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ちょっとだけ、不思議な昆虫の世界

さりげなく撮った昆虫のデジカメ写真が、整理がつかないほど沢山あります。 その中から、ちょっとだけ不思議だなぁ~と思ったものを、順不同で紹介していきます。     従来のブログのように、毎日の日記風にはなっていませんので、お好きなカテゴリーから選んでご覧ください。 写真はクリックすると大きくなります。   

ベイツ型擬態?④ ホタルガ

多分、普通の人には、あまり知られていないことだと思うが、
(⇒知ってる人は、普通じゃない!)
ホタルの成虫は、体に物理的な刺激があると、
体の周縁の定位置にある分泌線から嫌な臭いや体波を放出する。

この体液を放出する行動(Reflex Bleeding)は、
鳥などの捕食者に、防衛効果があることが報告されている。

したがって、ホタルがベイツ型擬態のモデルとなる可能性が高い。

 


オバボタル(ホタル科) ⇒モデル
 
2010年6月18日 だんぶり池・青森

残念ながら、ゲンジボタルやヘイケボタルを
昼間撮ったことはない。
もちろん、夜もないが・・・・

このオバボタルは、他のホタルと同じような体色である。
しかし、昼行性でほとんど発光しないとされているので、
どちらかというと、この子の方がモデルになった可能性が高い。

幼虫は森林の土壌中で、小型のミミズを捕食するらしい。

 

 

ホタルガ(マダラガ科) ⇒擬態者?
 
2010年7月11日 筑波山・茨城

名前の由来は、全身が黒くて頭部だけが
赤い体色が、ホタルに似ているからだろう。

これは、ホタルへのベイツ型擬態とも取れる。

しかし、マダラガ類にも悪臭を持つものがあるので、
ミュラー型擬態の範疇に入る可能性もある。

この辺が不思議なところで、やはり、
捕食者(鳥?)に聞いてみないと・・・・

 


多分クビアカクロハナカミキリ(カミキリムシ科) ⇒擬態者
 
2010年6月10日 弘前市・青森

黒色で前胸背板だけ赤いカミキリ。
クビアカクロハナカミキリかクロハナカミキリのどちらかだと思う。

いずれにしても、ホタルに似ており、
これは、ベイツ型擬態の範疇に入ると思う。


⇒つい最近のことであるが、擬態に詳しいNabita氏からメールが届きました。
  写真の虫は、ジョウカイではなく、(クビアカ)クロハナカミキリではないかと!!!
  その中で、人間の目を欺くほどの完璧な擬態ではないかと、付け加えられていました。
  この場をお借りして、お礼申し上げます。

  写真のタイトルと、本文を訂正させていただきました。


  
  
  
 
 
 



 
 
 

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ベイツ型擬態?③ トラカミキリ類

日本国内で見られるベイツ型擬態で、いちばん有名なのが、
ハチに擬態するトラカミキリの仲間であろう。

この標識的擬態は、比較的分かりやすい。

 

キイロスズメバチ(スズメバチ科) ⇒モデル
 
2010年8月25日 だんぶり池・青森

ハチの模様は、基本的に黒と黄色の縞模様で、
これは、人間世界でも道路や工事現場などで、
「危険」を現す視覚的情報として、
よく使われる典型的な「警戒色」である。

だんぶり池の林道でも、縦横無尽に獲物を探して、
飛び回っているのを良く見かける。

まるで、「外敵なんかいるか!!」という雰囲気であるが、
本当に鳥はスズメバチ類を餌としないのだろうか。

⇒当初は、キボシアシナガバチとしていましたが、Nabita氏より、
  キイロスズメバチであるとご連絡いただきましたので、
  種名を訂正しました。

 


ヤエヤマホソバネカミキリ(カミキリムシ科) ⇒擬態者
2003年4月6日 与那国島・沖縄

4月上旬でも、真夏のように暑かった与那国島で、
木陰で昼飯を食っているときに飛んできた。

やっぱり最初は、カミキリとは思わなかった。

幼虫時代の食べ物が、リュウキュウアカメガシワとのことで、
もしかして、有毒成分が体液に含まれている可能性があるが・・・

  


