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ちょっとだけ、不思議な昆虫の世界

さりげなく撮った昆虫のデジカメ写真が、整理がつかないほど沢山あります。 その中から、ちょっとだけ不思議だなぁ~と思ったものを、順不同で紹介していきます。     従来のブログのように、毎日の日記風にはなっていませんので、お好きなカテゴリーから選んでご覧ください。 写真はクリックすると大きくなります。   

虫たちの防御戦略⑪ Ⅲ(3). 擬死

より鮮明に撮ろうとして、カメラをそっと近付けると、
ポロッと下に落ちてしまう悔しい虫たちがいる。


しかも、

多くの場合、

落下した後、

しばらくの間は、

死んだように、

動かない!!



この行動は、予想以上に防御効果があるようだ。


2012年6月19日 白岩森林公園・青森

ズーム機能のないカメラで、これだけ近づけば、
ゾウムシの仲間は、何らかの手段で、その気配を察知して、
ほぼ100%落下してしまう。(写真はヒメシロコブゾウムシ)

 


2012年6月19日 白岩森林公園・青森

普通は、草むらの中に落下するので、おそらく、
2度と探すことはできない。

今回は運良く(?!)、草のない地面に落下した。
当然、しばらくの間は、全く動かない!!!

このように、全ての脚を突っ張って、
まるで死んでるようにみえる状態を、擬死と呼ぶ。

この状態では、たとえ見つかってしまっても、
一気に飲み込むタイプの捕食者は、
ちょっと苦手かも知れない。

 

 


2012年6月15日 だんぶり池・青森

このように葉っぱの上にいるコガネ類も、
ちょっとした振動で、地面に落下してしまう。
(写真は多分チャイロコガネ)

 


2012年6月15日 だんぶり池・青森

もちろん、風邪で葉っぱが揺れても、落下することはない。
恐らく、微妙な振動の違いを察知するのだろう。

当然、一度地面に落ちてしまった彼らを、
再び探し出すのはかなり困難である。

枯れ葉の間に落ちて、しかも、しばらく動かないからだ。

 


おそらく、狩りをする捕食者は、動くエサに反応する。
というか、視覚で獲物を探す捕食者の多くは、
生きているものでも、動かないものを攻撃することはない。

カマキリやカエルが獲物を捕獲する瞬間を、
何度も間近で見たことがあるが、
彼らがアタックするのは、射程距離内にいる獲物が、
多分、緊張感に耐えられなくなって、
ほんのちょっと動いた瞬間である。

だから、実際には、狩りをする捕食者は、
本当に死んだものを食べることはないのだろう。

死体を食べると、病気感染などのリスクがあるからなのか?

 

 

もう一例、面白い例がある!!


コメツキの仲間は、落下して、擬死するときに、
ちょっとだけ不思議な行動を追加している。

 

こんな感じ・・・・?

 


2012年6月7日 芝谷地湿原・秋田

葉っぱの上を、悠然と歩いて、いつでも落下できるぞ! 
という雰囲気が見え見えである。
(写真はムナビロサビキコリ)

 


2012年6月7日 芝谷地湿原・秋田

軽く刺激すると、予想通り見事に、石の上に落下した。

このように、硬い場所に仰向けに落下した場合には、
良く知られているように、関節をうまく利用して、
ピコ~ンと言う感じで、数10cmも、飛び上がるのだ。

もちろん、こんなことが出来れば、一瞬で、
捕食者の視界から消えることができる。

 

 

さらに、このような擬死行動の適応的意義に関しては、
最近の研究結果によって、新たに別の可能性も示唆されている。

上で見てきたような、体を硬直させる擬死行動は、
捕食者に襲われてからも、別の効力を発揮するのだ。


トゲヒシバッタという体にトゲのあるバッタがいる。

特に捕食者が、カエルのような、飲み込み型である場合、
体の左右に頑丈なトゲを持つこのバッタは、
さらに足を突っ張って、体を硬直させるで不動化することで、
物理的に飲み込まれにくくしていることが分かった。

さらに面白いことに、トゲヒシバッタは、潜在的な捕食者のうち、
一気に飲み込むような捕獲行動をするカエルに対してだけ、
脚を突っ張る擬死行動を行い、ついばむように捕食する野鳥類には、
行わないことも、詳細な観察によって確認された。


また、これも最近の研究で、貯穀害虫のコクヌストモドキの場合には、
ある個体が擬死することで、その個体の近くで動いている他個体に、
捕食者の注意が振り向けられることになり、その結果、
動かないでじっとしている個体が、捕食者から攻撃さないことも分かったのだ。


同じようにみえる擬死行動でも、これだけ多くの機能が追加されている。

さすが、ちょっとだけ不思議な虫たち!!!







 

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