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ちょっとだけ、不思議な昆虫の世界

さりげなく撮った昆虫のデジカメ写真が、整理がつかないほど沢山あります。 その中から、ちょっとだけ不思議だなぁ~と思ったものを、順不同で紹介していきます。     従来のブログのように、毎日の日記風にはなっていませんので、お好きなカテゴリーから選んでご覧ください。 写真はクリックすると大きくなります。   

虫たちの防御戦略⑥ Ⅱ(5). ベイツ型擬態

自分の姿かたちを、他の危険な種に似せて、
外敵からの攻撃から逃れる虫たちは、結構沢山いる。

よく目立つ危険な種は、過去に嫌な経験をした捕食者からは、
2度と攻撃されないからである。

だから、そのような種に似せることによって、
捕食者を欺いて、攻撃を止めさせることができるのだ。

このような擬態を、ベイツ型擬態と呼ぶ。


今回も、できるだけ沢山の例を、写真で紹介したい。

 

まずは、危険なハチに擬態する虫たち3種を紹介しよう。



2011年9月8日 白岩森林公園・青森

これは、セスジスカシバという蛾である。

このブログを開設するキッカケになった種のひとつであり、
典型的なミラクル擬態(そんなに似せなくても大丈夫だよ擬態!)である。

この子の擬態は、蛾なのに、本当にここまでやるか!! 
というレベルだと思う。

 


2010年6月5日 志賀坊森林公園・青森

このキンケトラカミキリというカミキリも、
遠くで見れば、スズメバチである。

もちろん過去に、ハチで一度でも嫌な経験をした捕食者は、
遠くで見て避けるので、近づいて確かめる(?)こともしないだろう。

写真に撮って、冷静に見れば、全くのカミキリなのだが・・・

 


2012年8月3日 鉄館林道・福島

これは、アブの仲間で、ヨコジマナガハナアブという。

まあ、アブがハチにそっくりでも、もともとの体型が似ているので、
あまりインパクトはないのだが・・・・

でも、この子たちを見つけたときは、何を隠そう、
何で花の上で、スズメバチが交尾してると思ってしまったのだ。

 


ところで・・・・


前回紹介したベニボタルの仲間は、頭と胸が黒く、胴体(前翅)が赤い。

同じような色の擬態種は多く、ベイツ型擬態とミュラー型擬態が、
入り混じっている印象がある。

ここでは、科の異なる以下の4種だけ紹介する。

取りあえずは、撮影日に注目してほしい。
いずれも、モデルとなったベニボタルが出現するのと同じ時期、
弘前市周辺では、雪解け直後の5月から6月にかけての撮影である。

 


2011年6月2日 だんぶり池・青森

早春の明るい林道で、良く見かけるアカハネムシ。
カメラを近づけても、逃げないことが多いので、
擬態には自信があるのだろうか?

 


2011年6月26日 白岩森林公園・青森

ベニヒラタムシという名前から想像できるように、
かなり扁平な虫であり、樹皮の隙間に難なく入り込むが、
このように、目立ってもかまわないのである。

 


2011年5月25日 だんぶり池・青森

このハネビロアカコメツキも、林縁部で見られる。
目立たない種が多いコメツキの中で、特異な存在である。

 


2010年6月6日 弘前市・青森

ヘリグロベニカミキリの仲間も、良く似た感じで、
黒い斑紋が微妙な位置にあり、???という感じではあるが、
おそらくベニボタルに擬態しているのだろう。

 

その他にも、まだまだ、危険な生き物に擬態する虫たちがいる。



2010年7月5日 室蘭市・北海道

セグロベニトゲアシガという蛾の仲間だ。
危険なアカヘリサシガメに似ているのだろうか?

初核と前脚のバランスが、何らかの演技をしてるようだ。

 


2012年6月19日 白岩森林公園・青森

マツシタトラカミキリは、ミラクル擬態だろう!!!

