忍者ブログ

ちょっとだけ、不思議な昆虫の世界

さりげなく撮った昆虫のデジカメ写真が、整理がつかないほど沢山あります。 その中から、ちょっとだけ不思議だなぁ~と思ったものを、順不同で紹介していきます。     従来のブログのように、毎日の日記風にはなっていませんので、お好きなカテゴリーから選んでご覧ください。 写真はクリックすると大きくなります。   

君は虫か? ベッコウハゴロモ幼虫

だんぶり池の林道を、カメラ片手に、ブラブラ歩いていると、
「おやっ? 君は虫か?」と思うものに出会うことがある。


水平に開いた葉っぱの上には、色々なものが落ちている。

そのほとんどが、糞、塵、種、花、枯れ枝、枯れ葉などであるが、
みんな、緑色の葉の上では、良く目立つ。


注意深く見ると、それらのものによく似た虫がさりげなくいる。

以前紹介した、鳥の糞に擬態する虫たちや、
↓  ↓  ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20110624/1/


塵を身体に付着させているクサカゲロウの幼虫である。
↓  ↓  ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20110107/1/




そして、今回紹介する虫も、ちょっとだけ衝撃的である。

まずは、下の写真をご覧ください。





2011年8月2日 だんぶり池・青森

最初は、風に乗って分散するタンポポの種子のように見えたが、
これは、何だか様子がおかしい。

微妙に動いているぞ!!!




 
2011年8月2日 だんぶり池・青森

ちょっと見る角度を変えてみると、
フワフワの白い毛の中心部に脚がありそう・・・・




 
2011年8月2日 だんぶり池・青森

どうやら、白い毛は、虫の尻尾の部分から出ていて、
見事に花が開いているように見える。

しかも、その長い毛の束を自由に動かすことができるようで、
自分の体を覆い隠したり、すぼめたりする。




ベッコウハゴロモ幼虫(ハゴロモ科)
 
2011年8月2日 だんぶり池・青森

動くスピードは、意外に早い!

これは、前から一度見たいと思っていた
おそらくベッコウハゴロモの幼虫である。




ベッコウハゴロモ幼虫(ハゴロモ科)
 
2011年8月2日 だんぶり池・青森

もっと近づいてみると、
確かに、カメムシ目の昆虫のような顔をしている。

白い毛のようなものは、自分で分泌したロウ状の物質で、
同じ仲間のカイガラムシなどでも見られるものだろう。




ベッコウハゴロモ成虫(ハゴロモ科)

2010年8月12日 だんぶり池・青森

これが、成虫の写真であるが、やはり、やや奇妙な格好である。

始めてみた人は、「この子は何組?」と驚く・・・・


拍手[53回]

PR

保護色と警戒色

野外で、虫の写真を撮ろうとする人は、大抵の場合、
林道などを、普通に立って歩きながら、
自分の目で見える範囲にいるターゲット(虫)を探す。

そのときに、できるかぎり沢山の虫を、いかに効率良く発見できるかが、
カメラマンの腕の見せ所のひとつでもあると思う。

この「効率良く」というのが、実は、かなり重要であり、
特に被食者の体色の違い(保護色か警戒色か)が、
捕食者から発見されやすさに関する興味深い問題を含んでいる。



そんな訳で、やや遠目で撮った以下の写真をご覧ください。

虫たちの目立ちやすい「警戒色」と、
目立ちにくい「保護色」の見え方の違いが、はっきり分かります。



カノコガ(カノコガ科)

2011年7月27日 だんぶり池・青森

このように目立つ虫ならば、かなり遠くからでも発見できる。
以前に何度も紹介しているが、
黄色と黒の警戒色をした昼間飛ぶ蛾である。




ヨツスジヒメシンクイ(ハマキガ科)

2010年8月7日 だんぶり池・青森

警戒色とは言えない微妙な青色であるが、
緑色の葉っぱの上では、意外に目立つので、
これも遠くからでも見つけられそうである。




アトボシハムシ(ハムシ科)

2011年7月24日 だんぶり池・青森

体長5mm程度の小さな虫であるが、
これでも、緑色の葉っぱにとまっていれば、すんなり見つかる。




キリギリスの仲間の幼虫

2011年6月26日 白岩森林公園・青森

上の写真のハムシよりは、ずっと大きな体であるが、
普通に歩いているとまず見つけることは出来ない。

体全体が緑一色で、完全に背景の葉っぱの中に溶け込んでいる。




チャマダラエダシャク(シャクガ科)

