忍者ブログ

ちょっとだけ、不思議な昆虫の世界

さりげなく撮った昆虫のデジカメ写真が、整理がつかないほど沢山あります。 その中から、ちょっとだけ不思議だなぁ~と思ったものを、順不同で紹介していきます。     従来のブログのように、毎日の日記風にはなっていませんので、お好きなカテゴリーから選んでご覧ください。 写真はクリックすると大きくなります。   

どっちが前なの? ウラナミアカシジミ

ずいぶん昔の話であるが、学生時代に読んだ本の中で、
捕食者は、獲物の頭の部分を狙って最初の攻撃を仕掛けるが、
何らかの理由で、間違えて尻尾の方を最初に攻撃してしまうと、
致命傷を負わせることができず、獲物を取り逃がしてしまうことが多いと書かれていた。

これから紹介するチョウは、そこをうまく利用して、
捕食者の攻撃を、ダメージの少ない部分に向けさせる。

これも、広い意味での擬態になるのかもしれない。

 


ウラナミアカシジミ(シジミチョウ科)

2012年7月3日 小泉潟公園・秋田

まず、先端が白くなった2本の尾状突起が、
まるで触角のように見える。

その付け根にある黒い点は目のように見え、
さらに、翅の裏面にある波状のしま模様が、
その目のような点に集まっている。

 


ウラナミアカシジミ(シジミチョウ科)

012年7月3日 小泉潟公園・秋田

近づくと、後ろの2本の突起を、ゆっくり交互に動かす。
これは、まさに触角の動き方だ!!

鳥のような捕食者は、きっと、
写真の右手の方向に飛び立つと予測する(多分!)。

あるいは、頭を一撃で狙う捕食者は、
頭部のような黒い点を攻撃するだろう(多分!)。

 

 

アカシジミ(シジミチョウ科)

2011年7月21日 大沼・北海道

このように、シジミチョウの仲間で、尾状突起を持つものは、
裏面の模様が尻尾の方へ向かうように、
つまり、そちらが頭部に見せかけるような模様になることが多い。

 

 

ゴイシシジミ(シジミチョウ科)

2010年8月1日 だんぶり池・青森

逆に言うと、尾状突起を持たないシジミチョウには、
そこへ向かうような「しま模様」がないことが多い!!

 

 

ミズイロオナガシジミ(シジミチョウ科)

2011年7月21日 大沼・北海道

この子には、やや短いが、尾状突起があるので、
やや微妙であるが、裏面のしま模様は、後端に向かっている。

なんか、進化途中のようなイメージではあるが・・・・

 

 

ウスイロオナガシジミ(シジミチョウ科)

2012年7月3日 小泉潟公園・秋田

これは、以前目玉模様のところで紹介したように、
捕食者をビックリさせるような効果が期待できない小さな目玉模様は、
頭部から離れた場所にあって、そこに攻撃を集中させることができる。
↓  ↓  ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20110310/1/

それと全く同じように、翅の尻尾の部分を頭部のように見せかけ、
そこに攻撃をさせることで、ダメージを小さくすることができるのだ。


 

拍手[17回]

PR

ヒメツノカメムシ終齡幼虫の集団

このときは、本当にビックリした。
朝早かったので、夢でも見てるような気がした(嘘)。

これまで、ツノカメ類の密な集合は、若齢幼虫だけで、
齡が進むにつれて、次第に分散していくと思っていたのだが・・・

 


ヒメツノカメムシ終齡幼虫(ツノカメムシ科)

2012年7月19日 梵珠山・青森

道路脇の大きなヤナグワの木の葉っぱに、
終齢幼虫が2匹寄り添っているのを見つけた。

これは、ちょっとだけ珍しい光景だった。

 

しかし!!!!

 

 

ヒメツノカメムシ(ツノカメムシ科)

2012年7月19日 梵珠山・青森

すぐ近くに、何と30匹以上の幼虫が、
折り重なるようになっているのが見つかった。

よく見ると、1匹だけ成虫がいる!!!

こんな密な大集団を見たのは初めてだった。

朝早かったからなのか?