容姿やサイズもそうだが、細かく触角を振りながら、
少し歩いては止まるような歩き方まで、
ムネアカオオアリを真似ているのである。

この他にも、アリに擬態する虫たちは多い。

アリの仲間は、警戒色ではないが、蟻酸を持っているので、
捕食者は避けるようだ。

 


2010年10月20日 白岩森林公園・青森

ベニスズメという蛾の幼虫である。
前方を空中において、ゆっくり振ると、
ヘビの動作にも、何となく似てくる。

 


2012年6月27日 白馬岳山麓・長野

これが、アゲハモドキという蛾の仲間である。

何に擬態しているのかというと、
全体が黒っぽく、後翅表面の赤い模様が、
ジャコウアゲハに似ているようだ。

この写真で、少しだけ見えるお腹の部分にも、
ジャコウアゲハのような赤い模様があるし・・・


しかしながら、特に上の2例(ベニスズメ幼虫とアゲハモドキ)の場合、
写真では分かりにくいが、擬態種とモデル種のサイズの違いが、結構あるのだ。

このことについては、捕食者は、基本的に両種を同時見ることはないので、
捕食者が(遠近法で?)見たときに、過去の嫌な記憶の虫と、
同じ大きさ(?)に見える可能性が高く、半分くらいの大きさまでならば、
おそらく、捕食者は区別できないはずである。

 


最後にひとつだけ、面白い例を示そう。



2012年8月23日 十石峠・長野

この子の名前は、キカマキリモドキという。
確かに、上半身だけ見るとカマキリに似ている。

しかし、前脚(カマ)の折りたたみ方が、
普通のカマキリとは、明らかに違う。

面白いのは、何と、このキカマキリモドキ君は、
ムモンホソアシナガバチにも似ているのである。


カマキリとアシナガバチ両方に擬態するというミラクル擬態なのだ。




元記事はこちらです
↓  ↓  ↓
20110926 セスジスカシバ これがミラクル擬態だ!
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20110926/1/


 

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虫たちの防御戦略⑤ Ⅱ(4). 警戒色(標識色)

何らかの防御手段を持っている虫たちは、
一般的に、捕食者から攻撃されることはなく、
比較的よく目立つ赤や黄色の体色をしていることが多い。

そのような体色は、警戒色(標識色)と呼ばれる。

どうせ捕食者に食われることがないのなら、
別に体色は、どんな色でも関係ないと思われがちであるが、
実際には、武器を持った種や有毒種は、ほとんどが警戒色である。

その理由は、次のように考えられる。

有毒種とはいえ、捕食者から攻撃を受けたとき、
獲物を直接口の中に入れてしまうような捕食者の場合には、
あわてて吐き戻されたとしても、死んでいるか、
あるいはケガをしている可能性が高い。

だから、一度ひどい目にあった鳥やカエルなどの捕食者が、
次回からその色や模様を学習して、2度と攻撃しなくなるように、
より目立つ色をしている方が理にかなっているのだ。

そして、良く目立つ警戒色には、必然的(?)に、
ミュラー型擬態者が出現する可能性がある。

有毒昆虫は、独自に別々の警戒色を持っているよりも、
同じような形態・色彩であった方が、捕食者の学習の回数が増えて、
より効率的に、攻撃を避けることができるからである。


