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ちょっとだけ、不思議な昆虫の世界

さりげなく撮った昆虫のデジカメ写真が、整理がつかないほど沢山あります。 その中から、ちょっとだけ不思議だなぁ~と思ったものを、順不同で紹介していきます。     従来のブログのように、毎日の日記風にはなっていませんので、お好きなカテゴリーから選んでご覧ください。 写真はクリックすると大きくなります。   

多分コアシナガバチの交尾シーン


アシナガバチ類は、秋になると巣内に新女王が誕生すると、
巣を離れ、同時期に羽化した雄バチと交尾する。

今年偶然、多分コアシナガバチの交尾シーンに遭遇した。
しかも、そのとき、さりげなくカメラを持っていた。

長年昆虫の写真を撮っているが、アシナガバチの交尾は初めて見た。


 
2010年9月29日【多分コアシナガバチ】栃木・戦場ヶ原


アシナガバチ類は、春に越冬した女王バチが単独で巣作りを行い、
彼女の娘である働きバチが羽化するまで、
巣作りや餌やりなどの労働は、女王バチが単独で行う。

そして、働きバチが羽化すると子育ては全て働きバチが行うようになり、
働きバチの増加に伴って、労働力が増すため巣は飛躍的に発展する。

巣は晩夏まで成長を続け、この時期、
働きバチに代わって雄と新女王バチが羽化すると、
雄と新女王バチは巣を離れ、交尾する。

雄はすぐに死ぬが、新女王バチは単独で越冬する。

 

今回の一連の写真は、雄バチと新女王が交尾する場面である。

 
2010年9月29日【多分コアシナガバチ】栃木・戦場ヶ原

コアシナガバチの場合は、意外と簡単に撮らせてくれた。

 

 
2010年9月29日【多分コアシナガバチ】栃木・戦場ヶ原

上の雄バチが触角で、新女王バチの頭を押さえなだめているような感じである。

 


2010年9月29日【多分コアシナガバチ】栃木・戦場ヶ原

新女王バチが腹部を持ち上げ、最終交尾体制に入った。




2010年9月29日【多分コアシナガバチ】栃木・戦場ヶ原

これで交尾が成立したようである。

 

この時期、特によく晴れた日には、
アシナガバチ類が飛びまわっているのを見かける。

春や夏に出会うアシナガバチ類は、幼虫の餌を探す働き蜂が多く、
刺激すると刺される可能性がある。
しかし、この時期に出会うアシナガバチは、
メス(新女王バチ)を探す雄バチがほとんどで、
何をしても、刺されることはない。

⇒当初はフタモンアシナガバチとしていましたが、
 Nabita氏のご指摘により、多分コアシナガバチに訂正しました。




 

 

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ちょっとだけ、不思議な植物の世界


このブログには、
「ちょっとだけ、不思議な昆虫の世界」
というタイトルが付いていますが、
当然ここは、無法地帯です(?!)。

何でもです。


そこで今日は、「ちょっとだけ、不思議な植物の世界」です。
 

食虫植物モウセンゴケ: 

 
2010年7月22日 【青森・酸ヶ湯温泉】

植物にだって、昆虫と同じように、
いろんな生き方が、あっても良い。

ただ、これはないだろう!!!
あたり一面のモウセンゴケの群落

どう考えても、獲物の奪い合い・過当競争ではないのか?
これで、本当にみんな生きて行けるのか?

なんか食虫植物って、パラパラっとあちこちにある方が、
より効率的に虫が捕れる感じがするが・・・・

でも、こんな所に迷い込んだ小さな虫たちは、
どんだけ恐ろしいんだ!

 

ものすごい気根:

 
2003年4月5日 【沖縄・与那国島】

あの有名なマングローブの上品さ・可憐さは、全く感じられない。
なんか、物凄くたくましく生きている感じ。

恐竜にも見える!!

でも、これもマングローブの仲間なのかなぁ~。

 

バナナの花:

 
2004年1月13日 【沖縄・石垣島】

石垣島のバンナ公園で一本だけ発見。
ちょっと不気味で、しかもエロい!!

夢の島の植物園で見た印象とかなり違っていた。
こんなになるんだ!!!

