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ちょっとだけ、不思議な昆虫の世界

さりげなく撮った昆虫のデジカメ写真が、整理がつかないほど沢山あります。 その中から、ちょっとだけ不思議だなぁ~と思ったものを、順不同で紹介していきます。     従来のブログのように、毎日の日記風にはなっていませんので、お好きなカテゴリーから選んでご覧ください。 写真はクリックすると大きくなります。   

カメムシ交尾中【3】 何故、虫たちは交尾するのか?

虫たちは、めんどくさい(もちろん生物学的に!!)交尾をする。

考えてみると、これは「ちょっとだけ不思議」である。

子孫を残すためとは言え、遠く離れた(?)雌と雄が、
何らかの手段で出会って、最終的に交尾を伴う有性生殖を行うリスクは大きい。


まず、一つの種で、オスとメスがいなければならない。

しかも、生殖細胞は減数分裂という特殊な細胞分裂をしなければならない。

さらに、何らかの手段で、別個体の精子と卵子が出会わなければならない。

そして、最後の難関である無防備な交尾時間帯が存在することになる。

何故、生物は、ふたつに分かれるだけという簡単な無性生殖を止めて、
リスクの多い有性生殖をするように進化してきたのだろうか?

高等生物でも、メスだけで、無性(単為)生殖する種は少なくないが、
ある時期には、雄が生まれて、両性生殖をおこなう。

何故だろうか?

 

 

オオトゲシラホシカメムシ(カメムシ科)
 
2011年6月6日 だんぶり池・青森

その有力な答えは、

「遺伝子を混ぜ合わせることで、有害な形質を排除し、
より良い形質を残すため」

であるとされている。


無性生殖だと、突然変異で生じた劣性の有害遺伝子が蓄積されてしまう。

有性生殖であれば、そのような有害遺伝子を簡単に排除でき、
しかも、有利な遺伝子を、種内に広めていくことも出来るのだ。


 

ナガメ(カメムシ科)
 
2011年6月22日 白岩森林公園・青森

雄と雌が出会うために莫大なコストをかけ、
外敵に襲われる可能性のある危険な交尾をする理由は、
それぞれの両親とは異なる遺伝子型の個体を生産することなのである。

 

 

ブチヒゲカメムシ(カメムシ科)
 
2011年7月9日 網走・北海道

しかし、虫たちの中にも、交尾をせず、簡単な単為生殖で、
一気に個体数を増加させる場合もある。

有名なのが、農作物の大害虫であるアブラムシ類である。

写真は別に紹介する予定であるが、茎や葉っぱに、
隙間なくびっしりとアブラムシが付着しているのを、よく見かける。

 

 

クサギカメムシ(カメムシ科)
 
2011年8月7日 乳頭温泉・秋田

昆虫以外でも、最近話題になっている外来種コモチカワツボのように、
侵入地で、まず雌が雄と交尾することなしに、爆発的に個体数を増加させる。

そして、ある程度安定化した段階で、雄が生まれ、
その後、有性生殖が行われるようになるらしい【注】

 

 

ズグロシラホシカメムシ(カメムシ科)
 
2011年6月26日 だんぶり池・青森

というわけで、虫たちが今後も生き続けていくためには、
何はなくとも、このような交尾だけは必要なのである。


ああ、良かった!!
なんとか、下ネタに走ることなく、書き終えた。

 


【注】脊椎動物以外の生物は、多少の例外を除いて、単為生殖をすることがあるが、
       哺乳類は、卵が単為発生できないように、厳密にプログラムされているらしい。

 

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カメムシ交尾中【2】 何故カメムシの交尾時間が長いのか?

