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ちょっとだけ、不思議な昆虫の世界

さりげなく撮った昆虫のデジカメ写真が、整理がつかないほど沢山あります。 その中から、ちょっとだけ不思議だなぁ~と思ったものを、順不同で紹介していきます。     従来のブログのように、毎日の日記風にはなっていませんので、お好きなカテゴリーから選んでご覧ください。 写真はクリックすると大きくなります。   

もう一度 イシハラハサミツノカメムシ

以前このブログで紹介した新種【Acanthosoma ishiharai】は、
昨年11月に記載されたツノカメムシの仲間である。
↓   ↓   ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20121113/1/

ブログを書いた時点で、和名は公表されていなかったので、仮称としていたが、
先日発売されたカメムシ図鑑3巻には、イシハラハサミツノカメムシ(注)として、
正式に(?)掲載されていた。

また、このブログを見てくれた友人が、せっかくの機会なので、
近似種のハサミツノカメムシとヒメハサミツノカメムシの写真も同時に載せて、
その違いを分かりやすく説明したら、との提案があった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

まず、雄の場合は、ハサミの開き具合を見れば、
簡単に写真でも識別可能である。

 

イシハラハサミツノカメムシ♂(ツノカメムシ科)
【Acanthosoma ishiharai YAMAMOTO et HAYASHI,2011】

2012年10月22日 蔦温泉・青森

本種雄の生殖節のハサミ状突起は、写真のように、
他の2種に比べて、より外側に開き、やや短い。

 

 

ハサミツノカメムシ♂(ツノカメムシ科)
【Acanthosoma labiduroides JAKOVLEV,1880】

2012年7月4日 白岩森林公園・青森

近似種ハサミツノカメのハサミ状突起は、
このように平行に突出する。

 


ヒメハサミツノカメムシ♂(ツノカメムシ科)
【Acanthosoma forficula JAKOVLEV,1880】

2004年6月5日 伊吹山・滋賀

同じく近似種ヒメハサミツノカメのハサミ状突起は、
外側に開いている。


このように、雄の場合には、直接比較しなくても十分識別可能である。

 

 

問題は、ハサミを持たない雌の場合であるが、
以下の識別点が、比較的分かりやすいと思う。

基本的に、この識別点は、雄にも適用可能なので、
ハサミの角度が微妙な場合には、参考になると思う。

 

イシハラハサミツノカメムシ♀(ツノカメムシ科)

2011年10月16日 蔦温泉・青森

本種の雌は、ハサミツノカメムシ雌に非常に良く似ている。
ただ、触角が、第1節を除き全体に黒っぽく、
前翅膜質部が黒褐色なので、写真での識別も可能である。

 

 

イシハラハサミツノカメムシ♀(ツノカメムシ科)

2010年9月27日 新保高温泉・岐阜

これは、産地の異なる別個体の雌の写真であるが、
第7結合板の色が、写真のように、
やや赤みを帯びていることが特徴とされる。

ただ原著論文では、近似種との識別点とは明記していないようだ。

どの程度の個体差、地域差があるかは、現時点で不明であるので、
上記の特徴と合わせて確認すべきであると思う。

 

 

ハサミツノカメムシ♀(ツノカメムシ科)

2011年6月21日 だんぶり池・青森

ハサミツノカメムシの第7結合板も、
やや赤みを帯びているが、写真のように、
大部分は黄色で、後方の一部だけが赤いようである。

 

 

ヒメハサミツノカメムシ♀(ツノカメムシ科)

2011年10月9日 蔦温泉・青森

ヒメハサミツノカメムシとの違いは、
比較的分かりやすく、第7結合板は黄緑色である。

 

カメムシ図鑑3巻によると、イシハラハサミツノカメムシは、
本州と四国のブナ帯から採集されているが、個体数は少ないようだ。

もし身に覚えのある標本・写真をお持ちの方は、もう一度、
確認をしてみたらいかがでしょうか?


