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ちょっとだけ、不思議な昆虫の世界

さりげなく撮った昆虫のデジカメ写真が、整理がつかないほど沢山あります。 その中から、ちょっとだけ不思議だなぁ~と思ったものを、順不同で紹介していきます。     従来のブログのように、毎日の日記風にはなっていませんので、お好きなカテゴリーから選んでご覧ください。 写真はクリックすると大きくなります。   

ちょっとだけ衝撃 ホソバセダカモクメ幼虫

今回は、半端でなく不思議な/とても不思議な幼虫である。

まずは、下の写真をご覧ください。

 

ホソバセダカモクメ幼虫(ヤガ科)

2009年9月9日 岩木山山麓・青森

ちょっと見ると、南方系の鮮やかなチョウの幼虫のようだ。
ここ数年、こんな鮮やかな模様の幼虫は、他に見たことない。

一瞬アサギマダラの幼虫かとも思った。

しかし、撮影場所は、青森県の岩木山神社近くの駐車場。
食べているのは、キク科の多分アキノノゲシ・・・


家に帰って、調べるまで、全く名前が分からなかった。


結構な時間を使って、ようやく分かった。

ホソバセダカモクメという蛾の幼虫だった。

まさか、ハイイロセダカモクメの近縁種だとは!!

 


念のため、私が最初に間違えてしまった
アサギマダラ幼虫の写真をご覧ください。


カバマダラの仲間の幼虫(マダラチョウ科)
 
2004年1月11日 石垣島・沖縄

こちらは、チョウの幼虫であり、
食べているのは、有毒のガガイモ科の植物の葉。

⇒当初、アサギマダラ幼虫としていましたが、Nabita氏から、
 カバマダラかスジグロカバマダラの幼虫ではないか?
 とのご連絡をいただきました。
 今回、カバマダラの仲間に、種名タイトルを訂正しました。


 

ホソバセダカモクメとは、全く別の種類なのに、
雰囲気が、とても良く似ていると思う。


ん!! 
  
全然違う種が、良く似ている???

この関係は、ひょっとして・・・・


もしかしたら、アサギマダラ幼虫をモデルにした
ベイツ型擬態なのか?

 (⇒ホソバセダカモクメ幼虫の食草アキノノゲシには、
   おそらく、有毒成分が含まれていないので、
   ミューラー型擬態ではないだろう!)

両種が、同じ環境に住むことはあるのだろうか?

 

 


そして、3枚目の写真は、ホソバセダカモクメと近縁の
ハイイロセダカモクメ幼虫である。

当ブログでしばしば紹介した常連であるが、
もう一度ご覧ください。


ハイイロセダカモクメ幼虫(ヤガ科)
 
2010年10月12日 弘前市・青森

ちょっと見た限り、とても近縁種とは思えない。


一方は、
良く目立つ典型的な警戒色の幼虫

そして、もう一方は、

ヨモギの花穂そっくりの全く目立たない幼虫


正反対の性質を持っている2種なのである。

(⇒写真はまだ撮れていないが、この2種の成虫は、
  灰色の目立たない蛾であり、幼虫がこれだけ違うのに、
  非常に良く良く似ている)


気になって、学名を調べてみた。

ちょっとだけ専門的になるが、確かに両種は、同じ属である。

 ◎ホソバセダカモクメ Cucullia raterna BUTLER, 1878

 ◎ハイイロセダカモクメ Cucullia maculosa STAUDINGER, 1888

おそらく、成虫の形態で分類した結果だと思うが、
幼虫の形態まで考慮して記載しているかは、不明である。

 

しかし、もう一度、写真を良く見ると、
半端ではない衝撃的な事実に気付いた。

ハイイロセダカモクメ幼虫とホソバセダカモクメ幼虫、
基本的な模様がそっくりなのだ!!!


この両種が何かの引き金で、種分化した時代、
当然、同じ模様だったはずである。

それが、それぞれの環境に適応していった結果、

一方は、有毒の他種に似せて、よく目立つように、
一方は、周囲の環境に似せて、全く目立たぬように、

何と、正反対の方向に進化してきたのだ。


BUTLERさん、STUDINGERさん、申し訳ありませんでした。
やっぱり、同属だったのですね。

 

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擬態者とモデル どこまで似せれば良いの?

