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ちょっとだけ、不思議な昆虫の世界

さりげなく撮った昆虫のデジカメ写真が、整理がつかないほど沢山あります。 その中から、ちょっとだけ不思議だなぁ~と思ったものを、順不同で紹介していきます。     従来のブログのように、毎日の日記風にはなっていませんので、お好きなカテゴリーから選んでご覧ください。 写真はクリックすると大きくなります。   

枯れ葉のような蛾【3】 保護色から隠蔽的擬態へ

今月初めに、枯れ葉に似たカギバ類を連続で紹介した。

ウスイロカギバ http://kamemusi.no-mania.com/Date/20120710/1/
マエキカギバ  http://kamemusi.no-mania.com/Date/20120712/1/


彼らは、体色だけでなく、形態も枯れ葉に似せているので、
緑色の葉っぱにも平気で止まる。


今回は、もっともっと枯れ葉に似ている蛾を紹介する。

 

普通の生態写真や、ネットで良く見かけるマエグロツヅリガは、
三角翼の戦闘機のようだと表現する人もいるが、
実は、簡単な柄がついた枯れ葉にも見えるのだ。

まず、下の写真から・・・・(是非クリックしてご覧ください)


マエグロツヅリガ(メイガ科)

2012年7月21日 白岩森林公園・青森

最初は、本当に枯れ葉だと思った。

だから、このブログで使用しても良いかなと思って、
ちょっと蛾に見える枯れ葉の写真を、撮っておこうとしたのだ。

ススキの上に乗る枯れ葉も面白いし・・・

 

 

マエグロツヅリガ(メイガ科)

2012年7月21日 白岩森林公園・青森

そして、1~2歩進んだが、他の枯れ葉を見て、
「ん!!」という感じだった。

 

 

マエグロツヅリガ(メイガ科)

2012年7月21日 白岩森林公園・青森

近づいて良く見ると、何か本物の蛾の様だぞ!!


背中の微妙な線、模様や色使いはそれで、まあ良い!!

しかし、それだけではないのだ。
翅の両端が内側に曲がって、しかも微妙な波打ちまである。

このように、両端が少し巻いている雰囲気は、
まさに広葉樹の枯れ葉そのものである。

さらに、柄まで付いているし・・・。

 

 

マエグロツヅリガ(メイガ科)

2012年7月21日 白岩森林公園・青森

しかも、しかも、しかも、この子の静止の仕方も、ミラクルである!!!
(是非クリックしてご覧ください)

もう一度、遠目に見てみると、体が少し斜めに葉っぱから浮いていて、
枯れ葉がふわりと葉っぱの上に、ふわりふわりと、
まさに今、舞い落ちてきた感じなのである。

これは、はっきり保護色の域を出て、典型的な隠蔽的擬態の範疇に入る。


まあ、ムラサキシャチホココノハムシには遠く及ばないが・・・

 


ここで、別の種を見てみよう。


クロホシフタオ(ツバメガ科)

2010年9月8日 だんぶり池・青森

上の写真のように、枯れ葉のような色と模様の蛾は、
もし、枯れ葉の上にいれば、背景に溶け込んでしまうだろう。

このような場合は、典型的な保護色である。

しかし、それに、ちょっとだけ翅の形態(外観)を変えたり、
切れ込みを作って、姿かたちを変化させれば、
場合によっては、そのまま隠蔽的擬態の範疇に入るのだ。

 

 

クロホシフタオ(ツバメガ科)

2012年7月4日 白岩森林公園・青森

写真のクロホシフタオの翅は、破れているのではない。
最初に見たときは、鳥にでも喰われた痕跡のイメージだったのである。

ところが良く見ると、この切れ込みは、より「リアルな枯れ葉」のようであり、
しかも後翅は、枯れ葉のように波打っているのだ。

ここまでくると、緑色の葉っぱにも平気で止まるのだろう。


しかも、すぐそばに、本物の蛾の翅がさりげなく落ちてるし・・・

 

 

このように、保護色と隠蔽的擬態の進化については、
比較的分かりやすい。

ある生き物が背景に溶け込む色彩を持つということは、
そうでないものに比べて、視覚で獲物を探す捕食者から、
ちょっとでも発見されにくくなるはずである。

こんな感じで、特別な防御手段を持たない虫たちが、
普段いる背景に似せた色になることで、
多少でも天敵から発見されにくくなり、
生存の機会が増せば、このような保護色は、
少しずつ進化していくだろう。

ただし、保護色だけでは、背景を選ばないと、
十分な効果は得られない。
さらに一歩進んで、形態まで模倣するようになれば、
背景を選ばなくても良いのだ。

今回見てきたように、典型的な蛾の形をした枯れ葉色の蛾が、
緑の葉っぱの上にいると、おそらく、
蛾だということがすぐに分かってしまうだろう。

ところが、形態まで葉っぱに似ていれば、
今度は、枯れ葉と間違えて、その直後からは、
捕食者の興味を引かなくなるのである。

ムシを探している捕食者(主に鳥)で、
枯れ葉も同時に食べるものなんかいないからだ。

虫を探している多くの鳥たちは、緑の葉っぱの上で、
枯れ葉を見つけても、即座に食べ物でないことを認識してしまう。


別の機会に、改めて紹介する予定であるが、
枯れ枝に擬態するシャクガなどの幼虫が
しばしば緑色の葉っぱの上で枯れ枝のように硬直しているのも、
獲物を探す捕食者に、とりあえず見つけてもらって、
即座に食べ物でないと認識させるのである。


ここまで読んでいただいた方、何かおかしいと思いませんか?

この説明では、マエグロツヅリガもクロホシフタオも、
隠蔽的擬態とは言えなくなってしまうのだ。 

 
むしろ、これは、外敵に目立たせるような標識的擬態の範疇に入るだろう。

だから、鳥の糞、小枝、枯れ葉、黒っぽいアリや、花の蕾などをまねた擬態は、
一般的な警戒色の有毒種を模倣した標識的擬態【Mimicry】とは、
おそらく違うジャンルに入れなければならないだろう。

もちろん、彼らが、枯れ葉が一杯あるようなところに、
普通に(!)静止していれば、それは、
典型的な隠蔽的擬態の範疇に入るのだが・・・・


 

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