見栄えの良いミバエ類
ミバエという小さなハエの仲間がいる。
漢字で書くと「実蠅」、英語で「fruit fly」と言うように、
多くのミバエ類は、植物の果実内部に卵を産み、
幼虫が孵化すると、周囲の組織を食べて成長するので、
種によっては、重要な農業害虫となる【注1】。
また、ミバエ類の分類は、新種の記載や分類の再編、
さらには遺伝子解析等によって、絶えず変化している・・・??
・・・という前提のもとで、
青森県内で偶然見かけた小さなミバエ類を、
「北国にも、こんな虫がいたのか!」
という程度の乗りで、取り上げてみたい。
多分キイロケブカミバエ(ミバエ科)
2015年7月20日 十三湖・青森
黄色の身体に、白黒の翅が良く目立つ。
結構、危なっかしい止まり方だが・・・
⇒アザミの花に寄生する普通種で、
青森県でも普通に見られるようである。
ネット情報では、ケブカミバエの多くは、
キク科植物の花の中の種子を食害し、
多くの場合、そのまま蛹になるようだ。
多分ヤマハマダラミバエ(ミバエ科)
2014年9月8日 白神・青森
この子は、黄色を基調とした美しい種である。
ネット上の写真と絵合わせすると、
胸の模様がにているので、おそらく、
ハマダラミバエの仲間のようだ。
⇒このように、ミバエ類の多くは、
明るい色彩を持ち、視覚的に目立つ。
おそらく、もう少し大きかったら、
スズメバチに見えるかも?
多分シラホシハマダラミバエ(ミバエ科)
2015年7月22日 だんぶり池・青森
この子は、茶色と黒色を基調とした種で、
だんぶり池の林道でよく見かける。
結構素早く動き回っている印象があるが、
かろうじて撮影に成功した一枚である。
⇒また、晩秋のダムサイトでも、
珍品のツノカメムシ類に混じって、
沢山見られるのも、この仲間だと思う。
ハマダラミバエの仲間かも?
2014年6月21日 酸ヶ湯温泉・青森
一瞬、有名なウリミバエだと思ったが・・・【注2】
ネット上の写真では、絵合わせして、
ほぼ一致する種はいなかった。
ただ、実に見事な、独特の雰囲気の模様だ。
⇒もう少し大きかったら、人気者ものかも?
・・・という訳で、小さいのによく目立つミバエ類でした。
【注1】ミバエの仲間には、ミカンコミバエ、ウリミバエ、
チチュウカイミバエなどの世界的に有名な農業害虫が多い。
海外旅行の土産物として、果実類を持ち込めない理由が、
このようなミバエ類の移動を防ぐためである。
【注2】琉球列島に侵入した大害虫のウリミバエに対し、
昆虫学者が中心となって行われた不妊虫の放飼によって、
完全に根絶することができた世界的に有名な業績がある。
当時(1970年代)は、農薬の危険性が指摘されるなかで、
フェロモンや天敵を使った穏やかな(?)防除法が注目を集め、
多少の害虫がいても、個体数をある程度低く抑えていれば良しとする、
経済的被害水準(EIL)等の考え方が主流だった。
そんな中で、最初に学会で聞いて衝撃を受けたのは、
ウリミバエ生産工場(!!)でガンマ線照射により不妊化した雄を、
大量に野外に放飼して、野生雌の産む受精卵の割合を減らし、
最終的に沖縄県全域で、完全に”0”にしたという発表であった。
化学農薬を使用せず、性フェロモンやホルモン(JH)、
あるいは天敵を放飼育して、害虫防除を目指していた我々には、
相当ショッキングな出来事だった。