獰猛な(?)ハチに擬態することにより、
捕食者をだまして、身を守る虫の種類は、予想外に多い。

ただ、過去にこのブログで、何度も紹介したように、
ハチに似ている程度(擬態の完成度?)は、千差万別である。

http://kamemusi.no-mania.com/Date/20100909/1/

http://kamemusi.no-mania.com/Date/20110324/1/

http://kamemusi.no-mania.com/Date/20110527/1/

http://kamemusi.no-mania.com/Date/20111222/1/


一体どのくらいハチに似せることができれば、
効率的に相手(捕食者)をだませるのだろうか?

 


まずは、下の写真をご覧ください。

右側が蛾の仲間のセスジスカシバ(擬態者)で、
左がそのモデルとなったキイロスズメバチである。

オリジナルページはこちら
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20110926/1/


ほぼ同じ角度で撮った写真を、貼り合わせたので、
よく見かける博物館の標本や、擬態関連の本の写真とは違って、
自然状態で、どの程度似ているかが、はっきり分かると思う。

これならば、人間も含めて、多くの外敵は、
このハチそっくりな蛾を、攻撃することはないだろう・・・・(多分)。

しかし、セスジスカシバは、例外中の例外であり、
むしろ「やりすぎだよ!!」というレベルに達している。


実際には、これほど似ていない組み合わせがほとんどであり、
それでも、十分標識的擬態として機能している・・・・(多分)。

実際には、捕食者の種類や空腹度、過去の経験などの他に
周囲の条件(明るさ)や、モデルと擬態者の個体数の差など、
複雑な要因が絡み合うことになるだろうが・・・・(多分)。

 

目立たなくするタイプの隠蔽的擬態(Mimesis)の場合には、
あまり木の葉や枝に似てなくても、
基本的には、目立たなくする方に向かっているので、
確率的に、何とか生き残ることが出来そうである。

しかし、目立たせる標識的擬態(Mimicry)の場合には、
中途半端に目立つようになるので、捕食者に発見されやすくなり、
完成度が高くないと、むしろ逆効果になってしまう。

何故、不完全な擬態者でも、生き残っているのだろうか?

考えられる一つの理由は、捕食者にとってみれば、
人間が毒キノコを、見分けるのと同じように(?)、
それを食べるか食べないかは、命がけの選択なので、
ちょっとでも怪しいと思えば、手を出さないのかもしれない。

だから、ハチ擬態者は、ただ何となく漠然と、
ハチ(の仲間)に似せているだけで、十分なのである。

 


ここで、もう一枚の写真をご覧ください。

以前、隠蔽的擬態の例で、ヨモギの花穂に擬態する
ハイイロセダカモクメという蛾の幼虫を、
ミラクル擬態として紹介した。

http://kamemusi.no-mania.com/Date/20101105/1/

http://kamemusi.no-mania.com/Date/20111007/1/



標識的擬態の場合でも、「そこまで似せなくても!」という擬態はある。

これも、ミラクル擬態の範疇に入るだろう。


左側がジョウザンナガハナアブ(擬態者)で、
右がそのモデルとなったキイロスズメバチである。

⇒当初は、キボシアシナガバチとしていましたが、Nabita氏より、
  キイロスズメバチであるとご連絡いただきましたので、
  種名を訂正しました。

 

オリジナルページはこちら
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20110928/1/ 


もともと、アブとハチは姿かたちが何となく似ているが、
これほど似ている組み合わせは珍しい。

白状すると、私は、パソコンで写真を仮保存するときに、
このアブを、ハチのホルダーに入れていたのである。

 ⇒特に言い訳をするわけではないが、
  それほど、擬態の完成度が高く、
  スズメバチそっくりなのである。

このように、ただ漠然とハチに似ているだけの他のアブと違って、
ジョウザンナガハナアブだけが、キイロスズメバチに、
パーフェクトに擬態しているのである。


もちろん、ジョウザンナガハナアブは、
これですべての外敵から身を守れる訳ではない。

ミラクル擬態の好例、ハイイロセダカモクメ幼虫は、
おそらく完璧に野鳥類の攻撃を避けることが出来るだろうが、
近すぎる捕食者(?)クチブトカメムシに対しては、
なすすべもなく、いとも簡単に、攻撃されてしまったように・・・

http://kamemusi.no-mania.com/Date/20111018/1/


それでは、ある特定のモデルに標準を合わせ、
完成度の高いミラクル擬態をしなければならなかった理由は、
一体どこにあったのだろうか?

