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ちょっとだけ、不思議な昆虫の世界

さりげなく撮った昆虫のデジカメ写真が、整理がつかないほど沢山あります。 その中から、ちょっとだけ不思議だなぁ~と思ったものを、順不同で紹介していきます。     従来のブログのように、毎日の日記風にはなっていませんので、お好きなカテゴリーから選んでご覧ください。 写真はクリックすると大きくなります。   

早春に咲く花たち④/⑧

今回から紹介する花は、
スプリング・エフェメラルと言うイメージはあまりない。

でもまだ、関東以西では、何となく、
高山植物というイメージが残っている花である。

個人的には、【SEL3】★★★☆☆くらいになると思う。

 


マイズルソウ(ユリ科)
 
2010年5月30日 西目屋・青森

ハート形の葉を2個つけた姿が、鶴が羽を広げて、
舞うようだと言うことで、舞鶴草という優雅な名前になった。

私の行動範囲では、あまり目に付くことはない。

 
 

ユキザサ(ユリ科)
 
2010年5月30日 西目屋・青森

花びらも、雄しべも純白で、
まるで雪の結晶のように見えることから、
名前が付いたのであろう。

オートフォーカスのカメラでは、
なかなかピントがあわない・・・

 
 

クルマバソウ(アカネ科)
 
2010年5月30日 白神・青森

葉が放射状に輪生して、車の車輪のように見えるので、
付いた名前だろう。

比較的良く見かける花である。

 
 

ホウチャクソウ(ユリ科)
 
2010年5月30日 西目屋・青森

雑木林などの樹間のひらけた場所に群生する。

宝鐸(ほうちゃく、ほうたく)とは、
寺院建築物の軒先の四隅に吊り下げられた飾りであり、
花が垂れ下がって咲く姿がこの宝鐸に似ることによる。

一見、珍しげの花であるが、結構目に付く。

 


コウライテンナンショウ(サトイモ科)
 
2010年6月1日 だんぶり池・青森

高麗天南星と漢字で書くらしい。

この花の仲間を総称して、花の形が舌を出した蝮の姿に似ていることから
マムシグサとも呼ばれが、こちらの方が数千倍、一般的だろう!

いずれにしても、はじめて見た時は、かなり不気味な存在だった。
 

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早春に咲く花たち③/⑧

スプリング・エフェメラルと言われる花たちは、
実は、「はかない命」といわれるほど「やわ」ではない。

この仲間は、広葉樹林の雑木林が、本格的な春を迎える前に始動(?)する。
だから、多くの木々が葉を広げる前に、
太陽の光が地面まで届いてくるのを独り占めすることができるのである。

そして、その多くが、虫媒花である。

そういえば、春の早い時期に活動を始める虫の代表である
ハナアブやハナバチ類を良く見かける。

当然、他の花が咲く前なので、これも独り占めできる。

多くは植物体に比べて大柄な花をつけるのは、
花を訪れる昆虫の目を引くためなのかもしれない。
 

今回の花も、【SEL4】★★★★☆である。

 

スズラン(ユリ科スズラン属)
 
2010年5月27日 弘前市・青森

スズランは、北海道の花というイメージがあるが、
弘前市内の民家の庭で、普通に見られる。
これだけ、どこにでもあると、やや興ざめ・・・

でも・・・・花の匂いは、カメムシの匂いの次に好きである。

 


エンレイソウ(ユリ科エンレイソウ属)
 
2010年5月18日 八甲田市・青森

この花も、東北地方では、いたる所で見られるが、
さすがに民家の庭先にはない。

雑木林の中では、一種独特の雰囲気を持つ植物である。

 


ツクバネソウ(ユリ科ツクバネソウ属)
 
2010年5月30日 西目屋・青森

山地の林内や林縁に自生する可憐な花である。

秋に、今はお正月でも、ほとんど見かけなくなったが、
ハネツキの羽子に似た黒紫色の実をつけるので、
この名前が付いたのだろう。

 


チゴユリ(ユリ科チゴユリ属)
 
2010年5月23日 梵珠山・青森

虫を探して林道を歩いていると、やや奥まった木陰に、
小さくて可愛らしい花を見かける。

別角度からの写真の方が良かったかもしれない。

 


サンカヨウ(メギ科サンカヨウ属)
 
2010年5月16日 梵珠山・青森

茎の先に、まあ、どこにでもあるような、
小さな白色の花を数個つける。

花も、まあ、どこにでも見かける。

葉っぱは、フキのような形をしているが、
花は、小さい葉の上に乗っているように見える。

 

