タイトルにあるように、非常に珍しい写真が撮れた。
・・・とは言っても、撮影者は「私の娘(次女)」だ。
だから、このブログ始まって以来の、
「自分で撮ったものでない写真」を、
さりげなく2枚も使用することになる。
この写真が、どれほど貴重なものなのかは、
今のところ、全く分からないのだが・・・
マルクビツチハンミョウ(ツチハンミョウ科)
2015年3月31日 御前山・茨城
越冬明け直後のような雰囲気の雌雄だが、
2匹は、間違いなく交尾している。
急に暖かくなって、雄と雌がほぼ同時に、
やわらかい土(?)のようなところから這い出してきて、
すぐに交尾相手を見つけたのだろう。
こんな早春に交尾するんだ!?
撮影場所の御前山自然公園は、
茨城を訪れると、必ず立ち寄りお気に入りの場所で、
実は、撮影日の10日前に私も行ってみたのだが、
まだまだ、虫の写真が撮れるような雰囲気ではなかったのだ。
マルクビツチハンミョウ(ツチハンミョウ科)
2015年3月31日 御前山・茨城
最初に写メールで送られてきた写真では、
多分ヒメツチハンミョウだと、娘には返信したのだが・・・
後日パソコンに送ってもらった元サイズの写真を見ると、
右側に写っている雄の触角に、特徴的な膨らみが見られないので、
おそらくこの子は、マルクビツチハンミョウだろう。
特異な姿かたちのツチハンミョウの仲間は、
昔から、カンタリジンを体内に持つ有毒昆虫として知られている。
当然のこととして、捕食者に食われることはなく、
良く目立つ警戒色(金属光沢)の虫ではある。
この条件だと、ベイツ型擬態のモデルになる可能性がある。
ついでなので、ヒメツチハンミョウの写真を再掲。
↓ ↓ ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20110504/1/
ヒメツチハンミョウ雄(ツチハンミョウ科)
2010年9月27日 一の瀬園地 長野
雄なのに、まるで妊娠しているように膨らんだお腹、
全く飛ぶことが出来ないと思われる小さな翅、
ありえないところがハート型に膨らんだ触角、
全ての体の部分が同じ金属光沢のある青色、
これだけ見ても、この子は、
「かなり不思議な雰囲気」を持っている虫である。
しかも、ツチハンミョウの仲間は、
以下のような「ミラクルな生活史」なのだ。
1)まず、ツチハンミョウの雌は、4000以上の卵を産む。
この数は、通常の昆虫の産卵数ではない。
2)そして、春先に孵化した1齢幼虫は、アザミなどの花によじ登る。
自分で花の蜜を吸うためではない。
ハナバチが蜜を吸いに来るのを待つのである。
3)運良くハナバチが来ると、強靭な大あごと肢の爪で、
ハナバチの毛にしがみつき、その巣にたどり着く。
4)運悪くハナバチの雄にしがみついてしまった場合、
交尾したときに、雌の体に飛び移るという。
5)巣の中に入った1齢幼虫は、そこで、ハナバチの卵を食べる。
6)そして、脱皮した2齢幼虫はなんと、イモムシ状になり、
今度は、蜜の上に浮いて蜜を食べる。
7)その後、3齢幼虫になると、また体型が変化し、
ほとんど動かないサナギにそっくりの擬蛹になる。
8)さらに、擬蛹の中で、またイモムシ状の4齢幼虫になり(逆戻りの変態)、
まもなく通常の蛹となって、ついで写真のような成虫となる。
9)成虫は林床や草地を徘徊し、苔などを食べているといわれる。
どうして、雌成虫は、子供(幼虫)の為を思って、
直接ハナバチの巣に産卵しないのだろうか?
その方が、自分の子孫も残しやすいだろうに・・・
理由は、ただ一つしかない!!
お腹に卵を沢山持った雌成虫は、飛ぶことができないのだ。
もちろん、雄も飛べないのだが・・・
⇒飛べないから、沢山の卵を産むようになったのか?
沢山の卵を産むために、飛べなくなったのか??
蛇足:
昔、徳島に住むようになった直後の頃、もう30年以上前の話であるが、
お隣の高知県に、非常に珍しい「生き物」が2種いることを聞いた。
トサヒラズゲンセイというツチハンミョウ科の昆虫と、
あとは、ヤイロチョウというチョウではなく鳥なのだが、
いずれも、徳島にいるときには、出会うことがなかった。
結局生きてる姿をみることのなかったヒラズゲンセイ(改名?)は、
今回のマルクビツチハンミョウと同じツチハンミョウ科に属し、
クマバチの巣内で幼虫、擬蛹、蛹が発見されるので、
ほぼ同じ生活史なのだろう。
ただし、体色は真っ赤で、でっぷりとした体型でもなく、全く違う印象である。
・・・と言うことは!!
飛ぶことができるヒラズゲンセイの場合には、どうやら、
雌成虫が、直接クマバチの巣の中に卵を産み付けるようだ。
当然、産卵数は、前2種ほど多くないはず!!
さすが、「ちょっとだけ不思議な昆虫の世界」である。