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ちょっとだけ、不思議な昆虫の世界

さりげなく撮った昆虫のデジカメ写真が、整理がつかないほど沢山あります。 その中から、ちょっとだけ不思議だなぁ~と思ったものを、順不同で紹介していきます。     従来のブログのように、毎日の日記風にはなっていませんので、お好きなカテゴリーから選んでご覧ください。 写真はクリックすると大きくなります。   

目玉模様にも色々な機能がある?


虫たちの身体や翅にある模様の中で、
比較的よく見られる目玉模様には、
さりげなく不思議なことが沢山ある。

この機会に、まとめて紹介したい【注】

 

虫たちの体や翅にある目玉模様は、見た目のサイズから、
大きくふたつのタイプに分けられる。

そして、2種類の目玉模様には、全く異なった機能があるのだ。

 

ひとつは、左右対称のやや大きめの目玉模様で、
蛾の後翅表面に見られることが多い。

普段は、前翅の下に隠されているが、
近づいてきた捕食者に、突然見せつけることで、
少なくとも瞬間的には、攻撃を躊躇させることが出来るのだ。


そんな目玉模様は、野鳥類などの捕食者に、
ヘビやフクロウの目を連想させるのだろう。
↓   ↓   ↓
虫たちの防御戦略⑩ Ⅲ(2). 目玉模様(大)
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20130223/1/

 


初秋の北国では、下の写真のようなクスサンを、
常夜灯の近くで、明け方に良く見かける。


クスサン(ヤママユガ科)

2011年9月15日 白岩森林公園・青森

でも、野鳥類が本当に、このような蛾を見た瞬間に、
攻撃を躊躇するのか、個人的には、最近まで疑問視していた。


本物のフクロウとは、サイズが違いすぎるからである。


ところが、昨年末のブログで紹介したように、
 ① 野鳥類は、必要以上に怖がりである。
 ② 野鳥類は、遠近感とサイズ認識が苦手である。
というふたつの理由が重なって、
「小鳥たちにとって、遠くのフクロウよりも、
 近くのクスサン方が、はるかに怖い」
ということが、ようやく理解できたのである。
↓   ↓   ↓
擬態??④/④ サイズの違い
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20141214/1/

 

 


もうひとつのタイプは、やや小さ目の目玉模様で、
多くの昼行性のチョウの翅の端(周辺部分)に見られ、
大きな目玉模様とは違って、2個(1対)でないことが多い。

 

アオタテハモドキ(タテハチョウ科)

1999年6月21日 石垣島・沖縄

ジャノメチョウの仲間も同じであるが、
翅の周辺には、「これでもか!!」というくらい、
沢山の目玉模様が並んでいる。

このような翅の端の方に見られる目玉模様は、
視覚で獲物を探す捕食者からの最初の攻撃を、
胴体から離れた部分に向けさせる効果を持っている。
↓   ↓   ↓
虫たちの防御戦略⑫ Ⅲ(4). 目玉模様(小)、自切など
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20130301/1/


この効果に関しては、あまり実験的なデータはないと思う。

ただ、ジャノメチョウの翅に、ビークマークと呼ばれる損傷が、
しばしば発見されるので、少なくとも、鳥の攻撃から逃れた個体が、
ある程度存在するのは確かである。
↓   ↓   ↓
ちょっとだけ不思議な虫たち ビークマーク
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20120930/1/

 

下の写真は、その状況を分かりやすく示したものである。


クロヒカゲのビークマーク

左: 正常個体 白岩森林公園・青森(20110826)
右: ビークマーク個体 小泉潟公園・秋田(20120828)


静止しているクロヒカゲを見つけた小鳥が、
胴体から離れた翅のヘリにある目玉模様を、
急所の目玉と間違えて、最初についばんだとき、
チョウは、わずかな翅の損傷を残して、
その場から飛んで逃げることが出来たという証拠である。

もちろん、チョウが空中を飛んでいるときでも、
瞬間的には、翅が上下で重なる場合があるので、
このような左右対称の傷が出来るのだろう。

 

 

 

・・・と、話はここで終わらない!!!