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早春に咲く花たち②/⑧

スプリング・エフェメラルと呼ばれる植物は、
早春のごく短い一時期だけに、
大きな花、華やかな色彩を持って出現する。

いずれも小柄な草本でありながら、花が大きく、
独特の華やかな色彩を持つものが多く、
あっという間に姿を消してしまうことからも、
春の妖精とも言われている。


今回紹介する花も、さりげなく【SEL4】★★★★☆の、
そんな雰囲気が漂うものである。

背丈が低い(小柄)ということは、まだまだ寒い時期に、
もっと高く伸びると、寒気に耐え難くなる可能性があり、
まず花を咲かせることに力を注いだ結果とも考えられる。

 

スミレサイシン(スミレ科スミレ属)
 
2010年5月10日 西目屋・青森

この花も、雪が溶けるとすぐに咲きだす。

花の色は、白や淡紫色のものが多く、
他のスミレとの区別が難しい。

 


ミズバショウ(サトイモ科ミズバショウ属)
 
2010年5月5日 湯段温泉・青森

有名な尾瀬のミズバショウは、夏の花か?

江間章子の「夏の思い出」という歌の中のミズバショウは、
「夏が来れば思い出す~」と歌われており、
昔は、夏の花だと思っていた。

東北では、早春に雪が溶けると同時に咲きはじめる!!

基本的には、どこでも、雪が溶けるとすぐに咲きだすようだ。

 
 

ザゼンソウ(サトイモ科ザゼンソウ属)
 
2010年5月10日 湯段温泉・青森

花の形が、僧侶の座禅を組む姿に見えるらしい。

開花するとき、やや発熱し、周囲の氷雪を溶かすと言われる。
何故か、ミズバショウと同じ場所で見ることが多い。

 


ウラシマソウ(サトイモ科テンナンショウ属)
2010年3月28日 西伊豆・静岡

まるで、浦島太郎が持っている釣り竿の釣り糸のようにみえる?
それじゃ、浦島太郎は丸坊主ではないか?

面白いのは、この仲間の果実(?)である。
最初は緑色のトウモロコシ状であるが、
秋に成熟すると毒々しい真っ赤な色に変わる。

 


キクザキイチリンソウ(キンポウゲ科イチリンソウ属)
2010年5月2日 早坂峠・岩手

昨日紹介した白い花のものと同種である。

たいてい、どちらかの色の花が群生しているが、
たまに、両方が同じ場所で見られることもある。

 

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早春に咲く花たち①/⑧

早春の美しい虫たちに続いて、
これから数回に分けて、早春の花を紹介したい。


植物の花の中に、雪の中に埋まって寒い冬を越え、
その雪が溶けだすと、他の植物や葉っぱがまだ眠っているとき、
とりあえず、すぐに花を咲かせるグループがある。


春を告げる「スプリング・エフェメラル」と呼ばれる花たちである【注1】。

そうは言っても、その厳密な定義はなかなか難しい・・・・ので、
ここでは、ただ単に、早春に咲く花を便宜上そう呼ぶことにする。


ちなみに、写真の掲載の順番であるが、
全くの個人的なスプリング・エフェメラル度(SEL?)の
高い順(印象?)であると思ってください。


まずは、スプリング・エフェメラル度5(SEL5)【★★★★★】の花から・・・




カタクリ(ユリ科カタクリ属)
 
2011年5月6日 梵珠山・青森

青森では、早春の花は4月から5月にかけて咲く。

カタクリの群生地として有名な場所が、青森県には数か所ある。
いずれも、ヒメギフチョウがいるという噂は聞かないが・・・・

春を告げる代表的な「スプリング・エフェメラル」の一つである。




キクザキイチリンソウ(キンポウゲ科イチリンソウ属)
 
2010年5月10日 西目屋・青森

キクザキイチゲとも呼ばれる。
キクに似た白色と紫色の花を一輪だけつける。

その名のとおり、一輪だけというのが、何となく良い。




シラネアオイ(キンポウゲ科シラネアオイ属)
 
2010年5月10日 西目屋・青森

高山植物としてのイメージが強かったが、
青森では、低地でも見られる美しい花である。

和名は、日光白根山に多いことから付けられたようである。




ウスバサイシン(ウマノスズクサ科カンアオイ属)
 
2010年5月10日 西目屋・青森

昆虫マニアの間では、ヒメギフチョウの食草として知られる。
同じ仲間のカンアオイが、ギフチョウの食草である。

アリが種子を運ぶことでも有名である。

残念ながら、あまり見かけることはない。




ヒトリシズカ(センリョウ科チャラン属)
 
2010年5月10日 西目屋・青森

名前も、容姿も、さりげなく良い。

探しても、なかなか見つからないことが多いが、
一本で生えるのは稀で、普通は群生するらしい。


【注1】スプリング・エフェメラル(Spring ephemeral)は、
    春先に花をつけ、夏まで葉をつけると、
    あとは地下で過ごす一連の草花の総称である。

    言葉の意味は、昆虫のカゲロウ目【Ephemeroptera】も同じ語源であるが、
    はかない命:その日限りに由来する。
    

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カマキリは、本当に大雪を予測するのか?



