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ちょっとだけ、不思議な昆虫の世界

さりげなく撮った昆虫のデジカメ写真が、整理がつかないほど沢山あります。 その中から、ちょっとだけ不思議だなぁ~と思ったものを、順不同で紹介していきます。     従来のブログのように、毎日の日記風にはなっていませんので、お好きなカテゴリーから選んでご覧ください。 写真はクリックすると大きくなります。   

不思議な虫えい⑤ ヌルデの葉っぱ


(虫えいシリーズ、再開します)・・・2回だけですがemoji

ヌルデに付く2種類の大型(?)の虫えい、
ヌルデハベニサンゴフシヌルデミミフシを、
幸運なことに、1本の木で同時に見ることができた。


・・・とは言っても、自分で見つけた訳ではない。


黒石市の nabita 氏が、七戸町にある詳細な場所を、
さりげなくメールしてくれたからだ。

これで、まさかの「虫えいの世界」に、
ほぼ完全に、紛れ込んでしまったのだ。


・・・ちょっとだけ不思議な nabita 氏の誘惑?

 

 


ヌルデハベニサンゴフシ

2014年10月16日 七戸町・青森

林道を歩いて、10分くらいのところに、
氏から教えられたとおり、ヌルデの木があった。

まず最初に目についたのは、後述のミミフシの方であるが、
いちばん高い部分に、赤いサンゴのような虫えいを、
いとも簡単に見つけることが出来た。

 

・・・・初めて見たので、ちょっと感動!!


これは、まさに「木の上のサンゴ」だ。

しかも、多分15個位の「枝分かれ」がある!!!
(⇒こういう偶然は、何気に嬉しい) ・・・サンゴ15

 

 

 

ヌルデハベニサンゴフシ

2014年10月16日 七戸町・青森

詳細は、まだ良く分かっていないらしいのだが、
これは、ヤノハナフシアブラムシの寄生による虫こぶである。

寄生部位を示す言葉が「ハ⇒葉っぱ」になっているので、
葉っぱが変形したもののようだ【注1】

これまで見てきたタマバエやタマバチとは違って、
寄生者がアブラムシなので、植物の組織内に侵入することはなく、
最初は、葉っぱの表面(裏側?)にいただけなのだろう。

とは言っても、葉っぱは、寄生者を覆い隠すように肥大し、
最終的には、写真のような大型の虫えいとなっている。


ネット情報では、10月には袋の先端が開口し、
有翅虫(アブラムシ)が脱出するとのことで、
この写真では、先端部に全て穴が見える。

おそらく、アブラムシは既に脱出済みなのだろう。

 

 

 


ヌルデミミフシ

2014年10月16日 七戸町・青森

同じヌルデにできる大型の虫こぶが、もう一種見られた。

こちらは、ヌルデシロアブラムシの寄生による虫こぶで、
耳のような形からか、ヌルデミミフシと呼ばれる。

やはり寄生者がアブラムシなので、サンゴフシと同様に、
葉っぱが変形したものだろうか? 【注2】

 
おそらく、この中は空洞になっていて、内壁には、
アブラムシがビッシリ付いているのだろう。

この写真では、先端部分が一部開口しているので、
アブラムシは既に、脱出済みなのかもしれない・・・


このヌルデの木には、サンゴフシは、一つだけであったが、
ミミフシの方は、少なくとも、数個は見られた。

 

 

 

ヌルデミミフシ

2014年10月24日 坂梨峠・青森

これは、後日、別の場所で見つけたものである。


虫こぶには、タンニンが多く含まれていて、
染料あるいは漢方薬の「五倍子」として利用されているようだ。

それにしても、種類が違うとは言えアブラムシの寄生によって、
こうも形状の違う虫えいができるとは、やっぱり不思議である【注2】

 

 

・・・ついでに、
   

 

