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さりげなく撮った昆虫のデジカメ写真が、整理がつかないほど沢山あります。 その中から、ちょっとだけ不思議だなぁ~と思ったものを、順不同で紹介していきます。 従来のブログのように、毎日の日記風にはなっていませんので、お好きなカテゴリーから選んでご覧ください。 写真はクリックすると大きくなります。
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ブログ開設のきっかけの一つでもあったメスグロヒョウモン。
昨年9月15日に、さりげなく紹介しています。
↓ ↓ ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20100915/1/
この非常にインパクトの高い「メスグロヒョウモン」と言う名は、
雌が黒いヒョウモンチョウだから付いたのは間違いないだろう。
一般に、雄と雌の体色が大きく異なるチョウは、
雌が毒を持つ他のチョウに擬態していることがほとんどである。
例えば、名前が似ているので、ちょっとややこしくなるが、
雌だけが毒チョウのカバマダラに擬態する「ツマグロヒョウモン」という
南方系のチョウがいる。もちろん雄は普通のヒョウモチョウである。
この場合は、誰が見てもベイツ型擬態(の好例)である。
しかし、今回の「メスグロヒョウモン」は、ちょっとだけ不思議である。
モデルとなった(?)イチモンジチョウ類が、
捕食者から避けられているという観察例は、今のところないからである!!!
まずは、モデルとなった(?)2種のチョウからご覧ください。
イチモンジチョウ(タテハチョウ科) ⇒モデル(?)
2010年6月29日 十勝・北海道
どう考えても、イチモンジチョウ類が、毒チョウだとは思えない。
幼虫時代の食草は、スイカズラ、ヒョウタンボク、ハコネウツギなどで、
有毒植物ではないと思う。
ただし幼虫は、かなり派手な格好をしているが・・・
オオイチモンジ(タテハチョウ科) ⇒モデル(??)
2010年6月29日 十勝・北海道
北海道と中部山岳の限られた地域にのみ生息する。
その美しさと風格は稀少価値とも相まって愛好家の憧れであり、
この事情から考えて、メスグロヒョウモンの雌よりも、
個体数が多いとは思えない「マニア垂涎の的」のチョウでもある。
ちなみに、幼虫の食草は、ドロヤナギやヤマナラシで、
いずれも有毒植物ではないと思う。
メスグロヒョウモン雌(タテハチョウ科) ⇒擬態者(?)
2010年9月4日 だんぶり池・青森
何気なく見ていると、イチモンジチョウと必ず間違える!
メスグロヒョウモン雄(タテハチョウ科) ⇒?
2010年9月4日 だんぶり池・青森
こちらは、同じ日に同じ場所で撮った雄で、普通のヒョウモンチョウである。
しかし、これだけ雌と雄の模様が異なるのは、何らか意味がある筈だと思う。
メスグロヒョウモンの雌が、ベイツ擬態であるならば、
現時点で、そのモデルになっているチョウは発見されていない。
もし仮にモデルとなったチョウが発見されたとすると、
当然、イチモンジチョウもその種に擬態していることになるだろう。
もしかしたら、人間の考えが及ばない、何か別の要因が働いているのかもしれない。
多分、普通の人には、あまり知られていないことだと思うが、
(⇒知ってる人は、普通じゃない!)
ホタルの成虫は、体に物理的な刺激があると、
体の周縁の定位置にある分泌線から嫌な臭いや体波を放出する。
この体液を放出する行動(Reflex Bleeding)は、
鳥などの捕食者に、防衛効果があることが報告されている。
したがって、ホタルがベイツ型擬態のモデルとなる可能性が高い。
オバボタル(ホタル科) ⇒モデル
2010年6月18日 だんぶり池・青森
残念ながら、ゲンジボタルやヘイケボタルを
昼間撮ったことはない。
もちろん、夜もないが・・・・
このオバボタルは、他のホタルと同じような体色である。
しかし、昼行性でほとんど発光しないとされているので、
どちらかというと、この子の方がモデルになった可能性が高い。
幼虫は森林の土壌中で、小型のミミズを捕食するらしい。
ホタルガ(マダラガ科) ⇒擬態者?
2010年7月11日 筑波山・茨城
名前の由来は、全身が黒くて頭部だけが
赤い体色が、ホタルに似ているからだろう。
これは、ホタルへのベイツ型擬態とも取れる。
しかし、マダラガ類にも悪臭を持つものがあるので、
ミュラー型擬態の範疇に入る可能性もある。
この辺が不思議なところで、やはり、
捕食者(鳥?)に聞いてみないと・・・・
多分クビアカクロハナカミキリ(カミキリムシ科) ⇒擬態者
2010年6月10日 弘前市・青森
黒色で前胸背板だけ赤いカミキリ。
クビアカクロハナカミキリかクロハナカミキリのどちらかだと思う。
いずれにしても、ホタルに似ており、
これは、ベイツ型擬態の範疇に入ると思う。
⇒つい最近のことであるが、擬態に詳しいNabita氏からメールが届きました。
写真の虫は、ジョウカイではなく、(クビアカ)クロハナカミキリではないかと!!!
