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ちょっとだけ、不思議な昆虫の世界

さりげなく撮った昆虫のデジカメ写真が、整理がつかないほど沢山あります。 その中から、ちょっとだけ不思議だなぁ~と思ったものを、順不同で紹介していきます。     従来のブログのように、毎日の日記風にはなっていませんので、お好きなカテゴリーから選んでご覧ください。 写真はクリックすると大きくなります。   

不思議な虫えい③ ノブドウミフクレフシ


秋になると、色々な植物が、色とりどりのきれいな実をつける。

ときには、珍品のカメムシが吸汁していることもあり、
果実を見つけると、思わす足を止めて探してしまう。

 


弘前市周辺でも、いつもの撮影ポイントで、落葉が始まると、
ノブドウの果実が、目立つようになるのだが・・・・


果実は、白、青、黄、紫、紅、赤色と、かなりの色彩変異があり、
大きさも、同じ房なのに、さりげなく不揃いである。

このような色と大きさが不揃いの原因は、
ノブドウミタマバエの寄生による可能性が高いのだ。

 

 


ノブドウの果実(ブドウ科)

2014年10月19日 弘前市・青森

この写真の果実は、どちらかは、かなり微妙なのだが・・・


簡単に確かめるには、さりげなく実をつまんでみればよい。

上の写真の水色の果実は、柔らかくて、
中には、数個の種子が入っているので、正常果だろう。

一方、奥の方に見える白色だが、赤や赤紫色の模様の入った実は、
間違いなく虫えいであり、触ってみても硬い。

 

 

 

ノブドウミフクレフシ

2014年10月1日 だんぶり池・青森

少なくとも、このようにやや変形・肥大した果実は、
多分、全てが、ノブドウミフクレフシである。

普段はあまりしないのだが、一部を持ち帰ってナイフで割ってみると、
内部は未熟果のように堅く、中心部に幼虫室が1個あり、
中に、黄色の幼虫が1匹だけ入っていた【注1】

 

 

 

ノブドウミフクレフシ

2014年10月12日 弘前市・青森

ノブドウミフクレフシは、ノブドウの蕾または幼果に形成される虫えいで、
ノブドウミタマバエ Asphondylia baca Monzen の寄生によって、
正常果よりも肥大し、直径8~16mmの球形ないし扁球形になるのだ。

ちなみに、このタマバエの種小名は、思わずニヤリとしてしまうが、
命名者の Monzen 氏のさりげないセンス(?)なのだろうか?

 

 

 


ノブドウの果実(ブドウ科)

2014年10月19日 弘前市・青森

ところが、同じ場所で、ほぼ白色の果実も見つかる。

このような大きさが揃った白色の果実は、
何らかの原因(?)で、タマバエの寄生を免れたもので、
割ってみると、果実は柔らかく、正常の大きな種子が4個入っていた。


ノブドウの果実に、虫えいが見られないのは、
この時期には、むしろ珍しいことなのかもしれない。

 

 


・・・・・ところが、話はここで終わらないのである。

 

 


ノブドウミフクレフシ(?)

2014年10月19日 弘前市・青森

普段見かけるこのような雰囲気の色が違う果実は、
今までは、虫えい(ノブドウミフクレフシ)だと思っていた。

ところが、今回、写真の実を軽くつまんでみると、
水色や黄色のものは、柔らかくて、正常果のようであった。

ただ、いちばん下に写っている白と赤紫色の混じった実は、
肥大していないが、触ってみると硬いので、虫えいだろう【注2】


ノブドウミタマバエは、ノブドウの果実にカビを寄生させ、
そのカビを食べて、幼虫が育つと言われている。

だから、このような果実のまだら模様は、
内部のカビの繁殖程度によって、変化するものなのかもしれない。

 

 

さらに・・・・

 

 

ノブドウミフクレフシ(?)

2014年10月20日 弘前市・青森

このような、緑色っぽいの果実も、正常果だと思われがちだが、
肥大したものは、割ってみると、中に幼虫がいる虫えいなのだ。

この写真では、上方の奥に写っている肥大した果実と、
下方の大きいやや白っぽい果実は、中は堅く、幼虫が見つかった。

その他の肥大していない果実を2~3個割ってみたが、
種子はまだ小さいものの、正常な果実のようであった。

 

だから、巷(ちまた)では、
「秋に見られる果実は、ほとんどが虫えいである」
と言われているが、実際には、
「10月に弘前周辺で見られるノブドウの果実は、
 色が、緑色であっても、虫えいのことがあり、
 白色以外の青色、水色、うす黄色でも、
 正常果の可能性も十分ある」
ということになりそうである。

 

 

【注1】いつも参考にさせていただくネットの「北海道のの虫えい」をみると、
    年間世代数は2~3回で、1次寄主(冬寄主)のタニウツギで1世代、
    2次寄主(夏寄主)のノブドウで、1~2世代を経過するようだ。
    ノブドウでの第2世代虫えいは、8月下旬~9月上旬に出現し、
    幼虫は9月中旬~下旬に3齢に達する。
    成熟した幼虫は虫えい内で蛹化、9月中旬~10月上旬に羽化する。

    今回、果実を割って幼虫を確認したが、1匹だけ蛹になっていた。


【注2】今回初めて気が付いたのだが、そのような果実を切ってみると、
    中の一部がが茶色くなっているものが多くあり、
    何らかの虫が食害しているようだが、
    ノブドウミフクレフシではない可能性もありそうだ。

     

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