(注)言うまでもなく、イシハラとは著名な昆虫学者である石原保博士のことである。
   四国昆虫学会の採集会で、生前一度だけお会いしたことがあるが、
   目の前の虫はすべて名前が分かる、
   という凄いオーラがあったのを覚えている。

 

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新種イシハラハサミツノカメムシ(仮称)

今日紹介する【Acanthosoma ishiharai YAMAMOTO et HAYASHI,2011】は、
昨年11月に、新種として記載されたツノカメムシの仲間である。

 

私の記憶では、大型のツノカメムシが日本で新種として記載されたのは、
本当に、久しぶりだと思う。
もしかしたら、半世紀も前のエサキモンキツノカメムシ以来であったのかもしれない。

 

以下、新種イシハラハサミツノカメムシ(仮称:最下段に経緯)の写真を、
撮影日順に紹介していきたい。


(⇒写真をクリックすると大きくなります)

 


イシハラハサミツノカメムシ♀(ツノカメムシ科)

2010年9月27日 新穂高温泉・岐阜

この写真は、論文に記載される1年前の撮影ということになる。

ロープウェイの乗り場から、槍ヶ岳へ向かう登山道で見つけた。

もちろん、このときには、新種のツノカメであるとは思わず、
ちょっといつもと雰囲気の異なるツノカメ、もしかしたら、
フトハサミツノカメの雌かもしれないと思いながらシャッターを押した。

 

 

イシハラハサミツノカメムシ♀(ツノカメムシ科)

2010年9月27日 新穂高温泉・岐阜

これは、上の写真と同じ個体である。

雌の場合には、写真での同定は難しそうであるが、
ハサミツノカメやヒメハサミツノカメと比較すると、
触角が黒っぽくなるのが、分かりやすいかもしれない。
側角の状態(色や形状)も、微妙に違うようである。

 

 

イシハラハサミツノカメムシ♂(ツノカメムシ科)

2011年10月9日 蔦温泉・青森

以下の6枚の写真は、すべて蔦温泉の遊歩道で見つけたものである。

越冬前の個体で、やや黒ずんでしまった雄である。

雄は比較的分かりやすく、ハサミの雰囲気は、ハサミツノカメムシよりも、
ヒメハサミツノカメムシに似ているが、写真のようにハサミの開き加減が大きく、
やや短いので、十分識別可能である。

また、分かりにくいが、ハサミの先に毛がないことも特徴の一つである。

 

 

イシハラハサミツノカメムシ♂(ツノカメムシ科)

2011年10月9日 蔦温泉・青森

ほぼ同じ場所で撮った別個体である。

体全体がススで覆われように、黒っぽくなっている。

よく見ると、ハサミ(?)まで!!!

 

 

イシハラハサミツノカメムシ♀(ツノカメムシ科)

2011年10月16日 蔦温泉・青森

これは、1週間後に、ほぼ同じ場所で撮った雌の写真である。
ちょっとだけ不思議なことに、この個体は、体色が黒ずんでいない。

もちろん、越冬前には、すべての個体が黒っぽくなるわけではないと思う。

雌雄の違いなのか、単にバラツキなのか、ちょっとだけ興味深い。

 

 

イシハラハサミツノカメムシ♀(ツノカメムシ科)

2011年10月16日 蔦温泉・青森

偶然、お腹側から撮れた写真で、上と同じ個体である。

活発に動き回っていたが、綺麗な黄緑色のお腹を撮ることができた。

 

 

イシハラハサミツノカメムシ♂(ツノカメムシ科)

2012年10月22日 蔦温泉・青森

今年になってからは、本種を再度確認するため、季節を変えて、
蔦温泉周辺の遊歩道を、何度か訪れたが、いずれも空振りだった。

また、十和田湖周辺や八甲田周辺まで、それらしい場所を軽く探してはいたが、
今年は何故か、本種どころか、他のツノカメに出会う頻度がかなり低かった。


そして、あきらめかけた最後の最後で、偶然にも、
いつもの蔦温泉の遊歩道で、1個体だけ見つけることができた。

ほとんど葉っぱが落ちているような状況の中での奇蹟(?)だった

 

 

イシハラハサミツノカメムシ♂(ツノカメムシ科)

2012年10月22日 蔦温泉・青森

これまでの本種の採集記録をみると、本州と四国だけで、
ライトトラップやビーティングで得られた個体が多いようである。

したがって、原著論文では、実際の寄主植物は不明とされている。


上の8枚の写真は、歩きながら目視で見つけたもので、
すべて自然状態のまま撮影したものであるが、
撮影当時は、あまり植物を気にする余裕がなかった。

ただ、新種ツノカメであることが分かった今年からは、
植物まで確認しようと思っていたが、残念ながらこの個体は、
下草のような植物で見つけたものである。

来年は、産卵中の雌の写真を、植物名がわかるように撮りたい?!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