その中で、人間の目を欺くほどの完璧な擬態ではないかと、付け加えられていました。
この場をお借りして、お礼申し上げます。
写真のタイトルと、本文を訂正させていただきました。
日本国内で見られるベイツ型擬態で、いちばん有名なのが、
ハチに擬態するトラカミキリの仲間であろう。
この標識的擬態は、比較的分かりやすい。
キイロスズメバチ(スズメバチ科) ⇒モデル
2010年8月25日 だんぶり池・青森
ハチの模様は、基本的に黒と黄色の縞模様で、
これは、人間世界でも道路や工事現場などで、
「危険」を現す視覚的情報として、
よく使われる典型的な「警戒色」である。
だんぶり池の林道でも、縦横無尽に獲物を探して、
飛び回っているのを良く見かける。
まるで、「外敵なんかいるか!!」という雰囲気であるが、
本当に鳥はスズメバチ類を餌としないのだろうか。
⇒当初は、キボシアシナガバチとしていましたが、Nabita氏より、
キイロスズメバチであるとご連絡いただきましたので、
種名を訂正しました。
ヤエヤマホソバネカミキリ(カミキリムシ科) ⇒擬態者
2003年4月6日 与那国島・沖縄
4月上旬でも、真夏のように暑かった与那国島で、
木陰で昼飯を食っているときに飛んできた。
やっぱり最初は、カミキリとは思わなかった。
幼虫時代の食べ物が、リュウキュウアカメガシワとのことで、
もしかして、有毒成分が体液に含まれている可能性があるが・・・
キンケトラカミキリ(カミキリムシ科) ⇒擬態者
2010年6月5日 白岩森林公園・青森
こちらも、淡い黄色をしたカミキリで、
容姿だけでなく、動きもハチに似ている。
トラカミキリの仲間は、比較的良く見かけるが、
それでもアシナガバチの方が、個体数は多い気がする。
おそらく、ベイツ型擬態が、正常に機能しているのだと思う。
日本国内で見られるベイツ型擬態の
もうひとつの例を示そう。
実は、モデルとなった種があまり有名でない場合には、
少なくとも、人間に与えるインパクトは、ほとんんどない。
カクムネベニボタル(ベニボタル科) ⇒モデル
2010年5月23日 梵珠山・青森
鮮やかな赤と黒の典型的な警戒色をしており、
不味成分を体内に持っているので、
捕食者が食べても、すぐに吐き出す。
これらの事実から、ベニボタル類は、
多くのベイツ型擬態者のモデルになっている。
セグロベニトゲアシガ(マルハキバガ科) ⇒擬態者
2010年7月5日 室蘭高原・北海道
実に奇妙な格好で静止している。
櫛の歯のような触角と、赤と黒の胴体をもっている。
しかし、この子の擬態はそれだけではない。
何故か、同じようなイメージの後脚(?)を、
まるで触角のような微妙な位置に静止させて、
ギンギラキンにさりげなくベニボタルのように見せている。
この子が、蛾であることは、普通の人は気付かないだろう。
もちろん鳥のような捕食者も・・・・
アカヘリサシガメ(サシガメ科) ⇒???
2010年6月18日 だんぶり池・青森
問題は、この子である。
肉食のサシガメであり、赤と黒の不気味なツートンカラー!
しかし、この色彩パターンが、
ベニボタルに擬態しているのかどうかは、
良く考えると、かなり微妙である。
むしろ、セグロベニトゲアシガの色彩パターンにも似ている。
アカヘリサシガメがいくら獰猛な肉食であっても、
鳥などの捕食者に対しての防御手段は何もないと思われる。
だから、ミューラー型擬態の範疇には、入らないはずである。
もちろん、当初は有毒物質をもっていたが、
今は、ベイツ型擬態になっている可能性もないことはない。
このように、比較的単純なベイツ型擬態の場合でさえ、
モデルと擬態者の関係は微妙であり、
その防御効果についても、かなり慎重に考えざるを得ない。
ミューラー型擬態の、日本での例については、
別の機会に紹介する予定・・・・・・・??
このブログの「記念すべき第1回目の記事」で、
日本で見られるベイツ型擬態の好例として、
ハチに擬態した蛾セスジスカシバを紹介した。
よろしければ、もう一度、セスジスカシバ君の見事な擬態をどうぞ!!
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Entry/1/
彼の場合は、誰が見ても、どう見ても、ハチのような蛾であった。
しかしながら、ベイツ型擬態とは言っても、
中には、かなり微妙なものもある。
今回は、日本で見られるベイツ型擬態の例を、
数回に分けて、紹介したい。
まずは、下の2枚の写真をご覧ください。
ジャコウアゲハ(アゲハチョウ科) ⇒モデル
2003年4月5日 与那国島・沖縄
ジャコウアゲハの食草であるウマノスズクサ類には、
有毒物質(アルカロイド)が含まれている。
幼虫時代に体内に摂取した成分は、
成虫になっても体内に蓄積されている。
鳥などの捕食者は、一度ジャコウアゲハ成虫を食べると、
体液に含まれる有毒成分により中毒症状をおこす。
多くの捕食者は、一度経験すると、以後、
黒地に赤の斑紋のあるチョウを識別し、攻撃をしなくなる。
アゲハモドキ(アゲハモドキガ科) ⇒擬態者
2008年9月1日 白石市・宮城
写真を見る限り、ジャコウアゲハに良く似ている。
和名からして、アゲハに擬態していると考えられていた。
ところが、この子は、写真ではわかりにくいが、
ジャコウアゲハよりだいぶ小さい。
しかも、南方系のジャコウアゲハが生息していない
北海道・東北地方にも、普通にみられる。
このふたつの理由から、
アゲハモドキがジャコウアゲハに擬態する効果については、
疑問を持つ人もいる。
一方で、有力な捕食者が渡り鳥である場合を考えると、
南方でジャコウアゲハの嫌な経験を覚えていて、
北国で、その経験を、ふと思い出すことも、
全くあり得ない話ではないだろう。
これが「ちょっとだけ不思議な昆虫の世界」なのだ。