ヌルデハイボケフシ

2014年10月25日 弘前市・青森

他にも、ヌルデの葉っぱ(本葉)には、虫えいが見られる。

ヌルデフシダニというダニが、葉っぱに寄生すると、
写真のように、あまり見栄えが良くないが、
不整形のいぼ状の小突起ができ、ヌルデハイボケフシと呼ばれる。

この写真のように、葉っぱの表面に沢山生じることが多く、
これまで紹介してきた、虫えいとはかなり雰囲気が異なる。


ダニの仲間も、アブラムシと同様、植物体に潜り込むことはないようだ。
葉っぱの裏側にダニが寄生すると、葉っぱは表側に膨らんで、
裏側には、その分の窪みができるのだだ。

窪みの中には、白い毛が密生し、その間にダニが生息している。

  

【注1】高い位置にあり、間近で観察はできなかったのだが、
    
寄生部位は葉っぱで、それもヌルデの葉っぱ特有の、
    枝にある翼葉(羽状複葉)の部分のようだ。

    

【注2】まさか、ホルモンの種類が異なっている訳ではないだろう。

    薄葉先生のハンドブックに、ミミフシの方は、
    羽状複葉の葉軸部に形成される袋状の閉鎖型虫えいと、
    記載されているので、サンゴフシの形成部位とは、
    微妙に違っているのだろう。
   

    おそらく、2種のアブラムシの行動習性や、
    吸汁方法なども微妙にちがうので、
    それぞれ特有の形状になるものと考えられる(多分?)。

    


 

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不思議な虫えい④ バラハタマフシ(?)

これまで、3回連続で、特異な形態の虫えいを紹介してきた。

でも、虫えいを見て、本当に不思議だと感じるのは、
その色とか形態ではなく、虫たちが、さりげなく植物を管理し、
食べ物に全く不自由のない、しかも天敵に狙われることのない、
住み心地の良い住居を、植物に作らせていることだと思う【注1】


しかし、今回紹介するバラハタマフシ(?)は、
住み心地の良い住居という雰囲気は、感じられない。

 


そんなバラハタマフシには、もっともっと謎が多いのだ。

 

 

バラハタマフシ(?)

2013年9月9日 座頭石・青森

小さなノイバラの葉っぱの上にあるので、比較的大きく見える。

球形で、よく見ると短い突起がある、なかなか美しい虫えいだ。

ただ、緑色の葉っぱの上に、頼りなく引っかかっているだけで、
ちょっと風が吹けば、簡単に落ちてしまいそう・・・

しかも、赤い果実のように見えるので、
鳥に食べてくださいと言わんばかりだ。


これが、本当に、冒頭に書いた、
「天敵に狙われることのない住み心地の良い住居」
なのだろうか?

 

 

 

バラハタマフシ(?)

2010年8月21日 だんぶり池・青森

これは、ずいぶん前の写真だが、撮ったときの感動は忘れない。

一体、何のために、こんな風になっているのか?

当時(4年前)は、虫えいには、ほとんど興味がなかったが、
家に帰ってから、ちょっとだけネットで調べた記憶がある。


バラハタマバチ Diplolepis japonica Walker の寄生により、
バラやノイバラなどの葉に形成されることが分かった【注2】

 

 

・・・・ただ、写真のタイトルに、(?)が付いている。

 

 

バラハタマフシ(?)

2013年9月9日 座頭石・青森

薄葉先生の「虫こぶハンドブック」によれば、
バラハタマフシは、葉っぱの裏側の葉脈上、または、
若い果実に形成される虫えいであり、6~7月には、
葉から脱落し、そのまま、虫えい内で幼虫越冬する。


しかし、弘前市周辺では、今回の数枚の写真のように、
8~9月になっても、落下しないものもあるのだ。

さらに、葉っぱの裏側には、形成されていないようだ。

⇒もちろん、ほとんどが葉裏に形成されているのだが、
 私が、裏側のものを見つけられなかっただけかも・・・

 

でも、もしかしたら、タマバチが別種の可能性もある?!