昔、新潟県地方の言い伝えとして、
『カマキリの卵が高いと、その年は大雪、低いと小雪』
というものがあった。

確か、子供向けの昆虫の本にも、載っていたように思う。

それぞれの地方には、
独特の伝承文化のようなものがあり、

例えば、
白馬岳の雪渓の変化を見て、田植えの時期を決める
ようなことは、

それはそれで、むしろ重要なことだったように思う。

山麓から見た雪渓の形は、
その年の気温を反映するので、
それを目安に農作業を行うことは、
ある程度の裏付けもあったのだろう。




しかしながら、
カマキリの産卵場所と大雪予報の場合には、
ちょっと違う。

2003年に、長い間の研究の成果として、
昆虫学者ではない著者により
『カマキリは大雪を知っていた』という本が出版された。

ご存じの方も多いと思うが、
オオカマキリが高いところに産卵すると、
その年は大雪になり、
低いところに産卵した場合は、
小雪とする「雪予想」が、
科学的に(統計学的に?)証明されたとして、
テレビや新聞、雑誌で大きく報道された。

多分時代背景(超能力ブーム?)もあったと思うが、
メディアに乗ったこの本は、大反響を呼び、
あっという間に、
それが世間の常識になってしまったのだ。



しかし、これは、

絶対にまずいだろう!!!

 

少なくとも、私の住む弘前市郊外では、
毎年雪の中に埋もれような雑草地や休耕田に、
カマキリの卵包は、いくつも発見されるのだ。

もちろん、降雪地帯ではない南国にも、
オオカマキリは分布する。

新潟県のオオカマキリは、別種なのだろうか?



この本の著者は、
「カマキリの卵が雪に埋もれるとどうなるのか?」という、
一番肝心なことを、何故か調べていない。
多分、多少調査したのだろうが、
ネガティブデータは、カットされてしまったのだろう・・・


テレビでも放送されたころ、友人との話の中では、
「別に、オオカマキリの卵を探して、その高さを測定し、
その年の雪の量を予測する人なんているわけがない。
だから、ほっとけばいいのさ!」と言うのが結論だった。


でも、今になって考えれば、
虫のことを良く知らない人や、
これから昆虫学(生物学)を学ぼうとする若い人が、
それが「科学的に証明された事実である」と、
間違った理解をしてしまうことは、
将来の彼らの科学的思考力をも、
誤らせてしまうことになりかねない。

これからの
科学的な考え方の根本にまで
影響する可能性だってあるのだ。

 


当然のこととして、雪に埋もれたカマキリの卵包から、
翌年、何事もなかったように1齢幼虫が孵化してくる。

この事実だけでも、
「カマキリの積雪予測」がおかしいことは明らかである。


しかしながら、
世の中に広まってしまった「常識」を覆すのは、
コペルニクスやダーウィンを待つまでもなく、
容易なことではない・・・・



 

弘前大学名誉教授の安藤喜一博士は、退官後も、
昆虫の耐寒性に関する研究を続けられて、
この問題に真っ向から取り組まれた。

そして、
東海大学出版会2008年発行の『耐性の生物学』で、
自ら行った実験内容を発表された。

この本の表紙はカマキリの拡大写真であり、赤い帯には、
「カマキリの雪予想は間違いである」
とする科学的証拠を提示と書かれている。


興味ある方は、是非、原本を読んでいただきたいが、
以下のような全て数値化された実験・調査結果から、

1)卵包の付着植物(ヨモギやススキなどの草本が多い)
2)卵包の高さ(ほとんどが、積雪時には雪に埋まる高さ)
3)卵包の耐雪性(96%以上の生存率)
4)越冬卵の耐水性(水温が低ければ80%以上の生存率)

オオカマキリが雪予測をすることはない
との結論を得ている。



実は、我が家から歩いて1~2分の距離に、
安藤先生のご自宅があり、
最近、ようやく安藤先生とお会いすることができた。

そのときに、上記の『耐性の生物学』を、
貸していただいたのである。


ご自宅には、
娘さんが造ったとお聞きした焼物製のプレートに、
『安藤昆虫研究室』と表示された飼育・実験室があり、
そこで、カマキリが沢山飼育されていた。


先生は、

「他人の間違いを指摘するのは嫌なものだが、
間違いに気付かず、ここまで常識化してしまったのは、
マスコミの影響が大きい。

何度か、この問題で取材を受けたが、
担当記者は理解してくれても、
一度大きく報道され、しかも定説化してしまったものを、
それは間違いでしたとは、
なかなか記事には出来ないようだ。

オオカマキリの雪予想は、全くサイエンスではない」

と、さりげなく、しかも、きっぱりと、お話された。


お庭には、季節の花々と野菜が、
整然と植えられていた。

 

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