カメムシの集団⑤ ジュウジナガカメムシ
(カメムシの集団シリーズ再開します・・・・あと4回)
もうひとつ強烈な幼虫集団を紹介しよう。
カメムシの仲間は、大卵少産タイプの不完全変態で、
しかも、親と似た環境で生活しているので、
幼虫が群れになりやすい種類が多い。
ジュウジナガカメムシ幼虫集団(ナガカメムシ科)
2001年8月18日 白樺湖・長野
デジカメがようやく普及し始めた頃の貴重な写真。
ガガイモ科の有毒植物イケマの葉っぱの表面に、
沢山の個体が集合している。
明らかな警戒色を持つこの集団は、
体内に有毒物質(注)を蓄積しているので、
アサギマダラの幼虫などと同じように、
野鳥に襲われることはないだろう。
ジュウジナガカメムシ(ナガカメムシ科)
2001年8月18日 白樺湖・長野
上の集団の中の1匹を、木の枝で軽く刺激すると、
刺激された個体も含めて、近接の個体は地面に落下したが、
少し離れたところにいた残りの個体は、
歩いて別の葉っぱに分散していった。
このように、警戒色を持った草地にいるカメムシの集団は、
警報フェロモンに敏感に反応し、すぐにバラバラになるか、
一斉に地面に落下することが多い。
これらの行動は、おそらく、野鳥類以外の、
カメムシの不味成分を気にしない捕食者への対策だろう。
だから、警報フェロモンと警戒色の最強の組み合わせで、
様々なタイプの外敵の攻撃から、集団で、
効率よく(?)、身を守っているのだ。
ジュウジナガカメムシ(ナガカメムシ科)
2012年8月22日 十石峠・長野
多分100匹以上の大集団を発見。
有毒のガガイモ科(多分イケマ?)の植物の汁を吸っている。
写真を良く見ると、やや白っぽくなった部分があり、
吸汁の凄まじさを物語っている。
こんな風に、一枚の葉っぱから集団で吸汁すれば、
当然の結果であろう。
写真をもっと良く見ると、右側に見える葉っぱは、
さらにひどいことになっている。
集団吸汁のため、完全に枯れてしまっているのだ。
ジュウジナガカメムシ(ナガカメムシ科)
2012年8月22日 十石峠・長野
少し離れた別の場所には、こんな光景が見られた。
吸汁によって枯れてしまった葉っぱから、移動せずに、
そのまま、集団を作って静止しているのだ。
このブログで、今まで何度かカメムシの集団を紹介してきたが、
ここまで壮絶に、葉っぱを枯らしてしまうような種類はいなかった。
ジュウジナガカメムシ(ナガカメムシ科)
2012年8月22日 十石峠・長野
一体何故、一枚の葉っぱを枯らすまでに、
集団で、徹底的に吸汁するのだろうか?
しかも良く目立つ葉っぱの表面に、
こんなに沢山の個体が集まっている(中央の赤丸)のか、
この雰囲気は、かなり強烈で、不気味だ。
この後、何をきっかけに、どのようにして、
別の葉っぱに、移動して行くのだろうか?
(注)シナンコトキシンなどの痙攣毒を含む。
属名の「Cynanchum」は「イヌを殺すもの」という意味らしい。