ますます、ちょっとだけ不思議な昆虫の世界である。

 

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ハイイロセダカモクメ幼虫 衝撃の瞬間

ハイイロセダカモクメは、蛹で越冬する。

蛹で越冬する昆虫類の多くは、春に成虫になって、
幼虫が新緑の柔らかい葉っぱを食べて育つ。

ところが、ハイイロセダカモクメは、
そのような食べ物が豊富な時期も、蛹のままで過ごして、
何故か、夏の終わりに成虫になるのである。

もちろん、この時期には、新鮮な葉っぱはない。
幼虫は、周囲に沢山ある柔らかいヨモギの花穂を餌とするのだ。


しかし、ひとつ大きな問題が出てくる。

ヨモギの花穂は、葉っぱと違って、隠れるところが少ない。
しかも、花穂を食べてしまうと、ますます、隠れるところがなくなってしまう。


そんな中で、彼らは鳥に捕食されないように、
あっと驚くミラクル擬態を完成させたのだ。
何と、彼らは、食べてなくなったもの(花穂)そっくりなのである。

その擬態の完成度たるや、少なくとも我々人間が、
必死になってヨモギの花穂を探さなければ、
決して見つけることができないほどの「ミラクル擬態」と言える。

そして、これだけの努力をしたのだから、
鳥類の餌となる機会は、かなり減ったに違いない。

これで、一件落着である・・・・・・

 

しかし、自然界の掟は、ときには、かなり残酷である。


・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・


前回予告したように、衝撃の瞬間を紹介しよう。

以下の7枚の連続写真をご覧ください。

 

衝撃の8分前【14:18】
 
2011年10月4日 だんぶり池・青森

背後から、そっと近づく恐怖のクチブトカメムシ。

ちょっと見た感じでは、クサギカメムシのような
普通の植物の汁を吸うカメムシである。

ところが・・・


ピンと伸ばした口吻の先端からの距離は、多分1cmもない。

もちろん、この位置と距離では、
ハイイロセダカモクメ幼虫のミラクル擬態は、機能していない。

おそらく、捕食者の眼には、犠牲者の全体像は見えず、
普通のイモムシのお尻にしか見えていないだろう。

 


衝撃の5分前【14:21】
 
2011年10月4日 だんぶり池・青森

約3分かかって、ゆっくりゆっくりと至近距離まで近づいた。

触角が、幼虫のお尻に軽く触れているのが分かる。

 


衝撃の3分前【14:23】
 
2011年10月4日 だんぶり池・青森

まだカメムシの口吻は、幼虫の体に突き刺さってはいない。

ここが、カマキリやハエトリグモの捕獲行動とは全く違うのだ。


 

衝撃の瞬間【14:26】
 
2011年10月4日 だんぶり池・青森

この写真は、突き刺した瞬間ではないかもしれない。
もしかしたら、数秒あるいは数十秒経過しているかもしれない。

突然、幼虫が体を上に曲げ、いやいやをするように数回振った。

 


衝撃の1分後【14:27】

2011年10月4日 だんぶり池・青森

その後、すぐにその動作は鈍くなり、止まった。
おそらく、カメムシが麻酔薬を注入したのだろう。

なんとも、恐ろしい光景である。


 

衝撃の11分後【14:37】
 
2011年10月4日 だんぶり池・青森

そして10分程度で、幼虫の体は、植物から離れ、
宙に浮いた状態になっていた。


 

衝撃の12分後【14:38】
 
2011年10月4日 だんぶり池・青森

その後、カメムシが体を軽くゆすったとき、
幼虫の体は下に垂れさがった。

体液を吸われ続けているのだろう。

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

どんなに完璧な防御手段であっても、
全ての捕食者の攻撃を避けることは出来ないのだ。

 

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ヨモギの花穂に集まる虫たち

だんぶり池周辺の林道も、
秋になると咲いている花が限られてくる。

そんな中で、ヨモギの花穂(かすい)には、
ミラクル擬態のハイイロセダカモクメ幼虫以外にも、
結構色々な虫が集まってくる。

今回は、普通に見かける幼虫たちを紹介するが、
(残念ながら、種名が確定できない・・・)
何の防御手段も持っていないような虫でも、
このように、毎年見ることができる。

そんな彼らでも、十分子孫を残していけるのである。


一体何故、ハイイロセダカモクメ君だけが、
彼らと同じ環境にいるのに、やりすぎとも思えるような、
ミラクル擬態を進化させてきたのか?