2010年8月23日 だんぶり池・青森

葉っぱの上でなくても、条件は同じである。

この蛾は、かなりミラクルな止まり方をしているが、
立ち止まって、探さないと見つからないだろう。




そして、最後は、よく見かける写真であるが、
どこに虫がいるか、是非クリック拡大して、確認してみてください。


ニイニイゼミ(セミ科)

2011年8月5日 白岩森林公園・青森

これを見つけたときには、自分でもややビックリ。
多分、この写真でも、じっくり探さないと見つからないと思う。

⇒画面の中央部に上を向いて止まっています。






【蛇足】

当然のことであるが、虫たちが目立つか目立たないかは、
静止する背景によるだろう。

昼間は見つけにくい(上の写真の)ニイニイゼミが、
明け方に、緑色の葉っぱの上に止まっていれば、かなり良く目立つ。

保護色と呼ばれる緑色の虫が、木の幹や枯れた葉っぱの上にいれば、
逆に、良く目立ってしまうだろう。

イギリスの工業黒化で有名なオオシモフリエダシャクの実験では、
自分の体色に合った背景を選んでいるという実験結果もある。

私の記憶では、かなり微妙な差だったような記憶があるが・・・・

拍手[38回]


鳥のフン擬態

いつかは紹介しなければと思っていた「鳥のフン擬態」である。

当然、これから紹介する写真は、
すべてトリのウンコ(のよう)である。

しかし、これがなかなか興味深い!!
何故、虫は鳥のフンに擬態するのか?

昆虫類が、鳥の糞に擬態するのは、
以前紹介した「標識的擬態」なのか「隠蔽的擬態」なのか、
議論の分かれるところである。

↓  ↓  ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20110114/1/ 


カメラ片手に、林道を歩いていると、
意外なほど頻繁に、鳥の糞やそれに良く似たものに出会う。
 

まずは、以下の写真をご覧ください。


蛾の幼虫(種不明)
 
2010年10月8日 だんぶり池・青森

実は、この写真を撮った日は、小雨模様で、
弘前では、10月になると気温がぐんと下がり、
肌寒さを感じるくらいであった。

最初は、本当に鳥のフンだと思った。
普通はこんな恰好で静止していることはないだろう。

すぐ近くには、越冬前のアマガエルが沢山いたが、
この幼虫は、全く食べられる気配がなかった。

実物の鳥のフンの写真も載せれば良いのだが・・・
お食事中の人もいるかも知れない。

まあ、どっちにしても、こんな感じである。

 

オジロアシナガゾウムシ(ゾウムシ科)
 
2010年8月11日 小岩井農場・岩手

こちらは、ゾウムシの仲間である。

静止している状態で、全ての足は体の下になっている。
こうすれば、自分が鳥のフンに似ることが、
分かっているのだろうか?

一番の問題は、この姿が、
目立つのか? 
目立たないのか? 
である。

 

 

蛾の幼虫(種不明)
 
2010年8月12日 だんぶり池・青森

この幼虫も、どう見ても鳥のフンである。

いつも、こんな感じで静止しているのだろうか?
それにしても、リアルである。

いろんな生物を見たときに、「これは何かに似ている」と、
ふと感じてしまう例は数多い。

人間が考える擬態とは、最初は、ここから始まったのだろう。

しかし、この問題が、誰でも簡単に想像できるので、
しかも、面白くて、取っつきやすいために、
安易な判断がなされている場合も多い。

まあ、もともと擬態とは、そういうものであるのだが・・・

 

 

クロヒラタヨコバイ(ヨコバイ科)
 
2011年5月31日 だんぶり池・青森

この子も、上の種類とは、イメージが違うが、
ぼんやり歩いていると、小さな鳥のフンのように見える。

ただ、本当にそれが擬態なのかどうかについては、
しっかりした観察(?)が必要である。

この点は、保護色や警戒色などについても同様であり、
これまでに、トリノフンダマシというクモの例を待つまでもなく、
後に誤りであったと判断された説は、さりげなく多い。

 

 

ユウマダラエダシャク成虫(シャクガ科)
 
2010年8月1日 だんぶり池・青森

これまで、やや否定的とも思えるコメントが続いたが、
この子の場合には、はっきりと、意見が分かれると思う。

確かに、このような状態に見える水鳥(?)のフンもある。

肯定的に考えるひとつの根拠は、この子が昼間活動する蛾で、
しかもこのように、葉っぱの上に目立つように、
さりげなく静止していることが多いからだろう。

 


成虫になると、キンキラキンのアカスジキンカメムシの幼虫も、
何を隠そう、見方によっては、鳥のフンに見えるのである。

アカスジキンカメムシ幼虫(キンカメムシ科)
2011年5月27日 白岩森林公園・青森

この子も、葉っぱの上に、
比較的良く目立つように静止している。

こうなると、白と黒の模様の虫で、
比較的目立つように静止しているものは、
全て鳥のフンに見えると言っても過言ではない。

そんな馬鹿な・・・・・

 

さりげなく、最初の疑問に戻ろう!