今回は、そんな警戒色の虫たちの写真を紹介したい。



2010年8月25日 だんぶり池・青森

黄色と黒の独特の縞模様のキイロスズメバチは、別項で紹介するように、
他の非力な虫たちが擬態するモデルになっているほどである。

人間でさえも、近づくのをためらうほどの迫力である。



2010年5月23日 梵珠山・青森

雪解け直後から、見かけるカクムネベニボタル。

早春の明るい開けた林道で、よく見かけるが、
カメラを近づけても、逃げないことが多いので、
多分「自分は、不味くて食べられないぞ!!」と、言っているようだ。

ベニボタルの仲間は、甲虫とはいえ、体は比較的軟らかく、
外敵に襲われたときに、不味い体液が外に出やすいのだ。

このタイプの色彩を持つ有毒種は多く、
典型的なミュラー型擬態の色彩パターンになっている。



2010年7月4日 厚真林道・北海道

これは、ヨツボシヒラタシデムシという良く目立つムシである。

普通、シデムシの仲間は、体は真っ黒で、
死体を食べる掃除屋として知られているが、
この子は、目立つ姿形で、樹上生活をして、
チョウや蛾の生きた幼虫を攻撃する。

外敵に襲われると、防御物質を放出する。



2012年6月16日 白岩森林公園・青森

如何にも不味そうな(?)カメノコテントウ。
体内の有毒成分を滲み出させるので、下手に掴むと手が黄色くなる。



2011年9月14日 だんぶり池・青森

ナガメは、成虫になってからは、防御物質を放出しない。
だから、カメムシの匂いはしないが、
植物起源の有毒成分を体内に持つので、鳥は食べない。



2006年2月12日 室戸岬・高知

オオキンカメムシは、大型のキンカメムシである。
限られた場所で、集団越冬する習性を持つ。

警戒色ではないカメムシは、隙間や落ち葉の下で、
隠れて、集団越冬する。



2004年1月12日 石垣島・沖縄

同じく南方系のアカギカメムシ。
こちらも、特定の樹木で、集団越冬する。

防御物質よりも、体内に持つ不味成分により、
捕食者が避けるようだ。



2003年4月7日 石垣島・沖縄

白い十字模様が特徴的なクロジュウジホシカメムシ。

黒地に白い十字があり、しかも赤い縁取りがある。
この組み合わせも、非常に目立つ警戒色の典型だろう。

やはり、体が比較的柔らかく、有毒成分を含んだ体液が出やすい。

 


2010年6月10日 だんぶり池・青森

アカヘリサシガメは、有毒種ではなさそうであるが、
次回紹介するセグロトゲアシガがベイツ型擬態をする。



2010年7月11日 筑波山・茨城

間違いなく有毒種のホタルガであるが、
同じ有毒種の本物のホタルに似ているので、
ミュラー型擬態だろう。



2010年9月26日 乗鞍高原・長野

良く目立つ場所で、交尾中のミノウスバ。
マダラガ科の蛾は、多分ほとんどが有毒種である。



2009年5月29日 多摩動物園・東京

同じく南方系の大型のチョウで、
幼虫時代に蓄積した有毒成分を体内に持つオオゴマダラ。

毒チョウの特徴である、ゆっくりした飛び方で、
現地では、新聞チョウとも呼ばれる。

民家の周辺を悠然と飛ぶ姿は、本当に、
新聞紙が風に舞っているように見える。

西表島の旅館の窓から、ずっと眺めていた記憶がある。

まあ、この白黒パターンも、警戒色なのだろう?


ここまでは、有毒種である。

 

しかし・・・・

 

最初のスズメバチにみられるような黄色と黒のしま模様は、
もしかしたら、その色彩パターンそのものの情報に、
全く意味がないとまでは、言い切れない部分もあるのだ。



2011年8月26日 だんぶり池・青森

オニヤンマも、典型的な黄色と黒色の警戒色である。

大型の強力な捕食者であり、素早い動き方をするので、
鳥などの捕食者は、最初から諦めて攻撃しないのだろうか?

 


2010年10月9日 弘前市・青森

ジョロウグモも、状況は全く同じで、
いかにも強そうなイメージではあるが、
有毒種ではないだろう。

 

では、下の写真の子はどうだろうか?


2012年8月8日 白岩森林公園・青森

この写真のハンノケンモンという蛾の幼虫は、
有毒植物を食べているわけではなく、
特に、Ⅱ(5)のベイツ型擬態とは考えられないのに、
このような黄色と黒のしま模様なのである。

おそらく、多くの捕食者は、オニヤンマやジョロウグモと同様に、
ハンノケンモンの幼虫を、食べることはないのだろう。


だから、生物がこのような色の組み合わせを、
本能的に嫌うということも、考えられないわけでもない。

その証拠に、この色の組み合わせは、
何も学習していない幼稚園児にでも良く目立つように、
道路の危険個所や、工事現場などで、
注意を促す視覚信号として使用されているのだ。

 