前回の【1】から、1年以上経過した。
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20101008/1/

その当時、交尾中の写真を撮れていたのが、
比較的普通種である以下の5種のみであった。

①エゾアオカメムシ、
②ベニモンツノカメムシ、
③チャバネアオカメムシ、
④トゲカメムシ、
⑤アカスジカメムシ

それから1年たって、今シリーズ【2】と【3】で、
2011年撮影の9種の交尾写真を、追加することができた。

カメムシの交尾写真は、他の虫たちに比較して、撮りやすいのかも・・・

 


セアカツノカメムシ(ツノカメムシ科)
 
2011年7月11日 東海村・茨城

カメムシは、良いか悪いかは別にして、
写真のように、お互いそっぽを向いて交尾をする。

軽く触ると、さりげなくつながったまま歩くが、
当然、どちらかが前進すれば、相手は後進することになる。

 


ヒメツノカメムシ(ツノカメムシ科)

2011年5月31日 だんぶり池・青森

このように、交尾中のカメムシのペアは、
自然状態でも、比較的良く見かける。

その理由は、色々考えられそうではあるが、
ただ単に、出会い頻度の問題である可能性が高い。

カメムシが交尾している時間は、他の昆虫に比べて長いので、
その分、見かける頻度が高くなると考えられるのだ!

 

 

ツノアオカメムシ(カメムシ科)
 
2011年8月16日 乗鞍高原・長野

では、何故カメムシの交尾時間は長いのか?

昆虫は一夫一妻性ではないので(?)、
交尾後の雌は、すぐに他の雄との再び交尾することがが可能であり、
多くの場合、後から交尾した雄の精子と受精する。

だから、雄たちには、つがい相手の雌が、自分と交尾した後、
すぐに別の雄と交尾できるため、何らかの対策が必要だったのだろう。

それが、長時間交尾を続けて、この写真のように、
雌をしっかり拘束しておくことなのだ。

 

 

クチブトカメムシ(カメムシ科)
 
2011年9月8日 白岩森林公園・青森

一方、交尾中は、行動が制限されるので、外敵に襲われる可能性が高い。

しかし、カメムシには、長時間交尾できる有利な条件もあるのである。

以前紹介したように、多くのカメムシは物理的な刺激を受けると、
アリなどに有効な防御物質(臭い)を出すことができる。
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20101108/1/

だから、危険な交尾の時間が長くても、意に介さないようで、
目立つ葉っぱの上で、堂々と(?)交尾をするのである。


という訳で、カメムシの場合には、
比較的簡単に、交尾中の写真を撮れるという、
ちょっとだけ長い(くどい)種明かしでした。

 


以下、カメムシ交尾中【3】に続く・・・・


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カノコガ交尾中

カノコガは、昼間、活動するヒトリガ科の蛾である。

例によって、だんぶり池でも普通に見つかる。

明るいときに飛びまわるので、
比較的目につきやすいのかもしれない。

 

2010年8月1日、午前6時頃(!!)のことである。

お腹が太くなったメスが葉の裏に止まっていたので、
しばらく見ていると、予想どおり、
どこからともなく、しかも、さりげなくオスがやってきた。

 


 

多分ほぼ一直線に、オスは飛来したと思う。

メスのそばに着地することなく、
すぐさま交尾しようとする。




 

夜間に、性フェロモンを利用して、交尾する蛾の場合、
誘引されてくるオスは、一旦メスの近くに着地することが多い。

カノコガの場合は、昼間交尾することもあり、
オスの触角の形状は、メスと見た目は変わらないので、
少なくともメスの放出する性フェロモンよりは、
視覚でメスを探してきたようであるが・・・・
 



 

メスの後方から、ホバリングしたオスは、
すぐに、そのまま腹を曲げて、交尾体制に入った。

 


 

この写真で、オスとメスのお腹の太さが、
2倍ほど違うのが分かる。

 


 