 

 

 

バラハタマフシ(?)

2013年9月9日 座頭石・青森

いつも参考にさせていただくネットの「北海道の虫えい」を見ると、
バラハタマフシは、何故か、掲載されていない。

ただ、多分近縁種のカラフトイバラに形成される、
カラフトイバラハタマフシが載っている【注3】

虫えい形成者は、タマバチの1種(種名未同定)とされ、
虫えいは7月下旬~8月上旬に出現し、8月中旬~下旬には、成熟する。

9月には、中の幼虫も終齢に達するが、そのまま虫えい内にとどまり、
落葉にともない地上に落下した虫えい内で越冬する。詳細は不明とある。


したがって、青森県で撮ったバラハタマフシ(?)は、
「虫こぶハンドブック」に掲載されているものではなく、
むしろ、北海道のカラフトイバラハタマフシに近いのかもしれない【注4】

ただし、カラフトイバラハタマフシとは、葉表に形成されていることと、
表面が平滑で光沢がある(ツルツル?)とされる点が、微妙に違うので、
もしかしたら、第3の種類かもしれないのだが・・・

 

 

そして、微妙な1枚!!!

 

 

バラハタマフシ(?!)

2013年7月15日 中泊町・青森

これは、7月に撮ったものだが、葉っぱの裏側に形成されており、
上の4枚の写真とは、だいぶ雰囲気が異なると思う。

だから、もしかしたら、これが本物のバラハタマフシかもしれない【注5】


ただ、このように突起が長くなり、金平糖に似た形態のものには、
ハンドブックによると、寄居蜂【注1】が見られることが多いとされる。

 

・・・という訳で、個人的には謎だらけ(?)のバラハタマフシでした。

 



 


【注1】当然のことであるが、例外(?)もある。

    かなりの頻度で、実際に虫えいを形成することはない虫たちが、
    虫えい内に入り込み、その組織を食べて育つことがあるようだ。

    そんな虫たちを、寄居者(または同居者)と呼ぶが、
    普通は、形成者の近縁種が多いとされる。
    
    寄居者の方が、形成者より発育が早いと、虫えいを変形させたり、
    結果として、形成者を殺してしまうこともある。

    さらに、形成者と近縁でない生物が、虫えいを食べることがあり、
    彼らは、えい食者と呼ばれ、これも少なくない頻度で見つかるようだ。

 

【注2】虫えいの命名法は、良く知られているように、
    <寄主植物名>+<形成部位>+<形態>+<フシ>
    で表示することが多い。

    今回のバラハタマフシに関しては、植物名として、
    一般名の<バラ>を使用している。

    これでは、園芸種のバラも、ノイバラも、カラフトイバラも、
    すべて<バラ>に含まれてしまう。

    形成種のタマバチの方が、バラの種類を特定して産卵していれば、
    タマバチの種類がそれぞれ異なる可能性がある。
    その場合には、個々のバラの種名を、虫えい名の先頭に付けるべきだ。

    だから、今回紹介したバラハタマフシ(?)は、正式には、
    ノイバラハタマフシとすべきなのかもしれない。
    


【注3】北海道には、オオタカネバラ、カラフトイバラ、
    ノイバラの3種のバラの仲間が、分布するようなので、
    バラハタマフシも見つかる可能性があるのかもしれない。

    ネット検索すると、カラフトイバラは、
    別名をヤマハマナスと言うらしく、北海道以外にも、
    長野や群馬の山地でも見つかっているようだ。

    だから、弘前周辺にも、分布する可能性はあるだろう。


【注4】虫えい名は、カラフトイバラハタマフシになっているが、
    寄生者のタマハチは、バラハタマバチと同種かもしれない。

    本文でも示したように、「北海道の虫えい」では、
    カラフトイバラハタマフシの形成者は、現時点では、
    タマバチの1種(種名不詳)となっている。
    おそらく、DNA解析の結果待ちなのかもしれないが・・・

    弘前のは、どっちなんだろうか?