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虫たちの防御戦略④ Ⅱ(3). 隠蔽的擬態

虫たちの中には、自分の体の色や模様を、
普段いる背景に合わせるだけでなく、
姿かたちまで似せている種類もいる。

この防御方法の完成度の高い場合には、古くから、
昆虫マニアたちを虜にしてきた。

それどころか、全く虫に関心のない人たちにも、
自然の不思議さを伝えることのできる良く知られた現象で、
しばしば、その関連の写真集も出版されている。


ここでは、体の色や模様だけで隠蔽するのを【保護色】とし、
姿かたちまで似せるのを【隠蔽的擬態】と呼ぶ。

保護色と隠蔽的擬態の概念は、ほとんど同じように思ってしまうが、
実は、ちょっとだけ機能が異なっており、
あまり知られていないが、かなり重要な問題なのである。


体の色や模様だけを背景に似せた保護色は、
静止する場所を適切に選べなかった場合には、
元の輪郭がくっきりと表れて、逆に良く目立ってしまうのだ。

Ⅱ(2)で、静止する背景を間違えたとして紹介した、
シロシタバやキシタミドリヤガの前翅表面の模様は、
苔の生えた樹皮そのものであった。
だから、彼らが苔の生えた大木の樹皮に静止していれば、
視覚で獲物を探す捕食者は、見つけることができないし、
私に写真を撮られることもなかったろう。


ところが、色や模様だけでなく、姿かたち(輪郭)まで、
葉っぱや枯れ枝に似せた隠蔽的擬態であれば、
背景を間違えても、やっぱり葉っぱや枯れ枝にしか見えないのである。

隠蔽的擬態の例としては、昔から、木の枝そっくりなナナフシや、
まるで葉っぱのようなコノハムシなどが、良く知られている。



2011年2月17日 多摩動物園・東京

実物は、動物園でしか見たことがないのであるが、
枯れた部分や虫食いの跡まで作ったコノハムシである。

実際に展示室の前では、若いお母さんが、指さしながら、
「あそこの陰にぶら下がってるでしょ!!」とか言って、
一生懸命に子供に説明しているが、初めて見た子供たちは、
なかなか発見できないし、最後には、虫でも葉っぱでも、
どっちでも良いみたいな雰囲気になっていた。

確かに、これが虫だと言われても、子供心が傷つくだけだ!!!
それほど、葉っぱそっくりなのである。


そして、これらのおどろくべき精密さを持った色や形が、
単なる偶然の結果で出来上がったものではないことは、
その行動と考えあわせてみればよくわかる(注)

まず、下の2枚の写真の子たちは、ほぼ同じ姿勢で下を向いている。
もちろん、普通の虫たちは、頭を上にして静止することが多いのだが・・・


2010年9月24日 東海村・茨城

トビナナフシの体は、多種に比べてややずんぐりしている。
それでも、若い緑色の枝にそっくりで、触角を前方に揃えて静止する。

また、Ⅲ(4)で紹介予定のであるが、脚を自切して逃げることもできる。



2012年9月24日 東海村・茨城

偶然にも、ちょうど2年後の同じ場所で見つけた外来種アオマツムシ。

緑色の背中が平らで、縁取りの黄色ラインが入っているおり、
しかも、お尻の先が細くなっているので、まるで葉っぱのように見える。

トビナナフシやアオマツムシは、保護色をより完璧にするために、
このように、姿かたちまで変形させ、それに合わせて、
触角を揃えて前方に伸ばし、下向きに静止するのだ。

 

ここで、注目すべきは、よりコストをかけて、形状まで変えたことにより、
適切な背景を選べば完全に背景に溶け込み、運悪く背景を選べなくても、
予想以上の生存のための効果が、得られる場合があるのだ。


まず、下の写真の蛾の幼虫は、どうなんだろうか?

昔だったら、典型的な、居場所を間違えた例として、
紹介してしまったかもしれない。

本当に、この子は、空気の読めないドジな子なのか?

それとも・・・・・


2010年9月8日 白岩森林公園・青森

この自信たっぷりのポーズは、食えるものなら食ってみろ!!!
と、言わんばかりの凛とした雰囲気で、決して、
背景選択を間違ったのではないことを強調しているのかもしれない。

 

さらに、次の4枚の写真も、典型的な隠避的擬態の例である。

いずれの場合も、完全に背景選択を間違えているので、
私ごときに写真を撮られてしまったのだが、もし仮に、
彼らが適切な環境にいたら・・・と想像すると、
頭がクラクラするほどである(?)