 


これまで、曖昧に「やや大きめの目玉模様」と、
「やや小さ目の目玉模様」とに分けて紹介してきた。

ただ、ちょっとだけ不思議な昆虫の世界には、
当然のごとく、その中間の大きさの目玉模様が、
さりげなく存在するのだ。

 


下のクジャクチョウの場合は、どっちなんだ???

 

クジャクチョウ(タテハチョウ科)

2013年0月11日 酸ヶ湯温泉・青森


ジャノメチョウやアオタテハモドキの目玉模様と比較して、
明らかに大きく、しかも左右対称に配置されている。

小鳥の攻撃を、そこに向けさせているとすると、
ちょっと胴体に近くないか?


一方で、上の写真を良く見ると、
フクロウの眼に見えないこともない。

ただし、目が4個あるのだが・・・


もし、勇敢な小鳥たちの中には、
クジャクチョウを、食べようとするかもしれない。

その場合は、おそらく目玉模様を最初に攻撃するだろう。

 


クジャクチョウは、花などの蜜を吸うときに、
他のタテハチョウの仲間と同じように、
ゆっくりと、翅を開閉するする習性がある。

明らかに、目玉模様を、まるで誘惑するように、
チラチラ見せるような行動である。

 

この状況を、捕食者の側から考えてみよう。

野鳥類は、目玉模様を持った動物(モデル!)に、
一度ひどい目にあうと、それ以来、
目玉模様を学習して、避けるようになると言われている。


しかし、野鳥類が目玉模様の危険性を学習する機会は、
かなり少ないような気がするのだが・・・

というか、わずか数年の寿命の小鳥たちが、
自然状態で、フクロウやヘビに襲われて、
しかも、(その怖い経験をしただけで)、
運よく生き残っている確率は、ほぼゼロに近いと思う。

 


ん!!・・・ということは、

 

野鳥類は、良く目立つ同心円状の模様を、
もともと「本能的に避けるだけ」なのだろうか?


まるで目玉のように見える同心円状の模様は、
野鳥類にとって、最初から嫌いな模様だとすると、
クジャクチョウのように、最初から見えている場合でも、
野鳥類は、怖がって攻撃しない可能性があるのだ。


つまり、クジャクチョウの場合には、
微妙なサイズの目玉模様が、それを見る方の解釈によって、
「攻撃の対象」になったり、逆に「攻撃を躊躇」させるという
全く違った機能を持っていることになりそうだ。

 

 

 


最後に、写真をもう一枚!!

 


下のヘビに擬態した、2種類の蛾の幼虫。

どっちのヘビが怖そうに見えますか?

 

ヘビのような蛾の幼虫

左: ベニスズメ幼虫 白岩森林公園・青森(20101020)
右: アケビコノハ幼虫 弘前市・青森(20101008)


大きな目玉模様を持つ虫たちは、そんなに多くないが、
いずれも単なる同心円ではないところが凄い!

良く見ると、多少のずれがあったり、
中心部分には、虹彩を思わせる別の模様があるのだ。


ただし、一方はリアル、もう一方は漫画チック!!

 

 


・・・・次回へ続きます。

(今回は、さすがに長くなりすぎるので?)

 

 


【注】実は、4年前にも、特集記事を書いたことがあります。
   ここに書けなかった詳細情報もありますので、
   興味ある方は、是非ご覧ください。

   ↓  ↓  ↓

   目玉模様の進化【1】
   http://kamemusi.no-mania.com/Date/20110308/1/

   目玉模様の進化【2】
   http://kamemusi.no-mania.com/Date/20110309/1/

   目玉模様の進化【3】
   http://kamemusi.no-mania.com/Date/20110310/1/

   目玉模様の進化【4】
   http://kamemusi.no-mania.com/Date/20110311/1/





    

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