そして、どちらかというと、
あっという間に、交尾は成立した。
 


というわけで、ハチに擬態してるカノコガ君!!
大変、失礼いたしました。

 今度は、別のカテゴリーでも出演してください。
 

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多分コアシナガバチの交尾シーン


アシナガバチ類は、秋になると巣内に新女王が誕生すると、
巣を離れ、同時期に羽化した雄バチと交尾する。

今年偶然、多分コアシナガバチの交尾シーンに遭遇した。
しかも、そのとき、さりげなくカメラを持っていた。

長年昆虫の写真を撮っているが、アシナガバチの交尾は初めて見た。


 
2010年9月29日【多分コアシナガバチ】栃木・戦場ヶ原


アシナガバチ類は、春に越冬した女王バチが単独で巣作りを行い、
彼女の娘である働きバチが羽化するまで、
巣作りや餌やりなどの労働は、女王バチが単独で行う。

そして、働きバチが羽化すると子育ては全て働きバチが行うようになり、
働きバチの増加に伴って、労働力が増すため巣は飛躍的に発展する。

巣は晩夏まで成長を続け、この時期、
働きバチに代わって雄と新女王バチが羽化すると、
雄と新女王バチは巣を離れ、交尾する。

雄はすぐに死ぬが、新女王バチは単独で越冬する。

 

今回の一連の写真は、雄バチと新女王が交尾する場面である。

 
2010年9月29日【多分コアシナガバチ】栃木・戦場ヶ原

コアシナガバチの場合は、意外と簡単に撮らせてくれた。

 

 
2010年9月29日【多分コアシナガバチ】栃木・戦場ヶ原

上の雄バチが触角で、新女王バチの頭を押さえなだめているような感じである。

 


2010年9月29日【多分コアシナガバチ】栃木・戦場ヶ原

新女王バチが腹部を持ち上げ、最終交尾体制に入った。




2010年9月29日【多分コアシナガバチ】栃木・戦場ヶ原

これで交尾が成立したようである。

 

この時期、特によく晴れた日には、
アシナガバチ類が飛びまわっているのを見かける。

春や夏に出会うアシナガバチ類は、幼虫の餌を探す働き蜂が多く、
刺激すると刺される可能性がある。
しかし、この時期に出会うアシナガバチは、
メス(新女王バチ)を探す雄バチがほとんどで、
何をしても、刺されることはない。

⇒当初はフタモンアシナガバチとしていましたが、
 Nabita氏のご指摘により、多分コアシナガバチに訂正しました。




 

 

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なるほど、そうやって子孫を残すのか? だんぶり池のカメムシ


だんぶり池近くの林道を歩きながらカメムシを探していると、
よく目立つ葉っぱの表面で、
正々堂々と交尾しているカップルに出会う

こういうときは、ちょっと声を掛けてから(嘘!)
デジカメのシャッターを切るようにしているが・・・

よく見かける5組のカップルを紹介しよう。 


エゾアオカメムシ:


2010年6月10日【エゾアオカメムシ】だんぶり池

関東以西では、山地に多く見られるが、
東北では平野部にも多く、ダイズ、イネ、果樹などの害虫とされる。
だんぶり池の林道では、目につく範囲では、個体数が最も多い。


チャバネアオカメムシ:


2010年6月19日【チャバネアオカメムシ】だんぶり池

果樹害虫の代表的存在で、個体数も多い。
民家に侵入して集団で越冬することがある。
この場所では、たまにしか見かけない。
学生時代、サクランボの種子で、飼育しようとしたが・・・・


アカスジカメムシ:


2010年9月12日【アカスジカメムシ】だんぶり池

セリ科の花に集まる。赤と黒の警戒色で、
触ってもほとんど匂いを出さない。
近くに寄っても逃げないし、見栄えがするので、
多くのカメラマンの被写体になっている。


トゲカメムシ:


2010年9月7日【トゲカメムシ】だんぶり池

このカメムシも、関東以西では山地でしか見たことがない。
自宅から10分のところで、普通に見られるとは!
(思えば遠くへ来たもんだ・・・・ちょっと古いか?)


ベニモンツノカメムシ:


2010年6月10日【ベニモンツノカメムシ】だんぶり池

私にとって、何故か、ツノカメは高貴なイメージがある。
ツノカメムシ科の仲間は、昔から、山に行かないと採れないし、
他のカメムシ類とは、ちょっと違う雰囲気を持っている。


これで、少なくとも、また来年この子たちの子孫に、
必ず出会えるはずだ。
 

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