 

 

ヒメツノカメムシ(ツノカメムシ科)

2012年7月19日 梵珠山・青森

付近を捜すと、別の蜜な集団がいた。
こっちは、40匹以上いるようだ。

1個の卵塊からの幼虫集団ではなさそうだ。

何でこんなに集まらなければならないのか。


しかし、ちょっと感動!!!

 

 

ヒメツノカメムシ(ツノカメムシ科)

2012年7月19日 梵珠山・青森

ちょっと引いた写真を見ると、同じフレームに3ケ所、
ヒメツノカメムシの集団が確認できる。

しかも、かなり目立つ場所に!!!

 

 

ヒメツノカメムシ(ツノカメムシ科)

2012年7月19日 梵珠山・青森

別の密な集団には、
何と、成虫が3匹も混じっている。

さらに感動!!!!

 


と言うわけで、
ヒメツノカメムシの卵と若齢幼虫の母親による保護行動については、
このブログを開始して間もなく紹介したのだが、
どのステージまで母親が保護しているのかは、当時は観察できなかった。
↓  ↓  ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Entry/11/


そして、今回偶然にも、幼虫集団は、成虫になるまで、
一緒に生活していることが分かったのだ。

ただ、一緒に写っている中に、母親がいるのかどうかは不明である。
 
数頭の成虫が同じ集団の中に写っているので、
新たに成虫になったものである可能性が高いのだか・・・

 


 

拍手[17回]


葉っぱのようなスズメガ ウンモンスズメ

葉っぱのように見える模様をしたスズメガに出会った。

間違いなく、緑色のスズメガである!!!

このときは、本当にビックリした。
朝早かったので、夢でも見てるような気がした(嘘)。


常夜灯がある場所に、早朝に行くのが蛾の写真を撮るには最適である。
夜は、滅多やたらに飛び回ってなかなか撮らせてくれない。
うまい具合に静止しても、ストロボを使わなければならない。

だから、少し無理をしてでも、明るくなってすぐに現場に行けば、
帰りそびれた葉っぱの上に静止している蛾を、
明るいときに、思う存分撮ることができるのだ。

ただ、こう考えるのは、年をとって早起きになった人間だけではない。
小鳥やカラスも、全く同じことを、誰に聞くわけでもなく学習する。

したがって、朝早く行くのは、鳥たちとの競争でもあるのだ。

一足(?)遅くなって、無残な翅の残骸を、沢山見ることもしばしばである。

 

そんな中で、今回のスズメガは、ちょっとだけ違う。

小鳥やカラスが、彼らを見つけることが、おそらく出来ないのだ。

 

それでは、まず下の写真をご覧ください。
(わかりにくければ、是非クリックして大きくして見て下さい)


ウンモンスズメ(スズメガ科)

2012年7月21日 志賀坊森林公園・青森

ちょうど写真の真ん中にいますが、わかりますか?

 

 

ウンモンスズメ(スズメガ科)

2012年7月21日 志賀坊森林公園・青森

近づいて、ちょっとだけアングルを変えると、いるいる!!!

 

 

ウンモンスズメ(スズメガ科)

2012年7月21日 志賀坊森林公園・青森

こんなに目立つ場所に、別の子がいました。

この子は、結構、どうどうとしていた・・・

 

 

ウンモンスズメ(スズメガ科)

2012年7月21日 志賀坊森林公園・青森

そして、ここにも。

常夜灯のまわりのツツジの灌木の良く目立つ場所に、
あっという間に、3匹も見つかったのである。

 

 

ウンモンスズメ(スズメガ科)

2012年7月21日 志賀坊森林公園・青森

さらに、良く良く探すと、ちょっと離れた場所で、
ようやく、4匹目が見つかった。

そしてこの子は、カメラを近付けると、威嚇するように、
後翅の赤い部分を見せつけたのである。

もしかすると、一度小鳥の攻撃を受けた個体かもしれない。

 

印象であるが、あまり他の蛾は見つからなかった。

おそらく、早起きの小鳥やカラスに食べられてしまったのだろう。


逆に言うと、小鳥やカラスが、保護色のこのスズメガを、
見つけることが出来なかったから、その後に、私に見つかったのか?