キンケトラカミキリ(カミキリムシ科) ⇒擬態者
2010年6月5日 白岩森林公園・青森

 こちらも、淡い黄色をしたカミキリで、
容姿だけでなく、動きもハチに似ている。

トラカミキリの仲間は、比較的良く見かけるが、
それでもアシナガバチの方が、個体数は多い気がする。

おそらく、ベイツ型擬態が、正常に機能しているのだと思う。
 

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ベイツ型擬態?② セグロベニトゲアシガ

日本国内で見られるベイツ型擬態の
もうひとつの例を示そう。

実は、モデルとなった種があまり有名でない場合には、
少なくとも、人間に与えるインパクトは、ほとんんどない。

 
カクムネベニボタル(ベニボタル科) ⇒モデル
 
2010年5月23日 梵珠山・青森

鮮やかな赤と黒の典型的な警戒色をしており、
不味成分を体内に持っているので、
捕食者が食べても、すぐに吐き出す。

これらの事実から、ベニボタル類は、
多くのベイツ型擬態者のモデルになっている。

 


セグロベニトゲアシガ(マルハキバガ科) ⇒擬態者
2010年7月5日 室蘭高原・北海道

実に奇妙な格好で静止している。
櫛の歯のような触角と、赤と黒の胴体をもっている。

しかし、この子の擬態はそれだけではない。

何故か、同じようなイメージの後脚(?)を、
まるで触角のような微妙な位置に静止させて、
ギンギラキンにさりげなくベニボタルのように見せている。

この子が、蛾であることは、普通の人は気付かないだろう。
もちろん鳥のような捕食者も・・・・

 


アカヘリサシガメ(サシガメ科) ⇒???
 
2010年6月18日 だんぶり池・青森

問題は、この子である。
肉食のサシガメであり、赤と黒の不気味なツートンカラー!

しかし、この色彩パターンが、
ベニボタルに擬態しているのかどうかは、
良く考えると、かなり微妙である。

むしろ、セグロベニトゲアシガの色彩パターンにも似ている。

アカヘリサシガメがいくら獰猛な肉食であっても、
鳥などの捕食者に対しての防御手段は何もないと思われる。
だから、ミューラー型擬態の範疇には、入らないはずである。

もちろん、当初は有毒物質をもっていたが、
今は、ベイツ型擬態になっている可能性もないことはない。

このように、比較的単純なベイツ型擬態の場合でさえ、
モデルと擬態者の関係は微妙であり、
その防御効果についても、かなり慎重に考えざるを得ない。

ミューラー型擬態の、日本での例については、
別の機会に紹介する予定・・・・・・・??

 

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ベイツ型擬態?① アゲハモドキ

このブログの「記念すべき第1回目の記事」で、
日本で見られるベイツ型擬態の好例として、
ハチに擬態した蛾セスジスカシバを紹介した。

よろしければ、もう一度、セスジスカシバ君の見事な擬態をどうぞ!!
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Entry/1/

彼の場合は、誰が見ても、どう見ても、ハチのような蛾であった。


しかしながら、ベイツ型擬態とは言っても、
中には、かなり微妙なものもある

今回は、日本で見られるベイツ型擬態の例を、
数回に分けて、紹介したい。


まずは、下の2枚の写真をご覧ください。


ジャコウアゲハ(アゲハチョウ科) ⇒モデル
 
2003年4月5日 与那国島・沖縄

ジャコウアゲハの食草であるウマノスズクサ類には、
有毒物質(アルカロイド)が含まれている。
幼虫時代に体内に摂取した成分は、
成虫になっても体内に蓄積されている。