でも、バナナは、何時でも何処でも安くてうまい!!

 

ブナの巨木:

 
2010年5月16日 【青森・梵珠山】

始めて見たときは、軽いショックを受けた。
暗闇で対面するとちょっと怖いかも・・・

ブナの巨木はときどきこうなるらしいが、
人の手が加わっているとの説もある。

 

ヤドリギの実:

 
2008年10月27日 【青森・黒石市】

葉緑素もあるし、花も咲くし、実もなるし、鳥が種を運ぶ。
何で寄生植物なの?

⇒ 実は、中途半端で、優柔不断な、
  どっちつかずの「半寄生植物」と言われているらしい。

 というわけで、ちょっとだけ不思議な植物でした。

 

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これはかなり不思議: ミューラー型擬態


ミューラー型擬態とは、
何らかの防御手段を持った別の種同士が
互いに良く似ている現象をいうが、
アシナガバチやスズメバチのように、
近縁種が、同じような色彩と形態を持っていても、
あまり面白くない。

やはり、ミューラー型擬態の醍醐味(?)は、
近縁関係にない種同士が良く似ていることにあると思う。


手持ちの写真の中から、
ミューラー型擬態の当事者を抜き出してみる。

撮影した時には、あまり擬態種とは意識せずに撮っているので、
それぞれ別角度からの違った雰囲気の写真になっているが・・・

 

2010年8月30日【ヨツボシモンシデムシ(シデムシ科)】青森・だんぶり池

このような、赤と黒の模様は、人間にも非常に良く目立し、
とりあえずシャッターを切って、後でパソコンの画面で確認すると、
別種であったりすることもある。

  

2010年7月7日【モンキゴミムシダマシ(ゴミムシダマシ科)】青森・だんぶり池

毒を持っている種類が、それぞれ別々の警戒色をしていると、
捕食者が経験した不味い種の色彩を、
何種類も覚えきれなくなることが予想される。

 

 

  2010年5月30日【イタドリハムシ(ハムシ科)】青森・白神

捕食者が覚えられる種類の数は、なるべく少ない方が、
被食者が生き残る上では有利になるはずで、
必然的に、互いに似たような色の種類になったものと考えられる。

お互いが毒を持っており、どちらかが一度犠牲になれば、
その後は、他の種類も守られることになるからである。

 

  2010年6月22日【カメノコ(テントウムシ科)】青森・梵珠山

つまり、同じ警戒色の仲間が多ければ多いほど、
捕食者の学習する機会が増えて、
個々の被食者にとって、食べられてしまう確率が減るということになる。

⇒当初、ナミテントウとしていましたが、Nabita氏のご指摘により、
 カメノコテントウに訂正しました。

 

ここが、ミューラー型擬態の進化の素晴らしさだ!!

 

 

2010年7月11日【ヨツスジハナカミキリ(カミキリムシ科)】茨城・筑波山

ちょっと待て!!   ヨツスジハナカミキリ君

ちょっと似てるような気がしないでもないが、
君は違うだろ!!!

 

(蛇足)
カミキリ類は、不味成分を持っていないとされている。
したがって、この場合は、ベイツ型擬態の範疇であるが、
やはり不完全である。

ベイツ型擬態の場合は、ミューラー型擬態と違い、
モデル種しか毒を持っていないので、
もし捕食者が先に毒を持たない擬態種の方を食べると、
毒を持つ方もおいしいと勘違いされてしまい、
襲われる可能性が高くなってしまう。

ベイツ型擬態の場合は、擬態を行う種類が増えれば増えるほど、
そのモデル種は損をすることになってしまう。

 

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カメムシの匂いの不思議【05-05】 警報フェロモン効果

(前項を先にお読みください)

一般的に集合性をもつ種において、その集合の構成メンバーの一部が、
外敵に対して臭気成分放出した直後に、
その臭気を近くにいる同種の他個体が感知して、
その場を速やかに離れることができれば、
その臭気成分は「警報フェロモン」とみなされる。