鳥のフンに似た外見を持つ虫たちは、
目立つような「標識的擬態」なのか、
目立たなくするような「隠蔽的擬態」なのか、
一体どっちなんだろうか?


地面に並行に広がる大きな葉っぱの上には、
枯れ枝や花の残骸など、色々なものが落ちている。

確かに、その中に紛れ込んでいると、
鳥のフンのような虫は、隠蔽的擬態であるような気もする。

しかし一方で、少なくとも、虫を探しながら歩く人間には、
葉っぱの上の鳥のフンは、よく目立つ。
同じく、虫を探しながら飛ぶ(歩く)鳥や動物にも、
よく目立つのだろうが、おそらく彼らの関心を引くことはないだろう。


つまり、捕食者が必死で探す虫(餌)のリストから、
食べられない鳥のフンとして、とりあえず外されることは、
かなり大きい防御手段になっていると言えるのではないだろうか。

明らかに食べられないものとして、よく目立つ方が、
むしろ目立たないが、食べられるもの(虫)よりも、
生存上、有利なのかもしれない。

だから、私は「鳥のフン擬態」は、
標識的擬態に分類した方が良さそうな気がする。

 

 

最後に、下の2枚の写真をご覧ください。


クワコ幼虫(カイコガ科)
 
2011年6月23日 だんぶり池・青森

言ってみれば、野生のカイコであるが・・・・
 


これは何だ!!
 
2011年6月1日 白岩森林公園・青森

お食事中の方、すいません!?   ⇒(そんな人はいない・・・)
 

 

拍手[50回]


ミューラー型? ベイツ型? 君の擬態はどっちだ?

何らかの防御手段を持っているもの同士がよく似た形態・色彩になる現象を、
その発見者の名前をとって、ミューラー型擬態と呼ぶ。

有毒昆虫は、独自に別々の警戒色を持っているよりも、
同じような形態・色彩であった方が、捕食者の学習の回数が増えて、
より効率的に、攻撃を避けることができるからである。

捕食者に覚えられる形態・色彩パターンの少ない方が、
被食者にとっては、生き残る上では有利であり、
必然的に、似たような色や形の種類が多くなるのだろう。

これ、本当だろうか?


その理屈から言うと、ミューラー型擬態の輪(?)は、
そんなに多くの種類がある訳ではない・・・はずである。

それでは、日本で見られるミューラー型擬態の例は、
何グループくらいあるのだろうか?

まず真っ先に思いつくのが、
多くのハチの仲間に見られるような「黄色と黒の縞模様」である。

でも、この場合には、近縁種同士が単に良く似ている現象でもあり、
あまり適切な例とは言えないのかもしれない。

良く知られているのは、昨年11月14日に紹介した赤と黒の模様のグループである。
↓  ↓  ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20101114/1/

その他に、真っ赤な胴体と黒い頭のグループや、
その逆のパターンで、黒い胴体に赤い頭のグループなどが思いつくが、
日本国内では、ミューラー型擬態の種類としては、
やはりそんなに多くはないと思う。


とりあえず、手持ちの写真の中で、
同じような形態・色彩を持つグループを見てみよう。
あまり鮮明に撮れているものはないが、以下の6枚の写真をご覧ください。

なんとなく見ていると、
おそらく皆同じ種類に見えなくもない・・・こともないか。

これぞ、ミューラー型擬態の典型的グループのようであるが・・・(?)

 

カクムネベニボタル(ベニボタル科)
 
2010年5月23日 梵珠山・青森

早春の明るい開けた林道で、よく見かける。
カメラを近づけても、逃げないことが多いので、
多分「自分は、不味くて食べられないぞ!!」と、
言っているようだ。

ベニボタルの仲間は、甲虫とはいえ、体は比較的軟らかく、
外敵に襲われたときに、体液が外に出やすい。

実際に捕食者が食べなかったとの観察例もある。

 

ヘリグロベニカミキリ(カミキリムシ科)
 
2010年6月6日 弘前市・青森

個体数は、そんなに多くないように思う。
幼虫時代には、朽木を食べており、有毒物質を餌から摂取し、
体内に蓄積しているとは思えない。

 

アカハネムシ(アカハネムシ科)
 
