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ちょっとだけ、不思議な昆虫の世界

さりげなく撮った昆虫のデジカメ写真が、整理がつかないほど沢山あります。 その中から、ちょっとだけ不思議だなぁ~と思ったものを、順不同で紹介していきます。     従来のブログのように、毎日の日記風にはなっていませんので、お好きなカテゴリーから選んでご覧ください。 写真はクリックすると大きくなります。   

葉っぱの上でよく目立つ ムラサキシャチホコ

このブログで、これまでに、
ミラクル擬態のムラサキシャチホコを、
前回も含めて、2回紹介してきた。
↓   ↓   ↓
ついに撮れた ムラサキシャチホコ
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20130626/1/

ムラサキシャチホコ 隠蔽的擬態? 非食物擬態??
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20130818/1/

 

しかし、上記のムラサキシャチホコは、
いずれも、夜間、光に飛んで来て、
近くの葉っぱの上に、偶然着地したもので、
おそらく、自分の意思(!?)で、
目立つ葉っぱの上に静止したわけではない。

 


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 


今回初めて、幸運にも、
全くの自然状態で静止するムラサキシャチホコを、
撮影することができた。

しかも、2個体!!!

 

場所は、岩手県宮古市の田老地区、三王岩へ通じる遊歩道である。

時間は、午後2時ごろ、もちろん、
近くには、常夜灯などはない。

 

 


ムラサキシャチホコ(シャチホコガ科)

2013年8月14日 宮古市・岩手

数年前に見た三王岩が、地震でどう変わっているか?
同行した娘二人と、遊歩道を歩いていた。

いつものように、どんな観光地へ行っても、
さりげなく、虫の姿を、目で追いかけている。

すると、目の前の葉っぱに、枯れ葉が・・・


この枯れ葉の形状と巻き方には、何か見覚えがある!!!

 

 

 

ムラサキシャチホコ(シャチホコガ科)

2013年8月14日 宮古市・岩手

初めて、自然状態のムラサキシャチホコを見つけたのだ。

まさか、こんなところで!


感動の一瞬である!!!!


興奮して、写真を撮りまくる父親を置き去りにして、
娘二人は、すぐ先の三王岩の写真を撮りまくる?

 

 

私も、一枚だけ・・・・

山王岩

2013年8月14日 宮古市・岩手

この自然の岩は、地震と津波に耐えた!!!
(近くの龍泉洞の中も!)

⇒後で見た田老地区の人工的な堤防は、無くなっていたが・・・


ちょっとだけ感動!

 

 

そして、その帰り道・・・

ムラサキシャチホコ(シャチホコガ科)

2013年8月14日 宮古市・岩手

奇跡的に、もう1匹、目の前にいた。

今回は、サーチングイメージが出来ていて、
遠くからでも、さりげなく発見。

最初の個体は、雑木林の中に逃がしてあげたので、
この子は、明らかに、別個体である。

遊歩道では、他の(写真を撮るような)虫は、
何も見つからなかったのに・・・

 

 


ムラサキシャチホコ(シャチホコガ科)

2013年8月14日 宮古市・岩手

見れば見るほど、これは「枯れ葉」である。

例えば、人間がこんな感じの絵を描くには、
かなりの熟練が必要だろう。

ムラサキシャチホコの存在を知ってから数十年、
それまで、一度も出会えなかったのに、
今年になって、これで7個体目【注】の発見である。

 

 


ムラサキシャチホコ(シャチホコガ科)

2013年8月14日 宮古市・岩手

この子たちは、よっぽど自分の擬態に自信があるのか、
少しくらい脅かしても、決して飛んで逃げることはない。

もちろん普通の蛾ならば、近づいただけで、
あるいは、ちょっと葉っぱを触っただけで、
飛んで逃げてしまうのに・・・・

 


このように、枯れ枝や枯れ葉に擬態する虫たちを、
我々人間も、普通に良く目にする。

良く目にするということは、
「彼らが、静止する背景を間違えているからだ」
と言うのが、これまでの定説であった。

その定説に従うと、
「ムラサキシャチホコは、枯れ葉に見せかけた
 隠蔽的擬態(mimesis)の典型である」
だから、
「ムラサキシャチホコが、枯れ葉が散在する場所にいるときには、
 人間が普通に歩いていたのでは、決して見つけることができない」
ので、葉っぱの上にいる個体しか、写真がないのだ。


これ、本当なのだろうか?


