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虫たちの防御戦略⑬ Ⅲ(5). 化学的防御手段

意外なほど多くの虫たち(成虫も幼虫も!)が、
生理活性のある化学物質を作る腺を持っており、
主として外敵に襲われたときに放出するので、
それらは防御物質と呼ばれている。

ただし、防御物質(化学的な武器)とは言っても、
実際の防御効果は、外敵の種類によって全く異なる。

一般的に、大型の捕食者に対しては、
その効力はやや控えめであり、
相手を少なくとも瞬間的に驚かせ、
攻撃をちょっと躊躇させるだけであることが多い。

ただ、アリなどの小型の捕食者に対しては、
かなり強力な防衛手段になっているようだ。

 

虫たちの放出する防御物質の種類も様々であり、
その化学成分は、半世紀も前から、分析機器の発達に伴って、
続々と解明されてきている。

カメムシの匂いは、みんな同じではなく、
種類によって微妙に違うことが、慣れると(慣れない!!)分かる。


折角の機会なので、退屈かもしれないが、
カメムシの匂い成分について、簡単に触れておきたい。

カメムシが体外に放出する匂い成分は、
その種類によって少しずつ異なっているが、
主成分は、炭素数6~10の直鎖のアルデヒトである。

カメムシの匂い成分が化学的に研究されはじめたのは、
今から50年以上前からだが、アメリカの稲のカメムシから、
炭素数10の(E)-2-Decenalというアルデヒドが、
分離同定されたのが最初である。

その後日本でも、カメムシ科のミナミアオカメムシ、ウズラカメムシ、
スコットカメムシ、アオクサカメムシ、クロカメムシにおいて、
同じ物質の存在が確認されている。

また、日本産のヘリカメムシ科のホウズキカメムシ、
ツマキヘリカメムシ、キバラヘリカメムシなどからは、
炭素数6の2重結合を持たないHexanalが検出されている。

しかし、実際にカメムシが放出する分泌液には、
上記のようなアルデヒド類が数種類と、その他に、
溶媒のような役割を持つ炭化水素が含まれている。

たとえば、ミナミアオカメムシでは、18種、
ホシカメムシの一種では、8種の化合物が分離同定されている。

また、カメムシ科では、(E)-2-Hexenal(E)-2-Octenal、(E)-2-Decenalなどの
二重結合をひとつもったアルデヒドが多く、
ヘリカメムシ科では、Hexanal、Hexanolなどの
二重結合を持たない化合物が主になっているようだ。

多くの種類に共通して含まれているのは、(E)-2-Hexenalで、
カメムシ科、ホシカメムシ科、ツチカメムシ科、
ヘリカメムシ科から見つかっている。

ちなみに、この化合物は、キュウリなどの青臭い匂いの主成分のひとつで、
別名を青葉アルデヒドと言うが、香水の原料として使用されることがある。
そのためか、カメムシの匂いも、薄まれば香水になると、
ある本に書かれていた。


カメムシ以外の虫たちの放出する防御物質の成分については、
今回は全く触れないが、基本的に多くの種類で明らかにされている。


ここでは、様々な放出方法や生物活性について、簡単に紹介したい。


第1のタイプは、体内にある袋状の腺を、外側に反転させて、
臭気成分を揮発させるものである。

アゲハ類の幼虫は、頭部の背面にある臭角とよばれる袋状の腺を、
外側に反転させてオレンジ色のツノのように突出し、臭気成分を放出する。

人が指などで掴むと、それにツノが触れるようになるまで、体をそらせる。

同じ方法で、ある種のハネカクシ類は、腹部末端ののサック状の腺を反転させ、
外敵に押しつけようとする。

 

第2のタイプは、ハムシやジョウカイの幼虫などが行うもので、
体の側面に一列になった放出孔より、分泌物をこじみ出させる。

また、その小滴を自らの体表になすりつけたり、場合によっては、
外敵に直接つけたりする種も知られている。

 

第3のタイプは、オサムシ、ゴミムシ、カメムシ、ゴキブリなど、
多くの無脊椎動物が行なう放出法で、液体状の分泌物をスプレイする。

この場合でも、外敵の目をねらって50cmも飛ばす種や、
自らの体表につける種が知られている。

また、ミイデラゴミムシは、放出の直前に2種の物質を化学反応させ、
高温のガスを発射することができる(注)

 

第4のタイプとして、有毒物質を、相手の体内に注入する虫たちもいる。

たとえば、ミツバチの毒針による執拗な刺針行動は、
哺乳類を中心とする多くの天敵に対して有効だし、
また彼等が植物樹脂を集めたハチヤニ(プロポリス)には、
各種の微生物に対する抗菌性も認めらている。

我々も、ハチに刺されたことがあるが、単に針で刺された痛みではない。
イラガやドクガの幼虫に触れたときも、同じような痛みがある。

ようやく、写真が使える!!!



