昆虫の種類数
近所の小学生の子供から、
「地球上には、いったい何種類の昆虫が存在するの??」
どうせ答えられないんだろという雰囲気(多分?)で、
こんな良くある質問をされた。
当然の答えとして、
「そんなの、だれも数えたことがないから、分からないよ!」
と、ちょっと動揺しながら、その雰囲気のまま回答・・・
そして、家に帰って、さりげなく調べてみた!?
現在、学名が付いている(文献に記載されている!!)昆虫の種は、
情報源によってかなりバラツキがあるが、世界中で約95万種と言われている。
⇒明確に世界の昆虫の種類数を把握できる資料は、おそらく存在しないようだ。
⇒ちなみに、未発見種が沢山いるとは思えない(?)哺乳類は、約6000種で、
鳥類は、約9000種とされている。
(以下、本文の内容と写真は、無関係です)
私が虫に興味を持った頃(半世紀前)は、約70万種とされていたので、
その間に、次々に新種が記載されて(??)、約1.5倍になったことになる。
無理を承知の単純計算で、1年に2500種以上の虫たちが、
学名を付けてもらって、次々に記載されていたのだ。
だから、「世界に昆虫が何種類いるのか?」と質問されても、
例えば、新たな文献記載の可能性が少ないある年の1月1日時点でも、
誰も数えようとした人は多分いないので、正確に答えられない。
苦労して調べても、当然次の日には、また何種かが増えている可能性が高いのだ。
昔は、「ある生物種」が、海に隔てられた島や、大きな河川の両側で、
お互いに移動できなくなった場合には、どちらかに何らかの遺伝的な変異が生じて、
交配が不可能になれば、新しい種として、分化したことになるとされていた。
だから、移動性のあまり大きくない微小昆虫の場合には、
わずかな障壁でも、簡単に生息隔離が起こりやすく、
長い年月が経過すれば、普通に、別種になる可能性が高いのだ。
また、多くの昆虫類は、ある特定の植物に依存(餌とする)している。
特に、微小昆虫の種類数に関しては、頭がクラクラするような恐ろしい状況がある。
一本の大きな木に袋をかけて、地面に白い布を敷く。
その袋の中に燻煙殺虫剤を処理して、その中にいる全部の虫を殺して、
布の上に落ちている虫の種類と数を確認する。
そうすると、特定の木についている虫の種類と個体数が、全て把握できる。
特に、熱帯雨林で行われた様々な樹木に対する「袋がけ殺虫試験」では、
ある植物(樹木)に依存する昆虫の種類数を確定し、
植物の種類数を掛け算すれば、その地域の総種類数が予測できる。
当然野結果として、昆虫の多様性(種類数!)が、
想像以上に大きいことが再確認されているのだ。
基本的に、種の記載は形態に基づいて行われている。
しかし、形態的に区別がつきにくく、同一であると考えられていた種が、
「DNAなどの分子系統解析によって、実は別種であった」
と考えられる例が、最近になって増えているのだ。
特に、人間が作った作物の害虫についての研究が、精力的に行われており、
学会で話を聞いても、とても付いていけないレベル(?)になっている。
例えば、ミバエ類では、34の調査地から24種のウリ科植物の花や実を集め、
羽化してきた2857頭のミバエの分子系統解析を行った。
その結果、それらは52種に分割可能であることが明らかになった。
ある種のミバエは、1種の植物の雌花のみを利用していたが、
その同じ植物の雄花を、別の種が利用していることもある。
だから、ミバエの仲間は、地理的な種分化に加えて、
植物の利用部位による種分化の程度も大きいことが分かってきた。
という訳で、従来の分類学(系統学?)は、形態学や発生学、
さらには、生化学的性質も含めた表現型の比較に基づいていたが、
現在の分子系統学は、それらの根本にある遺伝子型に基づく方法であり、
より直接的に、生物の進化を推定できるとされている。
この分野は、遺伝子解析が容易になったこともあって、
進化生物学の重要な柱となりつつあるようだ。
・・・・
逆に、こんなことはないだろうか?
かなり多様化していると考えられていた種が、
詳細な遺伝子解析によって、実は1種だった。
そうなれば、昆虫種類数の増加傾向に、
多少とも、歯止めがかかるかもしれないのだが・・・
ただ現時点では、この推論は、全くありそうもない!!!
最後に、さりげなく話を最初に戻して、陳腐な結論。
⇒地球上の昆虫の総種類数に関しては、
現時点では、どんな偉い・有名な昆虫学者でも知らないし、
そんな詳細な数字を知っても、あまり意味がないとも言える。
最初に小学生から質問されたときに、
こんな結論を、自信を持って答えれば良かったのだが、
どうなんだろうか・・・??