 

【注5】もちろん、このまま9月まで落下しない可能性もある。
    その場合には、同じノイバラを利用する2種類のタマバチがいることになる。
    最終結論を出すには、多分DNA解析が必要なのだろう。

    現在の虫えいの命名法では、虫えいの形態や構造に差があれば、
    それぞれ別の名前が付けられることが多い。
    だだし、その場合でも、形成者が同一種であることが、
    DNA解析で分かっている例もあるようだ。

    また、タマバチは世代交代を行うものが多いので、
    夏に羽化して、別の場所で虫えいを作っている例があるかもしれない。

 

    

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不思議な虫えい③ ノブドウミフクレフシ


秋になると、色々な植物が、色とりどりのきれいな実をつける。

ときには、珍品のカメムシが吸汁していることもあり、
果実を見つけると、思わす足を止めて探してしまう。

 


弘前市周辺でも、いつもの撮影ポイントで、落葉が始まると、
ノブドウの果実が、目立つようになるのだが・・・・


果実は、白、青、黄、紫、紅、赤色と、かなりの色彩変異があり、
大きさも、同じ房なのに、さりげなく不揃いである。

このような色と大きさが不揃いの原因は、
ノブドウミタマバエの寄生による可能性が高いのだ。

 

 


ノブドウの果実(ブドウ科)

2014年10月19日 弘前市・青森

この写真の果実は、どちらかは、かなり微妙なのだが・・・


簡単に確かめるには、さりげなく実をつまんでみればよい。

上の写真の水色の果実は、柔らかくて、
中には、数個の種子が入っているので、正常果だろう。

一方、奥の方に見える白色だが、赤や赤紫色の模様の入った実は、
間違いなく虫えいであり、触ってみても硬い。

 

 

 

ノブドウミフクレフシ

2014年10月1日 だんぶり池・青森

少なくとも、このようにやや変形・肥大した果実は、
多分、全てが、ノブドウミフクレフシである。

普段はあまりしないのだが、一部を持ち帰ってナイフで割ってみると、
内部は未熟果のように堅く、中心部に幼虫室が1個あり、
中に、黄色の幼虫が1匹だけ入っていた【注1】

 

 

 

ノブドウミフクレフシ

2014年10月12日 弘前市・青森

ノブドウミフクレフシは、ノブドウの蕾または幼果に形成される虫えいで、
ノブドウミタマバエ Asphondylia baca Monzen の寄生によって、
正常果よりも肥大し、直径8~16mmの球形ないし扁球形になるのだ。

ちなみに、このタマバエの種小名は、思わずニヤリとしてしまうが、
命名者の Monzen 氏のさりげないセンス(?)なのだろうか?

 

 

 


ノブドウの果実(ブドウ科)

2014年10月19日 弘前市・青森

ところが、同じ場所で、ほぼ白色の果実も見つかる。

このような大きさが揃った白色の果実は、
何らかの原因(?)で、タマバエの寄生を免れたもので、
割ってみると、果実は柔らかく、正常の大きな種子が4個入っていた。


ノブドウの果実に、虫えいが見られないのは、
この時期には、むしろ珍しいことなのかもしれない。

 

 


・・・・・ところが、話はここで終わらないのである。

 

 


ノブドウミフクレフシ(?)

2014年10月19日 弘前市・青森

普段見かけるこのような雰囲気の色が違う果実は、
今までは、虫えい(ノブドウミフクレフシ)だと思っていた。

ところが、今回、写真の実を軽くつまんでみると、
水色や黄色のものは、柔らかくて、正常果のようであった。

ただ、いちばん下に写っている白と赤紫色の混じった実は、
肥大していないが、触ってみると硬いので、虫えいだろう【注2】


ノブドウミタマバエは、ノブドウの果実にカビを寄生させ、
そのカビを食べて、幼虫が育つと言われている。

だから、このような果実のまだら模様は、
内部のカビの繁殖程度によって、変化するものなのかもしれない。

 

 

さらに・・・・

 

 

ノブドウミフクレフシ(?)

