日本のセミ【1】
セミは、昆虫の中でも、かなり大きな声(?)で鳴く。
オスの腹部には、大きな空洞があり、
ギターのように音を増幅することができるからである。
日本では、新緑の季節を過ぎると、松林などで、
さりげなくハルセミが鳴いていることに気がつく。
そして、夏にかけて、いろいろなセミの声が聞こえてくる。
しかし、日本国内で、普通に見られるセミの種類は、
わずか20種程度しかない。
だから、昆虫に興味のない人でも、
鳴き声を聞けば、~~ゼミとわかるほどである。
そのせいか、昔から文科系の人たちにも、
少なからず興味を持たれていたようで、
多くの文学作品の題材になっている。
今回は、日本の代表的なセミ4種を紹介する。
鳴き声の大きさでは、多分日本一だろう。
徳島市に住んでいたころ、阿波踊りの季節が近づくと、
ギンギラギンにさりげなく、クマゼミが鳴き出す。
だから「阿波踊りには、クマゼミの鳴き声がよく似合う」と思う。
ここ数年、クマゼミの分布域が北上していると言われるが、
これも、地球温暖化の影響なのか?
独特の鳴き声は、どことなく懐かしい。
個人的には「ミンミンゼミの鳴き声は、かき氷とよく似合う」と思う。
ただし、西日本の平野部には、ミンミンゼミは、ほとんどいない。
昔の九州が舞台のテレビドラマで、ミンミンゼミが鳴いていて、
多少、違和感を覚えたことを覚えている。
したがって、ミンミンゼミとクマゼミが、
合唱することは、基本的にはないと思う。
鳴き声も、サイズ的にも、非常に地味なセミである。
多分、日本人の多くは、神社やお寺の境内にいると、
一種独特な雰囲気を感じると思う。
「ニイニイゼミの鳴き声は、そんな雰囲気によく似合う」と思う。
そういえば、松尾芭蕉が山寺で詠んだ有名な俳句のセミは、
ニイニイゼミである可能性が高いという。
子供のころは、東京にもアブラゼミが沢山いたし、
千葉県の梨畑では、立派な(?)害虫であった。
しかし、関東以西の市街地では、環境の変化によって、
生息数が減少しているといわれている。
ほとんどのセミの種類は、透明の翅を持っているが、
アブラゼミの翅は、前後とも不透明の褐色であり、
世界でも珍しい翅全体が不透明のセミである。
そのためか、アブラゼミは人が近づくと、
幹の反対側に歩いて逃げようとするが、
クマゼミなどは、すぐに飛んで逃げる。
しかし、この行動パターンが、アブラゼミの
個体数減少の直接原因ではないだろう。