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ちょっとだけ、不思議な昆虫の世界

さりげなく撮った昆虫のデジカメ写真が、整理がつかないほど沢山あります。 その中から、ちょっとだけ不思議だなぁ~と思ったものを、順不同で紹介していきます。     従来のブログのように、毎日の日記風にはなっていませんので、お好きなカテゴリーから選んでご覧ください。 写真はクリックすると大きくなります。   

虫たちの防御戦略⑩ Ⅲ(2). 目玉模様(大)

捕食者が接近してくるのを感知した虫たちは、
その場所から離れる(逃げる)というのが、
前回【Ⅲ(1)】紹介したように、最も手っ取り早い選択だと思う。

しかし、ただ単に逃げるよりも、せまってくる捕食者を、
ちょっとだけでも躊躇させてから逃げる方が、
より確実に、目的を達成できるだろう。


捕食者の攻撃を、躊躇させる手段は、色々ありそうだ。

代表的なのが、突然見せる目玉模様と、突然放出する防御物質だ。
防御物質については、後日、Ⅲ(5).で紹介するので、
ここでは、様々な場面で活躍する目玉模様を取り上げる。

目玉模様は、その機能によって、2種類に大別されるが、
攻撃をそこに向けさせる比較的小さな目玉模様については、
Ⅲ(4).で紹介するので、ここでは触れない。

 


常夜灯がある公共の駐車場(SAや道の駅など)のトイレは、
色々な蛾の写真を撮ることができる隠れた穴場である。

そんな場所に、早朝さりげなく行ってみると、
森の中に帰りそびれた沢山の蛾が見つかる。

人が近づくと、飛んで逃げようとするが、
そのとき、ふたつの大きな目玉模様が見える蛾がいる。

そのような蛾の多くは、普通に止まっているときには、
保護色的な色彩の前翅の表面を見せているので、
鳥などの捕食者から、見つかりにくくなっている。

ところが、捕食者や人が近づいてくるのを察知すると、
前翅を急に広げ、鮮やかな目玉模様を見せるのだ。

 


2008年9月26日 道の駅(碇ヶ関)・青森

クスサンの目玉模様は、このように逆さに見ると、
フクロウなどの肉食性の鳥の目とそっくりであり、
蛾を捕えようとした鳥は、攻撃をためらうだろう。

 


2011年9月3日 城ヶ倉大橋駐車場・青森

ヤママユの場合には、翅を閉じているときにも、
小さな目玉模様が見えるが、前翅を開くと、
より大きな別の目玉模様が突然見える。


目玉模様を持たず、保護色だけにたよっている蛾には、
この前翅を突然広げるという行動は、見られないようだ。

 


一方、幼虫時代に大きな目玉模様をもっている蛾も多く、
皮膚の下や腹側に目玉模様があって、急にそれを示す種や、
もち上げて前後にはげしく振る種などが知られている。

 


2010年10月8日 弘前市・青森

まるで漫画のような目玉模様のアケビコノハ幼虫。

大きな目玉模様を持つ虫たちは、そんなに多くないが、
いずれも単なる同心円ではないところが凄い!

良く見ると、多少のずれがあったり、
中心部分には、虹彩を思わせる別の模様があるのだ。

 


2011年6月29日 だんぶり池・青森

クワコ幼虫の目玉模様は、アケビコノハ幼虫と違って、
このように、十分すぎるほどリアルである。

これが、まさに本物のヘビの目玉に、良く似ているのだ。

 


2011年9月26日 小泉潟公園・秋田

これは、本物のシマヘビである。
人間はあまり良く見ることはないだろうが、
確かに、本物のヘビの目の模様と、
偽物の目玉模様を比較すると、うまく擬態してるなと思う。

 

 

捕食者に限らず、多くの生物は、完全な目玉模様でなくとも、
突然目の前に、鮮やかな色をしたものが飛び出すと、
かなり驚くことが、多くの実験で確かめられている。



2010年11月27日 三春PA・福島

アケビコノハの場合は、完全な目玉模様ではないが、
前翅の枯れ葉に似た保護色のおかげて、
突然見えるオレンジ色の模様のインパクトは大きい。

この写真は、私がカメラを持って近づいたとき、
翅を広げて、飛んで逃げようとした瞬間である。

 


2011年8月31日 城ヶ倉大橋駐車場・青森

ヒトリガの場合は、右下の静止状態から、脅かされると、
翅を広げて、突然オレンジ色を見せつける。

この赤みが強いオレンジ色は、人でも衝撃を受ける。

 


2012年10月11日 城ヶ倉大橋駐車場・青森

その他にも、カトカラと呼ばれる種類の蛾は、
普段見えない後翅表面が、鮮やかな色をしており、
偶然かもしれないが、飛び立って逃げるときに、
鮮やかな模様がみえる。(写真はゴマシオキシタバ)

 


多くの生物は「見慣れないものを本能的に避ける」傾向がある。

クスサンやアケビコノハの例のように、最初は、飛び立つ寸前に、
普段隠れている鮮やかな模様が、突然見えるだけだったのだろう。

この場合は、もちろん捕食者の過去の経験は無関係であり、
単なる見慣れないものが、突然目の前に現れて、
ちょっとビックリ! ということしかなかったと思う。

それを、捕食者の方で、勝手に(!?)驚いて、
さらに、そこに見えている、ふたつ並んだ同心円状の模様を、
過去に嫌な経験をしたフクロウの眼と、(勝手に)思い込んだのである。

そして、その目玉模様が、捕食者を躊躇させる効果は予想外に大きく、
さらに、精巧でリアルな目玉模様へと進化していったのだろう。

 


それは・・・・何となく・・・・分かった。

 


では、下の2枚の写真は、一体どう説明するんだ!!!

 


突然後翅の模様を見せる蛾は、まだ他にもいるのだ。

 


2011年9月29日 城ヶ倉大橋駐車場・青森

中には、こんな青い模様の蛾もいるし(フクラスズメ)、

 


2012年10月10日 城ヶ倉大橋駐車場・青森

中には、こんな黒い模様の蛾もいる(シロシタバ)。

 

一体、これには、どんな意味があるんだ?

捕食者を驚かすだけなら、赤色が一番だし、
みんな赤系の色にすれば良いではないか!!

 

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この問いに対するもっともらしい回答が、ふたつある。


(1)赤い模様に何度も騙されてきた捕食者を、
   迷わせ、さらにビックリさせるために、
   違う色も「あり」である。

(2)逆に、突然見える目玉のようなものを、
   急所として攻撃させる「小さな目玉模様」の効果を狙う。

 

どっちにしても、ちょっとだけ不思議な虫たちである!!!

 


以下の元記事も、是非ご覧ください。
↓  ↓  ↓
20110308 目玉模様の進化【1】
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20110308/1/

20110309 目玉模様の進化【2】
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20110309/1/

20110310 目玉模様の進化【3】
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20110310/1/

20110311 目玉模様の進化【4】
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20110311/1/

 

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