虫たちの目玉模様 これも自然淘汰?
衝撃的なタイトルだが、内容はそうでもない。
⇒長文ですので、時間のあるときに・・・?
前回、大きい目玉模様と、小さい目玉模様には、
それぞれ、捕食者の攻撃を躊躇させる機能と、
逆に攻撃をその部分に向けさせる機能があり、
どちらとも言えない中間サイズの目玉模様は、
両方の効果が期待できることを紹介した。
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http://kamemusi.no-mania.com/Date/20150214/1/
実は、虫たちの身体にある目玉模様には、
前回の標準的な(?)の同心円状のもの以外に、
色々なタイプの良く似た模様があり、
まさに「ちょっとだけ不思議な昆虫の世界」なのだ。
とりあえず、前回の最後に示した写真・・・
ベニスズメ幼虫のリアルな目玉模様と、
アケビコノハ幼虫の漫画チックな目玉模様とでは、
どちらの方が、ビックリさせる効果が高いのだろうか?
実は、この謎を解く鍵が、下の写真にあるのだ。
これも目玉模様??
左上: ウンモンスズメ 白岩森林公園・青森(20120721)
右上: コマバシロコブガ 矢立峠・秋田(20140605)
左下: ワモンキシタバ 木賊峠・山梨(20140819)
右下: アトジロシラホシヨトウ 矢立峠・秋田(20140605)
これらは、いずれも蛾の成虫の写真なのだが、
翅の地色とは違う左右対象の模様は、
丸い形ではなくても、翅の輪郭にマッチすると、
目玉模様のように見えることが多いのだ。
確かに、この4種類の目(?)の部分は、
同心円ではないし、1個ずつ切り離してみれば、
どれも目を連想させることはない。
⇒ただ、翅の輪郭が動物の顔のようで、
下を向いて静止しているときには、
まさしく、目にしか見えないのだ。
左側2種の目は吊り上がり、ちょっと怖そうだが、
右側2種は、何となく、やさしいイメージがある。
いずれにしても、この4種の目玉模様は、
それぞれ、ほぼ完成品(?)だろう。
このように、輪郭が伴えば、小さな目玉模様でも、
野鳥類の攻撃を、躊躇させることが出来るはずだ。
別に、怖そうな顔(!)をしていなくても・・・
顔の表情を見て、怖そうか、優しそうかは、
我々人間だけ(?)が、過去の経験から、
勝手に思い込んで判断した結果である。
⇒という訳で、前回のリアルなヘビと、
漫画チックなヘビは、どちらも、
野鳥類にとっては、同じなのだろう。
またしても、陳腐な結論??
実は、切り離すと、もっと目には見えない模様もある。
アサマキシタバ(ヤガ科)
2014年5月25日 津山市・岡山
良く知られているように、多くのキシタバ類の仲間は、
隠蔽的な色彩の前翅の下に普段は隠されているが、
後翅の表面には、鮮やかな模様がある。
その鮮やかな模様は、左右対称なので、
翅を開いて、急に見せられたときには、
動物の目のようにも見えてしまう。
・・・ところで、この写真を撮ったとき!!
野鳥類が目玉模様に驚いて、攻撃を躊躇する場面には、
残念ながら、私はまだ、出会ったことはない。
ただ、常夜灯の下という、人為的な状況ではあるが、
上のアサマキシタバの写真を撮ったときに、
もしかしたら「これがそうか?!」ということがあった。
⇒夜明けの常夜灯近くには、明るくなっても、
帰り遅れた沢山の蛾が残っているが、
動きが鈍く、簡単に捕獲できるので、
学習した数種の鳥たちが集まって来る。
個人的には、そんな鳥たちは、
虫の写真を撮る私にとっては、邪魔で、
憎らしいライバルなのだが・・・
私が、写真を撮るため、キシタバに近づいたとき、
多分ハクセキレイだったと思うが、すぐ傍にいて、
何故か驚いて飛び去ったような気がした。
だから、上の写真のような鮮やかな後翅の写真が撮れたのだ。
もしかしたら、私に驚いて飛び去ったのではなく、
アサマキシタバの目玉模様のような模様(?)に、
反応したのかもしれない・・・?
さらに、もともっと発展途上(?)の目玉模様もある。
オスグロトモエ(ヤガ科)
2013年8月12日 阿武隈高原・福島
この写真、何となく違和感がある!
・・・?
何と、目玉模様が前翅にあるのだ!!!!
そうかと言って、この程度では、
前回のクジャクチョウほどの迫力は全くない。
だから、この子は、ビックリ効果を狙って、
突然目玉模様を見せるのではないし、
初めから見せているにしては、完成度が低く、
あまり防御効果がないような気がするのだが・・・
⇒冒頭の4枚の写真の蛾ほどには、
動物の顔には見えないが、
アングルによっては、フクロウか?
やっぱり、進化の途中段階なのだろうか?
さらに、下の写真も、色々と興味深い。
ヤママユ(ヤママユガ科)
2011年8月31日 白岩森林公園・青森
ちょっとだけ分かりにくいが、
枯れ葉のように、左右に1匹ずつ写っているのは、
ヤママユの雄成虫である。
実際の撮影現場では、もっと沢山の枯れ葉があって、
かなり大きな蛾なのだが、遠目には枯れ葉のように見える。
ヤママユの夕べ
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http://kamemusi.no-mania.com/Date/20110907/1/
4枚の翅には、それぞれ1個ずつの目玉模様を持っているが、
ほとんどの個体は、最初から目玉模様を見せている。
そして、何故か、周辺の葉っぱにも、沢山の目玉模様がある。
このように、翅を横に大きく開いて静止していると、
もしかしたら、ヤママユの目玉模様は、隠蔽的擬態か保護色???
このことに気付いたとき、思わずひとりで笑ってしまった。
木の葉の目玉模様って、何なんだろうか・・・・・
⇒この木の種類は、コブシだと思うのだが、
おそらく、ヤママユ幼虫の食草ではないはず。
この他にも、目玉模様には、面白い機能がある。
普通の生物は、目がある方が前(進行方向?)なので、
もしニセの目玉模様が、身体の後方にあると、
もしかしたら、ちょっとだけ賢い捕食者が予測するのと、、
反対方向へ飛んで逃げられるかも・・・・?
スペースの関係で、今回は写真は載せられないので、
興味ある方は、こちらをご覧ください。
どっちが前なの? ウラナミアカシジミ
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http://kamemusi.no-mania.com/Date/20120811/1/
・・・・?????
折角の話に水を差すようだが、
昔の学会(応動昆)では、こんな話も聞いたことがある・・・?
これまで、見てきたような同心円状の模様は、
一般的な虫を含む動物たちの生活圏の中では、
本来は、存在しにくいものであったと考えられる。
多くの生物は「見慣れないものを、本能的に避ける」傾向がある。
だから、ごくわずかの例外を除いて、
ほとんどの目玉模様の機能は、人間が想像しているだけなのだ。
前回のクジャクチョウのところで、
まるで目玉のように見える同心円状の模様は、
野鳥類にとって、最初から嫌いな模様である可能性に触れた。
実は、野鳥類が最初から嫌う形状は、
まだ他にもありそうだ。
次回、このシリーズ最後になるが、
野鳥類が「本能的に嫌う形状」のについて、
写真の撮れているものを紹介したいと思う。