2014年10月20日 弘前市・青森

このような、緑色っぽいの果実も、正常果だと思われがちだが、
肥大したものは、割ってみると、中に幼虫がいる虫えいなのだ。

この写真では、上方の奥に写っている肥大した果実と、
下方の大きいやや白っぽい果実は、中は堅く、幼虫が見つかった。

その他の肥大していない果実を2~3個割ってみたが、
種子はまだ小さいものの、正常な果実のようであった。

 

だから、巷(ちまた)では、
「秋に見られる果実は、ほとんどが虫えいである」
と言われているが、実際には、
「10月に弘前周辺で見られるノブドウの果実は、
 色が、緑色であっても、虫えいのことがあり、
 白色以外の青色、水色、うす黄色でも、
 正常果の可能性も十分ある」
ということになりそうである。

 

 

【注1】いつも参考にさせていただくネットの「北海道のの虫えい」をみると、
    年間世代数は2~3回で、1次寄主(冬寄主)のタニウツギで1世代、
    2次寄主(夏寄主)のノブドウで、1~2世代を経過するようだ。
    ノブドウでの第2世代虫えいは、8月下旬~9月上旬に出現し、
    幼虫は9月中旬~下旬に3齢に達する。
    成熟した幼虫は虫えい内で蛹化、9月中旬~10月上旬に羽化する。

    今回、果実を割って幼虫を確認したが、1匹だけ蛹になっていた。


【注2】今回初めて気が付いたのだが、そのような果実を切ってみると、
    中の一部がが茶色くなっているものが多くあり、
    何らかの虫が食害しているようだが、
    ノブドウミフクレフシではない可能性もありそうだ。

     

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不思議な虫えい② ヨモギハシロケタマフシ


このブログで、目の前一面に広がるヨモギの群落の中に、
不思議なことに、ある一株だけが、タマバエとアブラムシに、
同時に加害(?)されている状況を紹介したことがある。

そのときのタマバエによる虫えいは、
ヨモギハエボシフシと名付けられていて、
形状は、「とんがり帽子=エボシ」のようであった。
↓   ↓   ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20140903/1/


今回は、同じタマバエの仲間(もちろん別種)により、
ヨモギの葉に形成された全く違う雰囲気の虫えいを紹介したい。


もちろん、一体どんなメカニズムで、
「同じヨモギの葉っぱに作られる虫えいが、
 虫の種類によって、それぞれ違った形状になる」
のか、非常に興味深い問題が、そこにはあるのだ。

まあ、「虫が違うのだから、虫えいの形状が違っても、
それは不思議でもなんでもない」と言ってしまえば、
話は終わることなのだが・・・

 

 

ヨモギハシロケタマフシ

2014年10月1日 だんぶり池・青森

この時期、だんぶり池周辺のヨモギの果穂を見ながら、
ハイイロセダカモクメの幼虫を探すことが多い。

今年は、何故か1匹も発見できなかったのだが、
そんなある日、諦めて帰ろうとしたときに、
こんな感じの白い球が、3個並んでいるのを見つけた。

最初は、何処でも見かけるアワフキの泡かと思った。

 

 

 

ヨモギハシロケタマフシ

2014年10月1日 だんぶり池・青森

近づいて良く見ると、その球は、暖かそうな白色の綿毛に覆われていた。

まるで、本物の綿花のような、実に見事な綿のかたまりだ。
(⇒写真でしか見たことがないのだが・・・・)

虫えいに興味を持ってから、1年近くなるので、
珍しく、現場でヨモギハシロケタマフシだろうと思った。

 

 

 