私が撮った写真の撮影場所は、偶然にも有名温泉地で、
青森県の蔦温泉と、岐阜県の新穂高温泉である。

最近は、写真撮影のみで、標本にすることはないが、
特に後者は、中部山岳国立公園内の「特別地域」の指定になっており、
一切の動植物の採集は禁止されている。

したがって、写真で見るだけの同定であり、やや不安が残るので、
上記の8枚の写真については、前もって市田忠夫氏に確認いただいた。
また、氏からは、近々発売される予定の「カメムシ図鑑3巻」において、
このツノカメに、カメムシの研究で偉大な足跡を残した石原保博士にちなんで、
「おそらくイシハラハサミツノカメムシという和名が提唱されるようだ」
との情報もいただいたので、写真タイトルに、今回はその名前を先行して使用した。

また、学生時代からの友人、記野直人氏からは、
新種【Acanthosoma ishiharai】が記載された原著論文のコピーをいただき、
私が簡単に写真で分かる限りの特徴を確認した。

いつも、色々とお世話になっているお二人に、この場を借りてお礼申し上げる。

 

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ダムサイト② クサギカメムシばっかり

晩秋の晴れた日、ダムサイトは、珍品カメムシの宝庫である。

場合によっては、フトハサミツノカメムシやアオクチブトカメムシが、
さりげなく見つかる。

 

ところが・・・・

 


クサギカメムシ(カメムシ科)

2012年10月27日 森吉ダム・秋田

こんなのは、初めてである。

何なんだ、この状況は!!!

 

 

クサギカメムシ(カメムシ科)

2012年10月27日 森吉ダム・秋田

次の支柱にも・・・・・

これでは、せっかく作った立派な手すりも、
普通の人は、触ることもできない。

 

 


クサギカメムシ(カメムシ科)

2012年10月27日 森吉ダム・秋田

そして、その次の支柱にも・・・・・

この写真でざっと数えてみると、なんと、
一本の支柱に29匹が写っている。

 

 


クサギカメムシのいる支柱

2012年10月27日 森吉ダム・秋田

このダム(堤防?)上の道路には、
落下防止用の手すりが数百本、ずっと続いている。

ただ、ダムの中心付近に歩いて行くと、
クサギカメムシの数は、段々少なくなっては来るのだが。

 

 


クサギカメムシのいる支柱

2012年10月27日 森吉ダム・秋田

この写真をクリックして、拡大してみると、
保護色(?)で多少分かりにくいかもしれないが、
それぞれの支柱には、平均10匹程度のクサギカメムシがいる。

支柱が道路の両サイド合わせて、500本あったとすると、
それだけで、なんと5000匹もいることになるのだ。

もちろん、支柱以外の場所にも沢山見つかるので、
森吉ダムには、おそらく1万匹以上のクサギカメムシがいることにある。

この数の0.1%でも人家に入り込めば、
不快害虫として、十分な厄介者になるだろう。

 

 

そして、これでは、珍品のツノカメも居場所がなくなってしまう?

ちょっと信じられないことであるが、これだけクサギカメムシがいるのに、
他のカメムシは、私の見た限り、ツマジロカメムシ、スコットカメムシ、
ヨツモンカメムシ、ホソヘリカメムシだけであった。


恐るべし、クサギカメムシ!!

 

 


実際にダムサイトでは、紅葉を楽しむ多くの観光客が、
ブンブン飛び回っているクサギカメムシに、悲鳴をあげていた。

思わず手で払いのけて、強烈な匂いを洋服に付けてしまう人もいるし、
道路上にいるカメムシを踏んでしまうと、靴に匂いが残って、
車の中はとんでもないことになるだろう。

ただ、幸か不幸か、少なくとも私は、この点に関しては、
あまり気にならないのだが・・・


 

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ダムサイト① 今年はクサギカメムシが目立つ

カメムシ類の多くは、成虫で越冬する。

晩秋になると、好適な越冬場所を求めて飛行するが、
その途中で、太陽の熱で暖められたダムサイトで、
一休み(?)する習性があるようだ。

実は、この習性を利用すると、晩秋と春先の晴れた日には、
かなり珍しい種類のツノカメムシを、簡単に見つけることができる。

 

家から30分ほどのところにある浅瀬石ダム。
付近は広葉樹が多いし、ダムの上を普通に歩くことができる。

 

行ってみると・・・・何と!!!!!!

 

クサギカメムシ(カメムシ科)

2012年10月22日 浅瀬石ダム・青森

どこから来るんだろうと思うほどのクサギカメムシを発見。

ダムの駐車場の桜の木にも、いる

 

 

クサギカメムシ(カメムシ科)

2012年10月22日 浅瀬石ダム・青森

今の時期は、お腹が赤いのか?

