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さりげなく撮った昆虫のデジカメ写真が、整理がつかないほど沢山あります。 その中から、ちょっとだけ不思議だなぁ~と思ったものを、順不同で紹介していきます。 従来のブログのように、毎日の日記風にはなっていませんので、お好きなカテゴリーから選んでご覧ください。 写真はクリックすると大きくなります。
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虫たちの中には、自分の体の色や模様を、
普段いる背景に合わせるだけでなく、
姿かたちまで似せている種類もいる。
この防御方法の完成度の高い場合には、古くから、
昆虫マニアたちを虜にしてきた。
それどころか、全く虫に関心のない人たちにも、
自然の不思議さを伝えることのできる良く知られた現象で、
しばしば、その関連の写真集も出版されている。
ここでは、体の色や模様だけで隠蔽するのを【保護色】とし、
姿かたちまで似せるのを【隠蔽的擬態】と呼ぶ。
保護色と隠蔽的擬態の概念は、ほとんど同じように思ってしまうが、
実は、ちょっとだけ機能が異なっており、
あまり知られていないが、かなり重要な問題なのである。
体の色や模様だけを背景に似せた保護色は、
静止する場所を適切に選べなかった場合には、
元の輪郭がくっきりと表れて、逆に良く目立ってしまうのだ。
Ⅱ(2)で、静止する背景を間違えたとして紹介した、
シロシタバやキシタミドリヤガの前翅表面の模様は、
苔の生えた樹皮そのものであった。
だから、彼らが苔の生えた大木の樹皮に静止していれば、
視覚で獲物を探す捕食者は、見つけることができないし、
私に写真を撮られることもなかったろう。
ところが、色や模様だけでなく、姿かたち(輪郭)まで、
葉っぱや枯れ枝に似せた隠蔽的擬態であれば、
背景を間違えても、やっぱり葉っぱや枯れ枝にしか見えないのである。
隠蔽的擬態の例としては、昔から、木の枝そっくりなナナフシや、
まるで葉っぱのようなコノハムシなどが、良く知られている。
実物は、動物園でしか見たことがないのであるが、
枯れた部分や虫食いの跡まで作ったコノハムシである。
実際に展示室の前では、若いお母さんが、指さしながら、
「あそこの陰にぶら下がってるでしょ!!」とか言って、
一生懸命に子供に説明しているが、初めて見た子供たちは、
なかなか発見できないし、最後には、虫でも葉っぱでも、
どっちでも良いみたいな雰囲気になっていた。
確かに、これが虫だと言われても、子供心が傷つくだけだ!!!
それほど、葉っぱそっくりなのである。
そして、これらのおどろくべき精密さを持った色や形が、
単なる偶然の結果で出来上がったものではないことは、
その行動と考えあわせてみればよくわかる(注)。
まず、下の2枚の写真の子たちは、ほぼ同じ姿勢で下を向いている。
もちろん、普通の虫たちは、頭を上にして静止することが多いのだが・・・
トビナナフシの体は、多種に比べてややずんぐりしている。
それでも、若い緑色の枝にそっくりで、触角を前方に揃えて静止する。
また、Ⅲ(4)で紹介予定のであるが、脚を自切して逃げることもできる。
偶然にも、ちょうど2年後の同じ場所で見つけた外来種アオマツムシ。
緑色の背中が平らで、縁取りの黄色ラインが入っているおり、
しかも、お尻の先が細くなっているので、まるで葉っぱのように見える。
トビナナフシやアオマツムシは、保護色をより完璧にするために、
このように、姿かたちまで変形させ、それに合わせて、
触角を揃えて前方に伸ばし、下向きに静止するのだ。
ここで、注目すべきは、よりコストをかけて、形状まで変えたことにより、
適切な背景を選べば完全に背景に溶け込み、運悪く背景を選べなくても、
予想以上の生存のための効果が、得られる場合があるのだ。
まず、下の写真の蛾の幼虫は、どうなんだろうか?
昔だったら、典型的な、居場所を間違えた例として、
紹介してしまったかもしれない。
本当に、この子は、空気の読めないドジな子なのか?
それとも・・・・・
この自信たっぷりのポーズは、食えるものなら食ってみろ!!!
と、言わんばかりの凛とした雰囲気で、決して、
背景選択を間違ったのではないことを強調しているのかもしれない。
さらに、次の4枚の写真も、典型的な隠避的擬態の例である。
いずれの場合も、完全に背景選択を間違えているので、
私ごときに写真を撮られてしまったのだが、もし仮に、
彼らが適切な環境にいたら・・・と想像すると、
頭がクラクラするほどである(?)
これは、ツマキシャチホコという蛾(成虫)であるが、
緑色の葉っぱの上にいても、枯れ枝にしか見えない。
こちらも同様に、マエグロツヅリガというメイガ科の蛾であるが、
緑色の草の上にいても、枯れ葉が落ちているとしか見えない。
まるで、木の芽が葉っぱに落ちてるように見えるが、
オオヤナギサザナミヒメハマキというハマキガの仲間である。
これは、もちろん植物の種子ではない。
このブログでも時々出てくるベッコウハゴロモの幼虫である。
彼らの選んだ背景が、このように間違っているにもかかわらず、
彼らは餌となることは、多分ないだろう。
それは、良く目立ってしまう背景にいても、
枯れ葉も、枯れ枝も、木の芽も、種子も、みんな、
肉食の捕食者が、食べ物とは認知しないからである。
最後に、このブログ開設のキッカケともなった
ミラクル擬態:ハイイロセダカモクメ幼虫を紹介する。
この子は、日本に生息する隠蔽的擬態をする虫たちの中で、
本当に、特筆すべき存在だと思う。
ハイイロセダカモクメは、蛹で越冬する。
普通は、蛹で越冬する虫たちは、春になると新しい成虫が出てくる。
しかし、この子は、春になっても、羽化してこないのである。
夏がそろそろ終わるかという季節になって、ようやく羽化し、
それから交尾・産卵をするのである。
だから幼虫は、この時期にしかないヨモギの花穂を餌とするのだ。
ヨモギの花穂は、葉っぱと違って、隠れるところが少ない。
しかも、花穂を食べてしまうと、ますます、隠れるところがなくなってしまう。
そんな中で、彼らは鳥に捕食されないように、
あっと驚くミラクル擬態を完成させたのだ。
何と、彼らは、食べてなくなったもの(花穂)そっくりなのである。
しかし!!!!!
2011年10月4日 だんぶり池・青森
茎を歩いて獲物を探すクチブトカメムシに対しては、
このように、いとも簡単に捕獲されてしまう。
ある捕食者に対して、どんなに完璧な防御手段であっても、
(例えそれが、やり過ぎとも思われるミラクル擬態であっても)
全ての捕食者の攻撃を避けることは出来ないのだ。
基本的に、保護色(分断色も!)や隠蔽的擬態は、
比較的離れた場所から獲物を視覚的み見つける捕食者(主に鳥)を、
対象にした防御法なのである。
(注)偶然出来上がったという証拠は、実はあるのだ。
コノハムシの近縁種が、化石で発見されているのだが、
その年代には、広葉樹はまだ存在していなかったのである。
広葉樹が出現するまでの間、多分針葉樹やシダ植物の中で、
細々と暮らす普通の虫(?)だったのだろう。
元記事をご覧ください。
↓ ↓ ↓
20120729 マエグロツヅリガ 保護色から隠蔽的擬態へ
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20120729/1/
20111007 ハイイロセダカモクメ幼虫 これがミラクル擬態だ
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20111007/1/
20111018 ハイイロセダカモクメ幼虫 衝撃の瞬間
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20111018/1/