2010年5月30日 白神山地・青森

胸部の形状で区別しやすいが、
ベニボタルの仲間と間違えやすいほど良く似ている。

おそらく、本種も有毒であるとの知見はない。


 

ムナビロアカハネムシ(アカハネムシ科)
 
2010年6月13日 白神山地・青森

前種と同じ仲間ではあるが、あまり個体数は多くないように思う。

 


ハネビロアカコメツキ?(コメツキムシ科)
 
2011年5月25日 だんぶり・青森

この子も、どちらかと言うと珍品だろう。

なお、種名不詳の甲虫類は、例によって、
当ブログの唯一のリンク先の記野直人氏にお願いしたが、
種名は確定ではない。

この他に、同じ色彩のベニコメツキの仲間がいるが、
これも有毒種ではない可能性が高い。

 

ベニヒラタムシ(ヒラタムシ科)
 
2005年11月12日 長沢ダム・高知

名前から想像できるように、かなり扁平な虫であり。
樹皮の隙間に難なく入り込むことができるが、
ダムの上では、このように、なすすべもない。
おそらく、本種も有毒であるとの知見はない。

 


以上のように、この中で、間違いなく有毒なのは、
ベニボタルだけである。

したがって、この色彩・形態のグループ(胴赤・胸黒)は、
ミューラー型擬態とは言えないだろう。

個体数のバランスが問題になるだろうが、基本的には、
数種のベニボタル類をモデルとするベイツ型擬態の範疇と思われる。

しかしながら、何らかの理由で、捕食者が本能的に、
赤と黒の昆虫を食わない可能性も十分あるので、
さらなる検証が必要であると思う。

さすが、「ちょっとだけ不思議な昆虫の世界」である。
 

拍手[45回]


ベイツ型擬態?⑤ メスグロヒョウモン

ブログ開設のきっかけの一つでもあったメスグロヒョウモン。
昨年9月15日に、さりげなく紹介しています。
↓ ↓ ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20100915/1/

この非常にインパクトの高い「メスグロヒョウモン」と言う名は、
雌が黒いヒョウモンチョウだから付いたのは間違いないだろう。

一般に、雄と雌の体色が大きく異なるチョウは、
雌が毒を持つ他のチョウに擬態していることがほとんどである。

例えば、名前が似ているので、ちょっとややこしくなるが、
雌だけが毒チョウのカバマダラに擬態する「ツマグロヒョウモン」という
南方系のチョウがいる。もちろん雄は普通のヒョウモチョウである。

この場合は、誰が見てもベイツ型擬態(の好例)である。


しかし、今回の「メスグロヒョウモン」は、ちょっとだけ不思議である。

モデルとなった(?)イチモンジチョウ類が、
捕食者から避けられているという観察例は、今のところないからである!!!

 

まずは、モデルとなった(?)2種のチョウからご覧ください。

イチモンジチョウ(タテハチョウ科) ⇒モデル(?)
 
2010年6月29日 十勝・北海道

どう考えても、イチモンジチョウ類が、毒チョウだとは思えない。

幼虫時代の食草は、スイカズラ、ヒョウタンボク、ハコネウツギなどで、
有毒植物ではないと思う。
ただし幼虫は、かなり派手な格好をしているが・・・

 


オオイチモンジ(タテハチョウ科) ⇒モデル(??)
 
2010年6月29日 十勝・北海道

北海道と中部山岳の限られた地域にのみ生息する。
その美しさと風格は稀少価値とも相まって愛好家の憧れであり、
この事情から考えて、メスグロヒョウモンの雌よりも、
個体数が多いとは思えない「マニア垂涎の的」のチョウでもある。

ちなみに、幼虫の食草は、ドロヤナギやヤマナラシで、
いずれも有毒植物ではないと思う。

 
 

メスグロヒョウモン雌(タテハチョウ科) ⇒擬態者(?) 
 
2010年9月4日 だんぶり池・青森

何気なく見ていると、イチモンジチョウと必ず間違える!

 

メスグロヒョウモン雄(タテハチョウ科) ⇒?
 
2010年9月4日 だんぶり池・青森

こちらは、同じ日に同じ場所で撮った雄で、普通のヒョウモンチョウである。

しかし、これだけ雌と雄の模様が異なるのは、何らか意味がある筈だと思う。

メスグロヒョウモンの雌が、ベイツ擬態であるならば、
現時点で、そのモデルになっているチョウは発見されていない。

もし仮にモデルとなったチョウが発見されたとすると、
当然、イチモンジチョウもその種に擬態していることになるだろう。

もしかしたら、人間の考えが及ばない、何か別の要因が働いているのかもしれない。

 

拍手[45回]