落ち葉の中に隠れていると、保護色?

 

 

クサギカメムシ(カメムシ科)

2012年10月20日 浅瀬石ダム・青森

そして、階段の手すり部分にも、いる・・いる

 

 


クサギカメムシ(カメムシ科)

2012年10月14日 浅瀬石ダム・青森

トイレの壁にも、いる・・いる・・いる

 

 


クサギカメムシ(カメムシ科)

2012年10月20日 浅瀬石ダム・青森

トイレの通風孔にも、いる・・いる・・いる・・いる

 


しかし、今年のクサギカメムシは、
これでは終わらない!!・・・・次回!!

 


ちょっとだけ不思議なクサギカメムシの寄主植物について・・・


カメムシマニアにとっても、宿命の悪役クサギカメムシは、
日本全土に分布し、リンゴやナシ、ミカンなどの果樹害虫として有名である。

そのためか、広食性カメムシの代表のように紹介されることが多く、
事実、50種類以上の植物から、成虫と幼虫が見いだされている。

しかし、不思議なことに、見つかったその植物だけを餌として飼育しても、
孵化幼虫から新成虫にまで発育し、交尾・産卵するとは限らないのだ。

私も学生時代、大学構内のサクラの果実から、沢山の成虫を捕まえて、
実験室で産卵させて、累代飼育を試みたが、見事に失敗した記憶がある。

冷蔵保存したサクランボで、簡単に飼育できると思っていたのだが、
成虫になる前に、結局すべて死んでしまったのである。


果樹害虫とされる多くのカメムシは、その時点での最適な餌を選んで、
次々に寄主植物を変えていく習性をもっている。

だから、クサギカメムシの成虫と幼虫がサクランボにいたからと言って、
それが本来の意味の「寄主植物」ではないのである。


それでは、クサギカメムシの本来の寄主植物は何だろうか?

名前からして、植物のクサギのような気がしないでもないが、
実は、クサギカメムシのもともとの寄主植物として知られていたのは、
雑木林の中にあるキリだけであった。

最近、秋田果樹試験場の舟山氏によって、キリの分布密度が低い秋田県内では、
ウワミズザクラが寄主植物であることが確認された。

秋田県では、ウワミズザクラは5月上旬開花し、成熟果実は9月中旬まで見られる。
だから、クサギカメムシは、自然状態で、単一の餌植物を餌として、
十分に孵化幼虫から成虫まで育つことができるのだ。

 

 

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似てる??④/④ チャイロクチブトカメムシとクサギカメムシ

今回で最後のクチブトカメの似たものシリーズ。

完全に、蛇足の蛇足であるが・・・

肉食であるただのチャイロクチブトカメムシと、
それにちょっとだけ似た種クサギカメムシを紹介する。

 


チャイロクチブトカメムシ(カメムシ科)

2011年10月9日 蔦温泉・青森

一見どこにでもいそうな普通のカメムシであるが、
あまりちょっとだけ珍しいチャイロクチブトカメムシである。

当然この子も、他の虫を襲って、体液を吸う肉食なのだ。

 

 


チャイロクチブトカメムシ(カメムシ科)

2011年10月9日 蔦温泉・青森

ちょっとだけ珍しいと書いたが、その唯一の根拠が、
私が撮った写真は、この子だけだからである。

かなりの珍品なのだろうか? 

ネット情報では、日本からヨーロッパにかけて、
広く分布しているようであるが・・・

 


そして、対応するように、良く似た種がいる。

 


クサギカメムシ(カメムシ科) 

2011年10月9日 蔦温泉・青森
 

サイズ、大まかな形態、色具合が非常によく似ている。
しかし、よく見ると、ツノの形が違う(前回と文章同じ!!)。

この写真は、チャイロクチブトカメムシと同じときに、
同じ場所で撮ったものである。

だから、最初の写真は、「またクサギカメムシか?」だった。

 

 

クサギカメムシ(カメムシ科)

2011年9月92日 白岩森林公園・青森

クサギカメムシは、全くの普通種である。
いや、全国の果樹園では、大害虫なのだ。

それだけではない。
越冬するときには、家屋に侵入する不快害虫でもある。


しかも、近年は大発生傾向が続いているのだ。

 

今年のダムサイトは、クサギカメムシが・・・・!!!!!(次回)

 

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