虫たちの防御戦略⑥ Ⅱ(5). ベイツ型擬態
自分の姿かたちを、他の危険な種に似せて、
外敵からの攻撃から逃れる虫たちは、結構沢山いる。
よく目立つ危険な種は、過去に嫌な経験をした捕食者からは、
2度と攻撃されないからである。
だから、そのような種に似せることによって、
捕食者を欺いて、攻撃を止めさせることができるのだ。
このような擬態を、ベイツ型擬態と呼ぶ。
今回も、できるだけ沢山の例を、写真で紹介したい。
まずは、危険なハチに擬態する虫たち3種を紹介しよう。
これは、セスジスカシバという蛾である。
このブログを開設するキッカケになった種のひとつであり、
典型的なミラクル擬態(そんなに似せなくても大丈夫だよ擬態!)である。
この子の擬態は、蛾なのに、本当にここまでやるか!!
というレベルだと思う。
このキンケトラカミキリというカミキリも、
遠くで見れば、スズメバチである。
もちろん過去に、ハチで一度でも嫌な経験をした捕食者は、
遠くで見て避けるので、近づいて確かめる(?)こともしないだろう。
写真に撮って、冷静に見れば、全くのカミキリなのだが・・・
これは、アブの仲間で、ヨコジマナガハナアブという。
まあ、アブがハチにそっくりでも、もともとの体型が似ているので、
あまりインパクトはないのだが・・・・
でも、この子たちを見つけたときは、何を隠そう、
何で花の上で、スズメバチが交尾してると思ってしまったのだ。
ところで・・・・
前回紹介したベニボタルの仲間は、頭と胸が黒く、胴体(前翅)が赤い。
同じような色の擬態種は多く、ベイツ型擬態とミュラー型擬態が、
入り混じっている印象がある。
ここでは、科の異なる以下の4種だけ紹介する。
取りあえずは、撮影日に注目してほしい。
いずれも、モデルとなったベニボタルが出現するのと同じ時期、
弘前市周辺では、雪解け直後の5月から6月にかけての撮影である。
早春の明るい林道で、良く見かけるアカハネムシ。
カメラを近づけても、逃げないことが多いので、
擬態には自信があるのだろうか?
ベニヒラタムシという名前から想像できるように、
かなり扁平な虫であり、樹皮の隙間に難なく入り込むが、
このように、目立ってもかまわないのである。
このハネビロアカコメツキも、林縁部で見られる。
目立たない種が多いコメツキの中で、特異な存在である。
ヘリグロベニカミキリの仲間も、良く似た感じで、
黒い斑紋が微妙な位置にあり、???という感じではあるが、
おそらくベニボタルに擬態しているのだろう。
その他にも、まだまだ、危険な生き物に擬態する虫たちがいる。
セグロベニトゲアシガという蛾の仲間だ。
危険なアカヘリサシガメに似ているのだろうか?
初核と前脚のバランスが、何らかの演技をしてるようだ。
マツシタトラカミキリは、ミラクル擬態だろう!!!
容姿やサイズもそうだが、細かく触角を振りながら、
少し歩いては止まるような歩き方まで、
ムネアカオオアリを真似ているのである。
この他にも、アリに擬態する虫たちは多い。
アリの仲間は、警戒色ではないが、蟻酸を持っているので、
捕食者は避けるようだ。
ベニスズメという蛾の幼虫である。
前方を空中において、ゆっくり振ると、
ヘビの動作にも、何となく似てくる。
これが、アゲハモドキという蛾の仲間である。
何に擬態しているのかというと、
全体が黒っぽく、後翅表面の赤い模様が、
ジャコウアゲハに似ているようだ。
この写真で、少しだけ見えるお腹の部分にも、
ジャコウアゲハのような赤い模様があるし・・・
しかしながら、特に上の2例(ベニスズメ幼虫とアゲハモドキ)の場合、
写真では分かりにくいが、擬態種とモデル種のサイズの違いが、結構あるのだ。
このことについては、捕食者は、基本的に両種を同時見ることはないので、
捕食者が(遠近法で?)見たときに、過去の嫌な記憶の虫と、
同じ大きさ(?)に見える可能性が高く、半分くらいの大きさまでならば、
おそらく、捕食者は区別できないはずである。
最後にひとつだけ、面白い例を示そう。
この子の名前は、キカマキリモドキという。
確かに、上半身だけ見るとカマキリに似ている。
しかし、前脚(カマ)の折りたたみ方が、
普通のカマキリとは、明らかに違う。
面白いのは、何と、このキカマキリモドキ君は、
ムモンホソアシナガバチにも似ているのである。
カマキリとアシナガバチ両方に擬態するというミラクル擬態なのだ。
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20110926 セスジスカシバ これがミラクル擬態だ!
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20110926/1/