 

拍手[19回]


イタドリハムシの食痕 これはアートだ!!

この食痕を見たときは、ちょっとだけビックリした。
今の時期、良く見かけるアメシロとかフキバッタの食痕に比べて、
これは、はっきり言ってアートだ!

植物も、これだけ見事にムシに食べられたら本望だろう。


普段は、植物の葉に残されているムシの食べた痕跡(食痕)は、
決して見栄えのするものではないし、あまり気分の良いものではない。

普通このような、食痕に興味を示すのは、
イモムシを探している小鳥くらいだろう。

と、書いていて思い出した。

食痕の作成者(イモムシ)に寄生するハチやハエも、
植物の出す匂いに引かれてやってくるのだ。
まあ、今回はそんなレベルではないが・・・・

 

 

イタドリハムシ幼虫の食痕

2012年7月19日 梵珠山・青森

最初見たときは、こんな感じであった。

周りの草が、ほとんど食べられていないのも・・・

 

 

イタドリハムシ幼虫の食痕

2012年7月19日 梵珠山・青森

でも、これほど見事に、葉っぱだけを葉脈を残して、
完璧に食べているのは、あまり見かけない。

 

 

イタドリハムシ幼虫の食痕

2012年7月19日 梵珠山・青森

背景を暗くして撮ると、さらに、ちょっとだけアートだ!!

 

 

イタドリハムシ幼虫の食痕

2012年7月19日 梵珠山・青森

しかし、撮り方にセンスがないので、
多少のレタッチを・・・

 

 

イタドリハムシ幼虫

2012年7月20日 八幡平・秋田

そして、このアートの作者は、別の場所で撮った彼らです。
この葉っぱには3匹の幼虫が見えるが、確かに、
葉脈の部分は食べていない。



普通は、これだけ食べつくす前に、蛹になってしまうか、
別の葉っぱに移動するのだろう。

今回は、多分一枚の葉っぱにいる幼虫の個体数が多過ぎて、
こんなことになってしまったのだと思う。

一枚の葉っぱが、ほぼ食べつくされているので、もしかしたら、
みんな満腹して蛹になってはいない可能性がある。

もしかすると、小さめの成虫が出てくるかもしれない。

 

拍手[21回]


枯れ葉のような蛾【3】 保護色から隠蔽的擬態へ

今月初めに、枯れ葉に似たカギバ類を連続で紹介した。

ウスイロカギバ http://kamemusi.no-mania.com/Date/20120710/1/
マエキカギバ  http://kamemusi.no-mania.com/Date/20120712/1/


彼らは、体色だけでなく、形態も枯れ葉に似せているので、
緑色の葉っぱにも平気で止まる。


今回は、もっともっと枯れ葉に似ている蛾を紹介する。

 

普通の生態写真や、ネットで良く見かけるマエグロツヅリガは、
三角翼の戦闘機のようだと表現する人もいるが、
実は、簡単な柄がついた枯れ葉にも見えるのだ。

まず、下の写真から・・・・(是非クリックしてご覧ください)


マエグロツヅリガ(メイガ科)

2012年7月21日 白岩森林公園・青森

最初は、本当に枯れ葉だと思った。

だから、このブログで使用しても良いかなと思って、
ちょっと蛾に見える枯れ葉の写真を、撮っておこうとしたのだ。

ススキの上に乗る枯れ葉も面白いし・・・

 

 

マエグロツヅリガ(メイガ科)

2012年7月21日 白岩森林公園・青森

そして、1~2歩進んだが、他の枯れ葉を見て、
「ん!!」という感じだった。

 

 

マエグロツヅリガ(メイガ科)

2012年7月21日 白岩森林公園・青森

近づいて良く見ると、何か本物の蛾の様だぞ!!


背中の微妙な線、模様や色使いはそれで、まあ良い!!

