忍者ブログ
  • 2017.04
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31
  • 2017.06
擬態の不思議【2】 標識的擬態(Mimicry)

(前項【1】を先にお読みください)

自分を視覚的に目立たせることによって、
外敵からの攻撃から逃れる方法がある。

自らを、よく目立つ危険な動物に似せると、
過去に嫌な経験をした学習能力のある捕食者を欺いて、
その攻撃を躊躇させることができるからである。

このような擬態を、【標識的擬態 Mimicry】と言うが、
上記のような場合、さらに分類して、
一般的に【ベイツ型擬態】と呼ばれる。


ベーツ型擬態が機能していることを証明するためには、
以下の5点を、すべて確認する必要がある。

①モデル種は、まずくて(毒があって)、
 鳥などの捕食者からあまり食べられない。
②モデル種は、比較的目立つ形態・色彩をしている。
③擬態種は、本当は味が良い(毒がない)のに、
 まずい(有毒の)モデル種に似ている。
④捕食者は、生まれつきモデル種がまずい(有毒)ことを、
 知らないので、一度はモデル種を攻撃する。
⑤捕食者は、基本的に、両者を見分けることができない。

この中で、①③⑤はよく見かける条件であるが、
②と④も、ベイツ型擬態の必須項目であるはずである。

アメリカのブラウワー博士が、見事に実験的に証明した。

集団越冬でも有名なオオカバマダラを用いた論文を、
学生時代に英文を苦労して読んで、
擬態という(ややもすると)博物学的な分野でも、
その手際のよい科学的な証明方法に、感動したことを覚えている。《注4


オオカバマダラは、幼虫時代の食草がトウワタ(ガガイモ科)で、
それに含まれる毒成分(カルデノライド)を、
成虫になっても体内に蓄積していることを確認し、
そのために、鳥はオオカバマダラ成虫を食べない【条件①】。

オオカバマダラ成虫は、オレンジ色の地に、
黒と白の比較的派手な色彩をしている【条件②】。

オオカバマダラ幼虫を無毒のキャベツで飼育すると、
毒のないオオカバマダラ成虫を作ることができるが、《注5
これを研究室で雛から育てられて、
一度もオオカバマダラを経験していない鳥(ノドジロアオカケス)は、
喜んで食べる【条件③】。

しかし、通常の毒のあるオオカバマダラ成虫を与えて、
まずい味を経験させると、鳥は、
二度とこれを食べることはないので、
生まれつき毒があるチョウを知っているわけではない【条件④】。

こうして、通常のオオカバマダラ成虫を食べなくなった鳥は、
キャベツで育った無毒のカバマダラも、
擬態者であるカバイロイチモンジも食べなくなる【条件⑤】。

ブラウワー博士は、これらの一連の実験の中で、
擬態種はゆっくりした進化の過程で、
類似がまだ完全な状態ではない段階でも、
ある程度の効果を持っていることを示唆した。


また、複数の有毒な種が同じような形態になると、
より効率的に捕食者を学習させることができる。

この場合は、【ミューラー型擬態】と呼び、
以前に日本国内で見られる例を紹介した。

http://kamemusi.no-mania.com/Date/20101114/1/

さらに、メルテンス型擬態、ベッカム型擬態(攻撃擬態)、
アリ擬態、種内擬態などの特別な擬態に細分されるが、
非常に面白い不思議な現象でもあり、
これらについては、別の機会に紹介したい。

 
ベイツ型擬態に関しては、隠蔽的擬態と同様に、
もうひとつ重要な条件がある。

外見が有毒あるいは危険なモデルによく似ることは当然であるが、
擬態者の行動も重要な意味を持っている。

モデルが動く場合には、当然その行動まで似せなければ、
外見がどれだけ似ていても、その効果が薄い。
例えば、ハチに擬態するトラカミキリ成虫は、
細かく触角を振りながら、ハチのような歩き方をするし、
有毒のベニモンアゲハに擬態するシロオビアゲハのメスは、
モデルと同じようにふわふわと飛ぶ。


一方、捕食者の方にも、いくつかの重要な条件がある。

無害な動物が、有害な生物をモデルとしたベイツ型擬態の場合、
捕食者が、モデルを攻撃したときのいやな記憶を、
できるだけ長く保っていることが必要である

もしもスズメバチに刺されたことがある動物が、
次の日には、ハチのことをすっかり忘れてしまえば、
次に(ハチに擬態した)セスジスカシバを見つけたとしても、
全くためらわずに捕食するだろう。

 
2010年9月8日 セスジスカシバ 白岩森林公園

従って、ハチの模様と刺された痛みを、
関連づけて覚えていることが必須条件である。

これは、脳神経系と視覚などの感覚器がある程度発達した、
学習可能な捕食者に限られることを意味する。

そしてもう一つ、考慮しなければならない条件がある。
それは、擬態者とモデルの数のバランスの問題である。

もし、モデルより擬態者の数の方が多ければ、
捕食者は、危険なモデルよりも無害な擬態者に遭遇する頻度が高くなる。
そうなると、擬態者の発する信号は、無意味になり、
逆に捕食されやすくなる可能性さえある。

ただし、どう見ても、例えばセスジスカシバ(擬態者)が、
アシナガバチ(モデル)よりも沢山いるとは、到底思えないが・・・・

 
注4》ブラウワー博士が女性であることを知ったときは、
    さらに感動したような記憶がある。

注5》このブラウワー博士の手法も素晴らしい。
    無毒のオオカバマダラ成虫を実験的に作り出し、
    あの独特のオレンジ色と黒と白の模様が、
    先天的に鳥が嫌うものではないことを見事に証明した。
    
(つづく)   

拍手[50回]

PR
【2011/01/16 07:26 】 | 擬態 | 有り難いご意見(0) | トラックバック(0)
<<擬態の不思議【3】 隠蔽的擬態 | ホーム | 擬態の不思議【1】 用語の混乱>>
有り難いご意見
貴重なご意見の投稿














虎カムバック
トラックバックURL

<<前ページ | ホーム | 次ページ>>