カメムシの集団⑧ クサギカメムシ他
カメムシの集団シリーズ(?)、今回が最後である。
前回まで(①~⑦)で見てきたように、カメムシの集団は、
以下のようなタイプに分けることができる。
(1) ふ化直後から吸汁開始時期までのかなり密な集団、
(2) 摂食・静止時におこる幼虫時期の集団、
(3) 寄主植物の一部分に成虫・幼虫が混在するルーズな集団、
(4) 交尾のための成虫のルーズな集団、
(5) 越冬場所での集団、
この中で、(4)と(5)のカメムシの集団は、
さらに、微妙に異なるいくつかのグループがありそうだ。
前回、(4)については、少しだけ紹介したが、
まだまだ、良く分からないタイプもありそうである。
今回は、(5)の集団越冬するカメムシであるが、
こちらは、明らかに2つのグループに分けられる。
最初のグループは、キンカメムシの仲間で見られたような、
完全に同一の種類が意識的(?)に集まって越冬するものである。
一方、それぞれの個体が、好適な越冬場所を探しているうちに、
結果的に同じ場所になってしまった、というような第2のタイプもある。
だから、このような越冬集団は、同種のみで構成されていることはない。
越冬するために、人家に侵入する(前回の)マルカメムシもそうであるが、
他のカメムシ類やテントウムシなども、同じ場所で一緒に見つかるのだ。
クサギカメムシ(カメムシ科)
2011年10月11日 西目屋村・青森
雑木林の近くの人家の壁に、集まってきたクサギカメムシ。
このように、越冬のために集まるカメムシは、珍しくない。
ただ、この建物には、クサギカメムシしかいないようだ。
単に、時期的な問題なのかもしれないが・・・
クサギカメムシ(カメムシ科)
2012年10月20日 浅瀬石ダム・青森
こちらも、比較的暖かそうな駐車場のトイレの壁や天井に、
緩やかな集団にはなっているが、おそらく、
それぞれが、単に好適な場所に来ているだけでのようある。
ただ、これだけの数のカメムシが、人目に付くところに沢山いると、
どうしても「不快害虫」というジャンルに入ってしまう。
クサギカメムシ(カメムシ科)
2012年10月27日 八幡平・秋田
雑木林の周辺で、生活しているカメムシたちにとって、
突然出現した人為的な建造物は、寒い冬をやり過ごすための、
絶好の隠れ家になったのである。
これだけ、人家の壁に、大胆に集まってくると、
人間も対抗手段を取らざるを得ない。
この子たちは、殺虫スプレーを噴射されてしまったようである。
ヒメホシカメムシ(オオホシカメムシ科)
2006年2月3日 徳島市・徳島
その他にも人為的な環境で、集団越冬するカメムシもいる。
ヒメホシカメムシが、工事現場のブルーシートの下に、集まっていた。
南国徳島でも、2月は真冬であるが、
一枚のシートでも、少しは暖かいのだろう。
ただ、人為的な場所とはいえ、こんな感じの集団では、
殺虫剤を撒かれることはないだろう。
当然、この子たちも、たまたま集団になっているようで、
お互いの距離関係は、微妙である。
ヨコヅナサシガメ幼虫(サシガメ科)
2013年3月26日 東海村・茨城
こちらは、幼虫で集団越冬したヨコヅナサシガメ(注)。
暖かくなったので、樹皮の隙間から出てきたようだ。
おそらく、少し前までは、びっしりと体を寄せ合って、
寒さに耐えてきたのだろう。
一般に肉食性のカメムシは、草食性の種に比べて、
それぞれが、簡単には見つけにくい(?)共通の餌を求めるので、
よりライバル関係が厳しいものになるはずである。
だから、集団になることは、不利益な行動と考えられるが
餌を食べない冬の時期だけは、例外なのだろう。
(注)中国が原産の外来種とのことで、1928年に九州で発見された。
近年急速に増加したようであるが、比較的大きな肉食性の種なので、
在来種(ライバルや餌種)にどの程度の影響を与えるか、注目される。