが、
さらに、モモイロツマキリコヤガ幼虫は、
背中を持ち上て静止しているし、
アケビコノハ幼虫は、逆に、
頭とお尻を上に持ち上げてU字型に静止している。


 ⇒普通のイモムシでも、このように、
  突然、いつもと違うポーズをするだけで、
  捕食者は、ちょっとだけビックリするようだ。

 

モモイロツマキリコヤガ幼虫は、サルトリイバラの葉を、
 食べることが知られている。

アケビコノハ幼虫の食べ物は、アケビの葉であり、
もちろん、いずれも有毒植物ではない。


 ⇒この子たちを、目の前にした野鳥類やカエルは、
  本当に、攻撃を躊躇するのだろうか?


  というか、まず、虫とは思わなかったり、
  ただ単に、薄気味が悪い(?)生き物を、
  見て見ぬふりで、素通りするのだろうか?

 

 

もう一枚、分かりやすい写真!

 

 

異端児の特権(??)

左: ルリタテハ幼虫 ひたちなか市・茨城(20130922)
右: リンゴドクガ幼虫 蔦温泉・青森(20111009)


この2種の幼虫も、その姿かたちだけで、
やりすぎとも思えるほど、風変わりだ。

もちろん、我々人間が見たイメージだけなのだが・・・

 

ただし、この2種に関しては、別の微妙な条件がある。


まず、左のルリタテハ幼虫は、
サルトリイバラやホトトギス類などを食べるが、
これらは、特に有毒植物と言われる種類ではない。

だから、体液に不味(有毒)成分は持っていないし、
もちろん、この棘には毒はない。

しかし、この風貌が、イラガ幼虫をモデルとした、
「ベイツ型擬態」であれば、話はそこで終わってしまう。

 

次に、右のリンゴドクガ幼虫。

この子は、ドクガの仲間ではあるが、
毒針毛はなく、手で触っても大丈夫だ。

リンゴやナシ、サクラなどの葉を食べるので、
体内に不味成分は持っていないはずだ。

しかし、この風貌が、他のドクガ幼虫をモデルとした、
「ベイツ型擬態」であれば、話はそこで終わってしまう。

 

 

話をすぐに終わらせないために、陳腐な結論!!


ちょっとだけ不思議な昆虫の世界では、
 「異端児の特権」と「ベイツ型擬態」の両方の可能性を、
さりげなく残しておくのだ。

 

 


その他にも、こんな虫たちがいる・・・

 

 

トリノフンダマシの仲間

左: トリノフンダマシ 金山町・秋田(20120806)
右: オオトリノフンダマシ だんぶり池・青森(20140809)


左のトリノフンダマシは、その名前のとおり、
どう見ても「鳥の糞」だ。


 ⇒野鳥類にとって、自分たちの糞は、
  まあ、身近なものなのかもしれない。

  しかし、薄気味悪く、奇妙なものではないはずだが、
  見つけても、近づくことはないだろう。


これに対して、右のオオトリノフンダマシは、
模様の周りに、ちょっと暗褐色の輪があるだけで、
鳥の糞に見えなくなっているのだ。

顔だけのカマキリにも見える?
 

まだ写真が撮れていないのだが、
トリノフンダマシの仲間には、
赤と白の水玉模様のような、よく目立つ種がいる。


このように、近縁種がほぼ同じ姿かたちなのに、
イメージ(色彩?)が全く変わっているという例は、
非常に興味深いと思う。

 

 

 

ベッコウハゴロモ幼虫

2013年7月30日 だんぶり池・青森

この子も、かなり異様な外観だ。

一体何故、こんなことをするのだろうか?


 ⇒詳細な状況は、以下をご覧ください

  君は虫か? ベッコウハゴロモ幼虫
  ↓   ↓   ↓
  http://kamemusi.no-mania.com/Date/20110814/1/

 


・・・という訳で、

 


野鳥類のように、視覚的に獲物を探す捕食者が、
これまでに例示したような虫たちを食べることは、
よほど空腹の場合を除いて、おそらくないだろう。


しかし、防御手段を何も持たない虫たちが、
奇妙な風貌で捕食者から身を守ろうとする場合には、
逆に、非常に危険なこともあるのだ。


何らかの理由で、勇気ある捕食者が、
彼らを捕獲して、食べることが出来たとすると、
次からは、この味の良い目立つ風貌は、
格好のサーチングイメージになってしまうからだ。


 ⇒多くの野鳥類は、直前に食べた虫たちを、
  もう一度狙って捕獲する習性がある。

  ある有名な実験があって、小鳥たちに、
  小枝とシャクガ幼虫を同時に提示した場合に、
  最初に食べたのがシャクガ幼虫だったときには、
  その小鳥は、次回からは、本物の小枝を、
  執拗に突っついて確かめるのだ。

 

冒頭で述べたように、多くの捕食者は、
過去に出会ったことがないような、
奇妙な格好をしている虫たちを見つけたとき、
それが、食べても大丈夫なものなのかどうかを、
何らかの手段で、確かめなければならない。


だから、それまで食べたことのある獲物を、
サーチングイメージとして、次回からも、
同じような獲物を捕獲する傾向があるのだ。


おそらく、この微妙な事実こそが、
冒頭に提示した疑問への回答なのだろう。


実を言うと、擬態に興味を持ち始めた学生時代から、
「警戒色のベイツ型擬態ではない無毒昆虫」と、
「奇妙な姿かたちで良く目立つ無毒昆虫」は、
何故、子孫を残し続けることが出来たのか分からなかった。
  
最近になって、ようやく、その答えの一部が、
見えてきたような気がするのだ。

ずっと疑問に思っていたことの答えが、
最もありふれた、誰でも考え付くような
「捕食者が見慣れないものを、本能的に避ける」
という陳腐な結論になってしまいそうなのだ。

 



   

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