多くのカメムシ類は、同種の他個体が放出した臭気成分の臭気を感知することにより、
その現場から落下したり、遠ざかるような行動をとることが観察されている。
(⇒⇒ ただし、警報フェロモンの場合は、種特異性はないことが推定される)
 

つまり、直接捕食者に襲われた個体は助かることはないが、
近くにいる仲間(多くの場合は兄弟姉妹等の近親者であることが多い)に危険を知らせ、
現場から速やかに逃亡させることができる。

警報フェロモンは、近くに同種の他個体が存在しているからこそ、
有効に危険を知らせる手段となる。



したがって、臭気成分を、警報フェロモンとして使用している種は、
例外なくある程度の集合性が認められるはずである。

カメムシ類の集合は、
(1)ふ化直後から吸汁開始時期まで卵塊上でおこる若齢幼虫のかなり密な集合、
(2)摂食・静止時におこる幼虫時期の集合、
(3)寄主植物の一部分に成虫・幼虫が混在するルーズな集合、
(4)交尾のための成虫のルーズな集合、
(5)越冬場所での集合等、
いろいろなタイプのものが知られており、
いずれの場合も警報フェロモンが有効に働く状況にある。

ただし、(3)と(4)では、カメムシが保護色の場合、
警報フェロモン活性は、ほとんど観察されない。

たとえば、まるでクズの新芽のように見えるマルカメムシ幼虫は、
葉や茎の分岐部分に集合していることが多いが、
地面に落下したり、その場から離れるような行動は認められない。

これは、隠蔽的擬態(あるいは保護色)をするカメムシが、
捕食者と出会った場合には、
臭気成分のビックリ効果がより出やすいからなのだろうか。


一方、不味成分を体内に持っている警戒色の被食者は、
鳥には喰われないが、別のある捕食者には平気で喰われてしまうこともある。

その目立つ色彩が逆に捕食者の発見の手助けとなる可能性があるが、
この時に放出される臭気成分が警報フェロモン活性を持っていれば、
同種の他個体に対しては、効果的に働くことになる。

したがって、警戒色=不味成分というタイプの昆虫にとっては、
「集合すること」と「防御物質が警報フェロモン活性を持つ」ことは、
同時に成り立つことが必要であり、それが生存にとって重要な戦略となる。


また、樹上性のカメムシは、警報フェロモンに対する行動が特異であり、
例えばチャバネアオカメムシ1令幼虫には、樹上からの落下行動は見られず、
バラバラに、葉の裏に回り込むだけである。
落下する距離が長いと、その場所に再度集合しにくいためかもしれない。



さらに興味深いことは、臭気成分は、集団でが警報フェロモンで落下したり、
分散してしまったりした個体を、もう一度集団化させる役割をも果たしている。

カメムシ類の臭気成分は、
(E)-2-hexenalや(E)-2-decenal等の直鎖アルデヒド類とその類縁化合物であり、
さらにn-tridacane等の無臭の飽和炭化水素類を含んでいる。

(E)-2-hexenalは青葉アルデヒドとも呼ばれ、
植物の青臭い匂いの成分にもなっているかなり揮発性の高い物質である。
n-tridacaneは、溶媒的な役割を果たし、アルデヒド類の揮発を調整する。

アルデヒド類は、大量に放出された場合には、
仲間をその場から分散させる警報フェロモンとしての役割を持ち、
これが微量の場合には、あるいは、時間が経過して、匂いが少なくなったら、
再び集団化させる集合フェロモンとして機能する。

カメムシは、集合と分散にそれぞれ別の物質をフェロモンとして、
使用していない。これは、無駄を省くという面があるのと同時に、
何らかの事故で両方放出してしまった場合の混乱を避けているのかもしれない。

 

以上のように、カメムシの放出する臭気成分の役割として、

 (1)アリに対しては「防御物質(接触毒)」として有効に作用し、
 (2)その他の捕食者に対しては、捕獲行動を一瞬の間躊躇させる「ビックリ効果」を持ち、
 (3)近くにいる同種の他個体を分散させる「警報フェロモン」として機能し、
 (4)微量の場合には、幼虫の集団化を促す「集合フェロモン」の役割を果たす