しかし、それだけではないのだ。
翅の両端が内側に曲がって、しかも微妙な波打ちまである。

このように、両端が少し巻いている雰囲気は、
まさに広葉樹の枯れ葉そのものである。

さらに、柄まで付いているし・・・。

 

 

マエグロツヅリガ(メイガ科)

2012年7月21日 白岩森林公園・青森

しかも、しかも、しかも、この子の静止の仕方も、ミラクルである!!!
(是非クリックしてご覧ください)

もう一度、遠目に見てみると、体が少し斜めに葉っぱから浮いていて、
枯れ葉がふわりと葉っぱの上に、ふわりふわりと、
まさに今、舞い落ちてきた感じなのである。

これは、はっきり保護色の域を出て、典型的な隠蔽的擬態の範疇に入る。


まあ、ムラサキシャチホココノハムシには遠く及ばないが・・・

 


ここで、別の種を見てみよう。


クロホシフタオ(ツバメガ科)

2010年9月8日 だんぶり池・青森

上の写真のように、枯れ葉のような色と模様の蛾は、
もし、枯れ葉の上にいれば、背景に溶け込んでしまうだろう。

このような場合は、典型的な保護色である。

しかし、それに、ちょっとだけ翅の形態(外観)を変えたり、
切れ込みを作って、姿かたちを変化させれば、
場合によっては、そのまま隠蔽的擬態の範疇に入るのだ。

 

 

クロホシフタオ(ツバメガ科)

2012年7月4日 白岩森林公園・青森

写真のクロホシフタオの翅は、破れているのではない。
最初に見たときは、鳥にでも喰われた痕跡のイメージだったのである。

ところが良く見ると、この切れ込みは、より「リアルな枯れ葉」のようであり、
しかも後翅は、枯れ葉のように波打っているのだ。

ここまでくると、緑色の葉っぱにも平気で止まるのだろう。


しかも、すぐそばに、本物の蛾の翅がさりげなく落ちてるし・・・

 

 

このように、保護色と隠蔽的擬態の進化については、
比較的分かりやすい。

ある生き物が背景に溶け込む色彩を持つということは、
そうでないものに比べて、視覚で獲物を探す捕食者から、
ちょっとでも発見されにくくなるはずである。

こんな感じで、特別な防御手段を持たない虫たちが、
普段いる背景に似せた色になることで、
多少でも天敵から発見されにくくなり、
生存の機会が増せば、このような保護色は、
少しずつ進化していくだろう。

ただし、保護色だけでは、背景を選ばないと、
十分な効果は得られない。
さらに一歩進んで、形態まで模倣するようになれば、
背景を選ばなくても良いのだ。

今回見てきたように、典型的な蛾の形をした枯れ葉色の蛾が、
緑の葉っぱの上にいると、おそらく、
蛾だということがすぐに分かってしまうだろう。

ところが、形態まで葉っぱに似ていれば、
今度は、枯れ葉と間違えて、その直後からは、
捕食者の興味を引かなくなるのである。

ムシを探している捕食者(主に鳥)で、
枯れ葉も同時に食べるものなんかいないからだ。

虫を探している多くの鳥たちは、緑の葉っぱの上で、
枯れ葉を見つけても、即座に食べ物でないことを認識してしまう。


別の機会に、改めて紹介する予定であるが、
枯れ枝に擬態するシャクガなどの幼虫が
しばしば緑色の葉っぱの上で枯れ枝のように硬直しているのも、
獲物を探す捕食者に、とりあえず見つけてもらって、
即座に食べ物でないと認識させるのである。


ここまで読んでいただいた方、何かおかしいと思いませんか?

この説明では、マエグロツヅリガもクロホシフタオも、
隠蔽的擬態とは言えなくなってしまうのだ。 

 
むしろ、これは、外敵に目立たせるような標識的擬態の範疇に入るだろう。

だから、鳥の糞、小枝、枯れ葉、黒っぽいアリや、花の蕾などをまねた擬態は、
一般的な警戒色の有毒種を模倣した標識的擬態【Mimicry】とは、
おそらく違うジャンルに入れなければならないだろう。

もちろん、彼らが、枯れ葉が一杯あるようなところに、
普通に(!)静止していれば、それは、
典型的な隠蔽的擬態の範疇に入るのだが・・・・


 

拍手[19回]