 


2006年8月14日 印西市・千葉

これは、ツマキシャチホコという蛾(成虫)であるが、
緑色の葉っぱの上にいても、枯れ枝にしか見えない。



2012年7月21日 白岩森林公園・青森

こちらも同様に、マエグロツヅリガというメイガ科の蛾であるが、
緑色の草の上にいても、枯れ葉が落ちているとしか見えない。



2012年7月21日 白岩森林公園・青森

まるで、木の芽が葉っぱに落ちてるように見えるが、
オオヤナギサザナミヒメハマキというハマキガの仲間である。



2011年8月2日 だんぶり池・青森

これは、もちろん植物の種子ではない。
このブログでも時々出てくるベッコウハゴロモの幼虫である。


彼らの選んだ背景が、このように間違っているにもかかわらず、
彼らは餌となることは、多分ないだろう。

それは、良く目立ってしまう背景にいても、
枯れ葉も、枯れ枝も、木の芽も、種子も、みんな、
肉食の捕食者が、食べ物とは認知しないからである。


最後に、このブログ開設のキッカケともなった
ミラクル擬態:ハイイロセダカモクメ幼虫を紹介する。

この子は、日本に生息する隠蔽的擬態をする虫たちの中で、
本当に、特筆すべき存在だと思う。



2012年10月10日 白岩森林公園・青森

ハイイロセダカモクメは、蛹で越冬する。

普通は、蛹で越冬する虫たちは、春になると新しい成虫が出てくる。

しかし、この子は、春になっても、羽化してこないのである。
夏がそろそろ終わるかという季節になって、ようやく羽化し、
それから交尾・産卵をするのである。

だから幼虫は、この時期にしかないヨモギの花穂を餌とするのだ。

ヨモギの花穂は、葉っぱと違って、隠れるところが少ない。
しかも、花穂を食べてしまうと、ますます、隠れるところがなくなってしまう。

そんな中で、彼らは鳥に捕食されないように、
あっと驚くミラクル擬態を完成させたのだ。

何と、彼らは、食べてなくなったもの(花穂)そっくりなのである。


しかし!!!!!



2011年10月4日 だんぶり池・青森

茎を歩いて獲物を探すクチブトカメムシに対しては、
このように、いとも簡単に捕獲されてしまう。

ある捕食者に対して、どんなに完璧な防御手段であっても、
(例えそれが、やり過ぎとも思われるミラクル擬態であっても)
全ての捕食者の攻撃を避けることは出来ないのだ。


基本的に、保護色(分断色も!)や隠蔽的擬態は、
比較的離れた場所から獲物を視覚的み見つける捕食者(主に鳥)を、
対象にした防御法なのである。

 

(注)偶然出来上がったという証拠は、実はあるのだ。
   コノハムシの近縁種が、化石で発見されているのだが、
   その年代には、広葉樹はまだ存在していなかったのである。
   広葉樹が出現するまでの間、多分針葉樹やシダ植物の中で、
   細々と暮らす普通の虫(?)だったのだろう。

 

元記事をご覧ください。
↓  ↓  ↓
20120729 マエグロツヅリガ 保護色から隠蔽的擬態へ
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20120729/1/

20111007 ハイイロセダカモクメ幼虫 これがミラクル擬態だ
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20111007/1/

20111018 ハイイロセダカモクメ幼虫 衝撃の瞬間
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20111018/1/


