玉川ダムのナミテントウ(2014)
晩秋のダムサイトには、カメムシ以外にも、
成虫越冬する虫たちが、さりげなく集まってくる。
⇒(正確には、越冬場所を探す途中に、暖かい場所に立ち寄る?)
そんなダムサイトの虫たちの中で、カメムシ類に次いで、
沢山見られるのは、テントウムシの仲間だ。
中でも、ナミテントウは、比較的個体数が多いようだ。
もちろん、ナミテントウは、色々と不思議な虫である。
アケビコノハ(成虫・幼虫)が擬態の帝王なら、
ナミテントウは、色彩変異の帝王だ(?)・・・⇒個人的な感想!
今回の玉川ダムでは、大別すると4種類の基本の斑紋型のうち、
3種類(4タイプ)が、同時に見つかったのだ。
黒字に赤い斑紋を左右に2個ずつ持つ4紋型。
写真のような赤色と黒色からなる斑紋は、
このブログで、何度も紹介したように、
かなり良く目立つ警戒色(警告色)の典型だろう。
緑色の葉っぱの上にいれば、なおさらのことだ。
黒地に赤い斑紋を、左右に1個ずつ持つ2紋型。
ただ、イメージは、最初の4紋型とあまり変わらない。
野外でも、交尾カップルを、しばしば見かけるが、
ナミテントウは、異なる斑紋のものが、普通に交尾している。
だから、視覚的には仲間を見分けていないようだ。
赤地に黒い斑紋を多数持つ紅型。
ナミテントウの基本的な体色(元の前翅の色)は、
赤色科黒色、一体どっちなのだろうか?
いずれにしても、赤か黒の地色に、それぞれ逆の、
黒色か赤色の斑紋(模様?)があるのが普通だ【注1】。
考えてみれば、前翅の地色が、赤色か黒色かでは、
まるで正反対のような気がするのだが、
何故、こんなに手の込んだことをするのだろうか?
こちらは、赤地に無紋の紅型の変形。
よりによって、斑紋がないものもいるとは!!
さすが、色彩変異の帝王の名に恥じない。
このダムでは、どのタイプが多かったのか?
もちろん、数値を出すほどの観察はしていないのだが、
紅型とは真逆の黒地に赤い斑紋を多数持つ斑型は、
少なくとも今回は、見つからなかった。
というか、ここ数年間で、玉川ダムでは、
斑型は、一度も見ていないような気がする。
このブログでも、何度か紹介したが、
テントウムシは外敵に襲われると、足の付け根付近から、
匂いの強い赤い液体を出すことが知られている。
この汁は、鳥が食べると不快な味がするようで、
この斑紋パターンを覚えた(学習した)鳥は、
2度とテントウムシを捕獲しようとはしない。
・・・・・ん!?
では、一体何故、ナミテントウは、
4種類もの斑紋を持つようになったのだろうか?
野鳥類に、不味い味と色彩の関連を覚えさせるには、
斑紋パターンは1種類しかない方が、
どう考えても効率的はずだ【注2】。
ところで、このブログでも昔紹介したことがある、
マルウンカという類縁関係のないカメムシ目の虫がいる。
この子は、テントウムシに擬態しているのだが、
モデルとなったのは、あまり見かけないシロホシテントウのようだ。
↓ ↓ ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20130705/1/
どうせなら、もっと普通種をモデルとした方が、
良さそうな気がする・・・??
・・・ということは、おそらく、
テントウムシのような(?)半球状の姿かたちであれば、
色や模様は、多少のバラツキがあっても、
野鳥類などの外敵は、みんな同じテントウムシの仲間として、
学習するのかもしれない。
さすが、ちょっとだけ不思議な昆虫の世界である。
【注1】ナミテントウの斑紋パターンは、
単一遺伝子座の複対立遺伝子により支配され、
その組み合わせによって決定されることが
すでに明らかにされている。
しかも、対立遺伝子構成は極めて多様性に富み、
微妙に異なる200以上の斑紋型が存在するようだ。
【注2】良く知られているように、毒を持たない虫が、
有毒の虫に似せるベイツ型擬態の場合には、
目立つ効果が同じならば、いろいろなタイプがあった方が、
捕食者に学習されなくてよいという考え方がある。
もしかしたら、ナミテントウはそれほど不味くない?