ちょっとだけ不思議な昆虫の世界である。

 


種名不明の幼虫
 
2011年9月23日 だんぶり池・青森

黄色と黒の良く目立つ色の幼虫であるが、
この静止する恰好は、枝に擬態しているようでもある。

つまり、警戒色の良く目立つ虫が、
保護色の虫のような行動をしているのである。

 


多分ヨモギエダシャクの幼虫(シャクガ科)
2011年9月23日 だんぶり池・青森

こちらは、目立たない代表格の幼虫である。
良く見ないと、見逃してしまう。

この虫が、この行動ならわかる?

 

 

種名不明の幼虫
 
2010年10月14日 だんぶり池・青森

ちょっとグロテスクなケムシ・・・

だが、よく目立つ。

 

 

種名不明の幼虫
 
2010年10月14日 だんぶり池・青森

同じく、グロテスクなイモムシ・・・

小鳥の餌にしては、ちょっと大きいか?

 

 

オオトビサシガメ(サシガメ科)
 
2011年9月23日 だんぶり池・青森

これだけ、多くの幼虫がいると、
それを狙って捕食者が集まってくる。

その代表が、オオトビサシガメだ。

 

 

クチブトカメムシ(カメムシ科)
 
2011年10月4日 だんぶり池・青森

クチブトカメムシもえものを求めてやってくる。
まあ、普通に近づいてカメラを構えた。


その瞬間、ようやく気が付いたのだ!!!

わかりますか?

・・・・彼の目の前に、ハイイロセダカモクメ幼虫がいる・・・・

 

実は、この後の一部始終を、カメラで記録することが出来た。


次回予告!

これが衝撃の瞬間だ!!

 

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ハイイロセダカモクメ幼虫 これがミラクル擬態だ!!

今年の秋は、弘前も雨の日が多く、特に最近は外に出られない。

少しの晴れ間があると、ハイイロセダカモクメ幼虫を求めて、
だんぶり池のヨモギ花穂を、かなりの時間を使って探した。

そして、ようやく10月4日に、出会うことができた。

 


ハイイロセダカモクメ幼虫(ヤガ科)
 
2011年10月4日 だんぶり池・青森

この子に出会うためには、いつものように、
ブラブラと、だんぶり池の林道を歩いていては、ダメである。

ヨモギの花穂を見ながら、ほぼ立ち止まって、
近視用の眼鏡を外して、じっくりと探すのである。

そうしないと、多分絶対に見つからないだろう!!!

 

 

ハイイロセダカモクメ幼虫(ヤガ科)
 
2011年10月4日 だんぶり池・青森

やはり、出会ったときの第一印象は、

何でそこまで似せなきゃならないの?

・・・であった。


彼の容姿は、ミラクル擬態の典型である。

別に、紹介する予定であるが、
彼の周辺には、ほぼ同じサイズの別種の幼虫が沢山いる。

そして、ここまでやらなくても、
多分みんな普通に、子孫を残すことができているのである。

 

 

ハイイロセダカモクメ幼虫(ヤガ科)
 
2011年10月7日 弘前市・青森

当然のことであるが、ミラクル擬態の対象は、
視覚で獲物を探す鳥類だと思う。

逆に言うと、こんな恰好をしていても、
鳥類以外の(全体を見渡すことができないような)捕食者には、
おそらく、ほとんど防御効果を発揮することはないだろう。

次の写真が、それを示す衝撃の一枚である。

 


ハイイロセダカモクメ幼虫(ヤガ科)
 
2011年10月4日 だんぶり池・青森

なんとも、無残な姿である。

クチブトカメムシに対しては、このように、
ミラクル擬態の効果は、全く認められない。

おそらく、カマキリやハエトリグモにも、
防御効果は、ほとんどないのかもしれない。


以前、カメムシの匂いの防御効果のところで述べたように、
全ての捕食者に有効な防御手段などは、あり得ないのだろう。
↓  ↓  ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20101107/1/


 

 


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