もの凄い虫えい③ ケヤキハフクロフシ
以前、もの凄い数のハルニレハフクロフシが、
ピンクの花を咲かせているような光景を紹介した。
【天敵からのエスケープ?! ハルニレハフクロフシ】
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http://kamemusi.no-mania.com/Date/20150605/1/
この光景を、最初に見たときは、かなりのインパクトだったが、
今回は、雰囲気が似ているケヤキハフクロフシの集団!!
一体何故、こんなことが起こるのだろうか?
確かに、果実のように見えなくもないが、
よく見ると、あまり気持ちの良いものではない。
虫えい形成者は、ケヤキヒトスジワタムシというアブラムシだ。
6月下旬~7月上旬に羽化した有翅胎生虫は、
基部にある裂開口(?)から脱出して、
2次寄主のササ・タケ類の植物へ移住する。
⇒だから、今回(7月後半)の写真の大集団は、
形成者のアブラムシが、すでに脱出済みのようだ。
ササ・タケ類に移動したしたアブラムシは、
その後、10月下旬に有翅の産性虫が出現し、
再び、ケヤキの幹に集まって有性世代を産仔する。
⇒この時期には、身体に白い綿毛が付いて、
雪の降り始めと一致することが多く、
フワフワ飛ぶので、ユキムシと呼ばれる。
もちろん、テレビでも紹介されるほど有名なのは、
北海道のトドノネオオワタムシである。
見た目の雰囲気は、確かに「ハルニレフクロフシ」に似ている。
例によって「北海道の虫えい図鑑」を見ると、
虫えいの表面は、形成当初は緑色であり、
成熟すると、黄白色ないし淡黄緑色になると記載されている。
また、薄葉先生の虫こぶハンドブックの写真も、
葉っぱと同じ緑色であるが、特に色に関する記述はない。
⇒この時期には、赤褐色になっていても、
ケヤキハフクロフシで間違いないだろう【注】。
この写真に写っている数ヶ所の虫えいは、
よく見ると、まだうす黄色のものもある。
⇒もしかすると、アブラムシ脱出後に、
葉緑素が生産されなくなって、
徐々に茶褐色になるのかもしれない・・・
こんな感じで、アブラムシ類の一部は、
植物を操作し(?)、頑丈な虫えいの中で生活する。
しかし、多くのアブラムシ類は、そのまま葉裏などに、
高密度の大集団を形成することが多い。
⇒このような一部のアブラムシだけが、
何故か、虫えいを形成するというのは、
素人には、かなり興味深い現象だと思う。
虫えい(=ゴール、虫こぶ)というのは、
形成者と呼ばれる虫たち側からの何らかの刺激に対して、
植物側の細胞や組織が、異常に増殖・肥大した結果である。
その肥大した組織の中で生活する虫たちには、
シェルターの中にいるような安心感(?)があるはずだ。
元々は、植物側の防御反応だったのだろう?
それが、いつの間にか、虫たちにとっては、
外敵に対する防御手段になっているのかもしれない。
⇒不思議な形状の虫えいの写真は、
左のカテゴリー欄の「虫えい」をクリックすると、
過去記事で見ることが出来ます。
【注】ネット情報では、ケヤキヒトスジワタムシの一次寄生種は、
ケヤキやハルニレなどのニレ科植物であり、
二次寄生種は、タケやササの仲間とされる。
ということは、本種がハルニレに寄生することもあるようで、
その場合は、どんな虫えいを形成するのだろうか?
⇒もし仮に万が一、ハルニレにゴールを形成すれば、
そのゴールは、ハルニレハフクロフシと呼ばれるので、
同一名の虫えいの形成者が、以下のように、
別属のアブラムシであることも、十分考えられるので、
多少ややこしいことになりそうだ。
オカボノクロアブラムシ Tetraneura nigriabdominalis
ヒトスジワタムシ Paracolopha moriokaensis
ケヤキハフクロフシの色が、形成初期は緑色とされているが、
最初から赤くなっている場合は、もしかしたら、
アブラムシの種類が違うのかも???