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虫たちの防御戦略③ Ⅱ(2) 保護色と分断色

自分の体の色や模様を、背景に似せて、
目立たないようにする虫たちがいる。

Ⅱ(1)のように、何かの下に隠れているのではなく、
捕食者から見えてしまう場所にいるときでも、
できるだけ見つかりにくいような色や模様の虫たちである。

しかも、多くは効果的な静止姿勢をとって、背景に溶け込む。



2003年4月5日 与那国島・沖縄

実はこの写真、ナナフシを狙って撮ったものである。
そのすぐ下に、バッタがいたとは、気が付かなかったほど、
背景に溶け込んでいたのである。



2012年8月7日 小泉潟公園・秋田

樹木の幹の色と模様まで似せているニイニイゼミは、
これでは、普通見つからない。

外国からの観光客が、日本では木が鳴いていると驚くほど(!?)に、
セミの姿を発見することは、基本的に難しいのだ。


しかし、緑色のバッタが、枯れた葉の上にいれば、
逆に良く目立ってしまうし、ニイニイゼミが、
緑色の葉っぱの上にいれば、簡単に見つかってしまうだろう。



2012年10月7日 矢立峠・秋田

これはシロシタバという蛾である。

前翅の表面は、ここまで似せなくてもと思うほど、
少し苔の生えた樹皮そっくりである。



2011年9月29日 白岩森林公園・青森

これは、キシタミドリヤガという蛾である。

前翅の表面は、ここまで似せなくてもと思うほど、
苔の生えた樹皮そっくりである。

でも、残念がら、この2匹は、静止する場所を間違えたため、
私に写真を撮られてしまったのである。

 

当然のことであるが、虫たちの体色が、目立つのか、
目立たないのかは、彼らが静止する背景によるのだ。



2011年10月20日 東海村・茨城

真ん中に写っているのは、かなり目立つ色の
アカスジキンカメムシの幼虫である。

普通に受けるイメージでは、オレンジ色と黒色の組み合わせでは、
後述するように、どう見ても良く目立つ警戒色である。

しかし、ヒノキの球果から吸汁しているときは、
何故か保護色のようなイメージである。

もちろん、最初に写真を撮ったときは、全く気が付かなかった。

 


保護色と言われる虫の色彩の中に、もう一つのジャンルとして、
分断色と呼ばれる模様がある。

一般的な保護色(隠蔽色)の虫たちは、体全体が、
ほぼ一様に背景とよく似た色彩をしていることが多いので、
大きな葉っぱや樹皮などの均一な環境では、十分に隠蔽効果を発揮する。

しかし、虫たちのいる環境は、そんなに一様なものではない。

木漏れ日が当たるような場所では、眩しい光と影が共存したり、
草、枯葉、枯れ枝、石ころなどが、バラバラに存在する場所も少なくない。

このような環境の明暗や、色彩の異質性が高い場合には、
全身が緑色や茶色の保護色の虫たちは、
逆に、その輪郭が目立ってしまう可能性があるのだ。

そんな場合には、分断色と言われる色彩パターン(注)が効果的である。



2011年10月18日 東海村・茨城

このように、雑草の光と影が交錯するような場所には、
ショウリョウバッタが、完全に背景に溶け込んでいる。



2011年6月29日 白岩森林公園・青森

写真の中央部には、シロスジオオエダシャクという蛾が
数本の木の枝を巻き込むように静止している。



2010年8月23日 だんぶり池・青森

大きな杉の木の根元近くには、チャマダラエダシャクという蛾が、
見事に張り付いている。


まさに、上の3枚の写真が、分断色の効果なのである。

 


では、一体、このような保護色や分断色は、
どのくらいの防御効果があるのだろうか?

保護色に関しては、実際の防御効果を知るために、
昔から、様々な実験が行なわれている。

しかし、どのような実験を行っても、
決して100%の効果が認められることはなく、
ほんの少しだけ、生存率が上がるかなというレベルでしかなかった。


もちろん、保護色の有効性が、ほんの少ししかないのであれば、
虫たちが、自分の体色を知っていて、自らの体色に有利な背景の色を、
本当にに選んでいるのかどうかについては、もっと微妙である。

古典的な例では、工業黒化で有名なオオシモフリエダシャクの実験がある。

通常の白っぽい個体と、ススで汚れたような黒っぽい個体を、
それぞれ、白い色紙と黒い色紙の上に放すと、細かいデータは覚えていないが、
かなり微妙な差で、自分の体色に合った背景を選んでいるという実験結果があった。

しかし、虫たちの背景選択に関する実験結果は、
色々な条件が複雑に絡み合っている可能性もあり、
予想される(?)結果にならないことが多いのだ。

例えば、茶色と緑色のバッタが、それぞれ自分の体色に応じて、
生きている草か、枯れた草を選ぶかを実験的に確かめるような場合、
どんな刺激を根拠にするのかを、確認することから始めなけれなならない。

つまり、色を見るという視覚刺激以外の条件、例えば、緑葉の匂い、
周辺の温度や湿度、足ざわり感触、草が立っているか寝ているかなどの他に、
試験するバッタの空腹度なんかも、考慮しなければならないのだ。