もし仮に、ムラサキシャチホコが、
枯れ葉の多い地面に、静止していたとしよう。

この場合は、視覚的に獲物を探す鳥などの捕食者からは、
攻撃されることは、ほとんどないだろう。

しかし、逆に、枯れ葉の多い地面には、
ネズミ、カナヘビ、ムカデ、オサムシなど多くの捕食者がいる。
しかも、彼らの餌の探し方を考えると、
枯れ葉に擬態してるのが、あまり意味をなさない場合が多い。


冷静に考え直してみると、ムラサキシャチホコは、
静止する場所を、決して間違っているわけではないのだ。

間違っているのは、そんなことを考えた、
人間の方かもしれないのだ!!!

 

 

今回の2個体のように、ムラサキシャチホコが、
緑色の葉っぱの上にいるような場合、非常によく目立つので、
これは隠蔽的擬態の範疇には入らない。

そうかと言って、捕食者が意識的に避けるような、
標識的擬態(mimicry)でもない。

実は、このような擬態を定義する用語は、今のところないのだ。


虫たちの中には、
「良く目立つが食べ物ではない」
ものに似せることにより、
捕食者の視覚を欺いて、身を守ろうとするものがいる。
↓   ↓   ↓
虫たちの防御戦略⑦ Ⅱ(6). 非食物擬態(仮称) 金属光沢と糞擬態
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20130213/1/

当然、枯れ葉や枯れ枝に擬態する虫たちが、
緑色の葉っぱの上にいるような場合も、
非食物擬態(仮称)の範疇に入るはずだ。


だから、今回紹介したムラサキシャチホコは、
隠蔽的擬態種ではなく、非食物擬態種とみなすべきなのである。

 

 

【注】矢立峠の灯りに来ていた、4個体目と5個体目は、
   同時に写真に写っているが、この子たちは、
   普通の蛾に見える。


ムラサキシャチホコ(シャチホコガ科)

2013年8月2日 矢立峠・秋田

夜、灯りに飛んで来て、近くの葉っぱに止まり、
翌朝まで留まっていたところを、撮影したものである。

平面に描いた立体的な絵は、どうしても、
見る角度によって、印象は異なる。

残念ながら、真上から、
または正面から近づいてくる捕食者を、
騙すことはできないようだ。

 

      

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ムラサキシャチホコ 隠蔽的擬態? 非食物擬態??

再び、矢立峠の衝撃!!!



2013年8月2日 矢立峠・秋田

枯れ葉が、微妙な位置に?

ちょっとした風で、ヒラヒラと舞い落ちてしまうような雰囲気。

でも、一体何故、枯れ葉の写真なんかを、わざわざ撮ったの?

 

 

 


2013年8月1日 矢立峠・秋田

もう一枚、枯れかけた葉っぱの上に、枯れ葉が!!

ちょっとした風で、ヒラヒラと舞い落ちてしまうような雰囲気。

でも、一体何故、枯れ葉の写真なんかを、わざわざ撮ったの?
しかもストロボで!!

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

実は、上の2枚写真は、ムラサキシャチホコという蛾だ。

別角度からの写真を見てみよう。


ムラサキシャチホコ(シャチホコガ科)

2013年8月2日 矢立峠・秋田

良く見ると、脚が少しだけ見えて、
蛾であることが、何となくわかる。

翅が、まるで枯れ葉のように、巻いている?!

しかし、実際には、平坦な翅に鱗粉の色と濃淡で、
立体的に描いているだけのだ。

以前紹介した、マエグロツヅリガのように、
実際に翅を丸めているわけはないのだ。
↓   ↓   ↓
マエグロツヅリガ 保護色から隠蔽的擬態へ
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20120729/1/

 


ムラサキシャチホコ(シャチホコガ科)

2013年8月1日 矢立峠・秋田

この子も、良く見ると、脚が見える。

葉脈まである枯れ葉が、カールしているように見せかけるのは、
現代の「だまし絵」にも通じるテクニックであり、
まさに「ミラクル擬態」の真骨頂である。

 


これだけ枯れ葉そっくりであれば、ムラサキシャチホコは、
いつも止まる背景を、枯れ葉のある場所に限定せず、
普通に、緑色の葉っぱの上の目立つところにいたとしても、
捕食者(鳥類!)は、食べ物と認識しないので、
攻撃されることはないだろう。
↓  ↓  ↓
虫たちの防御戦略④ Ⅱ(3).  隠蔽的擬態
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20130207/1/