2008年7月13日 徳島市・徳島

多分ヒロヘリアオイラガの幼虫。

こんなのが、自宅の庭にいると、結構恐ろしい。

ヒスタミンや種々の酵素を成分とした毒であると言われるが、
ちょっと触っただけで、かなり広い範囲に発疹が出来るほどである。

 



2011年10月9日 蔦温泉・青森

これは、多分アカイラガの幼虫。

いかにも痛そうな太いトゲには、
さらに小さなトゲ(正式には2次刺という)がある。

保護色のような緑色も、この背景では良く目立つ。
もしかしたら、分かってやってるのか?

 



2010年9月2日 だんぶり池・青森

こちらは、多分ムラサキイラガの幼虫。

上の2種のイラガ幼虫と、基本的な体型(楕円形?)は一緒であるが、
刺毛の形がそれぞれ違うので、ちょっとだけ面白い。

 


第5のタイプとして、嫌な臭いや味のする液を、
口から吐き戻すタイプもいる。

バッタを捕まえると、口から茶色の液を出すのもそうだろう。



2012年5月25日 東海村・茨城

ホタルガ幼虫は、写真では毒毛がありそうだが、
実際には、口から吐き戻す液が有毒のようである。

おそらく、野鳥類は、食べないだろう。


ここで、ひとつだけ、あまり注目されていなかったが、
かなり重要な問題点があるのだ。

Ⅱ(4).で述べた警戒色との関係である。

通常は、武器を持つ種や、体内に不味成分を持つ虫たちは、
警戒色であることが多く、一度ひどい目にあった捕食者は、
警戒色と結び付けて学習し、2度とその虫を攻撃しない。

しかし、防御物質の効力は、捕食者の種類によって、
全く異なっているので、話はややこしい。

防御物質を放出する虫たちを、ある捕食者は避けるが、
別の捕食者は、全く気にしないで攻撃する。
だから、防御物質を放出する虫たちは、
一律に警戒色にはならないのだ。

その防御物質を全く気にしない捕食者にとってみれば、
警戒色は、逆に、探しやすいターゲットになってしまうからだ。

これが、不味成分を体内に持っている虫たちとの大きな違いである。

話がややこしくなってきたので、
カメムシの例が、分かりやすいだろう。

まず、重要なのは、カメムシの匂いの実際の防御効果は、
アリに対してのみ有効であることが、色々な実験で確かめられている。
その他の捕食者は、全く平気でカメムシを食ってしまうのだ。

だから、鳥などの学習できる捕食者に対して、
ちょっとだけビックリさせる効果しかない防御物質を持つカメムシが、
目立つ色の警戒色をしているはずがないのである。


しかし、警戒色のカメムシ類は、結構沢山の種類がいる。
ナガメやアカスジカメムシのように、その多くは、匂いを出さない。

ただし、ほとんどが、体内に不味成分を待っているので、
警戒色のカメムシは、野鳥類から攻撃されることはないのだ。

手元の昆虫図鑑を調べてみると、カメムシ類の70%以上が保護色であり、
そのほとんどが、強烈な匂いを放出する。

また、警戒色のカメムシは、30%以下であり、
そのほとんどが弱い匂いを放出するか、あるいは全く放出しない。


では、何故カメムシは、あまり効果のない防御物質を放出するのだろうか?

実は、カメムシの強烈な匂いは、近くにいる仲間たちに、
危険が迫っていることを知らせる警報フェロモンとして、作用しているのだ。

カメムシの臭気成分の役割に関しては、以下の元記事をご覧ください。
↓  ↓  ↓

20101107 カメムシの匂いの不思議【01】実際の防御効果は?
http://kamemusi.no-mania.com/Entry/28/

20101108 カメムシの匂いの不思議【02】アリに対する防御効果
http://kamemusi.no-mania.com/Entry/29/

20101109 カメムシの匂いの不思議【03】びっくり効果
http://kamemusi.no-mania.com/Entry/30/

20101110 カメムシの匂いの不思議【04】警戒色と不味成分
http://kamemusi.no-mania.com/Entry/31/

20101111 カメムシの匂いの不思議【05】警報フェロモン
http://kamemusi.no-mania.com/Entry/32/

 


(注)ミイデラゴミムシの噴射装置が、突然変異と自然淘汰で、
   進化してきたとは、とても説明できないという議論があった。

   なぜなら、
   ・化学反応用の高温にも耐える体内の器官
   ・化学反応する基質(ハイドロキノンと過酸化水素)
   ・基質が反応しないようにしておくための貯蔵器官
   ・反応させるための酵素
   ・噴射の調節装置
   の全てが、同時に生じなければならないからだ。

   しかし、誤解のないように記しておくが、この問題は、
   「同時に生じる必要などない」ということで、
   多くの人たちが回答し、すでに解決済みである。

 

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