ことがわかった。

カメムシの臭気成分が、捕食者と被食者の様々な出会いの場面で、
いくつかの役割を同時に果たしているということは、大変興味深いことである。

当然のことであるが、最初からこのような多面性が備わっていたとは考えにくい。

おそらく、最初は、捕食者に対する直接的な防御手段として、進化してきたものが、
幼虫期の集団生活の発達に伴い、ビックリ効果や警報フェロモンとしての役割を果たし、
さらに、一度バラバラになった個体を、ある程度時間が経過してから、
もう一度集団化させる集合フェロモンとしての二次的な役割を、
持つようになったものと推察される。

現在では、臭気成分は警報フェロモンとしての有効性がかなり高くなり、
不味成分を持つ警戒色のカメムシ、たとえばナガメやアカスジカメムシは、
集団生活する幼虫期には、臭気成分を放出するが、
単独生活になる成虫期には、ほとんど臭気を放出しない。

これは、ある程度、理にかなったことであるように思える。
 

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カメムシの匂いの不思議【04-05】: 警戒色と不味成分

(前項を先にお読みください)

普通、警戒色のカメムシ類は臭気成分を放出しないか、
あるいは放出してもごく僅かであり、
多くの場合、体液に食草起源の不味成分を含んでいる。

特にカメムシ類のような植物吸汁性の種では、
植物体の有毒成分をそのまま体内に蓄積している可能性が高い。

最初の実験で述べたように、
飼育中の捕食性の動物類に、さまざまな種類のカメムシを与えた場合、
匂いを大量に放出する保護色のカメムシは平気で食われてしまったが、
あまり匂わない警戒色のカメムシは食われなかった。

さらに、警戒色のカメムシ類は、前述のように、
野鳥類の胃の内容物のリストには発見されないので、
不味成分を体内に蓄積するカメムシは、
野鳥類に食われない可能性が高いのである。


 

 被食者が不味成分を持つことによって、
捕食者の攻撃から逃れようとする場合は、
学習できる捕食者が対象となるので、
ほとんど例外なく被食者の体色は目立ちやすい警戒色になっている。

逆に言えば、鳥類に対して有効でない臭気成分を持つカメムシが、
警戒色をしているはずがないのである。

もっと言えば、保護色のカメムシに擬態してる種もないだろう。


カメムシ類の、不味=警戒色=学習という系は、
まさに捕食者として鳥を対象として進化してきた防御法であるといえる。

一方、学習できない捕食者に対しては、
その都度行う防御行動によるビックリ効果の方が有利である。
捕食者があまり印象に残らない(?)ような目立たない色彩の方が、
びっくりさせる効果は大きくなると考えられるからである。


昆虫図鑑によると、カメムシの70%以上が保護色である。
しかも、そのほとんどが強烈な臭気(臭気成分)を放出する。

警戒色のカメムシは、30%以下であり、
そのほとんどが弱い臭気を放出するか、あるいは全く臭気を放出しない。

もちろん、警戒色を持つカメムシの臭気成分が、
自らの体表に流れ出させる種もおり、
それらは、ある種の捕食者にとっては、
不味成分として作用する可能性はあるが・・・・
 

 

鳥類に対して有効な不味成分は、アリに対して無効であるが、
アリに対して有効な防御物質成分は、鳥類に対して無効であることが多い。

それぞれの最重要(になったと思われる)な捕食者に対して、
効力のある防御方法というのは、
他の捕食者に対してはあまり良い方法とはいえなくなるのも、当然かも知れない。

また、寿命が長い種ほど、外敵に対する防御手段をうまく、
発達させている可能性が高い。

例えば、捕食者に対する防御手段を全く持たないカゲロウの成虫は、
短命の代表のように考えられているし、
体内に有毒物質を蓄積して、鳥類に捕食されることのないマダラチョウの成虫の寿命は、
1年近くあることが知られている。

カメムシの場合も、もちろん例外もあるとは思うが、
ひとつの傾向として、警戒色を持ったカメムシは産卵前期間が長く、
逆に保護色を持ったカメムシは短い。

また、警戒色のモデルになっている不味成分を持った種は、
繁殖後期間が明らかに長く、擬態者は逆に短い傾向があるとも言える。
 

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