虫たちの防御戦略⑦ Ⅱ(6). 非食物擬態(仮称) 金属光沢と糞擬態
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20130213/1/



しかし、残念ながら、上の写真は4枚(2個体)とも、
矢立峠の常夜灯付近で、夜間・早朝に撮ったので、
全くの自然状態で、葉っぱの上に静止していたものではない。


典型的な隠蔽的擬態種ならば、自らが静止する場所として、
枯れ葉の多い環境を選ぶ方が生存上有利なはずである。

一方で、隠蔽的擬態というよりも、
良く目立つ「非食物擬態種」の場合には、
自分が良く目立つような場所、つまり、
緑色の葉っぱの上に静止する傾向が強く出るだろう。

 


果たして、ムラサキシャチホコは、どっちなのだろうか?

 

 

次回予告!

ついに撮れた!
自然状態のムラサキシャチホコの静止場所。

   

 

 

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多分ミヤマヒラタハムシの横暴(?)

まだ、人通りのあまり多くない奥入瀬渓流の遊歩道で、
見てはいけないもの(?)を見てしまった。

 

 


ん!

2013年6月25日 奥入瀬・青森

多分ルリハムシが、交尾しているようだ。

しかし、何か様子がおかしい。

 

 

ん! んん!!

2013年6月25日 奥入瀬・青森

見た目も明らかに違う別種のハムシが、
何を思ったのか、ルリハムシのカップルに、
挑みかかっているのだ。

 

 


多分ミヤマヒラタハムシと多分ルリハムシ

2013年6月25日 奥入瀬・青森

この写真で、一番上になっているのは、
多分ミヤマヒラタハムシの雄である。

 

 

 


多分ミヤマヒラタハムシと多分ルリハムシ

2013年6月25日 奥入瀬・青森

多分ミヤマヒラタハムシの雄が、ルリハムシのカップルと、
交尾しようとしているのだ。

しかも、良く見ると、ターゲットは、
カップルの雄の方(???)だ。

 

どうしたんだ!!!
多分ミヤマヒラタハムシ君!!!!

 

 

ただ、このような光景は、同種の間では、
良く見られるのだが・・・

おそらく、交尾行動に性フェロモンが関与している場合に、
匂いは消えにくいので、こんなことが起こってしまうようだ。

 


キタベニボタル(ベニボタル科)

2013年7月14日 蔦温泉・青森

明らかに、1匹の雌に、2匹の雄が交尾行動を行っている。

 

 


エゾシロチョウ(シロチョウ科)

2011年7月9日 網走・北海道

エゾシロチョウのように、羽化直後の雌が交尾可能ならば、
少し早く羽化した雄が、近くで待っていることもあるようだ。

だから、こんなことは、日常茶飯事(!)だ。

 

      

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ベニヒラタムシとルリヒラタムシ

虫の名前で、アカ〇〇〇と付いた赤っぽい虫は、結構多く、
手元の図鑑の索引で調べると、66種が掲載されている。

一方、同じく赤っぽい虫で、ベニ〇〇〇という虫もいて、
同じ図鑑の索引には、21種が載っている。

命名者が、ベニとアカを、どのように使い分けているのかは、
全く不明であるが、少なくとも、私にはその区別が付かない。

⇒いつか、時間があるときに、手持ちの虫の写真を整理して、
 ベニとアカを、比較検討してみたい気がするのだが・・・


さらに、ややこしいことに(?)、
これ以外にも、赤系統の色を表す日本語は多く、
朱 丹 桃 茜など、沢山あって、微妙に色合いが違う。

これらも、さりげなく虫の名前に付けられているし、
接頭語として使われているとは限らない。


英語では、red だけなのに!!・・・(本当なの?)

 


ちょっとだけ長い「前ぶり」だったが、
下のベニヒラタムシは、やっぱりアカヒラタムシではないのだろう。

 

ベニヒラタムシ(ヒラタムシ科)

2005年11月12日 長沢ダム・高知

全身が紅色ではないところが、さりげなく良い。

しかも、あまり光沢がないところが和風?

そういえば、ベニカミキリも同じような色合いだったかも?