ヨモギハシロケタマフシ

2014年10月5日 浅瀬石ダム・青森

虫えい形成者は、ヨモギシロケフシタマバエ(タマバエ科)という。

いつも参考にさせていただく「北海道の虫えい」をみると、
年間世代数は、2~3回で、6~9月にかけて成虫が羽化するようだ。

また、越冬は、虫えい内の3齢幼虫による例が多いとされる。

 

 

 

ヨモギハシロケタマフシ

2014年10月5日 浅瀬石ダム・青森

植物側が、寄生者の出すホルモン(?)に反応して、
何故、本来の姿とは全く違う形状のものを造りだすのか、
かなり不思議な現象であると思う【注1】
 
しかも、出来上がったものは、虫と植物の組み合わせによって、
それぞれ、みんな同じ形状になるというのも、また不思議だ【注2】

今回のヨモギハエボシフシと、ヨモギハシロケタマフシの形状の違いは、
おそらく、それぞれのタマバエが好む産卵部位が、微妙に違うのだろう。

 

 

 

ヨモギハシロケタマフシ

2014年10月1日 だんぶり池・青森

ヨモギの葉の裏は、よく見ると裏面には白い毛が密生しており、
その綿毛を集めて精製すると、お灸に使われる「高級もぐさ」になる。

ヨモギシロケフシタマバエが、葉裏の表皮細胞付近に産卵すると、
(あるいは孵化幼虫が、その細胞周辺に移動すると、)
その組織が葉裏側に成長・肥大して、虫えいの表面に綿毛が密生する、
丸いヨモギハシロケタマフシとなるのだろう。


⇒もちろん、別種のヨモギエボシタマバエが、
 葉表の表皮細胞でない場所に産卵した場合には、
 (あるいは孵化幼虫が、その細胞周辺に移動すると、)
 その組織が綿毛の少ない(?)葉表の表皮細胞を突き破るように成長・肥大して、
 虫えいの表面には綿毛のない、細長いヨモギハエボシフシとなるのだろう【注3】

ただし、どうして、丸型とエボシ型になるのかは、全く謎のままである。

 

 

【注1】初期の虫えいには、幼虫が見られないこともあるようで、
    おそらく産卵刺激だけで、成長・肥大する可能性もある。

    昔は、寄生者の出す何かの刺激に植物側が反応して、
    植物ホルモンを異常分泌した結果であるとされていたと思う。
    これもネット情報であるが、寄生者が自ら植物ホルモンを、
    分泌することも、最近になってわかってきたようだ。
    

   
【注2】もちろん、産卵部位(花や新芽の原基など)によって、
    出来上がる虫えいの形状が変わってくるはずだ。

    宿主の様々な組織に産卵できるものは、その部位によって、
    同じ形成者とは思えない形状の虫えいになることも、
    実際に観察・確認されているようだ。    

    もちろん、特定場所から成長・肥大していく場合には、
    烏帽子状や丸い球状のふたつのタイプになりやすいことも、
    ある程度は予想される結果だろう。


【注3】とは言っても、冒頭で紹介したページの写真をよく見ると、
    ヨモギハエボシフシの表面にも、白い綿毛のようなものが、
    多少ともあるのが確認できる。

    

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不思議な虫えい① ミズナラメウロコタマフシ


虫のブログなのに(?)、虫の写真が続いたので、
今回から数回に分けて、たまには植物の写真を・・・

ということで、たまにはタマバチタマバエが関係する、
ちょっとだけ不思議な虫えい(虫こぶ、ゴール)を紹介したい。


昔は「虫えい」と聞くと、まさに独断と偏見で、
葉っぱ一面に突起が出る「ダニえい」や、
癌化したような葉っぱのフクレフシなど、
かなり病的なものは、ちょっとだけおぞましいというか
気持ち悪いというイメージしか記憶になかった。


しかし、今回から紹介する「虫えい」は、
緑の葉っぱの上で、微妙な美しい色彩を持つものや、
他に類を見ない一種独特の形態を有するもので、
ほとんどアートの世界となっていることもあり、
植物と虫の特別な関係に、ちょっとだけ興味を感じる。

 


・・・ついに禁断の世界に、足を踏み入れてしまったのか?