このように、研究者がかなり苦労して、ある行動の防御効果を測定し、
それが僅か数%生き残る確率が増えただけという結果が得られたとしても、
その形質は、進化していくだろう。

 

(注)軍隊の特殊部隊などが採用している迷彩服というのがある。
   緑色や茶色の単色ではなく、それらを微妙に配置した模様の軍服で、
   もしかしたら、草木やブッシュなどにいるときに、目立たないことを、
   実験的に確かめているのかもしれない。
   
   

虫たちの保護色については、以下の元記事をご覧ください。
↓  ↓  ↓
20120907 分断色! バッタ
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20120907/1/

20120830 これが保護色だ!! ニイニイゼミ
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20120830/1/

 

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虫たちの防御戦略② Ⅱ(1) 隠れている

多くの虫たちは、少なくとも、昼間の明るいうちは、
獲物を探し回る捕食者に見つからないように、
何かの下に隠れているという方法をとる。

捕食者に攻撃を受けないための、最もシンプルな選択だろう。

全く当たり前の話であるが、虫の写真を撮ろうとして、
林道を歩いていても、落ち葉や石の下に隠れている虫たちを、
決して見つけることはできない。

ときどき、林道わきにある石ころをひっくり返してみると、ようやく、
じっとしているゴミムシやハサミムシなどを見つけることが出来る。

また、樹皮の割れ目をそっと剥いでみると、
その中に、ヒラタカメムシやクチキムシの仲間がいるし、
柔らかい朽木を崩してみれば、ゴミムシやハネカクシなどの甲虫類が見つかる。

写真は撮りにくいが、例えば、こんな感じである。



2011年1月15日 渡良瀬遊水地・埼玉

柔らかくなった朽木のを崩してみると、中には、
トホシテントウ幼虫とヨツボシオオキスイが、仲良く(?)隠れている。



2012年5月30日 南会津・福島

これは、隠れ家(落ち葉の下)にいたマガタマハンミョウが、
もう一度、落ち葉の中に逃げ込む直前の写真である。



2006年2月3日 徳島市・徳島

人間が作った植木鉢やブルーシートの下にも、虫たちは隠れている。
そっと捲ってみると、ヒメホシカメムシの集団がいた。


このように、何かの下に隠れていれば、視覚で獲物を探す捕食者は、
おそらく見つけることはできないだろう。


ただし、この素晴らしい防御手段にも、残念ながら大きな欠点がある。

落ち葉や樹木の中に完全に隠れていても、
ノネズミや、キツツキなどの特殊化した捕食者には、
いとも簡単に見つかってしまうのだ。

次回以降も、様々な防御方法を紹介していくが、そのどれをとっても、
全ての捕食者から完全に逃れる防御方法はないのだ。


そうはいっても、隠れることに関して、驚くべき習性を持った虫たちもいる。

有名なところでは、クロシジミの幼虫は、クロオオアリの巣の中に入り込むし、
シロスジベッコウハナアブの仲間の幼虫は、スズメバチの巣の中にいる。

当然そこは、普通の捕食者が絶対に近づかない場所だろう。

しかも、食べ物は、何処にでもある???


今回は、隠れるということに特化した虫たちを、
手持ちの写真の中から、2例だけ紹介する。



2011年5月25日 だんぶり池・青森

ミノムシ(ミノガ幼虫)は、落ち葉や枯れ枝のごみの中に、
隠れるのではなくて、自らの体に、それをくっつけてしまうのである。

こうすれば、自由にどこでも歩き回ることができる。

上の写真は、緑の葉っぱにいるのだが、
どう見ても枯れ枝が落ちているようにしか見えない。



2010年10月15日 だんぶり池・青森

フタモンクサカゲロウ幼虫は、小さすぎてあまり知られていないが、
非常に特殊化した幼虫時代を過ごす。

後述する隠蔽的擬態のように、苦労して自分自身の体を枯れ葉やゴミに似せるなら、
最初から本物を体に付着させれば、それに勝る隠れ蓑はないし、
より現実的で良いじゃないか?

こうしていると、捕食者は全く気付かず、十分身を守ることができるだろう。

 

元記事はこちらです。
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擬態より優れているのか? フタモンクサカゲロウ幼虫
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20110107/1/


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