鳥などの捕食者は、一度ジャコウアゲハ成虫を食べると、
体液に含まれる有毒成分により中毒症状をおこす。
多くの捕食者は、一度経験すると、以後、
黒地に赤の斑紋のあるチョウを識別し、攻撃をしなくなる。

 


アゲハモドキ(アゲハモドキガ科) ⇒擬態者
 
2008年9月1日 白石市・宮城

写真を見る限り、ジャコウアゲハに良く似ている。
和名からして、アゲハに擬態していると考えられていた。

ところが、この子は、写真ではわかりにくいが、
ジャコウアゲハよりだいぶ小さい。

しかも、南方系のジャコウアゲハが生息していない
北海道・東北地方にも、普通にみられる。

このふたつの理由から、
アゲハモドキがジャコウアゲハに擬態する効果については、
疑問を持つ人もいる。

一方で、有力な捕食者が渡り鳥である場合を考えると、
南方でジャコウアゲハの嫌な経験を覚えていて、
北国で、その経験を、ふと思い出すことも、
全くあり得ない話ではないだろう。

これが「ちょっとだけ不思議な昆虫の世界」なのだ。


 

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ハチに擬態する蛾 ホシホウジャクの不思議

ホシホウジャクという蛾がいる。
市街地でも、よく見かけるスズメガの仲間だ。

昨年12月10日に、「不思議な空中吸蜜」で、
紹介した「ハチのような蛾」である。

ちなみに、ホシホウジャクを漢字で書くと星蜂雀となるらしい。

ハチに似るということは、ベイツ型擬態の典型である。


しかし、それだけではない。

このホシホウジャク君の擬態は、
我々の想像の少し上を行く。

 


ホシホウジャク(スズメガ科)
 
2010年11月10日 新木場公園

まるで、ハチのように素早く、
キュインキュインキュイン という感じで、
アベリア(多分?)の花から花へと、蜜を吸い続ける。

 


ホシホウジャク(スズメガ科)
 
2010年11月10日 新木場公園

ハチと違うなと感じるのは、
長く丸まった口吻が見えたときである。

 


ホシホウジャク(スズメガ科)
 
2010年11月10日 新木場公園

ホシホウジャクは、ハチと違って、
このように花から少し離れた位置で、
飛びながら蜜を吸うことができる。

 


ホシホウジャク(スズメガ科)
 
2010年11月14日 中郷SA

この写真は、やや興味深いショットである。

前翅に隠された後翅表面のオレンジ色の模様が見える。

この非常に目立つ模様は、飛び立つ寸前に突然出現するので、
先に目玉模様の進化【1~4】で紹介したように、
外敵の攻撃を、ほんの一瞬ためらわせることができる。

 


ホシホウジャク(スズメガ科)
 
2010年11月14日 中郷SA

通常、ホシホウジャクの成虫は、
気の幹などに、翅を閉じて静止している。

このときは、前翅にある目立たない模様のおかげで、
枯れ葉のように見えるはずである。

これは、典型的な隠蔽的擬態のパターンである。


そして、飛び立つ寸前には、
後翅の表面のオレンジ色の鮮やかな模様を見せる。

この突然見せるという行動は、ビックリ効果を持ち、
捕食者の攻撃を、一瞬だけ躊躇させることができる。


実際に、一度だけホシホウジャクが飛び立つ瞬間を見て、
ちょっと驚いたことがある。
枯れ葉がちょっと動いたのかと思ったが、
はっきりオレンジ色が確認できた。

そして、飛び去っていく姿は、ハチのようであった。

 

このように、ホシホウジャク成虫は、

①気の幹などに静止しているときの枯れ葉のような隠蔽的擬態と、
②飛び立つ寸前のオレンジ色の突然のビックリ効果と、
③蜜を求めて飛びまわっているときのハチのような標識的擬態

三つの効果を合わせ持つ、なんとも贅沢な、そして複雑な色彩なのである。
 

ちょっとだけ、不思議なホシホウジャク君に、
さりげなく拍手をお願いします。
 ↓ ↓

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