 

 


ミズナラメウロコタマフシ

2014年10月1日 だんぶり池・青森

ミズナラの頂芽に形成されたタマバチにようる虫えいで、
うす紫色の綺麗なウロコ(鱗片)に覆われており、
遠くからでもよく目立つ。

ネット検索すると「北海道の虫えい」という素晴らしいHPがあり、
その情報では、虫えい内部には、楕円状の幼虫室が1個あり、
形成者のミズナラメウロコタマバチ(種名未同定?)が、
基本的に1匹だけ入っているようだ。

内部の幼虫は、虫えいの内壁(?)そのものを、
ムシャムシャ食べるのではなく、植物体からしみ出す液を舐める。

 

 

 

ミズナラメウロコタマフシ

2014年10月9日 田代平・青森

この写真には、多分寄生されていない頂芽が3個、
手前に小さく写っているので、どのくらい肥大したのか、
さりげなく大きさの差が実感できる。

このような虫えいは、9~10月にかけて出現し、
晩秋には、成熟したものから、落下していくとされている。

そして、かなり不思議なことに、虫えい内部で終齢幼虫で越冬するが、
おそらく成虫は、翌年の秋に羽化して、さらに翌年の越冬芽に産卵するようだ。

 

 

 

ミズナラメウロコタマフシ

2014年10月9日 田代平・青森

虫えいは、ミズナラの頂芽だけでなく、
このように、枝先に近い側芽にも見られる。

タマバチによって与えられた何らかの刺激によって、
植物側が反応して、細胞・組織が異常に増殖した結果であるが、
考えてみれば、かなり不思議な現象だと思う。

もし、ハチが植物体の特定場所に産卵しなければ、
そして、もし寄生された植物側が、微妙に違う反応をすれば、
全く同じ形状の虫えいは、できないはずなのだ。

 

 


ミズナラメウロコタマフシ

2014年10月5日 黒森山・青森

この写真は、上の撮影場所の田代平より標高が低く、
日付も4日ほど前なので、まだ着色していないのだろう。

どうやら、直射日光の当たり加減で、こうなるらしい。
リンゴの色付きと全く同じ原理だ。

一体、このくらいの大きさになるまでに、
何日くらい経過しているのだろうか?

 

 


そして・・・・・・

 

 


コナラメウロコタマフシ

2014年10月5日 黒森山・青森

上の写真とほぼ同じ場所にあるコナラにも、
ミズナラメウロコタマフシと良く似ている虫えいがあった。

私には、コナラのもミズナラのも、同じに見えるのだが・・・


前出の「北海道の虫えい」によると、
ブナ科植物のウロコ状の虫えいは、
以下の4種の存在が確認されているようだ。

 ①ミズナラメウロコタマフシ(ミズナラ)
 ②ミズナラメコウロコタマフシ(ミズナラ)
 ③ミズナラメヒメウロコタマフシ(ミズナラ)
 ④コナラメウロコタマフシ(コナラ)

この4種類の虫えいは、核(幼虫室)や鱗状片の形質が違うとされるが、
少なくとも写真で見る限り、その違いはかなり微妙である。

という訳で、「北海道の虫えい」には、ミズナラメウロコタマフシが、
コナラでも見られるとは書かれておらず、
コナラに付くものは、コナラメウロコタマフシ(仮称)として、
別に掲載されていたのだ。

虫えい形成者も、タマバチの1種とされているだけで、
その生態も、詳細は不明と記されている。


これからの展開が、非常に楽しみではあるが、
虫そのものの移動能力は多分極端に少ないだろうし、
植物側の生育状況に大きく依存しているようなので、
タマバチの同定も、困難を極めることが予想される。

 

    

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