 

 


ベニヒラタムシ(ヒラタムシ科)

2011年6月26日 白岩森林公園・青森

この子は、その名のとおり、体は平たく、
全ての脚も、うまい具合に平たく折りたためるので、
狭いところに潜り込むことができる。

こんなに、カッコイイ虫なのに、
朽木の隙間に、さっさとと隠れてしまうなんて・・・・・

 

 

 

そして、今回の主役は、色違い(?)のルリヒラタムシである。

ちなみに、ルリが付く虫は、同じ図鑑で、26種掲載されていた。

 

 


ルリヒラタムシ(ヒラタムシ科)

2013年7月14日 蔦温泉・青森

この子も、前翅のみが光沢のあまりないルリ色である。

この悠然とした姿と色合いは、ちょっとだけ感動。


ちなみに、ルリカミキリとは、全く異なるルリ色である。


この写真は、ストロボを使用して、撮ったものだ。

でも、カメラの液晶モニターで確認したら、
どうも、見た目の色と違うようだ??

 

 

 

ルリヒラタムシ(ヒラタムシ科)

2013年7月14日 蔦温泉・青森

幸運にも、今回のターゲットは、あまり動きが速くない。
思い切ってストロボなしで、何枚か撮ってみた。


そのうちの一枚が、この写真である。

こんなに雰囲気が違って撮れるとは!!!

やっぱり「ちょっとだけ不思議な虫」である。

 

    

 

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虫たちの親子-16 クロコウスバカゲロウ

このシリーズでは、特異な姿かたちの幼虫について、
たまたま、成虫の写真が撮れていたものを、
親子として、両方同時に紹介している。

普通に考えて「こんなにも奇妙な幼虫たちの親(成虫)は、
一体どんな虫なんだろうか?」というのが、その発端である。

 

 

今回は、ちょっとだけ不思議なクロコウスバカゲロウの親子である。

 

 

まずは、幼虫から・・・・

 

 

 

クロコウスバカゲロウ幼虫(ウスバカゲロウ科)

2013年7月15日 七里長浜・青森

この子は、海岸の砂丘や砂地などの限られた環境にしか生息していない。

巣穴(アリジゴク)は、まばらに草の生えた砂地に、
予想外に密集して存在している。

巣穴を見つけたら、やみくもに砂から幼虫を掘り出すのではなく、
強く息を吹きかけると、表面の砂が飛んで、
中の幼虫が、さりげなく出現する。

それが、この写真である。

 

 


クロコウスバカゲロウ幼虫(ウスバカゲロウ科)

2013年7月15日 七里長浜・青森

ちょっと分かりにくいが、でっぷりとした体に、
全く不釣合いな大あごが見事である。

地上を歩くアリなどの小動物に、砂を浴びせかけ、
すり鉢の中心部に、滑り落として捕獲する。

捕らえた獲物に、すぐさま消化液を注入して、
内部の体組織をドロドロにしてから、その液を吸い取ってしまうのだ。

 

 


クロコウスバカゲロウ繭(ウスバカゲロウ科)

2013年7月15日 ベンセ沼・青森

幼虫は、蛹になるとき、土中に丸い繭をつくる。

あまり知られていないが、ウスバカゲロウの仲間は、
卵→幼虫→蛹→成虫という完全変態をする昆虫なのである。

また、アリジゴク(幼虫)は、肛門を閉ざして糞をせず、
蛹になるときも、糞をしないようだ。

 

 

 

今回は、上の写真の繭を家に持ち帰って、
実際に、どんな成虫が出てくるか、観察してみた。

 

 

 

クロコウスバカゲロウ成虫(ウスバカゲロウ科)

2013年7月24日 弘前市・青森

虫かごの中に砂をいれ、割りばしを立てて、
羽化したときに、翅を伸ばせるようにして、
それを、部屋の中のパソコンの横に置いた。

可能な限り観察を続けたが、残念ながら、
羽化する瞬間を見ることができなかった。

持ち帰って、9日目の朝見ると、成虫が羽化していた。

 

 


クロコウスバカゲロウ成虫(ウスバカゲロウ科)

2013年7月24日 弘前市・青森

成虫になるときに、幼虫時代に一度も排泄しなかった糞をする。

この宿便(!?)を探したが、どうしても見つからなかった。


写真を良く見ると、お腹の後ろが膨らんでいる。

もしかしたら、何らかのトラブルがあって、
羽化時に、排泄できなかったかもしれない。

この成虫は、そのためか、翌日の夕方には死んでしまった。

 

 便秘(?)で死ぬなんて、ちょっとかわいそう!!!    

 

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